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October 2018

Sunday, October 28, 2018

傾く台鉄

本題に入る前に、シリアで反政府ゲリラに拘束されていたジャーナリストの安田純平氏が解放され無事帰国しましたが、自己責任を言い立てる書き込みが多いことが信じられません。同胞が無事帰ってきたことを何故喜べないのか?政府の制止を聞かずに渡航したことや、政府に批判的な言動があるとしても、それ思想信条の自由、言論の自由の範囲内だろ。思想信条や言論を理由に助ける助けないという議論自体の選別のヤバさを理解できないでしょうか?

加えてカタール政府が支払ったと報じられた3億円の身請け金を理由に「テロリストに資金が渡った」と沸いてますが、事実そうだとしても、それはカタール政府とテロリストの関係だし、日本政府が単純に肩代わりできるものでもありません。ただしサウジアラビアとの対立で経済制裁を受けているカタールとしては、貴重な外交カードを得たことは間違いない訳で、ODAなどの形で着地点を模索するのは政府間の話し合いになるだけの話。国民としては専門家としての外交官に付託すべき問題で、首突っ込むようなことじゃありません。

一方で「政府は何もしてないのに」という批判が反対陣営から出てますが、仮に事実そうであったとしても、同胞の帰還を喜べないのか?という疑問が拭えません。悪いけど自称リベラルな皆さんも火種を撒いているとしか見えません。同胞の無事を喜びましょう。

で、本題。台湾で大事故が起きました。

台湾で特急脱線、18人死亡 負傷者160人超、日本人の被害なし :日本経済新聞
8両編成の特急プユマ号が脱線し、5両が転覆して死傷者多数となりました。一応日本人の被害は確認されておりませんが、日本人に人気の観光地でもあり、日本人が乗っていても不思議ではありません。

その後の当局の発表が二転三転しました。事故の30分前に運転士から車両の異常が指令に伝えられていたということで、製造メーカーの日本車両製造(日車)株が売られます。この日はNY市場の株安を受けて東証でも値を下げたタイミングですから、事故の影響がどこまでかは定かではありませんが。

その後脱線は速度超過が原因とされ、更に運転士が日本のATSに相当する保安装置のATPを切っていたことも台湾鉄路管理局(台鉄)から発表され、運転ミスということで日車は少し値を戻します。しかしその後対話政府の事故調査チームが運転士のATP解除が指令に報告されていたことが発表され、事故調査チームが台鉄の発表に不信感を明らかにします。加えて気になるこのニュース。

台湾脱線事故 2年で7回 赤字続く公営 安全意識足りず :日本経済新聞
公営で赤字体質の台鉄では、脱線事故が繰り返されていたということです。被害が軽微だったとしてきちんとした事故調査も行われ繰り返さてこなかった上に、赤字体質でメンテナンスが手薄だったことが窺われます。


で、事故を起こしたプユマ号用車両TEMU2000型電車ですが、カーブの多い台鉄向けに車体傾斜システムを採用しました。日本のJR四国8600型やJR東日本のE353系に搭載されているシステムです。台鉄ではプユマ号の前にJR九州885系に似た制御付き振り子車タロコ号TEMU1000型を投入していましたが、プユマ号はその後継です。制御付き振り子はJR四国2000型気動車と8000型電車で採用され、それぞれ後継に8600型電車と2600型気動車が登場して同じ運転時間で運用されてます。JR東日本のE353系もやはり制御付き振り子のE351系を置き換えています。

車体傾斜システムは振り子ではなく枕ばねに使われる空気ばねの空気圧を制御するもので、JR北海道キハ201系で採用され、特急車キハ261系が続きますが、201系では早い段階で車体傾斜制御を「やめ、昨今の事故続きで261系でも使用を止めています。元々制御付き振り子よりも安価なシステムとして「導入されたものの、制御の難しさやメンテナンスの問題から使用を諦めたようです。それだけ難しいシステムだってことです。

