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Sunday, January 06, 2019

林檎が落ちると

世界が混乱します。少なくとも短期的には。そんな波乱の新年をいかがお過ごしでしょうか。発端は2日のアップル社の売上高下方修正ですが、中国でのiPhone販売不振が理由ですから、アップルショックというよりは実質チャイナショックです。中国の経済減速がはっきり見えてきたってことですね。

加えてiPhoneが拓いたスマホ市場の飽和が背景にあります。アップルはハイエンド化による高価格政策で対応している訳ですkが、ローエンド品も性能が上がれば差別化が難しくなるから、結局ハイエンド化による高価格戦略は長続きしない訳です。これ悉く縮小均衡に陥った日本の家電メーカーと同じ袋小路に入ったってことですね。

一方でFRBの金融政策への批判も相次ぎました。先月のFOMCで年4回目の利上げを決めて、更に引き締め継続を示唆したことで、市場関係者の批判を浴び、トランプ大統領もパウエル議長解任を示唆するなどゴタゴタしました。そうした中で4日にパウエル議長が講演で利上げ一時停止を示唆したことが好感され、4日のNY市場は反発しました。「FRBプット健在」と好感された訳です。ただし3-5年物の国債金利が短期物より低いイールドカーブの矛盾はそのままです。これ投資家の質への逃避の心理を反映したもので、リスクオフ相場の特徴鮮明です。これによって為替は円高に振れますから、週明けの東京市場は期待しない方が良いでしょう。

よく言われる「長期停滞で財政赤字が大きい日本がなぜ買われるのか?」という疑問ですが、350兆円と言われる累積経常黒字がある限り、買われるのは当然。むしろ実体はそれだけの余剰資金があるから、リスク投資を手仕舞いすると自動的に円が買われるので、不思議でも何でもありません。これつまり国内の貯蓄過剰が海外投資へ向かっていたからで、海外投資へ向かう過程で売られた円が買い戻されるってことです。所謂貯蓄投資バランス問題なんですが、解決策は内需拡大により貯蓄過剰を解消することですが、これに失敗し続けて長期停滞から抜け出せないのが現在の日本です。

その日本を後追いしてきたのがアジア諸国ですが、その中で最大の国が中国です。その中国は日本の長期停滞を研究して回避策を探ってきたのですが、結果的にはリーマンショック対策で地方政府を中心に過剰な開発投資を重ねた結果、日本のバブル崩壊の教訓を生かせず、水面下で債務超過を拡大して身動きが取れなくなっています。そこへ米中貿易摩擦が加わり、問題を大きくしています。つまり中国は日本の轍を踏んじゃった訳です。この辺は前々エントリー
もご参照ください。

しかし中国の経済的ウエートは大きい上、日本のバブル崩壊後の停滞を埋めるように90年代以降の中国の台頭があった訳ですが、中国の停滞を埋める例えばインドの台頭は未だ力不足なので、当面の経済停滞はかなり深刻なものにならざるを得ません。世界は長いトンネルに入ります。ただしそれだけ石油など資源価格へのストレスは低下しますから、円高と相まって交易条件が改善しますから、日本経済にとっては悪いことばかりではありません。これを機に内需を深掘りして過剰貯蓄が国内投資に向かうようになれば、とりあえず目先の様々な問題には解決の糸口となります。

例えば高齢化自体は解決できないんですが、かつて若年人口の多かった日本で貯蓄性向が高かったのが、高齢化でリタイアが増えれば過去の貯蓄が取り崩されますから、自然に過剰貯蓄は解消に向かうのに、人手不足を理由に高齢者の労働力化を進めるのは、過剰貯蓄を増やす上に労働市場を圧迫して低賃金化を促しますから、寧ろ若年層の負担増となって逆効果となります。年金制度を安定させて安心してリタイアできる環境を整えることが重要です。

その意味で消費税増税問題ですが、野田政権当時の三党合意で消費税を社会保障目的税にするという約束を反故にする大盤振る舞いは問題です。社会保障に使われるならということで消費税増税を渋々認めた国民を欺くことです。選挙で思い知らせてやりましょう。

という訳で、2019年という年は明るい展望が描きにくいのですが、過去に遡れば1997年の消費税3%から5%へアップしたときとよく似た局面です。この年アジア経済危機と山一證券、拓銀などの破綻に端を発する金融危機があった年で、日本経済は大きく足踏みしました。これを全て消費税増税の栄養と捉えるのは間違いです。僅か2%英率アップで、所得効果はマイナス1.9%です。しかし同時に社会保障改革と称して年金保険料が値上げされており、それを加味した所得効果はマイナス3%を超えます。加えて企業の採用手控えもあって所謂ロスジェネ問題でより負担感が強まったことも指摘できます。

結論としては97年の足踏みは果たして消費税増税のせいなのか?ってことには大いに疑問があります。元々の経済ファンダメンタルズの弱体化に加えて年金保険料アップを含む公的負担増が重なった結果と見るべきでしょう。その意味では経済の停滞の中での増税という意味で97年の再現となる可能性はかなり高いと言えます。

但し違いもあります。1つは労働市場の現状ですが、企業の採用手控えこそないものの、高プロ導入や入管難民法改正による外国人労働者の導入拡大などで労働市場に圧力がかかる制度改正がありますから、制度の運用次第では97年よりひどい状況もあり得ます。加えて年金の支給減額や後期高齢者医療保険の負担増など実質的な公的負担の増加は消費税に留まりません。こうした中で一時的なバラマキで乗り切ろうとしている政府の姿勢では、結局単なる問題先送りに留まらず、需要の先食いを助長して却って混乱します。

人口減少下での消費拡大は主にサービス部門の拡大になりますから、モノは売れない訳で、工業セクターの生産性改善では解決できません。逆にサービスは生産と消費が同時に起こる特徴があり、在庫が効かない訳ですが、ITによるマッチング機能の進化で生産性改善の可能性が見えてきています。

具体的にはこのエントリーで取り上げたMaaSが典型ですが、移動のサービス化で複数の交通機関をスマホアプリでシームレスに利用できて決済まで可能となる方向性が見えています。これ必ずしも自動運転の実現などを待たずとも、需給のマッチングで従来不可能とされてきたサービス部門の労働生産性向上が可能になります。その意味で時代錯誤なこのニュース。

2019年 展望 時速360キロで試運転、輸出も JR東海社長 金子慎氏 :日本経済新聞
鉄道にとってのスピードアップは、単位時間当たりの輸送人キロを拡大しますから重要なんですが、人口減少下では顕在化している需要だけを見ていても先細りにしかならない訳で、潜在需要の掘り起こしという点でMaaSの可能性は大きい訳で、こういうマッチョなスピード至上主義は必ずしも正解とは言えません。まして東海道新幹線のスピードアップよりも技術的優位を示して輸出を狙うってのがもうダメ。外需依存ではなく内需の深掘りで過剰貯蓄を消費に結びつけて且つ国内投資に向かわせることで、長期停滞の原因と言える過剰貯蓄が解消されるんですが、全く逆行してます。ヤレヤレ。

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