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August 2017

Sunday, August 27, 2017

ザ・シビル・ウォー

米トランプ政権がバノン上級顧問の更迭を決めた後、流れたニュースがこれ。

アフガン早期撤収否定 米大統領、駐留規模明示せず (写真=ロイター) :日本経済新聞
バージニア州シャーロッツビルの非白人至上主義者とカウンターの衝突に対するトランプ大統領の声明文の中で「すべての立場の人々」という部分が取り上げられて差別容認姿勢としてメディアが一斉に報じて非難する騒ぎになったわけですが、考えてみれば変です。

大統領選当時からヘイトと見られかねないきわどい発言を繰り返し、直近では北朝鮮を挑発するようなツイッター発言など、他にツッコミどころがありそうなものです。公式の声明文だからってのはあるかもしれませんが、仮にそうだとしても公式声明文を綴るコメントライターが不注意だっただけ?ってことじゃないかと。で、待ってましたとばかりにメディアが囃し立てて大炎上。結果としてバノン氏の更迭に至ったわけですが、バノン氏自身は白人至上主義者を「愚かな奴ら」と軽蔑していたと伝えられており、ここがつながりません。経済ナショナリズムを標榜し対中強硬派とされることからの印象で反グローバルの軍事強硬派との印象が持たれてますが、実像とは違います。

でアフガンの早期撤収否定の発表でピンときたんですが、アフガン即時撤退を主張していたのがバノン氏で、娘婿のクシュナー氏が民間軍事会社活用を提案して対立していたわけですが、今回の決定はクシュナー氏の案も退けられて、事実上の米軍増派ですから、トランプ政権のスタンスが明確に変化してます。一方で進まない閣僚などホワイトハウスのスタッフ人事も気が付けば米軍OBが幅を利かせており、政権内部の力関係が変化している可能性があります。で、今回の騒動は軍産複合体にとって目障りなバノン氏の更迭で収拾されており、影のシナリオライターがいるんじゃないかと。状況証拠だけですが。

バノン氏は北朝鮮問題でも「在韓米軍がいるから緊張を高めている」と発言したり、沖縄駐留米軍の削減にも言及しておりますが、日本のメディアではほとんど報じられておりません。むしろアメリカの反差別をほめそやす発言がリベラル陣営から聞こえますが、おめーら辺野古や高江の問題の解決が遠のいた現実をどーすんだよ。こういう似非リベラルどもは信用できません。

てなことはともかく、南北戦争の南軍の将軍像の撤去を巡る争いで、南北戦争自体は奴隷制度の是非を巡る紛争だったわけですが、単純に奴隷解放の正義の戦いという見方は、結局それで人種差別自体が消滅したような錯覚をもたらすものです。事実はその後も人種差別は社会に根付き、流血を伴う事件は発生しております。それだけアメリカの歴史に暗い影を落とす出来事だったわけで、単純化した理解は禁物です。

背景として当時の南部は産業革命で蒸気動力の紡績業で経済成長の只中にあったイギリスへ原材料となる綿花を供給する綿花栽培が主要産業であり、競争力維持のためには格安な奴隷労働力の存在は不可欠でした。加えて輸出を通じた外需遺贈の産業構造だったこともあり、自由貿易主義の立場でした。

一方の北部は米英戦争の影響でイギリスからの工業製品の輸入が細ったために、輸入代替工業が勃興したのですが、封建領主のエンクロージャーで土地付きの農奴が追放されて都市貧困層を形成していたイギリスと異なり、工業生産を支える労働者の確保に苦しんでいました。それ故南部の奴隷を解放 して北部の工業化を担わせることを望んでいましたし、輸入代替工業ですから、日本の戦前の殖産興業や戦後復興のように保護主義的な立場でした。

今流に翻訳すれば奴隷労働前提のグローバリゼーションと工業化のための保護主義の間の紛争だったわけです。仮に南軍が勝利していたら、アメリカは未だに新興国に留まってたかも。工業化の新興国への拡散を伴う現代のグローバリゼーションでは新興国の輸入代替のための工業化であっても、保護主義は許されないとされるので、ある意味昔より過酷な状況とも言えます。そんな中でバノン氏のような立場を表明する人が出るのも当然かもしれません。

