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November 2019

Saturday, November 30, 2019

ガラパゴス・スモールブラザーズ

ただでさえ忙しい月末の新線開業ですが、結構な人が出てました。そして羽沢横浜国大駅に難民多数wwwww。人が住んでる羽沢団地からも横浜国大からも遠く、JR羽沢貨物駅と横浜環状2号線に挟まれていて、民家も疎らな新駅に大勢の人がいたのには笑いました。直近コンビニ1km、既存路線の最寄り駅は相鉄上星川と市営地下鉄三ツ沢上町ですが、どちらもろくな道がない。そして毎時2本の列車本数ですから、試しに降りたはいいけれど、やることなくてホームで電車待ちを余儀なくされた人多数ってことですね。

新たな都心ルートを得て沿線活性化につなげたい相鉄はこれからが正念場ですが、JR東日本との相互直通は貨物幹線の東海道貨物線の線路容量の制約から本数増は見込めず、22年に予定される新横浜経由の東急東横線・目黒線との直通が始まれば列車本数は増えますが、都心側が3ルートに分かれますから、個々のルートの本数の少なさは大きな制約条件になりそうです。面白いのは親会社の相鉄HDの筆頭株主の小田急電鉄とは競合することですね。日本の鉄道会社って必ずしも資本の論理で動いていません。

そんな日本でこんな経営統合が発表されました。

ヤフーとLINE統合 「米中に次ぐ第三極に」:日本経済新聞
いや第三極は無理。時価総額100億円超のGAFAやBATを向こうに回してせいぜい時価総額3兆円の企業連合で何ができるのか?まともな勝負にはなりません。唯一可能性があるのは国内のガリバーになることです。何しろ最強の非関税障壁(笑)、日本語がありますから^_^;。つまり楽天やメルカリからは頭1つ抜け出せるとしてもそこまでです。これビッグブラザーならぬスモールブラザーにはなれるかもしれないってことです。但し英語が公用語にならないことが前提ですが。

この辺古代の曽我氏と物部氏の争いに始まり、天皇の地位を争った壬申の乱や平安末期の源平合戦、鎌倉幕府に対する朝廷の巻き返しを図った承久の乱、室町初期の南北朝、天下分け目の関ヶ原の戦いなど、世界とは無関係に国内で争った歴史を繰り返しているようで興味深いところです。いにしえの東夷の小帝国と現代の極東の先進国。世界の端っこだからという地政学的な特徴なんでしょう。

ただしそんな日本も世界の影響は受けてるし、逆に世界に影響を与えてもいるのですが、その点に無自覚なのも昔から変わらないようです。そんなニュースを幾つか。

外資規制強化、株1%以上に届け出義務 外為法改正へ:日本経済新聞

欧米ではやっていると説明されてますが、外資の出資事前規制はほぼ例がありません。加えて出資比率1%は有価証券報告書提出義務のラインなので、欧米の投資ファンドが締め出されるか?と反応してます。株式市場の7割は外国勢という東京市場ですから、当然の反応ですね。外資が引き揚げたら株価下がるぞ。
キャッシュレス、少額・コンビニ中心 政策目的とずれ  ポイント還元制度1万人調査 :日本経済新聞
消費税増税に絡めてポイント還元を政府が支援することでキャッシュレス決済を中小零細事業者に普及させようとしたところ、実際の利用はコンビニ中心という結果です。これ予想してたんですが、日本でキャッシュレス決済が普及しない最大の理由は店が負担する手数料の高さなんですが、これアメリカなどではクレジット会社が直接展開している決済ネットワークを日本ではほぼNTTデータが独占的に供給していて、高い手数料を利用企業に課していることが根底にあります。

上記のヤフーとラインの経営統合でQRコード決済サービスの統合も噂されますが、結局根元の部分の利権に切り込まなきゃ解決しません。アリババのアリペイの場合、元々中国国内の中小零細企業向けのECサービスを展開していたアリババが、参加企業の利便性向上のために開発したものが、使い勝手の良さで爆発的に普及したもので、政府の関与がほとんどないからできたこと。逆に国策会社の利権が温存されてる日本ではそうならない訳です。この場合NTTデータもスモールブラザーと言えるかもしれません。そしてこれ。

