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March 2020

Saturday, March 28, 2020

感染路は続くよ何処までも

海越え街越え時越えて遥かな世界へ僕たちの見えない未来をつないでる~♪
元歌はアメリカの労働歌で、大陸横断鉄道の建設工事に駆り出された建設労働者が、来る日も来る日も人里離れた荒野でツルハシを振るい、時にはインディアンの襲撃にさらされる命がけの終わりの見えない過酷な労働への恨み節でした。その歌にNHKが旅へのあこがれを表す日本語の歌詞をつけてみんなのうたて紹介したため、日本では全く異なった印象で受け止められてますが、皮肉にも元歌に近い現実に直面する私たちです。

武漢から始まったCOVID-19の感染が世界に拡大し、遂にアメリカの感染者数が中国を抜いて収拾がつかない状況です。COVID-19のような感染力の強い感染症は大都市で感染拡大するのはある意味当然で、中国でも人口1,100万人の武漢市で爆発的感染拡大に見舞われましたし、イタリアでも7ミラノなどの大都市に集中しています。日本でも札幌市がそうでしたし、感染拡大が見られる大阪府や兵庫県、それに東京都もですが、明らかに爆発的感染拡大の兆候が見られます。感染症は指数関数的に感染拡大する訳ですから、いつかはこうなる訳ですが、厚労省の報告書を思い切り誤読して阪神間の往来自粛を呼び掛けたり、唐突に首都閉鎖も有り得ると脅しをかけたりしてパニックを煽る知事たちにうんざりです。

新型コロナ感染者、米は10万人突破 全世界の17%に:日本経済新聞
アメリカの感染者が10万人を超えて中国を抜き世界一となった訳ですが、アメリカでも4割は大都市を抱えるニューヨーク州に集中しており、大変な状況ですが、クオモ州知事の州民向けの演説が評判を呼んでいます。自身が対応に疲れたことを告白するとともに、自分以上に最前線で対応し疲れている人がいることに言及し、非常事態への対応への協力を求めたものですが、病院ベッドの不足や人工呼吸器の不足などの具体的な問題点を明らかにして、パニックにならないように冷静な対応を求めたものです。この演説に好感して株式市場も一時的に上げたぐらいですから、人々に与えた安心感は相当なものでしょう。

翻って小池知事美首都閉鎖発言はインパクトは大きいけれど基本的に脅しですから、それに反応して多くの人がスーパーに殺到して買いだめに走る訳で、SNSに蔓延るデマと変わりません。情報攪乱が市場経済を機能不全に陥れることは前エントリーで指摘した通りです。しかもタイミングが東京五輪の1年延期が決まった後ということで憶測を呼んでいます。まあ五輪に限らず様々なスポーツイベントが中止または延期が相次ぐ中で、今年予定通りに開催できる訳はないんで、見直しは当然ですし、スケジュールが狂った各競技団体にしてもどのみちスケジュールの見直しは必要ですから、調整自体は不可能ではないでしょう。しかし問題は1年後に沈静化しているかどうか不明ということです。

[FT]英の新型コロナ対策、「最善願い最悪に備える」:日本経済新聞
英国ジョンソン首相が集団免疫を打ち出して批判を浴びて引っ込めたという風に報じられていますが、国民の大多数が感染して免疫を獲得すれば、新規感染者が減ってCOVID-19も普通の風邪の1つになり落ち着く訳で、国民の60%が免疫獲得が目安となるということで、それまでの長い道のりを乗り越えるよう国民に協力を呼び掛けたもので、既に市中感染が見られ水際作戦での封じ込めが不可能という現実を示したものです。結果批判を浴びたものの、飲食店等の休業補償や納税猶予や国民への現金配布などの対策を打って理解を求めました。

何だか国も地方も出鱈目なのは日本だけと落ち込みたくなりますが、ここで注目すべきは60%という集団免疫の目安です。既に欧米アジアから南米やアフリカまで感染拡大が見られる現状からすれば、今さら封じ込めは現実的ではない訳で、いずれ世界各地で順繰りに爆発的感染を経験しながら世界全体が終息に向かうのに1年で済むのか?ということです。世界のどこかで感染拡大の混乱が続く限り、公正な世界大会なんか開けない訳で、そう考えると1年後の仕切り直しで突っ走るのはどうかと思います。そもそも人命が関わる問題でスポーツどころじゃないだろうって訳ですが、商業イベント化したオリンピックは簡単に中止できないのもまた現実です。問題の軽重を取り違えてないかってことですね。

