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Sunday, January 12, 2020

赤恥のアホかい

飛び恥逃げ恥の後は赤恥でした。ゴーン氏がプレゼンテーション能力を見せつけた会見で日本の人質司法を非難して世界に拡散した一方、森法相が異例の早朝会見で反論したものの、「ゴーン氏は日本の法廷で潔白を証明すべき」とした発言に外国人記者が「日本の司法制度は推定無罪が無いのか」と突っ込まれて炎上しました。

日本の人質司法問題はかねてより弁護士会が問題視してましたし、国連からも指摘されてましたが、日本の司法制度の正当性を言い立てるばかりの会見の異常さは、寧ろ日本はやはりおかしいと見られてしまいます。被告に潔白の証明は必要なく、検察に挙証責任があるのは刑事司法の常識です。弁護士資格のある現役の法相が知らないとすれば恥ずかしいし、知っていて意図的に世論誘導を意図したとすれば悪質です。しかも突っ込まれて炎上って恥の上塗り。閣僚がこれで日本大丈夫か?

米イラン対立はイランの報復がありましたが、事前通告の上人のいないところを狙ったもので、イランもアメリカとの全面対決は望まないし、人的被害がなかったとしてトランプ大統領も予告していた反撃を自重しました。国家間の軍事衝突のコストが高くなった結果、双方寸止めはとりあえず安堵ですが、イラン革命防衛隊によるウクライナ機の撃墜という不幸な出来事が起こりました。当初アメリカが指摘しイランは否定していたものの、一転認めて謝罪という異例の展開ですが、対立構図だけは残ります。

思えば冷戦時代にはソビエトによる大韓航空機撃墜とかありましたし、最近でもマレーシア航空機のロシア軍の誤射と見られる撃墜とか、トルコ軍によるロシア軍機撃墜などがありますが、軍事的対立の結果起きた訳で、こういったトバッチリは今後も起こり得ます。アラブに派遣される自衛隊艦船大丈夫か?内緒ですが、日米安保条約第5条の定めるところにより、日本の施政権下にあるエリアへの攻撃以外では米軍の防衛義務はありませんから、米軍は助けてくれません。

話題を戻しますが、ゴーン氏問題に関連してこのニュース。

IRインフラで企業側に助言 秋元議員、収賄容疑再逮捕へ:日本経済新聞
愛ある成長戦略で取り上げた秋元元国交副大臣が現在進行形で日本の人質司法にはまってます。特捜の狙いはわかりませんが、とりあえず微罪で身柄を確保し勾留期限が来たら別件で再逮捕と容疑を細切れ小出しにして、結果的に先進国ではありえない長期勾留になります。

罪を否認したり黙秘したりすれば延々と勾留が続き、保釈請求も認めないという姿勢ですが、これ被告に認められた法的権利なんですがお構いなし。検察が考えるストーリーに沿った自白を強要されます。それでも認めないと証拠の捏造までしてしまうことが、2009年の障碍者郵便制度悪用事件で逮捕された厚労省局長の村木厚子氏の冤罪事件で明らかになりました。奇しくも弁護士はゴーン氏と同じ弘中惇一郎弁護士でした。

もう一つゴーン氏の事件で特筆すべきは日本版司法取引の適用2例目という点です。1例目は三菱日立パワーシステムズ(MHPS)のタイ火力発電事業を巡る幹部3人の外国公務員贈賄事件で、法人としてのMHPSが告発し3人は在宅起訴で有罪になる一方、MHPSは起訴猶予となったものですが、会社のために働いた幹部社員を刺したという意味で腑に落ちない事件です。また司法取引導入の本来の目的である企業犯罪や組織犯罪で末端の行為者の罪を軽減することで証言を得て組織罰に迫ることが想定されていた筈なのに、逆に企業を守るために適用されたという意味で、法の趣旨に反します。

