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Sunday, September 08, 2019

京急の先頭電動車は安全のため?

シーサイドラインの逆走事故に始まって横浜市営地下鉄の2度の事故に続いて横浜でまた事故です。但し今度は京急ですが。

トラック、踏切内で数十秒立ち往生 京急衝突脱線 (写真=共同) :日本経済新聞
ネット上では様々な憶測が語られていましたが、今回は放送や新聞などの伝統的報道機関の報道がしっかりしていました。ファクトをきちんと押さえてます。

流れとしては中央市場で積み荷を積んで千葉方面へ向かう12tトラックが、おそらく第一京浜から第二京浜へ向かうために東神奈川交差点を左折したものの、東神奈川地下道の2.8mの高さ制限に気付いて慌てて仲木戸の右折レーンを右折して迷い込んだものと考えられます。結果論ですが、仲木戸で右折せずに東神奈川の駅前ロータリーで転回して第一京浜に戻っていれば、少し東京方面に向かって新子安手前の入江橋で左折して京急とJRのガードをくぐれば問題なかったんですが、件の仲木戸の右折レーンは大型車進入禁止の規制もなく、以前にも迷い込んだ大型車が長い距離をバックしたことがあったと住民が証言してます。とりあえずここへの注意喚起策は緊急に必要でしょう。

京急の対応もたまたま休憩中の社員が左折のためのバック誘導を依頼された挙句、ドライバーが左折を諦めたとして右折を強行し踏切に進入したことから、非常ボタンを押して現場を離れてますが、これは問題ないでしょう。一方踏切にはセンサーによる障害物検知装置が設置されており、こちらは正常に作動して信号を明滅させて電車の運転士に異常を知らせており、非常制動距離の600m地点で確認できる作りになっていて、運転士も非常ブレーキを作動させたけれど間に合わなかったということで、運転士が非常制動をどの時点で作動させたかがカギとなります。

この点は非常信号と非常ブレーキが連動していなかったことを問題視する意見もありますが、京急は運転士の判断に任せる形にしていました。これも評価が難しいんですが、2年前の小田急線参宮橋―代々木八幡間のボクシングジム火災で警官が非常ボタンを押して電車を止めた為に電車に延焼するという事故がありました。京急の言い分にも一理ある訳です。

それとネットで気になったのが、京急の先頭電動車ポリシーで転覆しにくい車両構造だったから、他社だったら転覆して被害を大きくしたというのがありますが、今回に限って言えば、先頭車は転覆はしなかったものの大きく傾いて上り線を支障した訳で、対向する上り列車が来なかったことが幸いしたというのが実際です。傾いたのはトラックが電車と線路脇の防音壁に挟まれたからという指摘もありますが、防音壁が無ければトラックが線路外へ飛ばされて民家に被害が出た可能性もある訳で、この辺も評価が難しいところです。

日本では衝突安全に関する国家レベルの統一されて規制は無いものの、特に踏切事故の多さもあって各社それぞれ工夫が見られます。例えば名鉄パノラマカーと小田急NSE車は先頭客室の安全性に配慮して衝撃吸収ダンパーを内蔵していましたし、旧国鉄を中心に高運転台も対策の1つとされました。

運転士の視認性の改善の狙いと同時に、乗務員の安全確保を狙ったものですが、92年9月14日の成田線久住―滑河間の大菅踏切で起きた過積載ダンプカーの踏切冒進に下り佐原行き113系4連が衝突して前面が潰れて運転士が死亡する悲惨な事故があり、113系や115系の前面にステンレス板を貼る強化工事を緊急に実施。当初無塗装で出場したこともあって鉄仮面と通称されました。また閉じ込められた運転士の救出が遅れたこともあり、209系以降のの新系列で乗務員室仕切りに緊急時壁を抜ける構造にしたレスキュー口が設置され、E217系では運転台後方部分の強度を敢えて弱めてクラッシャブルゾーンとする仕様にして安全対策を強化してます。

という具合に各社各様の安全対策は取られている訳で、敢えて京急の先頭電動車の安全性を持ち上げることは、暗に他社をdisることになるという点は意識しておきたいところです。

加えて京急の先頭電動車方式は安全対策なのか?って疑問もあります。というのは、京急自身が公式に認めているのは、信号回路のレスポンスの違いなんですよね。鉄道信号は左右のレールに信号電流を加圧しておいて、車輪で左右を短絡することで列車の在線を検知して信号を切り替えるシステムですが、京急のように標準機で軌間が広くカーブの多い路線では、レールと車輪フランジの接触が多くなるので、油で潤滑して摩耗を防ぐようになっておりますが、これに埃や粉塵が負Y託すると絶縁状態になったりします。

吊り掛け駆動の電動車ならば自重と振動の影響で簡単に取れるレールの汚れが制御車だと取れにくく、その分信号の切り替わりが遅れるという現象を経験則として得ていた可能性はあります。というのは、そもそも京急では制御車は戦後に絞ってみても戦災復旧車のクハ280、クハ550、クハ650とデハ600に電装品取られたクハ420と例外的な存在ですし、クハ280は本線運用ではほぼ中間に封じ込められて運用されてましたし、クハ550はサハ化され、その他は400番台に集約される過程で電装又は中間車化されてます。地上設備の制約からタイトなダイヤを余儀なくされる京急では、先頭制御車による僅かなタイムラグも許容できなかった可能性があります。

カルダン駆動時代になると都営地下鉄との直通運転で性能条件をクリアするには全電動車にならざるを得なかったのですが、京成電鉄がコスト削減のために6M車を投入したことで微妙になります。6M車というのは、モハ3200型の3221以降で採用された6M1Cユニットで。端子電圧500vの特殊定格モーターで3S2P制御とし、先頭台車を無動力としたものですが、当時京急線への直通運用は少なかったとはいえ1号線規格に準拠するから拒否もできないってことで、転覆事故防止という分かりやすい理由が後付けされた可能性は指摘しておきます。別に間違いではないですし。但し転覆しにくさってのは標準軌だからって理由の方が大きい気はしますが。

ただこうした重箱の隅つつきのような議論は、そもそも首都圏の踏切の多さという根本問題を逸らす効果がある訳で、踏切立体化が進まない現状こそが問題なんですが、地権者の権利が過大なために立体化事業が進みにくいし多額の予算を必要とすることもあって進まないという速目はあります。立体化事業自体は道路側の事業で鉄道側の負担は原則1割程度と言われますが、例えば京急蒲田駅周辺の連続立体化事業で言えば、空港線増強のネックとなる京急蒲田駅の平面交差解消に合わせて京急が追加負担をしたから事業化されたって側面があります。小田急線などの複々線化事業も同様ですね。

特に地価の高い首都圏では今後もあまり進捗は見込めません。とりあえず京王線代田橋―仙川間の立体化が手続き中ですが、危険な踏切の解消は遠いと言わざるを得ません。横浜市もIR誘致なんかよりこっちに予算使って欲しいですね。

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