再生エネ、送電網使えず 東日本で5割「空きなし」:日本経済新聞
関電問題のエントリーで指摘しましたが、原発のような大規模電源を保有する電力会社に送電網を管理させれば、大規模電源はダウンした時のバックアップ電源を必要としますから、それを大出力火力で充てている体制では、結局双方の電力の合計が先発枠として抑えられてますから、利用率50%といった非効率な事が起きる訳です。分散電源ならば一部が停止しても全体でバックアップ可能なんで、送電線の容量に無駄が無くなる訳ですね。世界の趨勢は完全にこれです。いやーガラパゴスなスモールブラザー達です-_-;。おまけ。
手数料ゼロが招く歪み 証券会社と高速取引業者の蜜月:日本経済新聞
個人投資家の注文情報が株式の高速取引業者(HFT)に漏れてたって問題です。何が問題かと言えば、個人の指値注文を見て先回りができるから、個人投資家にとっては利益を横取りされることになる訳です。ネット証券の普及で手数料の値引き合戦で証券会社は収入が取れないから、HFTに情報を売っていたってことです。個人投資家がおかしいと声をあげて発覚しました。何ともセコいディストピア。スモールブラザーズの末席に置いときます。

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Sunday, November 17, 2019

空飛ぶ都営交通

つーてもドローンじゃなくてこっちね。

日本最古のモノレール休止、11月から 上野動物園:日本経済新聞
上野と言えば桜の名所として有名ですが、今なんだか桜を見る会を巡って政治スキャンダルになってますね。舞台は新宿御苑ですが、公私混同極まれりですね。安倍政権のサクラを釣る会よろしく不都合な事実が明るみに出て、また下手な言い訳するからドツボにはまりつつあります。これモリカケとかと違ってわかりやすいし、何より食い物の恨みでバスティーユ襲撃からフランス革命がおっ始まったように、国民の怒りを買ってますね。いよいよ安倍政権もおしまいかな。

おっと本題^_^;。1957開業の上野公園モノレールですが、戦後のモータリゼーションで自動車が増えて渋滞が日常化し、路面交通の都電や都バスを運行する都交通局がその対策として、当時世界で唯一営業運行されていた西ドイツ、ブッパータール市の懸垂電車に注目したのが始まりです。ブッパータールの懸垂電車はランゲン式と称する懸垂式モノレールで、ブッパー川に沿う狭隘な市街地の都市交通として川の上空に建設されたものです。

鉄製トラス桁の上面にレールを固定し、両フランジの鉄車輪で支持、駆動、案内するシステムで、片側側面からアームを出して車体を吊る左右非対称の珍しい構造です。アームは台車にピンで固定され曲線通過時に自然に傾斜して遠心力を吸収する振り子構造になっており、スムーズな曲線走行が可能などの利点があります。

一方片持ち式の懸垂システムですから、走行桁の支柱はアームの反対側にしか作れないため、複線で中央に支柱を置いて左右に走行桁を配する形になり、折り返しはループが必要ですし、分岐は桁を平行移動させる大掛かりなものになりますから、複雑な路線ネットワークの構築には向かないですが、戦後地下鉄建設が交通営団によって再開され、いずれ地下鉄網が出来るとしても、地下鉄が必要なほどの需要が見込めないところを補完する輸送システムとして都は考えていました。今なら舎人ライナーのようなAGTの役割ですね。

都は都電の製造で縁があった日本車両製造と共同開発で、ランゲン式をベースに軌道桁を箱型鋼材とし、騒音対策で上面走行輪をゴムタイヤにして桁を挟み込む水平の案内輪で案内するシステムを開発しました。一方上野動物園の拡張が決まり中央通りから不忍通りへ抜ける都電の新設軌道を越えたところに西園を作ることになり、東縁と西園を結ぶ公共交通機関として実現されたものです。僅か300mの短距離で車体は小ぶりですが、走り装置は本格的で力の入ったものでした。