更に言えばナポレオン戦争で財政を疲弊させたフランスからルイジアナ植民地を譲り受け、メキシコから独立したテキサスとカリフォルニアの編入もあり、特にカリフォルニアが北部諸州に倣って非奴隷州となったことで力関係が崩れ、南北戦争に至ります。思えばルイ15世に仕えた史上初のリフレ派ジョン・ローの失敗の後始末としてのフランス革命の帰結でもあったわけです。クロダ異次元緩和は世界史に何を残す?

この辺の歴史の綾の微妙さは味わい深いんですが、そもそもイギリスの産業革命が単純な技術革新ではなく、前述のように封建領主の農地囲い込み(エンクロージャー)による生産手段の独占が起こり、それによって蓄財した王侯貴族が最初の資本家層を形成する一方、英東インド会社が輸入するインドの物産の消費が盛んになり、対インドで貿易赤字を拡大します。茶葉やキャラコなどのインドの薄物綿織物の輸入拡大があり、特に後者は欧州や奴隷貿易の供給元である西アフリカ地域の支配層にも支持されたこともあり、輸入代替できればイギリスの慢性的な貿易赤字の解消になるわけですが、そこへワットの蒸気機関の改良があり、国内産の石炭を使って安定した動力を得られるようになり、機械紡績での綿織物生産が始まります。

その原材料である綿花の供給元はアメリカ南部で、綿花の輸入代金は奴隷貿易で取り戻すという形でバランスされました。イギリスが産業革命で先行した事情はこうしてエンクロージャーによる資本蓄積と農奴追放による都市貧困層の出現によって労働者予備軍となり、投資先としての機械工業の出現につながるわけです。単純な技術革新ではない社会経済現象だったわけです。そうして繁栄を貪るイギリスを後追いしたい北部諸州にとっては打破したい現実でもあったわけです。

ちなみに当時の中国は清王朝の時代で、イギリスへは茶葉、陶磁器、絹織物などの輸出が盛んで、やはりイギリスの貿易赤字が常態化しておりました。それを解消すべくイギリスが清に持ち込んだのがインド産のアヘンでして以下略。1854年の黒船来航、総領事ハリスと徳川幕府の勘で交わした日米修好通商条約締結が1856年ですが、ハリスはイギリスのアヘン戦争を批判しながらアメリカとの条約締結を迫ったのですが、これがとんでもない不平等条約だったわけですね。

こんな状況の中で1861年に南北戦争が始まり1865年に北軍勝利で終結し、奴隷解放に至りますが、両軍で50万人近くの戦死者を出しながら、南部諸州では人種差別を合法化する州法を成立させたり有名なKKKなどの白人至上主義団体が活発に活動するなど社会的亀裂を深めます。そんな状況でイギリスなどに伍して日本の明治政府にしっかり食い込んだ底力は大したもんです。

このように国を二分する内戦は日本で言えば1868年―1859年の戊辰戦争ですかね。鳥羽伏見に始まり官軍が幕府軍を掃討した戦いですが、その後の薩長閥による政治支配は続き、ある意味安倍政権もその末裔でしょう。西南戦争は新政府内部の抗争による内乱と言うべきでしょう。こうして南北戦争と比べてみると明治維新の過剰評価は要注意ですね。

あと欧米と比べて日本の工業化は、ちょっと遅かっただけでそれほどの差はないことも意外な感じです。エンクロージャーと自由貿易が産業革命へ導いたイギリス、奴隷解放と保護貿易で後を追ったアメリカ、王政復古を旗印とした宮廷革命の日本と、それぞれの歴史の違いが面白いですが、後の時代への影響もそれぞれで複雑です。

