空飛ぶ都営交通
つーてもドローンじゃなくてこっちね。
日本最古のモノレール休止、11月から 上野動物園:日本経済新聞上野と言えば桜の名所として有名ですが、今なんだか桜を見る会を巡って政治スキャンダルになってますね。舞台は新宿御苑ですが、公私混同極まれりですね。安倍政権のサクラを釣る会よろしく不都合な事実が明るみに出て、また下手な言い訳するからドツボにはまりつつあります。これモリカケとかと違ってわかりやすいし、何より食い物の恨みでバスティーユ襲撃からフランス革命がおっ始まったように、国民の怒りを買ってますね。いよいよ安倍政権もおしまいかな。
おっと本題^_^;。1957開業の上野公園モノレールですが、戦後のモータリゼーションで自動車が増えて渋滞が日常化し、路面交通の都電や都バスを運行する都交通局がその対策として、当時世界で唯一営業運行されていた西ドイツ、ブッパータール市の懸垂電車に注目したのが始まりです。ブッパータールの懸垂電車はランゲン式と称する懸垂式モノレールで、ブッパー川に沿う狭隘な市街地の都市交通として川の上空に建設されたものです。
鉄製トラス桁の上面にレールを固定し、両フランジの鉄車輪で支持、駆動、案内するシステムで、片側側面からアームを出して車体を吊る左右非対称の珍しい構造です。アームは台車にピンで固定され曲線通過時に自然に傾斜して遠心力を吸収する振り子構造になっており、スムーズな曲線走行が可能などの利点があります。
一方片持ち式の懸垂システムですから、走行桁の支柱はアームの反対側にしか作れないため、複線で中央に支柱を置いて左右に走行桁を配する形になり、折り返しはループが必要ですし、分岐は桁を平行移動させる大掛かりなものになりますから、複雑な路線ネットワークの構築には向かないですが、戦後地下鉄建設が交通営団によって再開され、いずれ地下鉄網が出来るとしても、地下鉄が必要なほどの需要が見込めないところを補完する輸送システムとして都は考えていました。今なら舎人ライナーのようなAGTの役割ですね。
都は都電の製造で縁があった日本車両製造と共同開発で、ランゲン式をベースに軌道桁を箱型鋼材とし、騒音対策で上面走行輪をゴムタイヤにして桁を挟み込む水平の案内輪で案内するシステムを開発しました。一方上野動物園の拡張が決まり中央通りから不忍通りへ抜ける都電の新設軌道を越えたところに西園を作ることになり、東縁と西園を結ぶ公共交通機関として実現されたものです。僅か300mの短距離で車体は小ぶりですが、走り装置は本格的で力の入ったものでした。
東京都がここまで本気になった理由は都交通局が置かれていた状況からみると理解できます。1938年施行の陸上交通事業統制法で東京市と周辺地域が指定地域となり、大まかには旧東京市域の路面交通は東京市、地下鉄は別途設立の帝都高速度交通営団、郊外は常磐線、東北線、中央線を境とする4ブロックに分けて統合するという方針が示されました。その結果東京地下鉄道と東京高速鉄道の2社は地下鉄を営団に現物出資する一方、東京地下鉄道傘下の円太郎バスと城東電気軌道は東京市へ譲渡されて、円太郎バスは市営の青バスと統合され、城東電軌は市電のネットワークに組み込まれます。
同法で東京横浜電鉄は既に傘下に収めていた京浜電気鉄道と小田急電鉄を統合して東京急行電鉄とし、遅れて京王電気鉄道を統合して所謂大東急を形成しますが、戦後トップの五島慶太が公職追放されると、被統合各社から分離独立の機運が生まれ、京王帝都電鉄、小田急電鉄、京浜急行電鉄が分離独立を果たします。
一方東京の地下鉄は営団による独占が維持されます。営団は財政投融資資金の受け皿として潤沢な資金を得て、丸ノ内線に始まる戦後の地下鉄建設を担いますが、大東急分離に見られるように、陸上交通事業統制法を戦時立法として見直すべきという機運が生まれ、私鉄各社は都心直通線の免許申請を一斉に行います。
東武鉄道:北千住―新橋
