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Thursday, November 14, 2019

京急の安全対策は疑問だらけ

京急の神奈川新町の踏切事故で大きな動きがありました。600m手前で視認可能としていた踏切障害物の発光信号が見えなかったと京急が説明を覆しました。

600メートル手前で信号見えず 踏切事故、京急の説明一転:日本経済新聞
これだけでも大ニュースですが、続きがあります。
京急事故の背景に「安全意識のマズさ」、再発防止策からも浮き彫りに:ダイヤモンドオンライン
日経の記事では論点が見えませんが、ダイヤモンドオンラインの記事で明らかになります。京急の当初の説明では踏切の異常を知らせる発光信号機の最遠方のものが340m手前で600m手前から視認可能としていたのですが、実は390mの地点に設置されていて、視認可能な距離は570mになることが明らかになり、当初の説明と食い違います。

京急は120km/h時の非常制動距離を520m弱としており停止可能ではあるけど余裕が少ないことは問題です。詳しくは記事に譲りますが、実はこれ最高速105Km/h時代の基準に沿って設置されたもので、95年の最高速120km/hへのスピードアップの時も見直されていないということです。つまり安全対策の見落としの可能性が示唆されます。

もう1つの論点のブレーキ操作問題ですが、これちょっと信じ難いところです。法令上の問題以上に、鉄道事業者としての安全意識の問題として
どうなのかってことです。鉄道は鉄車輪と鉄レールの転がり摩擦の少なさを活かして、少ないエネルギーで重量物を高速に動かすことができる特徴がある訳ですが、それ故に走行中の列車の運動エネルギーは甚大で、制動距離も伸びるし事故のダメージも大きくなる訳です。

だから線路という専用空間を確保して線路上に支障物がないことを確認して運行する訳です。仮に線路上に何らかの支障物があることを確認したら、とにかく止めて衝突を回避すべきだし、仮に衝突しても速度が下がっていればダメージも小さくなる訳で、そのために非常ブレーキが装備されているという構造になっている訳です。

ところが非常ブレーキは停止するまで緩解できないから頻繁に使えばダイヤが乱れる可能性がある訳です。緩解できないというのはメカ的な面の他、運転規則で禁止されている場合もあります。非常ブレーキを引くような事態に対しては安全確認後にしか動かせない決まりという訳ですね。京急では発光信号を確認した場合には、常用ブレーキで停止し、止まり切れない時だけ非常ブレーキを使うという内規が存在していて、事故後見直され直ちに非常ブレーキを使うと改められたそうです。

京急に関しては先頭電動車主義に疑問を呈しましたし、折角ATSをアップグレードしたのに、踏切障害物検知装置との連動を取っていないおかしさは指摘してきました。ATSとの連動は他社では普通にやっていることであり、遅まきながら京急でも検討を始めるということですが、どこまでカバーされるかはわかりません。

そしてこうなると運転士だけに刑事責任を問うことの問題が浮上します。鉄道では伝統的に組合の団結が強く、組合員を擁護する姿勢からこういったケースで組合が会社に様々な提案を行いますし、それ以前に現場から上がる危険個所の是正やシステムや規定の見直しを申し入れることは珍しくありません。例えば東中野事故の時のJR東労組のケースですが、そのJR東労組を含め、労組の切り崩しが見られる現状で、鉄道の安全はどうなるでしょうか。

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Comments

「非常ブレーキは停止するまで緩解できない」は嘘です。
電磁直通ブレーキ車ならともかく京急は全車種が電気指令式ブレーキなので、非常制動をかけても途中で緩解できます。
経済誌の鉄道ジャーナリストの解説を鵜呑みにしてはいけません。

あまり指摘されることがないのですが、非常制動には乗客の安全性の問題もあります。
夕方ラッシュ時に埼京線で新宿を発車した直後に急停車したことがありました。
池袋で非常停止ボタンが押されたためとの説明でしたが、車内は将棋倒しになり、右肩を強打して2〜3日痛かったのを覚えています。お年寄りなら確実に骨折でしょうね。別の日には非常制動で前に立っていた女性が倒れてきてハイヒールで足を踏まれたこともあり、文字通り踏んだり蹴ったりの通勤です...^^;