そんな日本の高速鉄道がイギリスとアメリカへ売り込みがかけられているってのは面白いところ。イギリスはCTRL-HighSpeed1のClass395ジャベリンと都市間高速列車Class800ヴァージンあづまが日立製車両で営業してますが、更にJR東日本が英ミッドランド鉄道の営業権を取得したのは既報の通りですが、更にロンドン―エジンバラ間のHighSpeed2と呼ばれる最高速400km/hの高速鉄道新線計画があり、ひょっとするとJR東日本は参入を狙っているかもしれませんね。実際傘下の鉄道コンサルタント会社は関わってます。ただし事業費が膨らんで200㎞弱の新線に15兆円ということで、財政負担の面でスムーズにはいかないかも。

一方JR東海はテキサス高速鉄道に新幹線方式の高速新線計画を売り込んでおり、実現可能性ありと言われておりますが、度々指摘してますが、既存の鉄道インフラと断絶した独自規格の事業はハードルが高いところです。ただしこちらは一応純民間事業ということで、財政面の問題よりも資金集めがうまくいくのかというハードルがあります。自動車社会のアメリカで鉄道建設への理解が得られるかどうか。

てなわけで、歴史的に関わりの深い英米日ですが、高速鉄道を巡る意外な接点がいかなる未来を築くのでしょうか。いずれの国も工業国としては成熟段階にあり、高速鉄道の需要誘発効果に頼るのも難しいですが、JR東日本も東海も世界へ出ることで成長を模索しています。

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Sunday, August 20, 2017

宴の終わり

バージニア州シャーロッツビルのの白人至上主義者の集会でカウンターとの衝突が起きてカウンター側の女性1人が死亡したニュースを巡るトランプ大統領の発言で大炎上。遂にバノン上級顧問の退任に追い込まれました。ま、元々クシュナー氏などとの確執が言われていましたから、意外感はありません。保守分裂がトランプ大統領誕生の原動力であり、アメリカが覇権国家を降りる地政学的変化の具現化であることに変わりはありません。本人の意図は知らんけど。

大統領選当時からポリコレ疲れなど、日本の一部の人たちが喧伝してましたが、彼らは多民族の移民国家であり、イギリスの多文化主義も継承しているアメリカを理解しておらず、元々多様化レベルが日本の比じゃないわけで、ダイバーシティの深度が高い社会です。その中での現実的な知恵としてポリティカルコネクトネスが言われるようになり、差別発言は社会的に圧迫される状況は元々ありました。

またデジタル経済で前エントリーで指摘した人の能力が生産手段(主流派経済学では資本と呼ぶ)となって高額報酬で獲得合戦が激化している状況で、アメリカの白人男性だけでは優秀な頭脳を確保できない現実もあります。人種差別なんかしてた日にゃ競争力を維持できない企業の現実があるわけです。人口規模がアメリカの4倍もある中国の存在も圧力となります。その中国の1/10の人口規模の日本では俗にIT土方と言われるデジタル人材の多重下請け構造でスキルを腐らせてます。あーしょーもなー。

でまあ同じく前エントリーで指摘した米朝関係の緊迫も、予想通りアメリカが折れて収束しました。それでも圧力外交は手放さず、中国企業への圧力や米韓合同軍事演習は続けます。元々今回はトランプ大統領のツイートが始まりだったわけですが、金正恩氏の胆力が勝ったってことですね。アメリカは核開発、ミサイル開発の凍結を直接交渉の条件から事実上外したわけです。

にも拘らず紛争当事国でない日本の対応は明らかに緊張を煽るものです。いくら森加計問題で支持率を下げているとはいえ、ひどすぎます。北朝鮮の問題を複雑にしているのは、アメリカが紛争当事国であることです。北朝鮮の南進を阻止すべく国連軍を組成して対応した結果です。今と違って常任理事国の中国は台湾の中華民国でしたし、ソビエトは棄権に回ったので国連軍の組成が実現したんですが、PKF同様参加国は交戦権を国連に預け、国連はアメリカに委託したわけで、朝鮮戦争が休戦中であるために、この構図が残ってしまったわけです。ですから韓国国内では、自国の頭越しにアメリカが軍事オプションを行使することに根強い反対論もあり、米韓が一枚岩になれない状況があります。軍事オプションは最初から無理なんです。

