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Sunday, August 05, 2018

変節黒田節

黒田如水の話じゃなくて、黒田は黒田でもこっちね。

日銀、金融緩和運用柔軟に 長期金利の変動容認  :日本経済新聞
2%の物価目標を掲げた日銀にとっては事実上の敗北宣言ですが、緩和終結とか出口とかは言えないから、フォワードガイダンスとしての緩和継続にコミットしつつ、副作用に配慮して、長期金利の変動幅の拡大容認とETF購入の見直しに言及したものですが、いかにも苦しい言い訳です。

具体的にはイールドカーブコントロールと称して長短金利差を0%̟±0.1%の誘導目標を変動幅0.2%まで容認することと、従来日経平均連動ETFを主体に実施してきたETF購入も、大手企業の多くで日銀が筆頭株主になるという珍事が起きて、市場の歪みが無視できない状況になってきたことから、購入額を減らした上でTOPIX連動ETFにシフトするって話です。

後者は単なる株価維持策と批判されてましたし、実際国債と違って償還がないからいつかは売らなきゃならない訳で、このままのペースでの購入は無理ってことです。いずれも事前に市場関係者の予想の範囲で、その意味ではサプライズはないんですが、既に緩和縮小から利上げへ向かう米FRBと英BOE、マイナス金利のまま緩和縮小を打ち出した欧州ECBに続いて日銀も政策転換と見られて世界で一斉に金利上昇が見られる状況となりました。

流れとしては短期決戦だった筈の異次元緩和でも物価上昇は見られず、マイナス金利にまで踏み込んでも却って円高になったりと当初の目論見がくじれてきている中で、寧ろ副作用への批判を受けるるばかりで、しかも想定外の長期の緩和で出口が難しくなるということで、日銀事務方で検討が進められ、黒田総裁もその方向へ立ち位置をシフトしたってことのようです。ただし若田部副総裁、原田委員、片岡委員の3人のリフレ派が納得せず、フォワードガイダンスとしての緩和継続を言うことでまとめたってことです。

リフレ派に言わせればまだまだ追加緩和の余地はあるそうですが、その割には具体策の提案はない訳で、ザックリ言えば実務上やむを得ない判断なんだけど、対案も出さない反対派を懐柔するための表現と見るべきでしょう。実際の物価の動きは2014年4月の消費税増税時を除いて顕著な動きはなく、金融政策で物価目標を達成すること自体が無理というのは既に結果が出ているのですが、リフレ派に言わせれば、消費税増税で消費が腰折れしたせいだってことになってます。実際は14年4月前後で駆け込み消費とその反動としての落ち込みは見られますが、均せばフラットなトレンドは変わらず、単に需要を先食いしただけで、増税による消費腰折れは事実に反します。

当ブログでは当初から異次元緩和を批判し続けてきましたが、こうなることは目に見えてたわけで、正直アーアとしか思いません。リフレ派を中心に異次元緩和してもハイパーインフレは起きてないじゃないかと言われますが、長期的にハイパーインフレの可能性はありますが、当ブログで言及してきたのは、異次元緩和にしろマイナス金利にしろ、金融圧迫にしかならないってことを言い続けてきました。実際銀行の利ザヤが圧縮されて地方銀行では赤字決算も散見される状況です。

その一方で金融庁による地方銀行改革の掛け声も空しく、ビジネスモデルの見直しは進みません。その意味でシェアハウス融資で実績を積み上げて地銀の優等生と持て囃されたスルガ銀行が不正融資だったというオチですが、そうでもしないと借り手が見つからない現実があります。

一方で融資先を見つけられずに、新発国債を引き受けて日銀に高値で買ってもらう所謂日銀トレードはメガバンクや信託や証券の牙城で地銀の出る幕無し、イールドカーブコントロールで国債トレードそのものが利ザヤを得られなくなる中、外債投資に手を出したりしてますが、これもFRBの利上げで金利上昇の洗礼を受けて時価下落で損失を計上するような状況です。しかも為替ヘッジ無しのところもあるようで、今後為替が円高に振れれば差損が発生します。ファンダメンタルズを見る限り、インフレ率の差で円高へ触れるのは間違いないところです。

てな具合にハイパーインフレのずっと手前のTころで問題山積でして、今後日本発の金融危機の可能性が高まっているというのが実際のところです。米中貿易戦争の展開如何で日本の金融危機に飛び火することを覚悟しといた方が良いでしょう。五輪の前か後かはわかりませんが。

米中の貿易戦争はアメリカがかなりガチにやってますね。思えば北朝鮮問題も中国の衛星国である北朝鮮を中国から切り離す目的だったとすれば全て解けます。北朝鮮との和平プロセスはベトナムを意識したもので、ベトナムは戦争終結後、中国との対立を経てASEANに加盟し、ドイモイ政策で改革開放を掲げ、今やASEANきっての親米国です。加えて分断国家の韓国が性急な統合を望まず南北の緩い連合というアイデアを出してきたので、これに乗っかったってことですね。南北連合はASEANがお手本になります。政治体制の違いを踏まえて経済交流を深化させることで当面は良しとしており、経済支援で米企業の出番も期待できるってことですね。つまりアメリカにとっては中朝分断がテーマで核問題は脇へってことです。

