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April 2017

Sunday, April 23, 2017

忖度弄すと引く大人かい!

世の中不思議いっぱいなんですが、そもそもシリアにアメリカがトマホーク59発も打ち込んだのに、ロシアがシリアに供与したとされる対空ミサイルシステムが働いた気配なし。トラブル?元々ザル?それとも事前通告を受けたロシアが敢えて止めた?

不思議はまだいっぱい。シリア攻撃は北朝鮮への警告と米ペンス副大統領も認めて、シンガポールにいる空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海へ派遣もなぜかインド洋へ。北朝鮮のミサイル発射は失敗。北朝鮮核実験場でバレーボール。一方日本の安倍首相は北朝鮮ミサイルにサリン搭載など危機を煽って韓国から不快感。そりゃそうだ。今韓国は大統領選真っ只中。誰が選ばれるかで北朝鮮に対するスタンスも変わるって時に日本国内向けの人気取りは不謹慎。しかも欧米メディアは変な憶測を働かせるし。逆に北朝鮮も大統領選が終わるまでは下手に挑発して敵対的な政権ができたら藪蛇だし。

でもトランプ大統領は喜んでます。なぜならば危機感煽ればリスクオフで円高ドル安になるわけだし。自らの口先介入を安倍首相が補強してくれたんだから感謝っておい!そもそも福一事故で米国民にいち早く退避勧告をした米政府が未だ韓国国内に軍属、非軍属含めて10万人はいる米国民に退避勧告出さずに軍事行動はあり得ません。シリアは直接反撃できないからミサイル打ち込んだけど、同じこと流石に北朝鮮には無理ってもの。トランプ大統領って素人的な危なっかしさはあるけれど、ある種の勘の良さはありそうです。計算通り?まさかね。

北朝鮮危機を煽る安倍首相ですが、森友問題は未だ決着せず。これぐらいのスキャンダルで政権が吹っ飛ばない今の日本の異常さ。森友学園が9億の国有地を8億値引きだけど、加計学園は36億円の土地を無償で入手しかも国家戦略特区を悪用して正規には認められない獣医学科新設というルール破りの権力私物化ですからね。

日米経済対話が始まったけど、日本側の意図に反して貿易問題が前面に出て事実上の日米FTA交渉に。そうならないように根回ししたはずが裏目に。こうなるとアメリカの要求は自動車と農業を中心としたTPP以上の譲歩とTPPでは盛り込まれなかった為替条項。ドル高是正のルール化が必ずテーマになります。

その一方で米中間ではドル高を是正したいアメリカと元安による資金流出を抑えたい中国の思惑が一致しており、両国間で為替協定を結ばれたら日本は手も足も出ないまま円高を受け入れることになります。原油価格も上昇基調にあり日本にとって円高は歓迎すべきなんですがね。G20財務省会合でも金融政策はデフレなど国内問題の解決のためのもので、為替誘導ではないと敢えて強弁しなきゃならないところに日本政府の苦しさが滲みます。

その一方で事実上とん挫したTPPは11カ国で新たな協定として発効させる方向性を打ち出したものの、アメリカを説得して迎え入れるという殆ど不可能なたわごとを言い始めました。アメリカ抜きなら日本に有利な交渉ができるとでも思っているようですが、12カ国の交渉でアメリカの立場を代弁するような対応を取った日本はむしろ警戒されていると見るべきです。農業分野でライバルのアメリカが抜けたことで、オーストラリアやニュージーランドは寧ろ攻勢を強めさえするでしょう。結果11カ国TPPでも農業分野は攻め込まれます。日米二国間と併せて日本は得るものなしです。

この日本政府の無能さですが、地方や民間企業も同じかも。地方でいえば存続の危機にあるJR北海道問題で北海道庁の対応のまずさ。最近やや柔軟化したようで、バス化も含めて協議に応じる姿勢は見せるものの、上下分離には否定的で、運賃値上げには理解を示すものの、JR貨物の線路使用料値上げや青函トンネル保守費用の低減を国に求めるということで、結局国と乗客に負担を求め、自らは負担しないって話です。虫が良すぎます。

