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January 2020

Sunday, January 26, 2020

気候変動の経済リスクに向き合う欧米当局

タイトルはそうじゃない某日本国を揶揄してるんですが^_^;。

気候変動がもたらす金融リスク、欧米当局が分析開始*:日本経済新聞
主なリスクは2つあって、異常気象や海面上昇による自然災害の増加により土地価格の低下による融資の担保割れや、保険金支払いの増加による保険会社の経営悪化などと、温暖化対策としてのCO2削減対策の結果として化石燃料価格が下落して、油田ガス田や石炭火力発電が座礁資産となり不良債権化することなどが挙げられます。

前者は日本でも台風被害で現実のものと認識されるようになってきましたが、後者に関しては認識が弱いどころか、内外で石炭火力発電所の新設計画を進めていて、世界的に非難されてます。飛び恥のグレタ・トゥンベリさんからも厳しく叱責されてます。

舌鋒鋭いグレタさんの発言に対しては、様々な反応が見られますが、欧米では多くの若者が共感している一方、日本ではあまり見られないのが不思議です。勿論現在の産業構造の大転換を伴い、時間も費用もかかる話ですが、現在の富を生み出す仕組みを温存する結果、その後始末のコストが将来世代へ先送りされるという構図で見れば、グレタさんに代表される若年世代が不満を表明するのは自然なことです。

それに耳を傾けられないとすれば、それは現在世代のエゴでしかない訳で、気候変動に限りませんが、環境問題は突き詰めれば現役世代と将来世代間の富の分配に関わる問題であり、社会制度として解決が求められるものであって、科学技術の進化で解決できるという性格の問題ではないということは押さえておきましょう。灼熱の氷河急行で取り上げた2009年のCRUメール流出事件で騒がれたデータ捏造が、結局捏造の証拠なしとなり、寧ろCO2原因説を強化した経緯に見られるように、今利益を得ている人達による言いがかりは後を絶ちません。

その意味で小泉環境相の石炭火力見直し発言は妥当なものですが、政府与党からは困惑する声が聴かれます。確かに原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける政府のエネルギー基本計画を前提とする限り、13か月ごとに運転停止して点検が義務付けられている原発のバックアップ電源として、大出力石炭火力は必要不可欠ですし、まして安全対策の追加費用が重荷で原発の再稼働が進まない現状では、石炭火力を主力電源とせざるを得ないのが大手電力会社の事情としてある訳ですが、将来の重荷を背負わされる若者がそんなこと忖度する必要はないです。

そんな中で欧米の金融当局が気候変動リスクを意識し始めたのは、時代の変化の帰結と見ることもできます。特にECBはIMF専務理事だったラガルト新総裁が金融政策の見直しを宣言し、これまでの2%インフレ目標のための量的緩和やマイナス金利政策と共に、気候変動リスクへの対応も検討中ということで注目されます。昨今金融政策の限界説が言われ、低成長が常態化している中で、効果が乏しい一方副作用が目立つ量的緩和やマイナス金利の見直しは避けて通れませんが、加えて気候変動リスクを金融政策に織り込む模索が始まった訳です。

具体策はわかりませんが、化石燃料関連への融資を抑制して再生可能エネルギー関連へ資金シフトを促す方向性が打ち出される可能性はあります。但し悩ましいのは、これ高度経済成長時代の日銀の窓口規制と同じようなものになるとすれば、これまで模索されてきた中央銀行の政治に対する独立性の議論を揺り戻すことになりかねないだけに、議論を呼びそうです。QQEで出口戦略を封印し緩和継続しか選択肢のない日銀にとっては議論に参加すらできない訳です。

そんな日本にも変化の兆しはあります。

再生エネ、地域越え連携 太陽光など一括制御に免許制:日本経済新聞
太陽光など分散する多数の小規模電源を束ねて仮想発電所(VPP)とする事業を免許制として参入を受け付けるというもの。地産地消のマイクログリッドの制度化ですが、台風被害で長期停電を余儀なくされたこともあり、分散電源の重要性を政府も認めた形です。関連してこんな記事も。
停電下、ともった明かり 台風で分散型電源の強み証明  電力、代わる主役(中):日本経済新聞
千葉県睦沢町の町営住宅や道の駅に給電する同町出資のCHIBAむつざわエナジーが地元産天然ガス発電で給電した結果「停電に気付かなかった」と。繰り返し述べてますが、分散電源による地産地消型のマイクログリッドの災害に対する強靭さを証明しました。これ太陽光や風力など、その地域で調達可能なエネルギー源を用いれば、かなり応用範囲が広いと言えます。