JR東日本でもE353系量産先行車を製作して暫く走り込みをしてましたが、車体を傾けるタイミングの最適化のみならず、圧搾空気を消費するシステムなので、過度に使用してコンプレッサー回しっぱなしでも追いつかないこともあり得るわけですから、その辺の見極めもあります。実際JR四国では高徳線に投入した2600型をカーブの多い土讃線への投入を断念してます。そういう意味でユーザーの使いこなしのスキルが求められる車両ということになります。

で、台鉄ですが、お世辞にもスキルが高いと言えなさそうですし、運転士と指令のやり取りから類推すると、おそらく何らかの理由で圧搾空気の消費が激しく、ブレーキ梃子を動かす元空気溜め菅の空気圧が低下して、ブレーキが込め位から緩めに戻らないブレーキ不緩解が起きた可能性は指摘できます。車体制御システムに原因があるかどうかはわかりませんが、ブレーキ込め状態で力行すれば所定の性能は出ない訳で、列車の遅れを気にして何とかしようとした結果のATP解除ではないかと考えられます。通常ならば停止してブレーキテストで異常なしを確認するという手順になると思いますし、乗客の証言として停車駅以外のところで停止した李再度走り出したりということですから、あり得ます。

それでも直らないならその場で停止したまま救援を待つのが正しい対応ですが、運行を続けたままでATP解除が運転士と指令で共有されていたってことは、信じられないほどの安全意識の欠如と言えます。台鉄の組織的な問題もありそうです。

思えば過去エントリーでも指摘しましたが、公社時代の国鉄は運輸省の指導下になかったという恐ろしい状況だったんですね。元々政府直営の現業部門で日本では軍部に次いで強い組織だった鉄道省が戦時の商工省や逓信省との統合の後、戦後現業部門を公社化して日本国有鉄道として、行政事務方が運輸省となった経緯から、公営私営の事業者は免許事業として運輸省の指導を受けていた一方、国鉄は公社化後も国の現業機関時代からの慣習を引き継いで自らの意志で事業を展開できる存在でした。その結果世論の反対を押し切って東海道新幹線を実現できたという面はありますが、行政の適切な指導の外にある状況だったわけです。

台鉄は戦前の台湾総督府鉄道がルーツで、所謂植民地鉄道だったわけですが、戦後中華民国政府に摂取されます。以来台北政府の現業部門として継続してますが、公社化を通して民営化する計画もあり、丁度日本の鉄道省時代に近い統治システムです。故に地形が険しく不便な東部幹線の建設や電化、重軌条化を進めるなど、設備投資も活発ですが、それだけ資産規模の拡大で収益がついてこない。加えて台湾高速鉄道や高速バス、国内線航空との競争にもさらされており、収支が厳しいわけです。

しかし投資に積極的な一方、赤字体質でコスト圧縮も求められるわけですから、現場にかなりストレスがある状況と考えられます。この観点から言えば、日本の国鉄民営化は「一応成功と言えるわけです。JR北海道の問題は、地方の容赦ない過疎化の結果でもあり、事業者としてのJR北海道に責任がある訳ではありません。問題は分割民営化の前提がこれだけ変化しているのに、見直しに動かない政府にあります。

あとおまけ。JR東日本のE351系は中央線高速化プロジェクトを睨んで投入されましたが、振り子車運行を想定していない中央東線で振り子を作動させたときのパンタグラフと架線の偏移の問題があり、台車枠から櫓を立ててパンタグラフを乗せるという無理目の仕様とした結果、これがトラブルの元となって所定の性能を発揮できなかった失敗作ではあります。加えて凝ったギミックを詰め込むためにコスト面から車体をスチール製としたために振り子車なのに重心が高いし線路も炒めるし、加えて高速化対応で最高速160km/hとした結果、加速が鈍くなりダイヤがタイトだという乗務員の指摘もあって歯車比の見直しで性能を下げました。技術力がるはずのJRでもこういう失敗はある訳で、使いこなせるかどうか分からない最新システムに飛び付くのは慎重であるべきです。