米朝緊迫で有事の円買いが起こり、円高株安に振れたのはある意味アベノミクスへの巨大ブーメランです。元々経常黒字が累積350兆円にも及ぶ日本ですから、それだけ国内貯蓄が国内投資で消化しきれず海外へ流出していたわけです。具体的には企業による海外M&Aや製造拠点整備などの直接投資に加えて、投資家による外国の金融資産への投資が増えていたわけですから、特に後者は有事に日本へ還流して為替を円高方向へ動かすわけで、所謂リスクオフと呼ばれる現象ですが、今回それに留まらない原因が退任した日銀審議委員から指摘されてます。

北朝鮮問題で浮かぶ 金利操作の矛盾  :日本経済新聞
これ日銀がイールドカーブコントロールと呼ぶ長期金利をゼロ近辺にピン留めする政策の副作用の指摘です。米FRBや欧州ECBは長期金利自体は市場に任せているので、危機で長期金利が低下し、連動するローン金利の低下で景気を下支えするわけですが、日本ではそのメカニズムが働かないから、危機による経済の萎縮がより強く現れます。加えて内外金利差で円買いが強まりますから、輪をかけて円高が進むわけです。ホントつける薬ないなあ。

安倍政権の失敗はまだまだあります。例えば高度プロフェッショナル制度の導入を長時間労働の解消をネタに連合を切り崩そうとしたこと。同時に民進党の支持基盤の切り崩しを狙ったんでしょうけど、事態は逆方向へ進んでいます。蓮舫代表の辞任の伴う民進党代表選で前原氏と枝野氏が立候補を表明してますが、手を突っ込まれた連合が高プロ制度反対に回り、民進党に反対するよう要請したわけですが、その流れで連合は前原氏支持を鮮明にしています。

安倍政権にとっては、旧民主党時代から党中枢にいて党勢弱体化にコミットしてきた枝野氏の方が与しやすい一方、前原氏は脱組合その他の過去の態度を見直す姿勢を見せており、特に自由党の小沢氏との和解は大きいと言えます。小沢氏は社民党や共産党との野党共闘に前向きで、ウイングを広げた所謂オリーブの樹構想の実現可能性が高まります。一方枝野氏はあくまでも選挙区ごとの選挙協力レベルでの野党共闘ですから、安倍政権にとってどちらが嫌かは明らかですね。国会議員票が前原氏優勢なのはそういうことですが、連合の支持となれば党員サポーター票も見込めます。ある意味余計なことをして寝た子を起こしちゃったわけです。

もう少し続けますが、日銀が異次元緩和で2%の物価上昇目標がいつまで経っても達成できない中で、自信満々だった黒田総裁は、物価目標の達成と引き換えに消費税増税を含む財政再建を政府に迫るつもりだったようですが、目標未達で政府に頭が上がらない一方、目標未達で緩和が続く状況は、財政赤字を垂れ流す政府にとっては居心地が良いわけで、事実上レームダック化した黒田総裁の再任は本人が間違いなく固辞します。後任選びはとっ散らかった金融政策の正常化という難題を押し付けられるわけですから難航必至です。

そんな中でECBのドラギ総裁が日銀に注目しているとか。例のマイナス金利イールドカーブコントロール導入時に、政策目標を量から金利にシフトして目先を変えた結果、国債買い入れ高を実質的に減らしたわけで、それがECBがこれから取り組もうとしてる金融政策正常化のための量的緩和縮小を先取りしているということらしいです。実は日銀は出口に向かっている?

一方で日銀によるETF購入は問題を抱えています。年間6億という規模から、特にETF組み込みの多い値嵩株で日銀の保有比率が高まって、筆頭株主は日銀という状態になるなど歪みを生んでいます。その結果実質的な流動株比率が上場基準に抵触の恐れが出てきています。一応投信で流動株にカウントされるとはいえ、余剰資金で自社株買いをして株主還元っがやりにくくなっており、実際上場企業の自社株買いは減っています。株価の上昇で企業が自社株を割安と評価できないという面もありますが、企業行動を制約していることは間違いありません。