加えて言えばえちぜん鉄道の最エネ電力託送事業がヒントになりますが、需要者としての鉄道事業者が地域の分散電源を束ねてマイクログリッドの核となる形で事業参入の可能性が出てくる訳です。これ運賃収入以外の収益源が得られることに留まらず、災害時でも停電リスクのが低減できることを売りに沿線への移住を促す効果も期待できますし、需要者としての鉄道の省電力技術で、例えば回生ブレーキ電力を蓄電してVPP電源の一翼を担うという形でコスト削減と収益確保の両立も狙えるなど可能性が広がります。

問題は相応の設備投資が必要なので、経営が苦しい地方私鉄には参入ハードルが高いですが、自治体が支援して融資先の乏しい地銀の融資を引き出せれば、過疎化で苦しむ地方の課題を解決する可能性もあります。逆に大電流の制御に四苦八苦している首都圏のJRや大手私鉄では制御の困難が伴うだけに小規模に始められる地方私鉄に比較優位があると思います。是非チャレンジしてほしいところです。

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Sunday, January 12, 2020

赤恥のアホかい

飛び恥逃げ恥の後は赤恥でした。ゴーン氏がプレゼンテーション能力を見せつけた会見で日本の人質司法を非難して世界に拡散した一方、森法相が異例の早朝会見で反論したものの、「ゴーン氏は日本の法廷で潔白を証明すべき」とした発言に外国人記者が「日本の司法制度は推定無罪が無いのか」と突っ込まれて炎上しました。

日本の人質司法問題はかねてより弁護士会が問題視してましたし、国連からも指摘されてましたが、日本の司法制度の正当性を言い立てるばかりの会見の異常さは、寧ろ日本はやはりおかしいと見られてしまいます。被告に潔白の証明は必要なく、検察に挙証責任があるのは刑事司法の常識です。弁護士資格のある現役の法相が知らないとすれば恥ずかしいし、知っていて意図的に世論誘導を意図したとすれば悪質です。しかも突っ込まれて炎上って恥の上塗り。閣僚がこれで日本大丈夫か?

米イラン対立はイランの報復がありましたが、事前通告の上人のいないところを狙ったもので、イランもアメリカとの全面対決は望まないし、人的被害がなかったとしてトランプ大統領も予告していた反撃を自重しました。国家間の軍事衝突のコストが高くなった結果、双方寸止めはとりあえず安堵ですが、イラン革命防衛隊によるウクライナ機の撃墜という不幸な出来事が起こりました。当初アメリカが指摘しイランは否定していたものの、一転認めて謝罪という異例の展開ですが、対立構図だけは残ります。

思えば冷戦時代にはソビエトによる大韓航空機撃墜とかありましたし、最近でもマレーシア航空機のロシア軍の誤射と見られる撃墜とか、トルコ軍によるロシア軍機撃墜などがありますが、軍事的対立の結果起きた訳で、こういったトバッチリは今後も起こり得ます。アラブに派遣される自衛隊艦船大丈夫か?内緒ですが、日米安保条約第5条の定めるところにより、日本の施政権下にあるエリアへの攻撃以外では米軍の防衛義務はありませんから、米軍は助けてくれません。

話題を戻しますが、ゴーン氏問題に関連してこのニュース。

IRインフラで企業側に助言 秋元議員、収賄容疑再逮捕へ:日本経済新聞
愛ある成長戦略で取り上げた秋元元国交副大臣が現在進行形で日本の人質司法にはまってます。特捜の狙いはわかりませんが、とりあえず微罪で身柄を確保し勾留期限が来たら別件で再逮捕と容疑を細切れ小出しにして、結果的に先進国ではありえない長期勾留になります。

罪を否認したり黙秘したりすれば延々と勾留が続き、保釈請求も認めないという姿勢ですが、これ被告に認められた法的権利なんですがお構いなし。検察が考えるストーリーに沿った自白を強要されます。それでも認めないと証拠の捏造までしてしまうことが、2009年の障碍者郵便制度悪用事件で逮捕された厚労省局長の村木厚子氏の冤罪事件で明らかになりました。奇しくも弁護士はゴーン氏と同じ弘中惇一郎弁護士でした。

もう一つゴーン氏の事件で特筆すべきは日本版司法取引の適用2例目という点です。1例目は三菱日立パワーシステムズ(MHPS)のタイ火力発電事業を巡る幹部3人の外国公務員贈賄事件で、法人としてのMHPSが告発し3人は在宅起訴で有罪になる一方、MHPSは起訴猶予となったものですが、会社のために働いた幹部社員を刺したという意味で腑に落ちない事件です。また司法取引導入の本来の目的である企業犯罪や組織犯罪で末端の行為者の罪を軽減することで証言を得て組織罰に迫ることが想定されていた筈なのに、逆に企業を守るために適用されたという意味で、法の趣旨に反します。

