« October 2018 | Main | December 2018 »

November 2018

Sunday, November 25, 2018

お水の都大阪

カルロス・ゴーン会長逮捕に始まり、大阪万博開催決定に至る騒がしい1週間でした。一方で問題だらけの入管難民法改正案や水道民営化法案の審議が始まりましたが、こちらのメディアでの扱いは小さく、しかも的外れなものが多く、困ったものです。そんな目晦ましに惑わされず、事実関係を掘り起こすことは大事です。

ゴーン氏逮捕の報に拭えない違和感があります。罪状は有価証券報告書虚偽記載で、ゴーン氏自身の役員報酬を50億円過少申告したとして金融商品取引法違反を問われております。実は有価証券報告書の虚偽記載自体はありふれた事件で、例えば西武鉄道を上場廃止に追い込んだ株式名義貸し事件で、堤義明会長を失い迷走した西武鉄道の事件などは日産の今後に対して示唆に富むものですが、それより気になるのは、虚偽記載と言っても粉飾とは言えない今回の事件でいきなり逮捕っていうのがよくわからないところです。

上場企業の通信簿である有価証券報告書の虚偽記載は確かに許されることではありませんが、粉飾ではないということは指摘しておくべきでしょう。報酬を誤魔化したとはいえ、別の費目に付け替えているから、決算数字自体は変わらない訳です。この辺会長派中心の日本人取締役達による粉飾決算を告発しようとした外国人社長を解任したオリンパスの事例でも、原子力事業を巡る損失隠しで粉飾した東芝の事例でも、逮捕者は出ていない訳で、いきなりの逮捕という今回の事件がこれらより悪質性が高いとはとても言えません。

それどころか公判を維持できるのかという疑問があります。例えばより重罪の特別背任に問うとすると、ゴーン氏が会社に損害を与える意図をもって虚偽記載したことを挙証しなければなりませんが、報道された投資名目の付け替えや自宅購入、成果インセンティブなどは、投資は成果が出るまでにタイムラグがありますし、自宅などの不動産購入も、転売目的の投資で、値が下がったから使っていたという釈明が可能ですから、それを崩すのは容易ではありません。何だかリニア談合事件のような地検特捜部の勇み足の気配があります。

しかも司法取引が行われたということで、日産の取締役が対象だそうですが、両罰規定による法人としての日産も免訴されるとすれば、西川社長は会見で否定したものの、事実上のクーデターと見做すことができます。そして限られた拘留期間で取り調べがどこまでできるのか。保釈交渉で住所をどうするなど難題山積です。加えてゴーン氏の会長職解任はできたけど、西川氏の後任会長人事はルノー系取締役の反対で決められず、取締役の補充すら流動的です。

ましてこの体制で、刑事罰は免訴されても、株主代表素養など民事の訴訟は免訴されませんから、片肺飛行状態で対応を迫られることになります。加えてフランス政府肝いりのルノーとの経営統合問題への対応もありますし、クーデター説に説得力はあるものの、脇が甘いと言いますか、本当にこの経営陣で難局を乗り切れるのか、疑問は尽きません。

そして与野党対決法案の入管難民法改正案の審議入りと継続審議の水道民営化法の国会審議の報道露出の少なさを考えると、政治介入の疑惑が頭をもたげます。内部告発の内偵段階はともかく、ゴーン氏逮捕の報が事前に官邸にもたらされていた可能性はあるのではないでしょうか。

あるいはルノーとの経営統合問題でフランス政府と対峙を迫られる決断を、ゴーン氏の悪だくみを見逃し司法取引でも民事は別と考えが及ばない現経営陣がこんな重大な決断ができたのは何故か?例えば日産株43%を保有するルノーの議決権を無効化するために日産のルノー株補修比率を15%から25%に買い増すための資金供与を日本の政策金融を動員するといった裏の約束があったとすれば、日産経営陣の背中を押すことになるんじゃないかとか。裏で画を描いた奴が居る気がします。

それはさておき、問題だらけの水道民営化問題ですが、何が問題かというと、様々ある民営亜手法の中で、敢えてコンセッション方式を推奨し、補助金付けて誘導している点です。立法事実として人口減少による料金収入減少で設備の維持が困難になっている点、故に老朽化が進んで漏水などが増えている点、また地震対策として耐震菅への交換が進んでいないこと等から、自治体毎の事業を広域化する必要があるけれど、それがなかなか進まないことから、民間活力を活用して問題解決しようということで、一見よさそうな話に見えますが、問題大ありです。