東京都がここまで本気になった理由は都交通局が置かれていた状況からみると理解できます。1938年施行の陸上交通事業統制法で東京市と周辺地域が指定地域となり、大まかには旧東京市域の路面交通は東京市、地下鉄は別途設立の帝都高速度交通営団、郊外は常磐線、東北線、中央線を境とする4ブロックに分けて統合するという方針が示されました。その結果東京地下鉄道と東京高速鉄道の2社は地下鉄を営団に現物出資する一方、東京地下鉄道傘下の円太郎バスと城東電気軌道は東京市へ譲渡されて、円太郎バスは市営の青バスと統合され、城東電軌は市電のネットワークに組み込まれます。

同法で東京横浜電鉄は既に傘下に収めていた京浜電気鉄道と小田急電鉄を統合して東京急行電鉄とし、遅れて京王電気鉄道を統合して所謂大東急を形成しますが、戦後トップの五島慶太が公職追放されると、被統合各社から分離独立の機運が生まれ、京王帝都電鉄、小田急電鉄、京浜急行電鉄が分離独立を果たします。

一方東京の地下鉄は営団による独占が維持されます。営団は財政投融資資金の受け皿として潤沢な資金を得て、丸ノ内線に始まる戦後の地下鉄建設を担いますが、大東急分離に見られるように、陸上交通事業統制法を戦時立法として見直すべきという機運が生まれ、私鉄各社は都心直通線の免許申請を一斉に行います。

東武鉄道:北千住―新橋
京成電鉄:押上―有楽町(後に八重洲通へ変更)
京王帝都電鉄:新宿―両国、神楽坂―京成上野、新宿―富士見ヶ丘
小田急電鉄:南新宿(後に参宮橋に変更)―東京
東京急行電鉄:中目黒―東京、目黒―広尾、渋谷―新宿
京浜急行電鉄:品川―八重洲通
他方東京都は独自に都市高速鉄道5路線を都市計画決定し、都交通局の地下鉄参入の要望を出します。
1号線:西馬込/品川―押上
2号線:祐天寺―北千住
3号線:大橋―浅草
4号線:富士見町―向原
5号線:中野―東陽町、下板橋―神田橋
事態を収拾するために当時の運輸省は有識者を集めて都市交通審議会を立ち上げ、その1号答申が1956年に出されます。その中で都の都市計画を追認する一方、地下鉄と郊外電鉄との相互直通を示唆し、1号線は京成、京急と、2号線は東急、東武との相互直通が想定されました。また地下鉄の事業主体として営団以外の参入を認め、1号線を東京都、2,4号線を営団という当面の分担を示唆します。

加えて2号線の東急との接点を中目黒に変更し、実質銀座線の延伸となる渋谷以西の3号線は東急が渋谷―二子玉川園間に銀座線規格の新線を建設し相互直通するとされました。また1号線の泉岳寺―品川間は都に対して京急が自前整備を希望し押し切りました。地下鉄建設は大きな資金と時間を要するため、営団単独では整備が進まないことから導き出された解ですが、東京の地下鉄の骨格が決まった訳です。

懸案の地下鉄参入が認められた東京都ですが、本当は大東急解体に倣って戦時体制見直しで営団を解体して東京都が引き継ぐことを想定していたのですが、そうはなりませんでした。これ戦前やはり東京市が都市計画に基づいて地下鉄整備を打ち出し、免許取得までしながら関東大震災の復興などで財政難から断念し、民間の東京高速鉄道(東横電鉄系とは別法人で後に小田原急行鉄道に化ける会社)へ免許譲渡してしまう一方、純民間資金で東京地下鉄道が開業したことで、東京市→東京都に対する不信感を当時の運輸省は持っていたと見られます。

さてそうなると、地下鉄建設のための自前資金を捻出しなければなりませんから、メーカーと共同で開発したモノレールの整備は後回しにせざるを得ませんし、それに留まらず保有資産の売却も余儀なくされます。その結果車庫や変電所などの固定施設を多数保有する都電を廃止してバスに代替するのが最も手っ取り早い訳です。つまり都営地下鉄の参入が決まったことで、都電の廃止は避けられなくなったってことです。