ゴーン氏の事件では日本での公判が事実上不可能になったことから、捜査段階での司法取引の実態は不明なままですが、MHPSの事例から類推すると、ゴーン氏に罪を被せる構図はあり得ます。特にルノーとの経営統合に拒否感を示していた日産幹部からすれば、フランス政府の圧力でマーチの欧州版マイクラの製造をインドで行う予定をフランス政府の圧力でフランス国内のルノーの工場に変更されたことがありました。

加えて長期保有株主の議決権を2倍にするフロランジェ法を成立させて、フランス政府のルノーの議決権を15%から30%に倍増させたこともあり、ルノーCEO兼務となったゴーン氏はフランス政府とのやり取りに忙殺されていた訳ですが、ある時点でルノーと日産の経営統合を口にするようになり、裏切られたと感じた日産幹部によるクーデターの可能性は排除できません。

しかし実際にはゴーン氏はフランス政府の日産への直接関与を阻止し、日産によるルノー株を通告なしで15%から25%に買い増すことを認めさせるなど、日産を守ろうとしていたように見えます。しかも日産保有のルノー株式も一部フロランジェ法が適用されますから、実質22%相当の議決権を保有していて、僅か3%の調達でルノーの日産に対する議決権を消せる訳です。ある意味日産を守った恩人なのですが。同時に周辺をイエスマンで固めて強引に事を進める姿勢もあって、その恐怖心からゴーン氏パージに動いた可能性はあります。

しかし冷静に考えれば新たに選任された3トップの内2人はルノー人脈でゴーン氏と無縁。残る生え抜きエースの関氏は日本電産にスカウトされて日産を去ることになりました。人事面では寧ろルノー支配が強まっていて、しかもフランス政府に楯突いたゴーン氏はいないって、フランス政府の思惑通りの展開です。ただしこのゴタゴタで業績は下がる一方。3社連合のシナジーどころか主導権争いで消耗するのは目に見えてます。クーデター説が正しいとすれば、目先しか見えてない日産幹部のガバナンス能力の絶望的な欠如ですね。

一方日本が誇るトヨタですが、CASEの時代で明らかに出遅れています。ハイブリッド車の成功の一方、関連特許をガチガチに固めたために外国勢を含めハイブリッド車にそっぽを向かれ、仲間づくりに失敗します。一方日産は量産EVのリーフを出して電動化で先んじており、自動運転技術でも過去からの研究の蓄積があって他社に先行してます。加えて米ウェイモとの提携も発表しており、CASEのS(シェア)以外で先行している状況です。

この構図はかつてブルーバードとコロナのBC戦争やサニーとカローラのSC戦争と同じ構図なんですね。技術的に日産が先行し資金力のあるトヨタが後追いする形で日本のモータリゼーションが活性化されたのですが、日産が元気を失えばトヨタは海外勢との競争になりますが、実はトヨタ車が売れている地域は日本と北米に限定されていて、欧州では劣勢ですし、アジアでもシェアを伸ばしているとはいえ、価格帯が高く普及は限られているという中で苦戦を強いられています。そしてトヨタの迷いを示すこのニュース。

トヨタ、街づくり実験を静岡で:日本経済新聞
いかに資金力のあるトヨタとはいえ、100年に1度と言われる自動車の変革期の技術革新を自前で展開するのは大変なことですが、ハイブリッド車の失敗が示すように仲間づくりの下手な企業体質でもありますし、トヨタと釣り合う戦略パートナーは得難い現実もあり、トヨタ自身で結果を出すしかない訳です。しかしそのコストは膨大でマネタイズに自信が持てない。一方閉鎖した裾野市の工場跡地の有効利用にもなり研究開発減税の恩恵もある訳で、この辺のトヨタの抜け目なさは健在です。

そして実物を作って不具合を徹底的にダメ出しして、お得意のカイゼンプロセスで収益化の展望を得ようってことですから、トヨタとしては大きな賭けでもありますし、過去の成功体験から離れられない面もあるという訳です。何かに似ている気がしますが、JR東海の中央リニアが単体での収益性に疑問がある中で、実物がないと本命のアメリカへの売り込みが出来ないと巨額投資に走る構図と似ています。どちらも名古屋の会社ですが、メンタリティが似てるのかな。