加えていずれ期限が来て償還される債券と違って、株式はいずれ売らなくちゃならないことも問題です。日銀がこれだけ高いポジションを取ると、売るときに株価を押し下げてしまうということがありますから、市場を混乱させますし、日銀自身も残存持ち高の評価損になります。資本勘定としてその分の引当金を計上するか、資本金を取り崩すしかありませんが、金利上昇による国債の値下がりにも備えなければなりませんkら、下手すれば債務超過の危険性もあります。発券銀行だから破綻はないと言うなかれ、結局国庫補填となれば国民の税金が使われます。そこまでしても上がらない物価にもう一つハードルが。

物価抑える格安スマホ 一家に複数台、影響大きく  :日本経済新聞

消費がさえないから物価が上がらない。消費がさえないのは携帯キャリアの通信料金が高いからだとばかりに政府が介入して通信料金が下がったら、消費者は2台目3台目の購入に動いたって話ですが、価格が下がって消費者余剰が拡大したら需要が増えたってミクロ経済学の教科書通りのことが起きちゃったわけです。加えて家計の通信費支出の比率が高まってインフレ率を押し下げてしまうわけで、思いつきでインフレ目標をブロックしたわけです。経済優先が呆れます。こんなんもあります。
(真相深層)日本、牛肉買い負け懸念 輸入制限、時代に合った戦略か 発動の裏に米中対話 :日本経済新聞
ちょっとややこしいんだけど、そもそもは米中首脳会談で習近平が約束した貿易不均衡是正策として、BSE問題で禁止されていた米国産牛肉の輸入再開を発表したところ、米国産牛肉の値上がりを予想した日本の牛丼チェーンなどの外食企業が保存の効く米国産冷凍牛肉を大量買い付けし、更に干ばつで値上がりした豪州産牛肉の需要シフトもあって輸入枠を突破したということで、日本政府は緊急セーフガードを発動したわけです。

形式上ルールに則ってはいますが、元々WTOルールの趣旨として、急な輸入増で打撃を受ける国内産業の緊急保護策なんですが、今回は国内飲食チェーンの行動がトリガーになったもので、国内畜産業の保護には全く無関係です。麻生財務相曰く「EPA締結済みのオーストラリアには発動されない。アメリカもTPPに復帰すれば対象外になる」ということで、TPP離脱を決めたアメリカへの当てつけでしかないわけです。高関税が課されれば、先買いに走った国内飲食チェーンもいずれ値上りの影響を被るわけで、誰も得しない愚策です。

そんなこんなですが、よく考えれば政府が国民のために働いたことってあるだろうかと^_^;。破たんしたエルピーダメモリ―や経営悪化したジャパンディスプレイへの出資しかり、原発輸出推進で東芝にWHを買わせたことしかり。逆に政府が手を出さなかったシャープは鴻海傘下でV字回復と、十指に余る愚策の数々。おそらく2020年のオリパラも先行き不透明です。オリパラ関連では小池都知事の豹変ぶり。結局築地は更地豊洲は民間払い下げが本音だったわけです。こうなると無理を重ねた都市計画の進捗に誰も責任を取らないと。インパール作戦もかくやという無責任のツケは下っ端の兵士(ここでは仲卸)に払わせる。環状2号線を走る国産FCV連接バスは夢と消えるかも。

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Sunday, August 13, 2017

1億総社畜化社会

米朝間で子供の喧嘩みたいな罵り合いが展開されており、市場はリスクオフに振れて株価を下げたりしてますが、こういう時は落ち着きましょう。そもそもホワイトハウスの行政官ポストを埋め切れず身動きが取れていないトランプ政権に戦争準備ができているわけないですし、北朝鮮にしても核実験由来の放射性物質は1回目以外検出されていませんし、ICBM実験も高高度で発射して飛距離のポテンシャルを示してはいるものの、難しい大気圏再突入性能は検証されておりません。もちろんだからと言って核やミサイルの開発が進んでいないとまでは言えませんが、騒ぎ過ぎです。