民間はといえば東芝の迷走が相変わらずですが、実は買収した海外子会社の不祥事や損失で本体も傷ついたのは東芝に限らず、中国子会社の不正で損失を被ったLIXIL、人口減少で国内じり貧だからと買収したブラジル企業で躓いたキリンとか、成長分野を海外事業に求めてシナジーを得られなかった日本郵政とか。共通しているのは高値掴みしてのれん代償却が重荷になる一方、それっをカバーするシナジー効果は得られていないという同じ構図。日本の企業経営者はよほど無能なんだ。

同じ原発事業を抱える三菱重工と日立製作所ですが、海外案件がことごとく中止になって受注分のコスト上振れも低負担で切り抜けられたという意味で、ある意味運が良かったと。こうなればWHの破たん処理で原発事業から事実上撤退する東芝のおかげで国内の廃炉事業で出番が増える漁夫の利。実質国有化された東電の福一事故賠償を国が面倒を見る現在のスキームではコストの上振れは国が面倒見てくれるし電力料金への転嫁で国民につけ回しできるしで、ハイリスクの海外案件は無理に手出しする必要なし。国有企業をコントロールして構造改革を主導する手法は中国と同じです。いやむしろ習近平の反腐敗政策があれば森友や加計のような問題は起きないか^_^;。中国なら安倍晋三も問題閣僚も死刑かも。それはそれで問題だが。

てなことはいろいろあるんですが、こんなニュースに引っかかりました。

。ロボットと仕事競えますか 日本は5割代替、主要国最大  :日本経済新聞
これそもそも前提がおかしい。経済学では労働力の資本による代替を進めると資本収益力が逓減するという命題があります。実際求人難で賃金が高止まりしていたバブル期に、海外市場を睨んだ強気の判断もあって日本企業はこぞって設備投資に走り、過剰投資で資本収益力を低下させて、90年代半ばからは供給過剰の是正を雇用調整で行って益々資本収益力はじり貧になり、一方過剰設備投資のツケで設備の更新投資が滞り、外資の力を借りて最新設備を手に入れた新興国の台頭に伴い競争力を失ったわけです。

そこへもってきての人口減少です。生産年齢人口自体は90年代半ばから減少に転じたんですが、丁度日本企業が雇用調整を始めたタイミングと重なったこともあり、人手不足が顕在化するまでに凡そ20年かかったわけですが、今後人手不足は深刻化の一途をたどります。JR北海道問題に即していえば、そもそも地域の人口が減っている中で、鉄路を維持するための要員が確保できないわけで、それを回避するためには、電化や軌道強化などの設備更新でメンテナンス負担を減らし、各種センサーを活用したインテリジェント化など相当な設備投資が必要なんで、その資金を地元で負担できないなら、鉄道廃止止む無しです。これ民間企業も同様なんですが、ロボットやAIはあくまでも労働生産性を高めるためのツールとして活用して、資本と労働の投入バランスを是正することで、付加価値創出力を高める必要があるわけです。

この観点から言えば政府が進める働き方改革も全く見当違いで、そもそも仕事の繁閑を残業で調整しようとするから無理が生じるんでAIを活用して短時間で成果が出る仕組みを作ることが必要なんで、その意味では現状の残業規制は緩すぎて企業に投資インセンティブをもたらさないと言えます。

折しもヤマト運輸のドライバー不足問題やセブンイレブンなどコンビニの人件費負担増などの問題が顕在化して、対策として無人自動運転の解禁が言われますが、実現するまで人手不足は待ってくれません。ヤマト運輸では運賃値上げや時間帯サービスの縮小や宅配ボックスの設置などを進める考えを示してますが、そういうことなんですね。単純衣労働力を資本であるロボットやAIに置き換えるんではなくて、新しいテクノロジーを取り入れながら、顧客から受け入れられるサービスの在り方を模索していく以外に出口はありません。良い子にプレゼントを運ぶサンタさんもそりを引くトナカイがいなけりゃ成り立ちません。てなわけで迂遠ながら季節外れのダジャレ完成^_^;。

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Sunday, April 09, 2017

トランプ・クリティーク

柄谷行人氏の著書に似せたわけぢゃないんですが^_^;。トランス・クリティークは名著です。

シリア情勢が大きく動きました。4日にシリア政府軍の空爆後に、サリンに似た中毒症状が見られたことで、化学兵器の使用が疑われたことを受けての懲罰ってことのようですが、疑惑段階での軍事行動は問題です。子ブッシュ大統領がイラクが大量破壊兵器を開発中という嘘の情報で開戦したことを思い起こさせます。当時は独仏両国が反対に回ったのに対し、今回西側諸国はこれを歓迎したわけですが、いち早く支持を表明した日本の立場は微妙です。

