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December 2017

Sunday, December 31, 2017

台車枠の亀裂

今年もあとわずかですが、このニュースはやはり取り上げるべきだろうと思いまして、こんなタイミングでのアップとなります。

亀裂、あと3センチで破断 新幹線のぞみ台車  :日本経済新聞
「あと3センチで断裂」というきわどい重大インシデントとなりました。最初に疑問に思ったのが、異音を確認しながら3時間も運行を続けたことで、実際JR西日本は非難を浴びましたが、その後岡山から添乗したJR西日本社員が東京指令所の司令員に新大阪駅での床下点検を提案したものの、司令員が上司の指示を受けたていたために聞き逃し、運行を継続した経緯が明らかになります。結構ありふれたヒューマンエラーがあったわけです。

とはいえ司令員の責任を問うのは難しいところで、そもそも頑丈に作られていて入念な点検を受けている台車に亀裂が見つからなかったから出庫して運用されたわけで、目視が困難な程度の亀裂で直ちにに断裂することがないように安全マージンを大きくとっています。点検時点で見つからなかった瑕が台車枠の断裂に至るようなことは想像すらできなかったはずです。現時点で原因は不明ですが、専門家の見方はこれです。

新幹線の「亀裂」はなぜ発見できなかったのか | 新幹線 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
記事の著者の見立てでは、側バリの軸箱近傍の溶接部付近で起きた典型的な疲労破壊ということで、突然発生したものではなく、長時間に亀裂が伸長したものということです。ということで、現時点でも入念に行われている検査体制で発見できなかったわけですから、検査体制の見直しは避けられません。

既にJR東海は従来台車枠では行っていなかった超音波探傷(非破壊検査)を検討すると発表しました。わずかの傷でも重大事故につながる車軸では行われていたものの、台車枠ではそこまでは必要ないということで、通常は目視検査で済ませていたようです。それでこれまで特段のトラブルはなかったわけで、このこと自体は問題ではないんですが、逆にめったに見られない台車枠の亀裂を見る機会そのものが少ないと、特に若い検査員は育たないというジレンマもあります。

この辺日産の完成検査問題で若手の見習い工にわざと不具合を仕込んだ個体を検査させて発見できれば一人統制前といった現場ルールを思い起こさせますが、上記記事で「航空機は故障率が高いので、ダイヤ統制部門は整備士の意見を最重視する」そうですが、元々過大な安全マージンを取っている鉄道の場合、指令員の判断も運行継続に傾きやすいということもあるでしょう。加えて岡山で添乗したJR西日本社員と東京指令所のJR東海の指令員という会社跨りの問題もあるわけで、実際新大阪で引継ぎを受けて添乗したJR東海社員の判断で名古屋で運行を打ち切ったわけで、流れでJR西日本の不始末のように見えてしまったということも指摘すべきでしょう。

似たような問題は東急田園都市線で東武鉄道の車両トラブルで架線事故が発生したってのもありました。こちらは新幹線のように車両の仕様が統一されているわけではありませんから、より問題が複雑です。

加えてもっと気になるのが上記記事でも指摘されている溶接後の熱処理が適切に行われているのかという問題と、記事ではあえて触れられておりませんが、神戸製鋼の品質データ改ざん問題で明るみに出た鋼材の品質問題の可能性も視野に入れておく必要があります。特に両者の合わせ技で、あるはずの過大な安全マージンがほとんどなかったってこともあり得ます。実際台車枠に亀裂が絡むこんな事故がありました。

東武東上線「脱線事故」は、なぜ起きたのか | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
東武東上線中板橋付近での脱線事故で、30年選手の10000系初期車の事故ですが、台車の亀裂が確認されてます。尤もこの事故では亀裂が事故原因なのか脱線の結果台車に亀裂が生じたのかは不明ですが、鉄道特有の過大な安全マージンが、検査の形骸化を生んでいた可能性もあるわけで、今回の新幹線事故との比較は必要でしょう。

また神戸製鋼の品質データ改ざん問題に代表される素材メーカーの不祥事も、商慣習として定着しJIS法でも認められている特採が言い訳に使われたように、要求品質自体が安全マージンを過大に見積もっていた可能性もあります。ってことで、台車枠の鋼材で勝手特採やられて且つ溶接後の熱処理が不適切だと、結果的に要求性能は大幅に低下します。何が言いたいかというと、川下の素材メーカーから中間の加工メーカーを経て組み立てメーカーへ納入される一連の中で、各社が独自にコスト削減には減むと会社単位での部分最適が追及されて全体最適を失う合成の誤謬が発生する可能性を否定できないってことです。

これユーザーである鉄道事業者自身も技術革新と品質の向上で検査周期の延長を当局に求めているわけですが、川下側の劣化を見過ごして延長が認可されれば、日本の鉄道が自慢とする安全が砂上の楼閣になる危険性があるわけです。この辺自動車の完成検査問題もそうですけど、規制当局である国土交通省がそこまで目利きできるのかということでもあります。規制改革の難しさは実に奥深いところです。