てなことは置いといて、1年前のエントリーで取り上げた社畜ネタです。今年は例年にも増して高速道路の渋滞が酷いですが、お盆に一斉に実家へ帰るからこうなるんで、時期をずらすとか考えないと、3年後は丁度オリンピック期間とバッティングしますからどうなることやら。猛暑による熱中症問題がやっと認識され始めましたが、新国立競技場をはじめとする関連工事も人手不足出遅れが心配されてますし、その新国立競技場の工事作業員の過労自殺が報じられるなど、本当に大丈夫かいと心配になります。

ロングバケーション当たり前の欧州では、企業が従業員に有給休暇取得時期を割り振って分散しながら長い休暇を楽しむのに、短い盆休みを一斉に取って大移動する日本のビジネスマンの働き方の異常さが世界へ発信されるおぞましい2020年になりそうです。その働き方改革を巡って混乱もあります。

連合、「脱時間給」容認を撤回 政労使合意は見送り  :日本経済新聞
日経の記事は問題だらけなんですが、連合の逢見事務局長が独断で政権とやり取りして進めていた話で、神津会長は長時間労働の歯止めが認められるならば、政労使協議に応じても良いとしたものの、あくまでも年収1,075万円以上の特定職種を対象とした高度プロフェッショナル制度の話であって、脱時間給は関係ありません。

そもそも裁量労働制も成果主義賃金も現行法で違法ではないんですが、要件として募集や採用の時点で説明がされ雇用契約書にも明記されている必要がありますし、そもそもこのような雇用形態は労使間で合意が必要なんですが、御用組合をでっち上げて協定書の書面を作っても、未払い残業代請求訴訟では実体のない名ばかり組合では労働者の代表と認められず会社側が敗訴する事例が重なり、経済界から要件緩和の要求が出ていたもので、労働側から見れば当然認められません。

あと限定職種の高度プロフェッショナルにしても、高給取りで直接雇用が難しいんですから、むしろアウトソースして相対取引で条件を決めれば良いんで、労基法に盛り込む積極的な意味はありません。当然の如く連合の傘下組合から反対の声が上がって連合は撤回に追い込まれ、次期会長含みだった逢見事務局長を副会長に棚上げして神津氏の会長留任を決めて収めたって話です。早い話企業は残業代を払いたくないってのが本音です。

2020年のオリンピックと盆帰省のバッティング問題でも指摘しましたが、欧州企業では仕事の繁閑を有給休暇の分散取得消化で対応しており、そのため使用者側に有給休暇の完全消化の義務と共に取得時期調整の権利が与えられています。国によっては年度初めに従業員の有給休暇取得計画書を当局に提出する義務まで負わせているわけで、残業で繁閑調整をしている日本とは根本の考え方が違います。結局残業が日常化して長時間労働が当たり前になり、過労自殺も後を絶たないし、長時間労働で作業効率も落ちるから労働生産性が高まらず、利益率が低くなるという悪循環です。解決策は簡単で、最繁忙期に合わせて増員して有給休暇を分散取得させることです。

あと人手不足でAIへの期待が高まっておりますが、AIに限らず機械による労働の代替自体は昔から繰り返されてきたこととはいえ、単純な代替を考えているならお門違いです。AIは人間になれませんし、むしろAIが能力を発揮するための仕事の手順や環境を人が整えてやらなければならないですから、AIで人手不足解消は不可能です。これオフィスオートメーションが言われ始めた時代やコンビニのPOSシステム導入のときも言われたんですが、システムの導入に伴って業務の見直しがちゃんとできて初めて、少ない人数で多くの産出高を稼ぐことで労働生産性が向上するんで、その分を賃金に反映させて家計の購買力を底上げして初めて、経済成長につながるんですが、現実はどうも違う方向へ進みそうです。

実はこれを端的に説明するツールはマルクスが提供しておりまして、G--W--G'で表しております。Gは資本、Wは商品を意味します。ここで言う資本はぶっちゃけお金のことで、生産手段としての工場や機械に投資して、従業員を集め原材料を仕入れて生産した商品を市場へ投入して代金G'を得ることになります。このときにG<G'となるように仕組みを整えるわけです。工業化で工業製品が大量に生産され市場投入される産業資本主義過程はこれが繰り返されるわけです。

