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Monday, February 12, 2018

バスは毎日やって来る?

久々の更新ですが、若干の前フリ。

韓国大統領、安倍首相に不快感 五輪後の米韓演習要請  :日本経済新聞
幹部の粛清で既存の対話チャンネルが悉く潰された金正恩政権に対して確実な対話チャンネルを開いた文在寅大統領に対して軍事圧力強化を迫って内政干渉とたしなめられる安倍首相、みっともねー。

さて本題。そんな国際情勢とは無関係に路線バスの新規参入を巡る紛争が岡山で勃発しました。元々岡山はバス事業者が多数併存していて、紛争が絶えない印象があります。岡山空港連絡バスを巡る中鉄バス(中鉄)と岡山電気軌道(岡電)、下津井電鉄(下電)との対立や、県、市、後楽園、市民団体が絡む後楽園バスへの宇野自動車の参入を巡るモヤモヤとかですが、今回の震源地は岡山市内でタクシー事業を営み、小型循環バス「めぐりん」でバス事業に参入した八晃運輸の新路線の申請が両備グループ(両備G)の中核エリアへ伸びたことです。両備Gはこう対応しました。

両備グループ、不採算31路線で廃止届 バス主力路線の他社参入に反発  :日本経済新聞
一部メディアでは「規制緩和に反発」との見出しを打ちましたが、本質は違います。これ典型的なクリームスキミング(いいとこ取り)ですね。元々両備Gのルーツである西大寺鉄道以来のエリアであり、鉄道事業者並みにエリアに開発投資をして地域作りをしてきたエリアです。

西大寺鉄道は後楽園―西大寺間を結ぶ3ft(914㎜)特殊狭軌線の非電化鉄道でしたが、都市近郊路線であると同時に西大寺会陽(裸祭り)輸送で高収益でした。それが国鉄の新線建設で存続を否定され、しかも戦前に行われた国家買収もなく、無補償での廃業となり、以後国と係争します。この辺は井笠まさかのエントリーもご参照ください。

元々鉄道事業から発展してきた日本の交通事業は、鉄道の国家独占という前提の下で、民間の参入は国鉄の事業計画と競合しないことが求められ、事前審査でそれを確認して免許を交付するもので、且つ国が求めるときには買収に応じなければならない条件が付されてました。当時は鉄道省時代で直営の現業部門を抱えつつ許認可権限も持つ強力な官庁だったわけです。中鉄のルーツである中国鉄道も、津山線、吉備線が戦時買収の対象となった結果、本業を失いバス事業者に転換した歴史があります。それでも買収ですから対価は支払われた訳ですが。

それが戦後GHQの命令で公共企業体として別法人になった国鉄ですが、鉄道の国家独占の権限は維持され、国鉄は国会報告の義務を負うものの、国鉄の意思で事業展開できる環境は維持されました。一方許認可権は現業を失った運輸省に引き継がれますが、国鉄の事業をコントロールする権限は持たず、対象は民間事業者に限られました。この辺の制度のねじれが話をややこしくするんですが、。ざっくり言えば国鉄は勝手に赤穂線を建設したけど並行する民間事業者の面倒は見なくてよいわけで、西大寺鉄道はそんな制度のエアーポケットに嵌まったわけです。

西大寺鉄道は子会社の両備バスを併合してバス事業者として商号を両備バス(両備B)に改めてバス専業事業者となりましたが、国との係争は続きます。結果的に和解はしたものの、国鉄の事業拡大に伴う民間事業者への補償として、鉄道用地の買収を以て補償に変えるという流れができます。例えば湖西線建設で江若鉄道に対してや阿佐線(土佐くろしお鉄道ごめんなはり線として開業)建設で土佐電気鉄道安芸線に対してなどです。

これがバス事業になるとさらにねじれます。国鉄に限らず鉄道開業に伴うバス路線の縮小は普通にあるわけですが、通常は鉄道事業者の直営乃至系列のバスであるケースがほとんどですから問題が表面化することはあまりないんですが、例えば東京都区内で地下鉄は営団、路面電車とバスは都営ということで、路線再編に伴う配置転換が滞ることが、都が地下鉄事業へ進出した理由です。まして国鉄の新線建設に伴う路線バスの再編はほぼ無補償です。そして悩ましい国鉄バスの存在。

一応の線引きとして国鉄バスの事業領域は民業圧迫回避のために国鉄の鉄道網の補完に限定とされ、(1)先行(2)代替(3)短絡(4)培養のいずれかに該当することが条件づけられていました。具体的には(1)は岡多線(愛知県)や坂本線(奈良県)(2)は白棚線(福島県)(3)は松山高知急行線(4)は十和田湖線(青森県)が典型です。