米中首脳会談が行われている中でのミサイル攻撃ということで、北朝鮮問題に対する警告の意味を指摘されてますが、その割にロシアなどへ行われた事前通告が日本には為されなかったわけで、日本政府の希望的観測の域を出ません。むしろ国連安保理でロシアと連携することが多い中国が口出ししにくい米中首脳会談のタイミングを利用したってのが実際でしょう。実はここにトランプ政権の性格を示す鍵があります。

レーガン大統領に比較されることが多いトランプ大統領ですが、就任後の政権運営を見ると、むしろニクソン大統領に近いと言えます。今回のシリアへのミサイル攻撃で言えば、ジョンソン大統領時代に泥沼化したベトナム戦争を終結させる過程で北爆を強行したりカンボジアへ戦線を拡大したりした迷走あたりと似た対応です。

実際は欧州諸国が主張するアサド政権排除とは一線を画し、深入りを避けています。どうもアサド政権の化学兵器使用に関する官僚のプレゼンに義憤を感じたということのようです。そしてホワイトハウスの政治任用ポストのなり手が見つからず、議会承認も遅れていて空席が多いことが影響してるようです。だから逆にトランプ大統領の脊髄反応的な対応が表へ出たってことのようです。

日本としてはむしろシリア情勢を他山の石として、朝鮮半島有事で米軍の北朝鮮攻撃が起きた時の混乱をシミュレーションする機会でもあります。おそらく韓国国内の反応で賛否が分かれ、日米韓一枚岩の対応は無理でしょう。当然在日米軍基地への北朝鮮からの報復攻撃も起こりますから、日本国内も混乱して収拾がつかなくなることになります。軍事オプションは慎重であるべきですし、対北朝鮮でアメリカが強硬策に出ることは止めないといけません。

思い起こせば大統領選勝利宣言の場でTPP永久離脱を表明したのも、オバマ大統領の任期中に批准できなかったことで、NAFTA再交渉よりもハードルが低いですし、大統領就任後の大統領令連発も、大統領令は問題があれば議会が無効法案を成立させて無効化したり司法が差し止めたりできるので、実効性よりも有権者へのアピールの性格が強いと見ることができます。それが証拠にオバマケア修正法案に関しては議会との調整の果てに撤回しておりますが、これも単純にオバマケアを葬り去りたいのであれば、廃止法案ならば議会多数派の共和党の賛成ですんなり通っただろうに、、修正法案としたために、共和党保守派の賛同が得られず撤回に追い込まれたんですが、その結果、オバマケア継続が決まり、歳出が確定したことで、予算審議はむしろやりやすくなってます。トランプ大統領ってホントは隠れリベラル?

この辺はビジネスマンらしく難易度を意識したリアリズムなんでしょう。同時に従来の保守とリベラルの対立構図の中で経路依存的な議論しかできない政治家たちを戸惑わせているとも見ることができます。ニクソン大統領が米ドルの金交換停止や頭越しの電撃訪中で、オイルショックに始まる産油国カルテルをオイルダラー還流の枠組みで実効支配し、中ソ対立に乗じて一つの中国政策でソビエトとの分断を進め、現在に通じる地政学のフレームを作ったわけですね。日本にとっても沖縄返還交渉関連の密約で深く関わりますし、アメリカ側が沖縄返還のバーターと考えていた日米繊維交渉の約束を破った日本への不信感が、その後80年代以降のジャパンバッシングへとつながったとすれば、当時の佐藤政権の不始末でもあり、その意味で従来の対米追従路線を離れられない日本の安倍政権のしょーもなさにはため息しか出ません。

