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Sunday, December 16, 2018

COCOMしてますか?

華為技術(Huawei)を巡るニュースが連日報じられてますが、1987年の東芝機械COCOM規制違反事件と似ています。時あたかも日米貿易摩擦真っ盛りですし、安全保障問題を梃子にしている点も似ています。

東芝子会社の東芝機械がノルウェー企業と組んでソビエト向けに輸出した工作機械と制御ソフトが、冷戦期の対共産圏輸出規制委員会(COCOM)の規制に違反したとして問題になった事件です。規制品目は軍需品、高度工業製品、原子力関連品などとされ、東芝機械のこの取引が原因でソビエトの原子力潜水艦のスクリュー音が静かになり、アメリカの脅威が増したとされ、政治家による東芝製TVやラジカセのハンマー打ち壊しなどのパフォーマンスが大々的に行われました。

COCOM自体は正式な条約ではなく法的拘束力はありませんが、加盟各国は国内法で輸出規制の根拠法を制定し対応しており、日本では外国為替管理法で規制されてました。そのためアメリカの指摘を受けて日本で外為法違反で訴追され有罪判決を受け、親会社の東芝の会長と社長のトップ2人も辞任します。また議会へのロビー活動を活発に行いどうにか収集しましたが、肝心のソビエト原潜の静粛化に関する証拠開示は行われず、当時の日米貿易摩擦のネタにされたのではないかとの見方も根強くあり真相は藪の中です。

日本がCOCOMに加盟したのは1952年ですが、この年都営トロリーバス101系統今井線(上野公園―今井)が開業しました。開業時に登場した50型が実は中国天津市向けの輸出品がCOCOM規制により差し止められた結果、注文流れで東京都交通局が買うことになります。右側通行の中国向けを左側通行の国内向けに改造するという荒業ですが、朝鮮戦争の勃発もあり、何らかの政治力学が働いたのでしょう。

Huaweiに関してはいろいろと噂されてますが、少なくとも中国製だからセキュリティに問題があるということはありません。ネットや携帯やスマホにバックドアが仕掛けられていることは、スノーデン氏のリークで明らかにされてますが、あくまでもアメリカ政府の話。だから中国も同じこと考えるってことでしょうし、実際その可能性は否定しませんが、これらはソフトのバグを利用したハッキングが中心で、どこの国の製品であれ多かれ少なかれバグはありますから、敢えて言えば中国企業製品はアメリカ製品とはハッキングの勝手が違うってことはあるでしょう。それ以上でも以下でもない。つまり殆ど言いがかりです。ハッキング合戦となればマンパワーの投入量の違いがものを言う訳で、人口大国中国をアメリカが脅威と感じる訳です。

この辺のロジックは例えば中距離核戦力(INF)撤廃条約を巡るロシアの違反を理由としたアメリカの脱退にも見えますが、ロシアは核装備の近代化の一環で言いがかりと反論してます。これも実は中国や北朝鮮の中距離ミサイルが実戦配備されている現状から、ロシアの違反を口実に中国をターゲットにしていると見ることができます。延長線上には日本国内への核ミサイル配備もあり得ます。その時「事前協議」で日本が拒否権を発動できるでしょうか?アメリカに一言「COCOMしてますか?」www

ただHuaweiが対イラン経済制裁をすり抜けて通信機器を提供してきたことは子ブッシュ政権当時から指摘されていましたから、制裁を科したアメリカの国内法には抵触するということで、司法当局が動きましたが、トランプ政権の政治介入の動きに対しては牽制されました。こういうところは腐ってもアメリカです。

つまり一皮めくれば現在進行中の米中貿易摩擦は80年代の日中貿易摩擦とさほど変わらない訳で、当時の日本が唯唯諾諾譲歩したのに対し、中国政府は対決姿勢を見せてますが、いずれ折れないとアメリカの強硬姿勢は変わらないでしょう。中国にとっては痛手ですが、人口大国であることによるネットワーク効果が国内だけでも働くということを考えると、寧ろ中国が力を付けるきっかけになる可能性は否定できません。ただし日の出の勢いだった高度成長は終わり、日本と同様の長期停滞に陥る可能性は高いですが。