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Sunday, January 05, 2020

新年早々葬送草草

暮れに膝痛めたのに、新年早々Wifiルーターご臨終で仕方なく足引き摺って買いに行った散々な年末年始ですが、飛び恥に続いて逃げ恥とわ。

ゴーン元会長、無断出国か レバノンに入国:日本経済新聞
弁護団から見れば、ケリー被告と共に法人としての日産自動車も被告として訴追されていて、日本の刑事司法では分離公判で日産に先に有罪判決を言い渡して既成事実を作って、本丸のゴーン氏の反論を封じるって常套手段でして、リニア談合で大林組が先に刑を確定させて大成、鹿島を追い込むアレです。それを阻止すべく統一公判を仕掛けて主張の異なる被告同士を公判で論戦させる枠組みを実現させた弁護団が意図的に逃がす訳がありません。この手の雑音は無視しましょう。

勿論保釈中の逃亡は犯罪ですが、実際に長期勾留されて弁護士や家族との接見も制限される日本の刑事司法手続きの異常さは世界から注目されています。故に逃げるのも無理もないという世界の反応になっています。それどころか倒産寸前の日本企業を救った外国人経営者への仕打ちという意味で、今後日本企業のために働こうという外国人が減る可能性もあります。これ結構深刻な問題ですが。一応お断りしておきますが、ゴーン氏が正しいというつもりは更々ありません。推定無罪の原則に従っているまでです。

思えば2018年大晦日のエントリーでも取り上げてましたから、何だか縁があるのかしらん。同時に2018年の東証大納会で株価が下がったことも思い出されますが。2019年も下げたものの下げ幅は小さく、寧ろ株価の堅調ぶりが目立ちます。但し宴はここまでかもしれません。株式市場のざわつきが見られます。

TOPIX改革、日銀緩和に波紋 ETF購入巡り:日本経済新聞
東証改革で一部市場を分割してプライム市場を創設して3部体制とする方向で話が進んですが、その銘柄選択がどうなるかでざわついている一方、1部市場全銘柄対象だった東証株価指数TOPIXをより流動性の高い銘柄に絞り込む案が検討されており、実現すれば日銀のETF購入の意義が問われる事態となります。多数の銘柄が上場している1部市場全銘柄対象だから、緩和資金を広く行き渡らせるという理屈が通用していたのに、流動性の高い銘柄に限定されれば、より相場操縦の意味合いが強くなり、政策の正当性に疑義が生じます。八百長株式市場もこれまでか。

日本の場合は日銀やGPIFの爆買いが問題視されてますが、一方世界では企業が余剰資金を使った自社株買いが盛んで、やはり市場を歪めています。本来の株式市場は企業にとっては資金調達の場である筈で、事業の拡大など新規投資の資金を公募増資で集めることで、銀行融資などの借り入れを減らせる訳ですが、この場合株式市場に資金が流入することになり、成長に繋がる一方、自社株買いは株価上昇を通じて余剰資金を投資家に渡すことに他ならない訳で、株式市場から資金が流出していることを意味します。だから株価は高くても成長には繋がらず、市場を歪めてます。企業の余剰資金はFRBなど金融当局の量的緩和の結果であり、回り回ってということで、日銀のETF買いと違って直接買い入れではないだけの違いかもしれません。

あとユニコーンなどのベンチャー投資も、投資家にとってはIPOが出口となりそこで資金回収がされますから、上場した株式を買う投資家は高値掴みとなり、保有する旨みに乏しいことになります。ベンチャー投資家も結局中銀の量的緩和の恩恵で低利の資金を手当てできますから思い切り利益の先食いができる訳です。やはり市場に異変が起きていると見るべきでしょう。

英サッチャー政権で打ち出した大衆資本主義は、国民に株式保有を勧め、公営企業の民営化を通じて個人株主を増やしました。それを後押しすべく非課税枠を設定したISA制度が定着しましたが、結局国民は少し株価が上がるとすぐ売って利益確定に走るため、長期保有は必ずしも定着しませんでした。その一方で投資ファンドは大量の資金を用いて相場の変動からさや取りしますから、結局株式市場は安定せず、徐々に個人株主の居場所を狭めます。その結果池のクジラの競演となり、ますます個人のウエートは減っていきます。

その果てにHFTなどで個人取引に先回りして利食いするてなことすら起きる訳ですから、株式市場から個人投資家が出て行くことになります。NISAや積み立てNISAやiDeCoなどのメニューを揃えて老後2,000万円と切れ気味レポートを出したところでこの傾向は変わらないでしょう。資本主義は結局マネーゲームに行きつき、国民の経済厚生を置き去りにする。Brexitやトランプ現象が示すのは、結局資本主義と民主主義が両立しない現実が為せる業ということですね。

そしてトランプがイランことしてしまいました。革命防衛隊のヒーローで国民的には大統領より知られていたソレイマニ司令官が米軍の攻撃で死亡しました。宣戦布告なしに軍人を攻撃し殺害した訳ですから、無茶です。イランは将軍を葬送し、報復を宣言してます。新年早々草も生えんわ。

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