ゴーン氏の事件では日本での公判が事実上不可能になったことから、捜査段階での司法取引の実態は不明なままですが、MHPSの事例から類推すると、ゴーン氏に罪を被せる構図はあり得ます。特にルノーとの経営統合に拒否感を示していた日産幹部からすれば、フランス政府の圧力でマーチの欧州版マイクラの製造をインドで行う予定をフランス政府の圧力でフランス国内のルノーの工場に変更されたことがありました。

加えて長期保有株主の議決権を2倍にするフロランジェ法を成立させて、フランス政府のルノーの議決権を15%から30%に倍増させたこともあり、ルノーCEO兼務となったゴーン氏はフランス政府とのやり取りに忙殺されていた訳ですが、ある時点でルノーと日産の経営統合を口にするようになり、裏切られたと感じた日産幹部によるクーデターの可能性は排除できません。

しかし実際にはゴーン氏はフランス政府の日産への直接関与を阻止し、日産によるルノー株を通告なしで15%から25%に買い増すことを認めさせるなど、日産を守ろうとしていたように見えます。しかも日産保有のルノー株式も一部フロランジェ法が適用されますから、実質22%相当の議決権を保有していて、僅か3%の調達でルノーの日産に対する議決権を消せる訳です。ある意味日産を守った恩人なのですが。同時に周辺をイエスマンで固めて強引に事を進める姿勢もあって、その恐怖心からゴーン氏パージに動いた可能性はあります。

しかし冷静に考えれば新たに選任された3トップの内2人はルノー人脈でゴーン氏と無縁。残る生え抜きエースの関氏は日本電産にスカウトされて日産を去ることになりました。人事面では寧ろルノー支配が強まっていて、しかもフランス政府に楯突いたゴーン氏はいないって、フランス政府の思惑通りの展開です。ただしこのゴタゴタで業績は下がる一方。3社連合のシナジーどころか主導権争いで消耗するのは目に見えてます。クーデター説が正しいとすれば、目先しか見えてない日産幹部のガバナンス能力の絶望的な欠如ですね。

一方日本が誇るトヨタですが、CASEの時代で明らかに出遅れています。ハイブリッド車の成功の一方、関連特許をガチガチに固めたために外国勢を含めハイブリッド車にそっぽを向かれ、仲間づくりに失敗します。一方日産は量産EVのリーフを出して電動化で先んじており、自動運転技術でも過去からの研究の蓄積があって他社に先行してます。加えて米ウェイモとの提携も発表しており、CASEのS(シェア)以外で先行している状況です。

この構図はかつてブルーバードとコロナのBC戦争やサニーとカローラのSC戦争と同じ構図なんですね。技術的に日産が先行し資金力のあるトヨタが後追いする形で日本のモータリゼーションが活性化されたのですが、日産が元気を失えばトヨタは海外勢との競争になりますが、実はトヨタ車が売れている地域は日本と北米に限定されていて、欧州では劣勢ですし、アジアでもシェアを伸ばしているとはいえ、価格帯が高く普及は限られているという中で苦戦を強いられています。そしてトヨタの迷いを示すこのニュース。

トヨタ、街づくり実験を静岡で:日本経済新聞
いかに資金力のあるトヨタとはいえ、100年に1度と言われる自動車の変革期の技術革新を自前で展開するのは大変なことですが、ハイブリッド車の失敗が示すように仲間づくりの下手な企業体質でもありますし、トヨタと釣り合う戦略パートナーは得難い現実もあり、トヨタ自身で結果を出すしかない訳です。しかしそのコストは膨大でマネタイズに自信が持てない。一方閉鎖した裾野市の工場跡地の有効利用にもなり研究開発減税の恩恵もある訳で、この辺のトヨタの抜け目なさは健在です。

そして実物を作って不具合を徹底的にダメ出しして、お得意のカイゼンプロセスで収益化の展望を得ようってことですから、トヨタとしては大きな賭けでもありますし、過去の成功体験から離れられない面もあるという訳です。何かに似ている気がしますが、JR東海の中央リニアが単体での収益性に疑問がある中で、実物がないと本命のアメリカへの売り込みが出来ないと巨額投資に走る構図と似ています。どちらも名古屋の会社ですが、メンタリティが似てるのかな。

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