加えて上野公園モノレールは折角のシステム開発が活かされず取り残されます。そして設備の老朽化で車両を含む更新を繰り返しながら生き延びますが、運休機関の東園と西園の往来の便宜のために、モノレールに沿って恒久施設としての歩道橋が整備され、実質的な存在意義を失いますが、手軽な園内アトラクションとしての人気に支えられ、更新を重ね車両も4代目になりましたが、老朽化で突発的な運休もあり、日本車両製造に更新費用の見積りを依頼したところ、18億円となり、とても無理ってことで、休止が決まりました。量産に至らなかった究極の一点もので補充部品も特注じゃ維持は困難です。

尚、東京の地下鉄整備の歴史過程の影響で未だにメトロと都営の並立は続いている訳ですが、例えば美濃部都政時代にも都営による地下鉄一元化論が言われ、その時期の整備された都営新宿線と半蔵門線の九段下のバカの壁問題には工事を請け負った東京都の先走りの意図が見えます。

時代は下ってTBSによる地下鉄一元化報道東京メトロの上場を巡る都と国の駆け引きにも尾を引きます。ユーザー視点で言えば欧州で一般的な運輸連合方式による運賃共通化が出来れば良いんで、いい加減この枠組みから脱却してほしいところです。ちなみにやはり2事業体に分かれていた韓国ソウルの地下鉄では運賃統合を実現しています。東京はソウル以下ですね。

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Thursday, November 14, 2019

京急の安全対策は疑問だらけ

京急の神奈川新町の踏切事故で大きな動きがありました。600m手前で視認可能としていた踏切障害物の発光信号が見えなかったと京急が説明を覆しました。

600メートル手前で信号見えず 踏切事故、京急の説明一転:日本経済新聞
これだけでも大ニュースですが、続きがあります。
京急事故の背景に「安全意識のマズさ」、再発防止策からも浮き彫りに:ダイヤモンドオンライン
日経の記事では論点が見えませんが、ダイヤモンドオンラインの記事で明らかになります。京急の当初の説明では踏切の異常を知らせる発光信号機の最遠方のものが340m手前で600m手前から視認可能としていたのですが、実は390mの地点に設置されていて、視認可能な距離は570mになることが明らかになり、当初の説明と食い違います。

京急は120km/h時の非常制動距離を520m弱としており停止可能ではあるけど余裕が少ないことは問題です。詳しくは記事に譲りますが、実はこれ最高速105Km/h時代の基準に沿って設置されたもので、95年の最高速120km/hへのスピードアップの時も見直されていないということです。つまり安全対策の見落としの可能性が示唆されます。

もう1つの論点のブレーキ操作問題ですが、これちょっと信じ難いところです。法令上の問題以上に、鉄道事業者としての安全意識の問題として
どうなのかってことです。鉄道は鉄車輪と鉄レールの転がり摩擦の少なさを活かして、少ないエネルギーで重量物を高速に動かすことができる特徴がある訳ですが、それ故に走行中の列車の運動エネルギーは甚大で、制動距離も伸びるし事故のダメージも大きくなる訳です。

だから線路という専用空間を確保して線路上に支障物がないことを確認して運行する訳です。仮に線路上に何らかの支障物があることを確認したら、とにかく止めて衝突を回避すべきだし、仮に衝突しても速度が下がっていればダメージも小さくなる訳で、そのために非常ブレーキが装備されているという構造になっている訳です。

ところが非常ブレーキは停止するまで緩解できないから頻繁に使えばダイヤが乱れる可能性がある訳です。緩解できないというのはメカ的な面の他、運転規則で禁止されている場合もあります。非常ブレーキを引くような事態に対しては安全確認後にしか動かせない決まりという訳ですね。京急では発光信号を確認した場合には、常用ブレーキで停止し、止まり切れない時だけ非常ブレーキを使うという内規が存在していて、事故後見直され直ちに非常ブレーキを使うと改められたそうです。