改革の本丸と目される税制改革ですが、これイギリスのシンクタンクが提案する法人税の仕向け地課税制度が踏襲されると見られますが、これに関してあまり正しく認識されていないようです。法人税の課税方法には大きく分けて居住地課税と源泉地価税の2つがあり、前者は企業の本社所在地での一括課税でアメリカはこれですが、多くの国は付加価値を生み出した地域で課税する後者となります。問題は違う制度が併存する中で企業の多国籍化が進んでいることで、居住地課税国の企業が源泉地価税国に生産拠点を置いて本国へ逆輸入するケースでは二重課税になりますし、逆のケースでは課税逃れにもなり得ます。そこで国境調整として、前者であれば源泉地価税分を控除した差額が居住地で課税されるという形になります。後者に関して源泉地国企業が居住地国に現地法人を置くことで課税逃れを防ぐ必要があります。

更に問題をややこしくしているのが各国の課税ベースの違いと税率の違いで、これらを組み合わせることで、パナマ文書で問題となったタックスヘイブン問題が生じるわけです。タックスヘイブンの場合は付加価値を生み出さない金融取引を利用して低税率国や地域へ富を退避させるわけで、一方で新興国やEUの周縁国などで外資誘致のために法人税減税が競争的に起きていることもあって、各国の税収の空洞化が進んでいます。その結果米企業に生産拠点の海外移転のインセンティブを与える結果となりますし、残る企業も課税特例による政策減税をロビーイングして税の軽減を画策するという複数ルートで税の空洞化が進み、税の所得再配分機能が失われていく現実があります。

それを変え得る課税方法として、仕向け地課税が提案されていて、米共和党で実現の模索がされているものです。WTOルールでEUの付加価値税や日本の消費税など間接税に例外的に認められている税の国境調整の仕組みを法人税に盛り込み、グローバル化に対応して輸出に対しては税の還付を、輸入に対しては公助抜きの課税とすることで国境調整を図る税制で、少なくとも国内で製造可能な製品の海外移転不利にします。加えてキャッシュフロー課税とすることで、形式上直接税となりWTOルール違反の可能性があるという提訴に対して利益課税でなく間接税だと主張できるという目論見です。

キャッシュフロー課税はそれに留まらず、複数年に分けて焼却される減価償却の一括償却と同じ意味になりますし、有形資産に留まらず知財やのれんなどの無形資産も同様ですから、投資全般を阻害しないという意味もあります。加えて人件費も控除対象で、この点が付加価値税と大きく違う点で、つまり低賃金国への生産移転は不利になるという意味で、国内雇用も守るという大統領選の公約と整合性があります。

また国境調整の結果仮にWTO提訴や報復課税がされたとしても、結局有効な報復手段は同じ仕向け地課税を導入するぐらいしかないわけで、それはむしろ望むところ。移転税制で税収確保に苦しむ多くの主権国家にとって問題解決の道になるというわけですね。EUにしろNAFTAにしろ主権国家の上位組織を置くという意味では主権制限の要素があるわけですし、各国の税の空洞化問題も含めて、ある意味クリティカル共同体としての主権国家の復権ということになりますから、反グローバル化という批判も当たりません。

加えてアップルやスターバックスで問題になった税逃れに関しても、未来分は新法人税で捕捉される一方、過去分を10%の軽減税率でみなし課税するリバトリエーション税を課す法案を用意しており、新法人税の前座として議会に諮って成立を目指してます。こちらはオバマケア修正法案で反対に回った共和党保守派も賛成に回ると見られており、トランプ税制改革の成否を占うことになりそうです。

問題はこうして相当額の税収増が見込めるわけですが、それを原資に減税やインフラ投資の財源とする目論見ですが、大統領選で訴えた法人税15%までは届きそうにないということ。共和党案の20%も苦しく、25%程度がせいぜいではないかと言われております。加えてリバトリエーション税で利益の海外留保が無意味化しますから、米企業が一斉に留保資金を本国送金すると、為替がドル高に振れてしまうという点ですが、むしろ新税制で輸入物価にかかる上昇圧力を緩和するとすれば、国民生活的には問題ないということになりそうです。

それと3月に利上げし、年内3回の利上げを示唆して緩和の出口を探るFRBの動き如何では、ドル高が進む可能背もありますが、その根拠となる米景気の回復基調にやや異変が。