まずコンセッション方式とは、設備の所有権の公共部門に残して長期に亘る運営権を民間に売却するって仕組みですが、日本では民主党政権時代の2011年6月のPFI法改正で取り入れられ、関空など関西3空港の民営化で採用された手法です。思い出していただきたいのは今年の台風24号の上陸で関空が冠水し船舶の衝突で連絡橋が破損し、8,000人もの人が取り残されたことです。インフラ保有部門と運営する民間部門の連携のまずさが露呈したものですが、コンセッション方式にはこの手の問題があるということは押さえておきましょう。

水道事業は現在地方公営企業が担っていますが、基本的に料金収入で設備投資から運営、保守、設備更新までも一貫して行い、原則税金の投入はありません。事業が黒字の場合は剰余金が自治体の歳入に繰り入れられ、赤字の場合は欠損が自治体から補助されるので、地方議会のチェックは受けるものの、民間に準じた複数年度会計で減価償却も行われますから、結果的に市民の共有財産のような形になっています。

ただし職員は地方公務員の身分なので、条例で定員が定められていたりして、広域化の妨げとなってもいます。素直に考えれば地方公営企業をそのまま株式会社化できれば、複数自治体で事業を統合して自治体が株式を持ち合う形にできれば広域化は問題ないはずで、敢えてコンセッション方式を推奨し、補助金で誘導する理由はありません。で、水道事業民営化で先行したフランス、パリ市は、コンセッション方式は問題が多いとして再公有化されましたし、世界的にも見直しの機運が高まっており、日本は完全に周回遅れです。このタイミングでの水道民営化は再公営化で事業機会を失ったフランスのヴェオリア、スエズ両社を助ける意味しかありません。はて、そうすると政府は日産をルノーに売り渡すつもりかも。

で、地方公営企業繋がりで、公営交通の民営化も留まるところがありません。元々高待遇の地方公務員の身分故に高給取りになったバス運転士への批判が起きたことと、一方で民間事業者では分社化により組合の強い本体から切り離した新規採用者の賃金圧縮が進んだ結果、高賃金で赤字体質の公営交通に批判が集まり、路線の民間移譲、株式会社化、運営の民間委託など手法は様々ながら実質的な公営交通縮小が進みました。万博開催が決まった大阪市の地下鉄やバスの民営化は記憶に新しいところです。その大阪市でこのニュース。

自治体の貯金、大阪市が最多2400億円 2位は江戸川区  :日本経済新聞
橋下市政時代から、とにかく金が無い金が無いの連呼で学校給食を安物弁当に変えたり文楽協会への補助金削ったりしてた大阪市ですが、」実はたっぷり貯金してます。これ剰余金を基金として積み立てているんですが、よく考えたら歳入不足で地方交付税の交付を受けている大阪市が蓄財するっておかしい訳で、これ大阪市に限らず多くの自治体で同じようなことやってます。何故かと言えば人口減少で税収が伸びない中、夕張市のように破綻して財政再建団体になれば大変だという恐怖心からです。夕張市への国の対応が厳しすぎたってことです。

加えて大阪市では地下鉄とバスの民営化で資産売却益が得られたことで、基金が膨らみました。そこへ2025年の万博開催決定の報ですから要注意です。会場の夢洲への地下鉄整備その他の万博関連事業で基金が蒸発すること間違い無し。市民サービスを犠牲にして得た基金が蒸発するのを市民は指をくわえて見なきゃならない。訳です。ですから万博開催をおめでとうと祝う言葉は言いません。ご愁傷さま。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, November 18, 2018

誰得な領土問題

日ロ首脳会談で二島返還って話。様々な評価がネットで見られますが、報道でも取り扱いが難しいようです。

日ロ領土問題、思惑にずれ (写真=共同) :日本経済新聞
冷静に考えれば日米安保条約第5条で米軍は日本が領有権を有する地域のどこへでも基地を置く権利があり、日本側に拒否権は定義されていません。辺野古見ればわかりますが。故にソビエト時代から進まなかった領土交渉ですが、今回の首脳会談の意義は、改めてそのことが明らかになったってことです。これ領土問題に煩い一団の人々を黙らせられるという意味で、安倍首相以外では不可能な着地点です。たまには褒めてやるwwwwwww。

冗談はさて置いて,実質的に歯舞色丹二島周辺は良い昆布の漁場でして、ロシア人は昆布を食用しませんから、ここに日本の漁業権が設定できるなら、主権云々は横に置いて成果として評価することは可能です。というか、元々地元では密漁が横行していた訳で、それが合法化されるなら地元にとっては歓迎されるでしょう。しかも煩い一団の人々が文句言わないなら尚良しです。