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Sunday, October 21, 2018

3度目の正直な消費税

いやヤバい事件です。例のサウジアラビア人ジャーナリストの事件ですが、何がヤバいって、変節黒田節で指摘したように、金の裏付けを失った米ドルの信用の源泉は石油であり、ドル基軸通貨体制は事実上石油本位制であるからです。WTIや北海ブレントなどの先物主導で相場形成される原油価格の安定が信用の源泉となっています。

輸出国で生産調整され消費国で備蓄され、かつての金本位制時代のように諸国で持ち合って価値が共有されている訳で、産油国の中でも特にアメリカの立場を忖度して生産調整に熱心なサウジアラビアの存在なしにアメリカに好都合なドル基軸通貨体制はありません。だから両国間関係にヒビが入る事態は世界を揺るがすことになります。

不思議なのは今回の事件がトルコ政府捜査当局のリークによって発覚した点です。サウジアラビアの在外公館内で起きた事件ですから、本来トルコ政府の捜査権は及ばない訳で、被害者のアップルウォッチで録音したデータを被害者の婚約者に預けたIphoneで樹脂似たというストーリーが語られてますが、相応にセキュリティを備えたサウジ在外公館の内部情報がアップル社のデバイスで易々と突破されたってことのリアリティは悩ましいところ。真偽は不明です。

そしてトルコもクーデター未遂事件への関与の容疑でアメリカ人牧師を拘束してアメリカから制裁を受けていたわけで、牧師は釈放されたものの経済的に苦しいトルコは、この事件を外交カードにしてアメリカやサウジアラビアを揺さぶる姿勢を見せています。失礼ながらトルコだけでここまでやれるか?第三国の関与の可能性もあります。あるいは強硬姿勢で事を進めるムハンマド皇太子の失脚を狙ったサウジアラビア人や米CIAの関与などもあり得ますが、結果としてサウジアラビア内外の対立の激化は避けられません。そういやソフトバンク株も売られましたが。

本題の消費税問題ですが、過去エントリーでSuica甘いか消費税Suica甘いか消費税再びで述べましたが、そもそも三党合意で消費税増税を決めた民主党政権時代も税収の上振れで補正予算が組まれていて、そればかりか復興増税で組まれた復興特別財源も余る状況だったってことは改めて指摘しておきます。

民主党政権以前から、大蔵省→財務省の予算編成のスタンスは、歳入を保守的に見積もってきましたから、税収の上振れ自体は珍しいことではなくほぼ毎年繰り返されてます。そして補正予算が組まれ、本予算で落とされた案件に予算付けされるということが繰り返されてきたわけで、災害復旧もその範囲でやれば本来増税は必要ないし、余れば次年度へ繰り越して次年度の国債発行を抑制することだってできた筈です。それをごまかし続けながら、景気対策と称して赤字予算を続けた結果が、GDP比200%超の赤字財政です。

少子高齢化で社会保障を持続可能にするためには財源が必要なんだという議論も要注意です。消費税増税の一方で小泉政権当時の年金改革で所謂百寝南進プランとか言われましたが、実質は保険料の値上げとマクロ経済スライドと称する給付の削減ですし、後期高齢者医療制度と称して切り分けた医療保険制度ですが、実質は現役世代が加入する組合健保や協会健保からの拠出金で賄い、各健保は拠出金ねん出の必要から保険料を値上げしている訳で、単なる負担の付け回しです。

消費税増税の本当の狙いは、輸出企業への戻し税による還付にある訳で、これあまり知られておりませんが、輸出品に関しては消費税は課税されない一方、仕入れ段階で負担した消費税が輸出時に還付されます。つまり実質的には輸出補助金になっているわけで、WTOルールでも流通の多段階で課税される付加価値税型物品税に限って還付を認めています。消費税の国境調整と呼ばれる措置です。消費税の手本とされた欧州の付加価値税をはじめ、EUの準加盟国的なポジションのカナダや社会主義国故に国税の考え方がなかった中国でも導入されており、主要国で同種の国境調整が行われていないのはアメリカぐらいです。