そこへ一石を投じたのが名神高速道路の開業に伴う高速バス事業への国鉄バスの参入方針が示され、それ以前に民間13社の出願で競願状態で収拾がつかない中で火に油。歴史に残る大炎上公聴会の開催に至りました。結局運輸省の調整で民間事業者は日本急行バスと日本高速自動車の合弁2社とローカル便の京阪バスと近江バスの2社に集約した上で国鉄バスの参入も認めました。国鉄バスと民間合弁2社は便数を揃えて競争条件を整えるなどイコールフッテイングに配慮した落としどころとなりましたが、名古屋と大阪のターミナルが別になるなど利用者にはわかりにくい部分が残りました。しかし当時の運輸省は積極的に調整に動いたわけで、こういった歴史を振り返ると、八晃運輸への認可は慎重に進めるべきでしょうけど、中国運輸局の対応はこれです。

岡山市内のバス新路線、競合に認可、両備は反発  :日本経済新聞
少なくとも岡山県、岡山市、八晃運輸、両備Gの意見聴取ぐらいやってから認可するならともかく、両備Gの路線廃止申請があったその日に、申請者の八晃運輸も驚くスピード認可には疑問が残ります。ネットの噂ですが八晃運輸は政治献金に熱心な一方、ただでさえ政治とは距離を置く両備Gのある意味挑戦的な路線廃止申請に運輸局がキレたってことかもしれませんが、この辺の不透明さは是非国会で取り上げていただきたいところです。

でもってネットで見られる規制緩和の議論にも注文つけときます。そもそも論として上述のようにねじれまくってる国の許認可体制の下で、県や市などの自治体は無力だってことが今回のキモでしょう。交通政策基本法が制定され、地域公共交通活性化再生法で自治体が地域交通にコミットできるようになったとはいえ、許認可権限を手放さない国の対応如何で無力化されてしまう状況です。

これが例えば許認可権限の地方への移譲がされていれば、もっとシンプルに地域の交通問題として自治体が関与できたんじゃないかと思います。議論をもう少し拡張すると、例えば公共交通の発達した日本の大都市では難しいライドシェアも、バスドライバー不足で減便が現実化している過疎地の交通政策としてはあり得ます。しかも道路運送法第78条、第79条で自家用自動車の有償運行が一定要件で認められているわけで、日本の現行の法体系で可能なんですが、現状京丹後市に続く事例は出てきておりません。

てなことで、着地点の見えない現状ですが、両備Gの対応へのネットの評価は好意的なものが多いですが、今のままなら両備Bと岡電の最大31路線の廃止はいずれリアルな問題になります。現行法では廃止手続きで6か月間の猶予期間中の自治体との協議が求められますが、賛同が得られなくても廃止できる見切り条項がある以上、自治体の対応は結局補助金や支援策などの条件闘争に留まるわけです。この時点で八晃運輸に路線認可を与えた運輸局を恨んでも遅い訳です。

あと両備Gの立場から見れば、仮に自治体協議が不調で見切り廃止となっても、ドライバー不足で路線維持が難しい状況だけに、結果の路線縮小はむしろ内部補助の縮小で収益性も高める効果もあり、八晃運輸の挑戦も跳ね返せるという見立てが可能です。この辺小嶋会長の企業家の冷徹さはあります。また廃止路線は主に末端区間や他社との競合路線が多いと報じられておりますが、これある意味エリアの選択と集中でもあるわけで、今後人口減少とドライバー不足で困難が予想される地方バス事業者の未来を示唆するものでもあります。有体に言えばユニバーサルサービスからの撤退です。行政もそれを踏まえた地域の開発計画の見直しが必要になるでしょう。あとおまけ。

健康格差を考える(下) 経済格差と連動性強まる  :日本経済新聞
個人の自覚を促す生活習慣の見直しには限界があり、個人の生活習慣は社会環境に依存するってことなんですが、例えば公共空間での禁煙が定着したことで受動吃件が減ったこととか、経済格差で個人の栄養状態に差が出るとか、結構身も蓋もない話ですが、その中で公共交通の発達した大都市圏との比較で1日当たりの歩数が最低の鳥取県では大都市圏より千歩以上少なく、ドアツードアの車社会より徒歩移動を余儀なくされる大都市圏の方が健康寿命を延ばす社会環境があるってことです。もちろん車移動を規制するわけにはいかないでしょうけど、公共交通の整備エリアの明示して住民に選択肢を示すってことは重要じゃないかと思います。

てなわけで最後に大いに歩こうぜ^_^;。

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