しかし米朝首脳会談の前後で中朝が急接近したことが誤算だったのでしょう。和解ムードも漂っていた米中摩擦がアメリカの一方的な制裁で急展開したのはそのためでしょう。中国も対抗策を打ち出すものの、米ドル基軸通貨体制の下では資本逃避の心配もあり、いずれ折れるしかないでしょう。その時に習近平指導部が国内世論を納得させられる理屈を編み出せるかは結構微妙です。

ニクソンショックで金の裏付けを失った米ドルがなぜ強いかですが、戦略物資である石油貿易を米ドル建てにすることに成功したことによります。ブレトンウッズ体制下では米ドルのみが兌換券で主要国通貨は米ドルとの固定相場だったわけですが、金融の歴史を紐解くとわかりますが、そもそも金本位制の歴史は意外に浅く、18世紀に英イングランド銀行(BOE)の兌換券発行が始まりです。その前にフランスのルイ15世に仕えた経済顧問ジョン・ローの兌換券がありましたが、不換紙幣発行のよるリフレ政策の失敗でフランス革命を呼び込んだのは有名な話です。リフレ政策は既に歴史上失敗が記録されてるんですね。

で、ジョン・ローはフランスを出国して難を逃れたんですが、一説によればBOEの設立に関わったそうです。つまりフランスでの失敗を踏まえて、中央銀行自身が金を大量保有して貨幣の信用の裏付けとした訳です。これに続いて周辺国も中央銀行制度を導入し、複数の国で金を保有していたわけですから、金本位制採用国同士の取引の円滑化にも寄与し、欧州経済が世界をリードすることになりました。

つまり金本位制は実は中銀の金保有を通じた金価格の安定によって機能したわけで、銀本位制のスペインや中国の没落が新大陸と日本の銀山増産による銀価格下落による経済混乱だったことからすれば、クレバーな方法です。ちなみに黄金の国ジパングと言われた日本が金本位制を導入したのは明治期にイギリスを手本にしたもので、黄金の国が自国資源を活かせなかったほろ苦い歴史です。江戸時代の日本でば米が事実上の信用の源泉でした。

そういう意味でたとえ経済的に強大であっても、アメリカ1国の金本位制は持続可能ではなかった訳ですが、石油取引を米ドル建てにする縛りはある意味石油本位制とも言うべき信用の裏付けになっているわけです。多くの国は石油の輸入の必要から米ドルを外貨準備として保有することになりますし、オイルショックで価格変動のリスクもあるから、多くの国で石油は戦略備蓄されるわけです。

丁度金本位制時代の金の役割を石油が肩代わりした形ですから、ある意味アメリカだけの金本位制よりも安定している訳です。これ石油だから備蓄が可能なんで、天然ガスはLNGにすれば冷却しなきゃならないし、気体のガスでは体積が大き過ぎてやはり保有コストがバカにならない訳で、石油だからこその特性です。この観点から言えば燃料電池を駆動する水素社会はもっと難しい訳ですが。

今のアメリカはそのドルの強みを活かし、敵対国の企業等に米銀取引禁止の制裁を科すことで、事実上国際経済から締め出すことが可能ですし、そもそも銀行の取引記録から不正な取引を炙り出せるという意味もあり、これマカオのバンコデルタアジアの北朝鮮関連資産の凍結で北朝鮮にダメージを与えたことが思い出されます。思えばこれで金正日総書記の信用を失った金正男氏が失脚したんだとすると、金正恩の北朝鮮はアメリカが生み出した鬼子ってことかもしれません。

だから持っていても使えない金食い虫の核兵器よりも、金融制裁の方が相手国に深刻なダメージを与えられるってことを事実を以て体験しているアメリカが、北朝鮮の核問題を脇へやれる理由でもあります。トランプ政権侮るなかれです。

そんな日本の暗い近未来に思いを馳せながらこのニュースです。

次世代新幹線 飛行機の牙城崩せ JR東日本  :日本経済新聞
記事中にもありますが、盛岡以北の整備新幹線区間でのスピードアップが課題ですが、その一方で秋田新幹線の在来線区間の長大トンネルによる短絡が検討されてますし、大宮以南の最高速110km/hを防音壁の改良で130km/hにスピードアップすることは発表済みです。

これJR東日本が自社保有する資産だから、改良投資が可能だし、動産部分は減価償却できるので、スピードアップによる受益を減価償却費で控除することで内部留保できますが、鉄道・運輸機構が保有する整備新幹線区間の追加投資はそうはいきません。特に縦曲線の緩和は路盤を作り直すに等しい費用がかかりますから、何らかの国の支援策無しには不可能でしょう。まして140㎢/h制限の青函トンネル貨物供用区間は尚更です。ま、金融危機が起きればそれどころじゃなくなるけど。

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