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Sunday, December 24, 2017

名古屋リニヤ談合だがや

リニア回りが騒がしくなっております。

名古屋市内の工事で不正か リニア建設入札で大林組  :日本経済新聞
この時点では偽計業務妨害容疑でしたが、東京地検特捜部が動いてるんですから、それで終わるはずは無いです。案の定これ。
独禁法違反容疑で大手ゼネコン4社捜索へ リニア工事  :日本経済新聞
てことで本丸は独禁法違反ですが、リニアがJR東海の民間事業だから、入り口として技研業務妨害を利用したわけです。JR東海社員による予定価格漏洩もあるので、構図としてはかつての官製談合と同じです。

若干のおさらいですが、リニア建設は当面名古屋までで、当初5.1兆円の事業費を見込んでいました。これ新幹線買い取り代金のJR東海負担分の5.1兆円と同額で、しかも元利均等半年賦の支払いで2017年に終了します。つまりその分以後の会計年度でキャッシュフローの余剰が出るので、それを建設資金に充てるって構図が見えてきます。実際は駅設置費用を自治体負担から自己負担に付け替えたりして事業費を5.3兆円に膨らませてます。

メディアやネットでは3兆円、9兆円や、中には30兆円なんて数字まで踊って混乱が見られますが、事実に基づいて見ると、まず9兆円は2047年に予定される大阪延伸を含む事業費9.1兆円を指すものです。そして近畿選出の国会議員からの要望があって、大阪延伸を前倒しする目的で、財政投融資資金から3兆円を融資してJR東海の資金繰りを支援するという話になり、JR東海は既に融資申請を済ませておりますが、大阪延伸部分の着工前倒しが実現したわけではありません。当面は名古屋までの建設工事を本格化させることに集中する予定です。

これが実は今回JR東海の躓きの石になった可能性があります。財投資金の投入自体は融資ですが、政府保証付きの財投債を起債して投資家から集めた資金を融資に回す形で、政府保証がついてますから、万が一のデフォルトの際には政府財政負担で投資家へ弁済される形で、間接的ながら財政負担の可能性があり、公的資金と言えるものです。故に民間企業としてのJR東海が事業主体なんですから、随意契約で建設業者を決めても良かったところを、競争入札で形式を整える必要があったと考えられます。

一方で建設業界は空前の人手不足で、震災復興も道半ばなのに五輪特需で人手を取られ、そればかりかセメントや鋼材の値上がりもあり、ゼネコンの収益を圧迫しています。鋼材に関しては中国の過剰生産対策で生産が減ったことに加え、異次元緩和に伴う円安で円建て資源価格の上昇もあり、それらが重くのしかかります。そうすると、上述のような新幹線買い取りローンの終了に伴うキャッシュフローの余剰の範囲でのリニア建設が難しくなるわけで、財投資金融資はその意味で渡りに船だったんでしょうけど、同時にタイトな資金計画を変更することは難しく、JR東海自身が事業費圧縮の音頭を取らざるを得ない中での今回の談合と見ると、よりクリアな構図が見えてきます。

あと言われているのがJR東海名誉会長の葛西敬之氏と安倍首相との親密さでして、モリカケスパコンに続くアベ友大疑獄事件の本命という見方もされていて、東京地検特捜部の標的は政治家とも見られております。そして仮にリニア建設費が膨張しても政府が面倒見るはずだから、最大30兆円の国民負担って憶測も出てくるわけです。事実に基づけばそこまでの構図を現時点で論じるのは無理があります。

寧ろ良かれと思って財投資金融資の助け舟を出したことが災いしたとすると、何とも皮肉ですが、実はこれアベノミクス全般に見られる不整合なんですよね。そもそも各種経済指標は景気拡大を示唆しており、金融緩和も財政出動も必要なのか?という疑問のあるところ。ただでさえ震災復興需要と五輪特需がある中で、人手不足は起きるべくして起きたものです。実際失業率は過去最低、有効求人倍率は上昇の一途です。財政出動による景気刺激はあくまでも失業対策として余剰労働力を吸収するから意味があるわけで、現在の雇用情勢での財政出動は単に人手不足を深刻化させる意味しかないわけです。有体に言えばアベノミクスは逆効果なんです。

そして中央リニア建設計画はまんまとその罠に嵌まったわけです。というわけで、アホとしか言いようがない。おまけですが、名古屋、大林組、談合の三題噺として地下鉄談合の過去エントリーを置いときます。

おまけのおまけ。リニアの工事に関してはJR東海の秘密主義がいろいろ摩擦を生んでます。大きなところでは南アルプストンネル工事に伴う水脈断裂を静岡県が心配しているのに、駅ができない静岡県は自治体協議に加われないとか、大深度地下や長大トンネルから発生する大量の残土の処理が不透明とか、東農地区あるウラン鉱脈との近接工事で万が一放射性残土が出れば工事自体が止まるに留まらず周辺の土地封鎖まであり得ますが、JR東海の秘密主義は問題の発覚を遅らせて被害を生じる可能性があるとかですが、こういう憶測を生むのはJR東海の秘密主義匂うところが大きいわけで、そんな片りんを見せたニュースがこれ。

斜面崩壊はリニア関連工事が原因、発破で地山緩む  :日本経済新聞
無理を重ねていることが窺われます。

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