京成電鉄:押上―有楽町(後に八重洲通へ変更)
京王帝都電鉄:新宿―両国、神楽坂―京成上野、新宿―富士見ヶ丘
小田急電鉄:南新宿(後に参宮橋に変更)―東京
東京急行電鉄:中目黒―東京、目黒―広尾、渋谷―新宿
京浜急行電鉄:品川―八重洲通他方東京都は独自に都市高速鉄道5路線を都市計画決定し、都交通局の地下鉄参入の要望を出します。
1号線:西馬込/品川―押上
2号線:祐天寺―北千住
3号線:大橋―浅草
4号線:富士見町―向原
5号線:中野―東陽町、下板橋―神田橋事態を収拾するために当時の運輸省は有識者を集めて都市交通審議会を立ち上げ、その1号答申が1956年に出されます。その中で都の都市計画を追認する一方、地下鉄と郊外電鉄との相互直通を示唆し、1号線は京成、京急と、2号線は東急、東武との相互直通が想定されました。また地下鉄の事業主体として営団以外の参入を認め、1号線を東京都、2,4号線を営団という当面の分担を示唆します。
加えて2号線の東急との接点を中目黒に変更し、実質銀座線の延伸となる渋谷以西の3号線は東急が渋谷―二子玉川園間に銀座線規格の新線を建設し相互直通するとされました。また1号線の泉岳寺―品川間は都に対して京急が自前整備を希望し押し切りました。地下鉄建設は大きな資金と時間を要するため、営団単独では整備が進まないことから導き出された解ですが、東京の地下鉄の骨格が決まった訳です。
懸案の地下鉄参入が認められた東京都ですが、本当は大東急解体に倣って戦時体制見直しで営団を解体して東京都が引き継ぐことを想定していたのですが、そうはなりませんでした。これ戦前やはり東京市が都市計画に基づいて地下鉄整備を打ち出し、免許取得までしながら関東大震災の復興などで財政難から断念し、民間の東京高速鉄道(東横電鉄系とは別法人で後に小田原急行鉄道に化ける会社)へ免許譲渡してしまう一方、純民間資金で東京地下鉄道が開業したことで、東京市→東京都に対する不信感を当時の運輸省は持っていたと見られます。
さてそうなると、地下鉄建設のための自前資金を捻出しなければなりませんから、メーカーと共同で開発したモノレールの整備は後回しにせざるを得ませんし、それに留まらず保有資産の売却も余儀なくされます。その結果車庫や変電所などの固定施設を多数保有する都電を廃止してバスに代替するのが最も手っ取り早い訳です。つまり都営地下鉄の参入が決まったことで、都電の廃止は避けられなくなったってことです。
加えて上野公園モノレールは折角のシステム開発が活かされず取り残されます。そして設備の老朽化で車両を含む更新を繰り返しながら生き延びますが、運休機関の東園と西園の往来の便宜のために、モノレールに沿って恒久施設としての歩道橋が整備され、実質的な存在意義を失いますが、手軽な園内アトラクションとしての人気に支えられ、更新を重ね車両も4代目になりましたが、老朽化で突発的な運休もあり、日本車両製造に更新費用の見積りを依頼したところ、18億円となり、とても無理ってことで、休止が決まりました。量産に至らなかった究極の一点もので補充部品も特注じゃ維持は困難です。
尚、東京の地下鉄整備の歴史過程の影響で未だにメトロと都営の並立は続いている訳ですが、例えば美濃部都政時代にも都営による地下鉄一元化論が言われ、その時期の整備された都営新宿線と半蔵門線の九段下のバカの壁問題には工事を請け負った東京都の先走りの意図が見えます。
時代は下ってTBSによる地下鉄一元化報道や東京メトロの上場を巡る都と国の駆け引きにも尾を引きます。ユーザー視点で言えば欧州で一般的な運輸連合方式による運賃共通化が出来れば良いんで、いい加減この枠組みから脱却してほしいところです。ちなみにやはり2事業体に分かれていた韓国ソウルの地下鉄では運賃統合を実現しています。東京はソウル以下ですね。
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