アメリカは冷戦でソビエトに勝利し、日米摩擦で日本を停滞させという風に、これまでのところ戦略は成功しており、その成功体験があるから対中国の強硬姿勢も続くと考えられます。しかも今回は軍事面で同盟国の負担増を要請しながら、Huawei排除では同盟国の協力を呼びかけるというご都合主義してるわけで、逆に言えばアメリカと言えども中国を追い込むには単独では難しいってことなんですね。で、中国の停滞の影響はアメリカよりも元々関係の深い日本やEUが被る訳で、日本にとっては損なディールです。矛先が中国に向いてるうちは日本は安泰なんて浅はかです。日本の長期停滞は続きます。

喧伝される中国異質論ですが、これも早い話80年代の日本異質論の焼き直しです。相手が異形の大国であれば、アメリカはあらゆる選択肢を否定しないというスタンスになるわけです。中国の陰で日本が相手にされないのは、日本のプレゼンスが低下したからってことですね。てことで、日本としては本当は鬼の居ぬ間の洗濯のチャンスなんですが、政府はどっち向いてんだか。

いつまでも対米輸出で経済成長を目指そうとするから大変なんで、もっと国内の再分配を進めて個人消費拡大を通じた内需拡大策へシフトするべき局面です。そうせずに消費税を10%に上げようとするから、所得効果でマイナス1.8%の消費縮小がある訳で、一時的なバラマキで平準化は無意味です。逆にたったマイナス1.8%なんです。その分の賃上げ、所得向上が見通せれば消費は増えるのにそうしないからまたデフレへ逆戻りになる訳です。

基本的な考え方は2005年元旦のエントリーから変わっておりません。もう少し解説すると、国際収支の黒字は国内貯蓄によるものです。生産されて消費されなかった分が国外で消費されて国際収支の黒字になる訳ですから、国内に貯蓄過剰を抱える訳です。貯蓄過剰状態ではいくら金融緩和しても消費も投資も伸びない訳です。

ゼロ年代以降のベアゼロ春闘や小泉改革で拡大された非正規雇用によって所得格差が拡大してますが、高所得層ほど貯蓄性向が高く消費しないので、格差拡大が貯蓄過剰をもたらしているわけです。所得再分配で消費性向の高い低所得層へ所得移転することが、消費拡大には必要になります。まして生産年齢人口が減少過程にある訳ですから、年金など社会保障の削減は高齢富裕層の貯蓄性向を助長する一方、低所得者も消費抑制を余儀なくされますから、貯蓄過剰を助長します。故に税金の使い道は所得再分配重視で公共投資は既存ストックを活用した投資効率の高いものに絞る必要がある訳です。で、上記過去エントリーで取り上げた相鉄都心プロジェクトに動きが出ました。

相鉄・東急接続路線「新横浜線」に  :日本経済新聞
相鉄、東急双方共に「新横浜線」の線区名で統一したのは、案内上の問題もありますが、東急が目黒線の延長と位置付けていないことも意味があります。直通は東横線と目黒線の両睨みってことですね。相鉄が直通車20000系を10連で登場させたことも、東横線直通を想定したものですし、加えて保安装置をソフトで読み替えてメトロ、東武、西武にも対応するものになっており、秩父や森林公園まで走れる訳です。

ただ困ったことに2018年のJRとの直通開始時点では相鉄新横浜線は新横浜には行かないので、案内上混乱が予想されます。おそらくJRと共通の路線系統愛称をつけると思われますが、E電以来ネーミング地獄のJR東日本だからねえwwwwwwww。「相鉄新宿ライン」かな?

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