しかし大量の工業製品が市場へ投入され続けた結果、工業製品の価格は低下しますし、またスマートフォンのような汎用多機能デバイスの登場でむしろ集約が進む結果、G<G'の関係の維持が難しくなります。一方PCやスマホのような汎用デバイスはソフトウエアのバージョンアップで機能強化が進み、思いがけない用途が開発されていきますから、開発に携わるプログラマーやSEなどのIT人材が重要な生産手段となり、その調達囲い込みのために高額報酬が約束されるようになります。結果的にITデジタル技術を軸とした生産手段の組み換えが起きてデジタルブルジョワジーとデジタルプロレタリアートに分離する現実が出現したわけです。伝統的工業の衰退とIT産業の台頭で米トランプ政権誕生の背景でもあります。

困ったことにあらゆる労働がデジタル技術で代替可能なわけではなく、元々低賃金の単純労働はいつまでも機械化されずに残るどころか、かつてはノウハウの塊だった事務職や販売職も作業内容が単純化されていきますから、低賃金の単純労働はむしろ増えるわけです。つまりマルクスがプロレタリアートと命名した時間の切り売りでしか生活の糧を得る手段を持たない階層が新たに出現したと見れば、世界的にみられる格差拡大が容易ならざる事態であることがわかります。この観点からすれば労基法改正で政府が盛り込もうとする高度プロフェッショナルは保護すべき対象ではないわけです。

さらにもっと困ったことに、高給で優遇される高プロ人材の育成は困難だってこともあります。何となれば人に教える暇があるなら自ら働いて稼いだ方が良いし、人に教えてライバルを増やせば自らの市場価値を下げることになります。加えて技術革新のスピードが速くなってますから、市場価値が落ちたところで教える側に回る頃には次の新技術が出現して手持ちのスキルが陳腐化しているわけですから、教えるニーズもなくなるわけで、ある意味旬の内に稼いでセミリタイアというキャリアプランを取らざるを得なくなります。かくして技術の分断が今以上に深刻になるわけです。

また高額報酬の職業ほど資本代替のニーズが強く、高額の研究開発投資に見合うリターンが期待できますから、いずれ稼げる職業は減っていくというディストピアになりかねません。自分で自分の首を絞めることになるわけです。高プロじゃないですが、例えばかつて高給取りだったバスドライバーやトラックドライバーの賃金低下も、運送業の参入規制撤廃で進んだわけですし、タクシーに対するウーバーなどのライドシェアの挑戦も同様の文脈で理解できます。規制緩和は善として拙速に認めるのは問題です。

その先の自動運転も、当面は地域限定の交通システムとしての実現を目指すのが妥当です。トラックドライバー不足を自動運転で凌ぐのも問題です。荷物の積み降ろしや検収、場合によっては代金決済もあるわけで、その部分は自動化できないので、結局ドライバーに運転させる方が労働生産性を高めることになります。寧ろ鉄道や船舶との連携による複合一貫輸送のシステムを構築することが大事です。この辺の誤解はかなり根深いですね。

その鉄道も自動運転車の実用化で変化を迫られます。ただし道路輸送では実現不可能な大量輸送の能力が結局鉄道のレゾンデートルになるという意味で、地方のローカル線の維持はますます困難になります。また線路保守など労働集約産業の側面は残り、JRでさえ外注化で凌いでいる状況ですが、その結果日常の列車運行に支障が出るほど保守レベルが荒廃したJR北海道の問題など、解決すべき問題があります。そんな中で取り上げたいのがこれ。

JR東など、英鉄道運営を落札 12月から運行  :日本経済新聞
英国鉄道のオープンアクセス制にフランチャイズ(運行会社)として参入するというもので、遅延の多いミッドランド鉄道の定時運行率の向上をアピールして落札したということで、結構ハードルは高いと思いますが、例えばJR北海道の問題の解決策として、線路保有の国策会社を設立してフランチャイズを募集するといった事態も考えられますから、国内の鉄道事業へのフィードバックも期待できます。この辺新幹線システムの一括受注しか念頭にないJR東海の連戦連敗に対して、確実に経験値を高めるJR東日本の行き方は賢明です。

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