米市場の変調、自動車業績に重荷 販売減速・膨らむ奨励金  :日本経済新聞
以前から指摘されていた問題ですが、サブプライム自動車ローンと販売奨励金で新車販売に下駄を履かせた状態が続いた結果、中古市場に車が溢れて値崩れして、元々リセールバリュー頼みのローン利用者にとっては、転売、買い替えのサイクルが停滞するわけですから、それが新車販売に跳ね返っている状態で、丁度不動産サブプライムローンと同じ構図です。ただ規模は小さく、金融危機には至らないと見られていますが、新車販売の停滞は生産の縮小を通じて米景気後退のトリガーにはなり得るわけです。ただしそうなればFRBの利上げスタンスは見直されるでしょうし、むしろ低すぎる失業率でインフラ投資が滞ると言われる中、景気後退は悪い面ばかりではありません。

そうなるとテキサス新幹線や北東回廊リニアの建設を目指すJR東海にチャンス到来?とはいかないのが現実です。トランプ税制では結局建設でも車両製造や保守でも現地調達を基本にしなければなりませんが、高速鉄道の建設や運営をこなせるサプライチェーンを立ち上げるのは困難を伴います。実質貨物鉄道で欧州以上に衝突安全の基準が厳しいアメリカですが、逆に言えば日本式の繊細な構造の高速鉄道の建設は未体験ゾーンとなるわけで、日本のリソースを使うと課税される新税制では不利になるわけです。インフラ輸出に前のめりな日本ですが、そうそううまい話は転がってはいないわけです。東芝が買収したWHの誤算もスリーマイル事故で原発建設が停止した結果、サプライチェーンが崩壊してコストを膨らませたことにあります。無理しても同じ運命が待っているだけでしょう。

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Sunday, April 02, 2017

JR30周年で国鉄は遠く

JR30周年となったわけですが、つまり国鉄を知らない世代が既に社会人になっているというわけで、そもそも国鉄改革とは何だったのかを知らない人が増えているということでもあります。しかもその30年はスタートがバブル期に重なって好調だった一方、バブル崩壊後の経済停滞で社会はすっかり様変わりしておりますが、上場を果たした本州3社とJR九州に対して、JR北海道は存続の危機とも言える状況に直面しており、JR四国も時間の問題という現状です。

その一方でJR貨物の黒字化で上場が視野に入るという、なんともわかりにくい状況ですが、JR発足以後の日本経済の激変を考えれば、これまでの30年の延長上に未来は描けないのはある意味自明です。加えて言えばバブル期以降の日本を特徴づけるのは低金利ってことです。これ上場して資金調達力を増した本州3社にとっては追い風の一方、経営安定基金の運用益で赤字穴埋めという枠組みの三島会社にとっては逆風になるわけで、その中でJR九州だけが上場にこぎつけた最大の理由は、JR発足後に完成し引き渡された青函トンネルと瀬戸大橋を抱えるJR北海道とJR四国に対して、追加的な負債が発生しなかったってこともあります。

リース料負担のある整備新幹線としての九州新幹線も、経営安定基金取り崩しで一括支払いしており、短期的な負担が北海道や四国より軽いことが指摘できます。ただし長崎ルートは需要面からもお荷物になる可能性があります。加えて経営安定基金の残りで上場前の減損処理で資産圧縮してますから、今後の鉄道事業の設備投資の原資は細くなっており、人口減少でJR北海道と同じ問題はJR九州でも起こり得ます。

本州3社についてもそれぞれリスクを抱えています。業績好調でリニア建設に入れ込むJR東海は、そのリニアがリスク要因です。過去にも何度の指摘しておりますが、リニア単体では赤字の投資であり、しかも人口減少で人手不足が顕在化する中で、労働需給による事業費の上振れは避けられないところですし、加えて南アルプスを青函トンネルより長い長大トンネルで抜ける難工事です。トンネル工事で地下水脈にぶち当たれば国鉄時代の上越新幹線中山トンネルや福岡市営地下鉄七隈線のような水没事故も起こりかねません。

JR東日本や西日本にとっても人口減少による地方線区の維持の困難さは今後も拡大するでしょう。JR東日本では仙石線や常磐線のほか、水害で橋梁が流された只見線や土砂崩れの山田線など災害復旧で課題を抱えています。JR東海の名松線の復旧とJR可部線の廃止区間の一部復活などはありますが、前者は三重県と津市の治山治水事業の進捗に合わせての復活ですし、後者は市街化が進んでいたものの、廃止時点で非電化だったために、電化工事までして残す選択肢は事実上なかったわけで、住民運動が広島市を動かし、それに呼応して鉄道用地の原状回復や売却を留まったJR西日本の間で建設的な対話が実現したことによります。その意味で窮地に立つJR北海道に対する道庁や関連自治体の対応はちょっと残念です。