また昆布以外でも、例えば花咲ガニのロシア漁船による水揚げが90年代から増えている現実があります。ロシア漁船だって高く売れる方へ持って行く訳です。勿論乱獲による資源枯渇のリスクと裏腹ですが、日本政府のウナギやクロマグロの漁獲制限が実質制限にならないガバガバな水準にあって資源枯渇が現実化している状況からいえば誤差範囲かと。

でもね、前エントリーで取り上げた入管難民法改正あ審議で法務省が提出した技能実習生の失踪問題に関するデータに重大なミスありました。

入管法改正案、実質審議入り先送り 調査ミスに野党反発  :日本経済新聞
これExelの操作ミスと言い訳されてますが、失踪理由として「より高い賃金を求めて」として集計されたデータが最低賃金以下、明示された賃金以下、低賃金の3つのデータを合算した結果の集計ミスであり、しかも実習生側の都合に見える言い換えまでされているという意味で、通常国会の厚労委員会で問題になった裁量労働制のデータ改ざんに通底する法改正のために都合の良い粉飾がされているところが問題です。官邸がウソつきだと官僚が忖度する構図は森加計問題以来続きます。官邸のウソつきぶりは身内の日銀からも指摘されてます。
(真相深層)政府統計、信頼に揺らぎ GDPなど、日銀が精度に不信感 :日本経済新聞
これ2016年のGDP推計の改定で研究開発費や特許権の資本勘定算入その他の新基準が適用され、1994年まで遡って数値が改定されました。この改定は基準が曖昧との指摘が以前からありましたが、賃金データの動きが不自然ということで、日銀からクレームがついたってことなんですが、デフレ脱却を目標にする日銀にとっては賃金推移のデータは重要なだけに、内科k府に元データの開示を要求したところ拒否されたという展開です。ま、ぶっちゃけGDP数値の捏造疑惑ってことです。

これ改定に伴って直近の成長率が高く出た一方、2009-12年の民主党政権時代の成長率が相対的に低くなっているということで、疑惑がもたれていましたが、内閣府は元データの開示を拒んで否定し続けていました。それが遂に身内の筈の日銀からも疑惑の目が向けられた訳です。アベノミクス自体がインチキだった可能性がある訳ですね。

で、領土問題も結構なんですが、以前から指摘しているように、地方の疲弊が止まらない中で、内なる領土の消失とも言うべきことが起きていることにもっと目を向けるべきですね。北方領土間近の北海道がどうなっているか。札幌圏への人口集中の一方で、道東道北の輸送インフラのJR北海道が瀕死の状態です。年間400億円の欠損ってのはもうシャレになりません。しかも100億円は北海道新幹線から発生している訳で、残念ながら新幹線の札幌延伸による延命効果も疑問符が付く状態です。北海道新幹線をJR北海道から切り離して例えばJR東日本に移譲するとかできれば良いんですが、整備新幹線故にそれも難しいところです。

その一方で小樽―新千歳空港間を結ぶ空港快速は15分ヘッドでも大混雑で、座席指定のuシートもプラチナチケットになっている状況です。これインバウンド需要による外国人観光客の増加が寄与しているんですが、この増強が喫緊の課題なのにできない。理由は南千歳から分岐する空港支線が単線で6連しか入れないから、今以上の輸送力増強はできない訳で、北のスットコドッコイで取り上げた新ターミナル駅への移転を待たざるを得ませんが、公費負担を含めて具体化は進んでいません。

あくまでも個人の見解ですが、かつて千歳空港ターミナルビルと直結だった南千歳駅を国の航空政策で失ったことに対する原状回復の保障措置として、全額公費負担でJR北海道の経営支援するぐらいの対応が望ましいところです。てことで、誰得の領土問題よりも地方の過酷な現実こそ目を向けるべきです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, November 04, 2018

社畜の国の移民政策

韓国徴用工の新日鉄住金に対する賠償問題ですが、これ日韓条約で政府間の賠償問題は解決積みとされた訳ですが、この訴訟は個人としての韓国人徴用工の日本企業に対する賠償請求というところがミソでして、私人同士の賠償請求権が政府間の条約によって無効にできるのかが問われていたのですが、下級審で認められ、今回は上告審ですから、余程の訴訟手続き上の瑕疵がない限りこうなるのは当然です。