京急に関しては先頭電動車主義に疑問を呈しましたし、折角ATSをアップグレードしたのに、踏切障害物検知装置との連動を取っていないおかしさは指摘してきました。ATSとの連動は他社では普通にやっていることであり、遅まきながら京急でも検討を始めるということですが、どこまでカバーされるかはわかりません。

そしてこうなると運転士だけに刑事責任を問うことの問題が浮上します。鉄道では伝統的に組合の団結が強く、組合員を擁護する姿勢からこういったケースで組合が会社に様々な提案を行いますし、それ以前に現場から上がる危険個所の是正やシステムや規定の見直しを申し入れることは珍しくありません。例えば東中野事故の時のJR東労組のケースですが、そのJR東労組を含め、労組の切り崩しが見られる現状で、鉄道の安全はどうなるでしょうか。

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Sunday, November 03, 2019

デジタル経済はビッグブラザーの夢を見る?

FCAとPSAが経営統合することになりました。車メーカーの合従連衡は続きますが、FCAは元々ルノーとの統合を希望してました。欧州では強いけど北米南米で弱いルノーにとっては渡りに船ですが、FCAは口には出さないけど量産EVを持つ日産とのアライアンスも睨んでいたことは間違いないでしょう。加えて弱いアジア市場の相互補完もあるし。

しかしルノーに対するフランス政府の干渉に辟易して断念。加えて日産が経営統合のルノー取締役会の評決を棄権したことも断念の理由となりました。日産はこれをルノーとの資本関係見直しのための交渉カードにしようとしました。おそらく元経産審議官の豊田正和氏が描いたシナリオでしょうけど、無駄になりました。つまり政府の干渉を受けたルノーと日産の双方が袖にされたってことです。また新経営陣もルノーとの関係が深いけどゴーン氏の息がかかっていない顔ぶれで、結局ルノーの意向に沿ったものになりました。そんな中で西川前社長が毎日出勤してあれこれ意見して院政を敷こうとしているとか。豊田氏が後押ししているようです。こんなこっちゃ日産は東芝の轍を踏むでしょうね。残念だけど。

自動車と共に変化の予兆があるのがIT関連企業です。特にGAFAと言われる巨大プラットホーム企業への逆風が吹き始めてます。元々個人情報保護に厳しいEUはGDPRで規制の網をかけましたし、アメリカでも独占の弊害が認識され分割論まで出てきている現状です。おそらく大恐慌時代にグラス・スティーガル法で商業銀行と投資銀行を分離してJPモルガンとモルガン・スタンレーが分離したような変化が始まる可能性はあります、元々自由度の高かった金融が規制業種になった経緯をなぞる可能性はあります。

笑い話なんですが、トランプ大統領がリーマンショックを受けてオバマ政権で規制強化された金融部門の規制緩和をぶち上げたら、金融企業幹部たちは「アマゾンが参入するからやめてくれ」と言ったとか言わないとか。今や大銀行よりも力を得た巨大IT企業の現実があります。銀行も低金利で利ザヤが稼げないから弱っている訳ですが。

例えばアマゾンのレコメンデーション・システムではユーザーの購買履歴を分析して推奨品を提案しますが、マッチングが重視されるので、提案される価格がユーザーごとに異なっていてもわからないです。つまりこのユーザーならこのジャンルの商品が高くても購買につながるという形でプレミアムを付けていてもわからないシステムです。これの意味するところは消費者余剰の搾取なんですよね。

標準的なミクロ経済理論では、価格と効用で説明されますが、効用は需要側がその商品に支払っても良いと考える価格と言い換えられます。それが実際の市場価格との比較で購買につながったりつながらなかったりする訳です。商品に高い値付けをするユーザーは少数で多数派は安い価格を望みますから、需要曲線は右肩下がりになる訳です。