ここで思い出していただきたいのがトランプ大統領の誕生で導入が囁かれた、法人税の仕向け地課税による国境調整です。結局国内小売業などが影響を被るとして見送られましたが、その代わりにトランプ大統領は制裁関税を次々に繰り出しているという訳で、WTOの前身のGATTでフランスが物品税還付の特例として提案しアメリカが認めたことから始まったものという歴史過程を踏まえると、見え方が違ってきます。例えばEUは加盟条件として付加価値税率15%以上としており、殆どの国で20%前後となっていますが、これが欧州企業の輸出の後押しにどれだけ貢献しているか。また日本政府や財界も折に触れて消費税増税の必要性を言うのもわかります。

という訳ですから、一部で吹き上がっている消費税増税再延期は今回は無いと見るべきでしょう。とにかく消費税が増えるほど戻し税の還付が増える一方、ビジネスにやさしい安倍政権では法人減税も行われてますから、負担は減って還付は増える天国のような状況です。基本的に財界の意向には逆らえないでしょう。

でも消費にマイナスなのは確かなので、その回避策を小賢しく画策しておりますが、相も変らぬ自動車減税と住宅減税。成熟国の日本では自動車は基本買い替え需要ですから、減税で優遇しても需要の先食いが起きるだけで、寧ろ事後の落ち込みは大きくなりますし、人口減少で空き家対策が求められてる現状でまだ住宅増やすんかいって話ですね。

その一方でトヨタの豊田昭雄社長は自動車関連税の軽減を政府に迫っておりますが、輸出で還付金受け手法人税もまけてもらった上に、商売の邪魔になる税制無くせって言うんですからどこまで強欲なんだと呆れます。そうそう、日銀の異次元緩和のお陰で為替も円安ですから、それだけでも大儲けです。

それはそれとして、消費税問題は論点が多いので絞りますが、上記の過去エントリーで取り上げたのは、主に消費税率を5%から8%を経て10%と小刻みに段階的に上げる結果、JRなど鉄道事業者のシステム改修がばかにならないって話です。その結果ICカード乗車券に限って1円単位の運賃として現金運賃と2本立てにすることが認められましたが、これに限らず商店のPOSシステムや銀行の決済系システムなど小刻みな増税での負担が増す絵です。今回に限っては延期していた増税の実施ですから、ある程度の対応は織り込まれているでしょうけど、軽減税率が問題を複雑にします。

早速スーパーやコンビニのイートインコーナーの扱いが物議を醸してますが、8%の軽減税率適用のために飲食禁止にせよというトンデモな話になっております。勿論ここで軽減税率を認めれば外食産業の反発を招くわけですが、重要なのは、同千匹をしようと、軽減税率の運用を巡るトラブルは避けられませんし、軽減税率適用を巡って利権争いとなれば政治家を巻き込んだ泥仕合も起こります。モリカケ問題が示すところは、その方が政治家の口利きの余地があるってことかも。

ただある意味この軽減税率導入があるが故に、準備を進める意味でこのタイミングで消費税増税を表明せざるを得なかったという側面もあり、この辺のからくりに気付いた立憲民主党が増税反対にシフトしてきており、野党の追及の口実を与えるあたり、香ばしいですな。

あと与党サイドから電子決済限定でのポイント還元やらプレミアム商品券やらと有象無象が飛び出しており、消費税問題で選挙が戦えないってのが与党議員の本音のようです。特に前者は中小事業者の導入促進を狙ってクレジットカード決済手数料の上限設定なんて話まで飛び出してます。これ日本が電子決済で出遅れているのを取り戻そうって意図なんでしょうけど、民間の相対取引の領域まで踏み込むって中国だってやらないぞ。

それ以上にそもそも複数税率を区分経理で対応しようとしてますが、どれだけ手間が増えるのか考えたないのでしょう。インボイスを導入すればそんな面倒はないんですが、ここでも現在見なしで控除される仕入れ消費税が証拠で明示されることへの反対が一部であるとか。これ透明性がが増す訳ですが、それを嫌う企業があるってことですね。腐っとる(怒)。

