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Saturday, February 08, 2020

風邪は寝て治せ

新型コロナウイルスで世界が大騒ぎしてます。2003年のSARSのときのことが思い出されますが、当時世界のGDPの4%に過ぎなかった中国も今や16%のシェアとなり、しかも経済のグローバル化でグローバルバリューチェーンによる国際分業の深化もあり、将に中国が風邪ひくと世界が震える状況と言えます。例えばイラン情勢の悪化で跳ね上がった原油価格は中国経済の低迷を織り込んで下落し、1バレル50ドルを付けるなどしてます。シェール革命でアメリカが石油の純輸出国となった結果、世界最大の石油輸入国となった訳ですから、無理もない話です。

今回の新型肺炎の特徴は、感染力が強い一方、致死率は1%に満たないと見られていて、健康な若者では未症状や軽症で回復するなどしており、そもそも診断が難しく発見が困難なんです。但し持病持ちの高齢者などで重症化が見られ死者も出ている訳ですから、警戒は必要です。その意味で日本の対応は疑問だらけですが。

新型肺炎告発、中国の医師死去 処分から一転英雄扱い:日本経済新聞
いち早く警鐘を鳴らした中国人医師は「デマを拡散した」として武漢市の公安当局から処分を受けましたが、それでも混乱の中医療査読誌に論文を発表し世界に知らせた結果、北京政府やWTOを動かした訳です。結果的に2003年のSARSのときより的確な情報開示がされました。

驚いたのは中国ではSNSのウィーチャットで遠隔診断が可能になっていて、多くの肺炎患者は遠隔診断で対応されていることです。日本じゃ医師会の反対で実現できていませんが、日本に比べて広い国土と巨大な人口を抱え医療セクターが相対的に弱い中国では、それをハイテクで補うことが普通に行われていて、軽症者は自宅待機を命じられ、病院には来させないようにしているそうです。風邪は寝て治せって訳ですね。勿論重症者は命にかかわりますから対応されますが、日本のように医療へのフリーアクセスが当たり前だと、寧ろ元気な感染者が病院に集まって院内感染を助長する恐れがあります。

この辺の対応を単に強権的な監視社会といったステレオタイプな見方をしてしまうとおぞましく感じますが、極めて合理的な対応がされてます。それでも封じ込めに失敗している訳で、今回の新型肺炎の影響力は相当大きいと見るべきです。その意味で日本政府の対応は完全に後手に回ってます。それを象徴するこんなニュース。

船旅ならではの環境が要因か クルーズ船集団感染:日本経済新聞
横浜港のダイヤモンドプリンセス号ですが、クルーズ船という閉鎖空間で多くの乗客乗員が足止めされてますが、これ院内感染ならぬ船内感染を助長しているんじゃないかと思います。それが証拠に感染者が増え続けている訳で、乗船中の乗客乗員はさぞかし不安なことでしょう。

重症化しやすい高齢者も多数乗船していて、持病のクスリが切れそうだという声に応えて医薬品も搬入されてますが、量が足りないだけでなく、外国人から日本で未承認のクスリのリクエストもあり対応に困っているといいます。こういう人は指定病院の隔離病棟へ移した上で、未発症の人は暫くの自宅待機を条件に下船させ、船を消毒することで、逆に今後の発症者の隔離先にも使える訳ですね。ホテル三日月の洋上版です。しかしクルーズ船の受け入れ拒否が広がり,彷徨えるクルーズ船が行き場を失っております。これで船内感染を拡大させたら、だれが責任を取るのでしょうか?

あと感染が疑われる外国人の入国拒否とか、水際作戦は無意味です。上述のように無症状や軽症で回復する人が多く、そもそも発見が困難である以上、ある程度の感染拡大は防ぎようがありません。しかし軽症者が多いってことは、通常の風邪やインフルエンザ程度の対応で、短期間の自宅待機などで感染拡大自体はある程度防げる訳で、死に至る可能性のある重症者へのケアを重点的に行うべきでしょう。軽症の感染者が病院に殺到して院内感染が拡大するようじゃ寧ろ事態は悪化します。

SARSのときは有効な治療法も確定しないまま8か月ほどで終息しましたが、今回の感染拡大の様子を見ると、それ以上の影響を覚悟する必要あります。場合によってはオリンピック、パラリンピックも中止を余儀なくされることも考えられます。逆に適切な対応で早めに終息する可能性もあります。中国のハイテク医療の実態はSARS当時と大違いです。

発生が確認されたのが武漢市というのも感染拡大を後押ししています。武漢市は長江中流域唯一のメガシティで人口1,000万人を超える大都市で、位置的には大陸中国のへそと呼べるところで、長江の水運があり、また北京―広州間と上海ー重慶間を結ぶ高速鉄道の交点に位置する交通の要衝です。つまり主要都市との移動が便利な場所ってことで客貨の往来が多く、自動車や電子部品など製造業の集積地となっています。喩えればアメリカのシカゴや日本の名古屋のような位置づけですが、人口は巨大です。肺炎封じ込めに失敗したと批判される武漢市当局ですが、1千万都市を封鎖するような決断はそりゃ国家主席クラスじゃなきゃ無理ってもんです。

そして製造業の操業停止が相次いでおり、再開のめどは立っておりません。長引けば中国経済の低迷を通じて世界経済の足を引っ張ります。既に中国人民銀行は利下げを決めており、軟着陸を模索しますが、気になるのは武漢市で死者が多いこと。これ致死率が同じとすれば、結局分母の感染者総数が把握しきれないほど多いことを示唆します。短期間の終息は期待薄でしょう。

中国の高速鉄道はある意味日本の新幹線のコンセプトに忠実で、高速鉄道を整備して旅客列車を移し、空いた在来線の貨物輸送を強化するというもので、かつて田中角栄氏が日本列島改造論で示した構想が実現している訳です。長江の水運と共に活発な貨物輸送を鉄道が支えている訳ですが、武漢市の製造業集積が止まれば貨物輸送も減る訳で、中国の実体経済の指標として李国境首相が唱えた所謂李国境指数でも貨物輸送量が取り上げられたほど、鉄道貨物の位置づけは大きなものです。翻って日本の整備新幹線は鉄道貨物にストレスばかり与えてますが^_^:。

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