一方供給曲線は売れる価格が高いほど供給側にインセンティブが働いて市場投入量を増やしますから供給曲線は右肩上がりになり、両者の好転が市場の均衡価格となります。そして市場の条件が同じなら均衡価格は一意に決まりますから一物一価が成り立つわけです。市場が開かれていて情報の非対称性が存在しないことを前提にすれば、ユーザーが均衡点以上の効用を認める限り、所謂お値打ち感を味わい顧客満足が得られます。逆に均衡点以下の効用しか認めないユーザーは購買しないから不満はない訳です。

しかしレコメンデーションでプレミアムがつけられていれば、この消費者余剰は売り手の超過利潤に化けるわけですね。つまり公開市場ならより安価に購買できた商品が割高になる訳で、それだけ売り手は儲けが大きくなる訳です。つまりシステムをブラックボックス化することで、情報の非対称性を作り出し、市場の失敗を実現する訳です。更にIoTで商品自体がオーダーメードになると、ますます公開市場の均衡価格が曖昧になり、情報の非対称性は拡大します。一方売り手は注文を受けてから商品を手配すれば良いから、在庫を持たずに済みますから、低リスクで超過利潤を得られます。この辺気付いている人はまだ少ないと思いますが。見方を変えればデジタル計画経済じゃないかと。AI”ビッグブラザー”が統治するディストピアかも。

実は交通の世界でも航空や都市間バスの分野ではダイナミックプライシングと呼ばれて実装が始まってます。利用日の相当前から予約を受け付け、予約の入込を見ながら価格を変動させるものですが、逆に予約を誘発するための大胆な割引運賃で訴求して選に漏れた人にやや高い価格ならまだ空きがありますと誘導したりといったことも可能になります。つまり安値狙いのバーゲンハンターを釣ってサクラにするというと言い過ぎかもしれませんが、輸送キャリアがその中身を公開することはないですからわかりません。その辺を踏まえてのこのニュース。

JR東日本、首都圏で年内にもMaaS導入へ:日本経済新聞
詳細は不明なので、現時点での評価は難しいですが、恐らく地域限定でタクシーやレンタサイクルと連携したサービスを始めるということでしょう。おそらくサブスクリプションのイメージなんでしょうけど、定額で一定回数のサービスが受けられるというものから始めて、定着してきたら内容に多様性を持たせユーザーに選択させるという形になるんじゃないかと思います。

サービス内容と価格の見合いになりますが、ユーザー獲得のために戦略的な低価格を提示する可能性はあります。一番の狙いはユーザーの利用履歴の取得じゃないかと睨んでおります。というのも、JR東日本はSuicaの利用履歴データをユーザーに無断で外販して提供していたことが発覚し、謝罪に追い込まれたことがあります。2013年7月25日に謝罪と共にユーザーに除外手続きを呼びかけましたが、これも関連会社経由の受付で不透明と批判を浴び、利用履歴データの活用は足踏みしています。MaaSで新たに会員募集するなら、利用規約に履歴の活用の許諾を条件にすることで、これを突破しようと考えても不思議ではありません。

もちろんそれだけあ理由ではなく、東京でもドライバー不足でフィーダー輸送を担うバスの減便が始まっており、また20年代には東京も人口減少に転じると見られており、鉄道事業者もラストマイルの集客を自前でやらなければならない時代が訪れる訳です。この面でも先手を打とうということでしょう。

しかし他社が追随した時にサービスが輻輳してますます複雑になり、ユーザー側から見て情報の非対称性が拡大する可能性はあります。それが複数事業者間の健全な競争となって整理淘汰を経て落ち着くなら悪くはありませんが、逆に鉄道各社の関連事業を絡めて複雑化が進む可能性もあります。この辺ユーザー側の目利きも問われます。

MaaS先進地域は圧倒的に欧州ですが、これは都市圏の運輸連合による共通運賃制が下敷きになっており、地域限定のプラットフォーマーの役割をしていることが大きいと言えます。この場合運賃自体は市場価格ではありませんが、公定価格がサービスの良否を図る公開情報として機能しているから、不透明感を持たれず実行できるってことなんでしょう。そう考えると事業者単位のMaaSより前に共通運賃制の実現があった方がユーザーには望ましいと言えますが、メトロと都営地下鉄の運賃共通化すらままならない現状では望み薄ですね。

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