それでもJR北海道に関しては、JR九州が先鞭をつけた経営安定9基金取り崩しという奥の手は残っています。ただし使途は重要で、要員不足で保守が困難な状況を脱するには、省力化投資が欠かせませんが、JR北海道の経営力強化の意味で、現状の鉄路をそっくり残すことはあきらめるしかないでしょう。具体的には保守負担の大きいディーゼル車を減らすための電化と、保守負担を減らすための軌道強化などですが、JR北海道が自前で残す区間に限定すべきでしょう。そうすれば経営安定基金を取り崩しても償却資産が増える分、キャッシュフローの改善につながりますから、JR九州の新幹線リース料一括支払いより筋の良い取り崩し方になります。JR九州で認めた以上認めないわけにはいきますまい。とすれば石勝線・根室本線の南千歳―帯広間が電化されて、保守が容易な電気車両への置き換えが進むことになります。そしてこの手は将来JR四国の経営が行き詰ったときにも使える手でもあります。

で、残りの区間に関しては自治体出資で線路保有を肩代わりするか、受け皿三セクへの譲渡とするか、あるいは地元バス事業者を巻き込んだバス転換かといった対策を路線や区間毎に自治体と話し合って決めていくしかないでしょう。受け皿三セクに関しては、輸送量次第で肥薩オレンジ鉄道のようにJR貨物の出資もあり得ます。宗谷本線に関してはロシア政府が興味を持つかもwwwww。いずれにしても自治体の対応次第です。名松線も可部線も自治体が動いて復活を果たしたわけですから。逆に自治体との協議を重ね社会実験までして廃止止む無しとなった三江線の例も珍しいものとは言えなくなるでしょう。

ま、いずれにしても人口減少の影響は今は好調な本州3社も安泰ではないわけで、北陸新幹線に入れ込むJR西日本は正直大丈夫か?とも思います。この点は」JR東日本が絡む整備新幹線計画がほぼ完成し、JR東日本のとっては成長分野となったのとは異なります。元々JR東日本も整備新幹線区間単体よりも、既存区間である根本部分の需要増が狙いだったわけで、わざわざ線路を曲げてまで小浜、京田辺経由で新幹線を作るのは意味不明です。加えてJR西日本には新たなリスクの種も。

なにわ筋線30年開通 JR・南海運行、新駅以北は阪急交え協議  :日本経済新聞
なにわ筋線に関しては、大阪維新の目玉政策としての関西空港重視の文脈で、関西財界も乗り気なようですが、今回は阪急も事業参加を申し出て、よくわからない状況になっております。

元々阪急はなにわ筋連絡線構想として十三―梅田北新駅間の路線構想を持っておりましたし、古くから新大阪連絡線として淡路―新大阪―十三間と新大阪―神崎川間の免許を取得し、新大阪駅隣接地に駅用地としてとちをしゅとくしていて、高速バスターミナルや路線バス操車場として使ってたわけですが、紆余曲折を経て十三―新大阪間を除いて免許失効しており、十三―新大阪間も、四つ橋線の十三延伸線と相互直通が計画されていましたが、大阪市営地下鉄の民営化が決まって民営化後に負担となる追加投資が頓挫したことが影響しているようです。てことで大阪部、。大阪市、JR西日本、南海電気鉄道に加えて阪急電鉄も加わる五者協議が始まるそうですが、元々JRと南海の呉越同舟に加えて唯我独尊の阪急が加わるとなると、協議がすんなり進むとは考えにくいところです。

なにわ筋線に関しては、中之島で連絡する京阪電気鉄道も期待しているようです。肝心の大阪維新ですが森友学園問題でもちぐはぐな対応が見られますし、四つ橋線延伸計画を反故にするなど本気度には疑問符が付きます。とはいえJR西日本の単独事業とするには投資額が大きいわけで、新幹線のみならず、コアコンピタンスと見做せる関西アーバンネットワークでの私鉄との相乗りは、JR西日本の難しい立ち位置を示しているとも言えます。

てことで、めでたいようなめでたくないようなJR30周年ではあります。

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