それでも衝突事故で亡くなるよりは非常制動による骨折の方がマシだと思われるかもしれませんが、リスクの頻度が違います。踏切の特発は日常茶飯事で(出自が軌道上がりの京急はとくに多い)愚直に非常制動をかければ、極端な話、毎日車内で怪我人が出てもおかしくありません。
それに対して大型車の踏切侵入による重大事故は1路線でせいぜい数十年に一度あるかどうか。
京急を擁護するわけではありませんが、運転士が非常制動を躊躇う心情は理解できます。

JR東日本のATACSには踏切制御機能があって、踏切異常時には常用制動で停車できるようになっています。
(東横線のATC-Pなど他社でも似たような機能を有する保安装置があります)
それに対して、C-ATSはメモリ容量が少なく拡張性に乏しいATSです。
(一説には人間系重視の京急・経営体力の弱い京成がケチったとも)

特発の増設で当座はしのぐとしても、長期的にはCBTC導入など抜本的に変えていく必要がありそうです。

Posted by: yamanotesen | Monday, November 25, 2019 10:59 PM

最近の車両は停止しなくても非常ブレーキが緩解可能なのは承知しておりますが、運転規則上は停止して安全確認が必要としている事業者が多いと思います。

確かに非常ブレーキによる乗客の転倒など車内事故は深刻な問題ですが、京急の今回の事故に関しては、京急自身が説明を翻した訳で、その裏に、最高速105km/h時代に設置した踏切障害の発光信号が見直されていなかったことと、非常ブレーキ前提で設置されていたにもかかわらず、内規で常用ブレーキで停止としていた点はかなり重大な問題です。

他社のATSやATCと比べてC-ATSはショボいといえばそうなんですが、これJR西日本の尼崎事故の時にも問題になりましたが、福知山線で用いられていたATS-SWには地上子を2個設置して速度照査機能を持たせることが可能だったにもかかわらず、タイトなダイヤでATSを踏むと混乱するからと採用されていませんでした。この辺安全優先と言えるのか?という疑問があります。

それ以前に首都圏の鉄道は踏切が多すぎる訳で、本来そちらを何とかすべきですが、道路側の事業となる一方、鉄道側の複々線化や設備更新など鉄道側に受益に対応した一定の負担が生じてそれを鉄道側が承認するケース以外で事業化されることが稀というあたりに、問題の根源があると思います。そのため幹線道路だけ跨線橋やアンダーパスが設けられ、それが連続立体化事業の妨げになるケースもあります。

ですからATSなど保安装置で防護するのは鉄道側の自衛策でもある訳ですが、それだけで解決できる問題でもありません。しかし京急は自衛策という意識が弱いのかなとは思います。

>yamanotesenさん
>
>「非常ブレーキは停止するまで緩解できない」は嘘です。
>電磁直通ブレーキ車ならともかく京急は全車種が電気指令式ブレーキなので、非常制動をかけても途中で緩解できます。
>経済誌の鉄道ジャーナリストの解説を鵜呑みにしてはいけません。
>
>あまり指摘されることがないのですが、非常制動には乗客の安全性の問題もあります。
>夕方ラッシュ時に埼京線で新宿を発車した直後に急停車したことがありました。
>池袋で非常停止ボタンが押されたためとの説明でしたが、車内は将棋倒しになり、右肩を強打して2〜3日痛かったのを覚えています。お年寄りなら確実に骨折でしょうね。別の日には非常制動で前に立っていた女性が倒れてきてハイヒールで足を踏まれたこともあり、文字通り踏んだり蹴ったりの通勤です...^^;
>
>それでも衝突事故で亡くなるよりは非常制動による骨折の方がマシだと思われるかもしれませんが、リスクの頻度が違います。踏切の特発は日常茶飯事で(出自が軌道上がりの京急はとくに多い)愚直に非常制動をかければ、極端な話、毎日車内で怪我人が出てもおかしくありません。
>それに対して大型車の踏切侵入による重大事故は1路線でせいぜい数十年に一度あるかどうか。
>京急を擁護するわけではありませんが、運転士が非常制動を躊躇う心情は理解できます。
>
>JR東日本のATACSには踏切制御機能があって、踏切異常時には常用制動で停車できるようになっています。
>(東横線のATC-Pなど他社でも似たような機能を有する保安装置があります)
>それに対して、C-ATSはメモリ容量が少なく拡張性に乏しいATSです。
>(一説には人間系重視の京急・経営体力の弱い京成がケチったとも)
>
>特発の増設で当座はしのぐとしても、長期的にはCBTC導入など抜本的に変えていく必要がありそうです。

Posted by: 走ルンです | Tuesday, November 26, 2019 09:59 PM

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