新日鉄住金は韓国ビジネスへの影響を考慮して和解を模索していたようですが、日本政府が和解に応じないよう圧力をかけたそうで、結果確定判決に至った訳で、和解しとけばそれで終わった話。これで戦時徴用に関連した70社超の日本企業が訴訟リスクにさらされるわけで、私人同士の問題に政治介入した結果のオウンゴールです。賠償を韓国政府に肩代わりさせると息巻いてますが、これ逆に元々関心が薄かった韓国の国内世論に火をつける可能性があり、困ってるのは寧ろ韓国政府です。

台湾プユマ号に関してメーカーの日車がATP解除した場合に自動的に指令に連絡する回線が接続されていなかったと発表しました。事故との関連は不明ですが、一定時間指令がATP解除を把握していなかった可能性はあります。当局の発表が二転三転したのはそのせいかも。いずれにしても日車のミスが明らかになった訳で、ややこしくなってきました。

このところ日産やスバルの無視覚検査や神鋼のデータ改ざんに始まり、川重の新幹線台車枠亀裂やKYBの免震、制震ダンパーのデータ改ざんに至る様々な不祥事が明るみに出ている日本企業ですが、いずれも経営陣が把握していなかったらしいという共通点があります。経営陣が現場を把握できていないガバナンスの問題と捉えるべきでしょう。日産やKYBのケースは政府規制の妥当性に疑義があるという見方もできますが。

てな具合に官民共にガバナンスがボロボロの日本ですが、政府の無能ぶりは言い疲れたwwwwわけぢゃないけど置いといて、生産年齢人口の減少が日本企業の現場を追い込んでるんじゃないかという問題意識で考えてみます。で、このニュース。

単純労働 外国人受け入れ 入国管理政策を転換 法案閣議決定、国会論戦へ :日本経済新聞
この臨時故国会で通して来年4月から施行というスケジュールも無茶ですが、事実上の移民受け入れとなるのに、国の在り方を変える議論には程遠いと言えます。

問題はいろいろあるんですが、基本在留期間5年ですから、あまり込み入った複雑な仕事は任せられませんから、単純労働を担うことになります。特定業種1級と2級に分けて一応生産性向上や高齢者や女性の労働力率上昇でも尚足りない業種に限定し、具体的な業種は3年毎に見直し充足されれば指定を外すとしてますが、生産年齢人口の減少は男女問わず進みますし、働ける高齢者の増加も減ってきますから、結局いつまで経っても充足されず、寧ろ他の業種でも足りないとなって業界の陳情合戦になって政治介入の余地を与えます。

冷静に考えて、生産年齢人口の減少が毎年50万人として、減少分を外国人労働者受け入れで埋めたとしても、5年で帰国するんですから、以後は足りなくなる訳で、帰国者分の受け入れを増やし続けない限り実効性は無い訳です。しかもスキルを磨いて高度な技能を習得するインセンティブもない訳で、果たして現場のモラルが維持できるのか?疑問です。現状日本人で構成された職場でさえ不祥事ボロボロなのに、外国人労働者を受け入れてまともなマネジメントができると考えているとすれば認識が甘すぎます。戦時徴用工の二の舞の悪寒。

結局社畜の代わりはAIでも外国人でもできないんです。人手不足を前提とした事業の見直しができなければ沈みゆくばかりです。そんな現実を踏まえてこのニュースをご紹介します。

東急、鉄道分社がもたらした27年ぶり高値  :日本経済新聞
東急の鉄道分社ですが、沿線再開発やビル賃貸などの事業は本体へ残すそうで、ある意味鉄道の専門性故の分社ということですが、このところの停電トラブルなど鉄道事業でのトラブル多発が背景にあります。その原因として電気技術者などの求人案があることは上記日産の無視覚検査と共にグローバルプリズンのエントリーで取り上げました。

東急にとってはルーツとなる田園都市株式会社が荏原電気鉄道や武蔵電気鉄道の免許線を利用して目黒鎌田電鉄を立ち上げた過去への先祖返りの形ですが、今や主力は渋谷など都内愛開発が中心で、かつて注力した多摩田園都市は高齢化で曲がり角を迎えています。いずれ多摩田園都市でも駅を中心とした再開発が必要ですが、そのためには鉄道がきちんと機能し信頼回復を図るための分社ということで、腐っても東急というか^_^;、現場問題をマネジメントの問題と捉える意識が見えます。勿論吉と出るか凶と出るかはわかりませんが。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« October 2018 | Main | December 2018 »