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Monday, October 08, 2018

史上最大の敗戦

7世紀のミッドウエー海戦とも称されるのは白村江の戦です。日本書紀に記された大敗戦の記録ですが、唐では既に大型船の建造が可能で、多数の兵士を乗せた大型軍船で船団を組んで航行することで敵を威圧するような戦い方がされていた一方、当時の日本の造船技術では外洋航海も危険が伴う小舟しかなく、当然一斉に出発しても船団を維持できず縦長の隊列で唐の船団と対峙したため、次から次へと打ち取られ、歴史的敗戦を喫します。

朝鮮半島三国時代に、劣勢だった新羅が唐と同盟して対高句麗、百済で攻勢に出て百済王朝が滅ぼされますが、王朝は滅んでも唐や新羅の支配を受け入れ難い百済人の抵抗は続き、対新羅で攻勢ですらあった緒戦の状況から、同盟関係にあった当時の大和朝廷は援軍を送りますが、第一波は主に食糧その他の戦争に必要な物資の供給が中心でした。現代流に言えば後方支援です。

しかし唐、新羅連合軍が巻き返したことと、トップのいない百済人の内紛もあって戦況が悪化し、兵を出すことになったのですが、その結果は上述の通り、結果的に戦力の逐次投入で被害を拡大するあたりミッドウエーそっくりです。結果的に百済の再興はならず歴史的敗戦を喫します。この敗戦はまた壬申の乱を引き起こすことになり、東方の小中華帝国を目指し律令国家建設に邁進していた大和朝廷を揺さぶります。

そんな敗けられない戦いを敗けた大事件も中国や朝鮮の史書には記述が見当たらず、中国史、朝鮮半島史の観点からは些事だったってことですね。この辺も日本軍には重大だったけど米軍にはそうでもなかったという意味でミッドウエー海戦に似ています。しかしそこは古代の話。人口も生産量も遥かに少なかった時代故に単純比較はできませんが、そんなスケール感の違いはあるものの、日本史に繰り返し現れる構造的パターンが見えるのが面白うところです。

当時のリーダーは大化の改新を主導した中大兄皇子(天智天皇)ですが、蘇我馬子の謀殺には成功したものの、有力豪族の面従腹背に悩まされ、律令国家建設は遅々として進みませんでした。そんな時の百済滅亡の報せは大いに動揺したでしょうけど、同時に内政の停滞の打開に外交を利用することもあり得ます。古代のことですから、史料の裏付けは得にくいですが、可能性の指摘はできます。事実白村江の戦の敗戦で兵を出した豪族は疲弊し、朝廷にとっては統治改革を進めやすい状況にはなりました。後付けの論だと言われればその通りではありますが。

しかし疲弊した西国に対して相対的に兵力を温存していた東国の豪族たちが吉野で出家していた中大兄の弟の中大海王子(後の天武天皇)を立てて謀反を起こします。壬申の乱ですね。かくして東西に分かれて雌雄を決したのが美濃国西部の平原、後の関ヶ原という奇遇です。当然東軍の大勝で天智帝→天武帝への政権交代が起こり天武帝は国を失った百済人を渡来人として受け入れ、力を失った豪族たちを抑えて律令国家を完成に導きます。ザックリですが戦功をあげた諸大名への報償の枯渇から朝鮮出兵に踏み切った秀吉の後始末としての関ヶ原と、その後の豊臣→徳川の政権交代と、その後の幕藩体制整備という相似相が見られます。

7世紀にミッドウエーと関ヶ原を体現する日本史のフラクタル構造の恐ろしさというか、逆に言えば歴史に学べば防げた間違いも多いと見ることもできます。日本史の範疇を超えますが、前エントリーに照らせば、コンコルドの失敗やトランスラピートの開発断念を捉えてリニア建設を見直すとかですね。尚、天武帝は唐、新羅が攻めてくると危機感を煽って国内の体制固めをしたと言われますが百済滅亡の現実の前には一定のリアリティがあったとしても、唐には東の端の島国への野心はなかったようです。

気になったのが沖縄知事選。玉城デニー氏が当選しましたが、選挙戦中の玉城氏に対する酷いデマの数々ですが、玉城氏が当選すれば米軍が撤退して中国が攻めてくるってのがありました。何を根拠にしてるかわかりませんが、玉城氏自身は基地問題一辺倒ではなく、基地に頼らない、同時に政府の沖縄振興策に頼らない、観光振興を中心とした経済政策で若い有権者を引き付けました。基地に対しては米軍と自衛隊の共同管理などある意味翁長前知事よりも柔軟な姿勢を見せており、47都道府県中最下位に安住する従来の在り方に一石を投じる議論が見られます。

米軍が撤退したら中国が攻めてくるってデマですが、資源もないし平野も少なく農業に不向きな沖縄を含む日本を中国が軍事的に制圧して領有するメリットが思い浮かびません。いや技術や資本があるじゃないかって言いますが、それなら合弁事業による中国投資や中国資本による日本企業買収や技術者のヘッドハンティングが最適油断ですし、いずれも実行されてます。7世紀の天武帝に倣ったのかもしれませんが愚劣です。寧ろ7世紀の唐帝国が日本に関心を示さなかったことが繰り返されていると。

加えて言えば同盟重視の結果が百済への過剰な肩入れによる白村江の敗戦につながるわけですが、覇権を失うかもしれないという恐怖心に支配された今のアメリカとの間合いのとり方は要注意です。首脳協議で結局二国間協定の交渉開始を決めた安倍政権ですが「物の通商を巡るTAG(Trade Agreement of goods)でFTAじゃない」とか「農産物などの関税もTPP水準を超えない」などの言い訳がされている一方、英文の合意書にはTAGの表記はなく、今後サービス、投資、市場アクセスへと交渉を継続することが謳われています。

つまり国内向けに嘘の説明がされてるわけです。つまり実質FTAだし今回の押し切られ方を見ればTPP水準の譲歩制限もあてにはなりません。それどころか貿易赤字解消のネタとしてシェールLNGや兵器の購入拡大がなし崩しに進む可能性があります。軍事機密の塊の兵器を輸入に頼るってのは、輸出国への軍事的従属を意味しますし、言い値で高い買い物をすれば、それだけ既存兵器のメンテナンスや弾薬など消耗品購入に使うべき防衛予算を圧迫しますから、防衛力は低下するんですが。

FTAではないとすると、アメリカに対する譲歩は他の全ての貿易相手国に適用されるのがWTOルールですが、安倍首相が言うように自由貿易体制の意義を主張していくのなら、当然WTOルールに則って行動すべきですね。確かにアメリカの制裁関税にせよ中国の報復関税にせよWTOルールに明確に反している訳ですが、TAGがFTAでないとすると、日本もWTOルールを守らないつもりなんでしょうかね。そんな中でこのニュースに注目です。

羽田新ルート 米と調整難航 在日米軍空域の通過認めず 訪日客4000万人へ壁 :日本経済新聞
2020年東京五輪で訪日外国人の増加に備えて羽田発着の新ルートで横田空域を一部通過することに対して米軍が否定的な見解を見せており、調整が難航しているのですが、横田空域問題は日米地位協定で米軍の管制下にあり、民間機が自由に飛べないエリアですが、運用で悪天候時の代替着陸や給油などの便宜供与は行われてきました。報道では新ルートが東京の市街地上空うを通過することから騒音問題などが取り上げられてますが、それを言うなら横田基地発着の米空軍機は今でも飛んでますし、時間制限もなく夜間もお構いなしですから、騒音問題がネックになることはないと言えます。

むしろ日米地位協定自体の見直しを頑なに回避して運用で凌いできた矛盾が顕在化したものです。本来日本政府が本気になって取り組みべきことを先送りし続けた結果です。地位協定問題はこれに留まらず、例えばドローン活用や空飛ぶクルマの実現などの障害にもなります。これらは航空法で高度300m以下の空白を利用する前提ですが、日本の航空法に縛られずお構いなく低空飛行する米軍機の存在がネックになります。こういった問題解決を先送りして同盟重視しても、アメリカの覇権の綻びはますます進みますから、史上最大の敗戦の将来へ向かっているってことですね。白村江の戦いが示す日本史のフラクタル構造はそれを示唆します。

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