それととりあえず3,000億円と試算される延期に伴う追加負担の問題ですが、現状10Cと都と国で押し付け合いしている現状です。これも実際はいくらかかるか想像もつかないのが実際で、事態の進捗に伴って隠れたコストが明らかになることは覚悟しといた方が良いでしょう。この辺福島第一原発の廃炉問題や汚染水問題でも見せられている現実です。こういった計算違いは正常化バイアスが働く以上必然的に生じます。所謂希望的観測に流される訳です。仮に上記のように1年後にも終息していなければ、延期のために負担したコストは無駄になり更に追加負担を覚悟しなきゃならないとなると、五輪の経済効果とは何だったのか?って話になります。

それよりも当面の経済的な落ち込みをどうするかですが、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアなど欧米諸国に加えて韓国や香港でも国民への現金配布が行われる一方、日本では所得の落ち込んだ世帯に限りというような制限を課すようですが、それをどのように判定するつもりなんでしょうか。しかも時期は5月になるとか言ってる訳ですが、コロナショックによる自粛で職を失ったり所得を失った人はとても待てませんし、消費の落ち込みは更に経済を冷やす訳で、条件付けずに全員に配布する方がコストもかからず迅速に実行できます。

財源は震災復興増税のように事後的に増税して回収すれば良いですし、所得税に税率を上乗せすれば高額納税者ほど負担する訳で結果的に回収されますから所得制限は不要です。一部で言われる消費税減税ですが、そのために法改正して鉄道運賃など公共料金の改定でシステム変更のコストもかかりますから、緊急対応としては不適格です。加えて地方消費税も減る訳ですから、住民サービスを担う自治体が干上がることも忘れてます。それも含めて制度としての消費税の是非や適切な税率の議論は平時に行うべきであり、どさくさ紛れにやるべきではありません。そして与党内の議論で和牛商品券やお魚券といったトンデモ議論があるようですが、非常事態に利権漁りとはお下劣です。ま、こんな連中を選ぶ国民も大概ですが。

それでも流石に公共事業の積み増しは出てこないようです。人手不足による入札不調で執行が約1年遅れの現状では、公共事業を積み増しても経済効果が出ないことが明らかなので、持ち出しにくいんでしょう。その一方で結果的に建設費の相場が上がって民間工事も割高になって所謂民間活用も難しくなり、加えて五輪を睨みインバウンドを睨み活況にあったホテル建設が一転不良債権の山になりそうな中で、ゼネコンは請け負う工事を選別してます。

このコンテクストで今公判中のリニア談合事件でゼネコン各社の暴露合戦が繰り広げられています。既に分離公判で有罪が確定している大林組がJR東海幹部の指示で星取表と呼ばれる工区ごとの予算と受注企業の一覧をExcelで作成したことを暴露しており、談合の物証になると共に被害者である筈のJR東海の関与が明らかになりました。これ鈍器法定で指摘したように、事業費の上限が決まっている中で、ゼネコン各社の過酷な値下げ要求をした挙句のゼネコン同士の仲間割れって構図です。この辺無罪を主張する大成建設も技術的な相談に乗ったつもりが企業秘密の開示につながったことを認めています。

大林組は地元のうめきたやなにわ筋線などもあるし大阪万博も控えているしで、もうけがショボいリニアに過度に付き合うつもりはない一方、五輪関連の受注をほぼ独占してきた大成建設にとってはポスト五輪でリニアは外せなかったという構図です。なにわ無くとも五輪の大成とその逆の大林組という対立構図があからさまで与党の集票マシンだったゼネコンの仲間割れは与党の公共事業への関心も醒めさせたかもしれません。加えてリニア談合事件の影響で各社入札停止処分も受けておりますし。ま、ある意味無駄な公共事業が出来にくくなったとは言えますが。

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Saturday, March 14, 2020

コロナゲートウエイ

「マスクが消えた」と言われる現在の日本ですが、外出すると会う人のマスク率の高さに驚かされます。元々マスク習慣がないし、ウイルス感染予防に役に立たないことを知っておりますので、私自身はマスクをしませんが、結局マスクをする人が増えてマスクを一斉に買った結果、店からマスクが消えただけじゃないかと。それを証明するような報道がありました。

日用品、SNS誤情報で買いだめ 店頭で紙製品が品薄:日本経済新聞
ざっくり言えばSNSで発信された誤情報で人々が買いに走り、店の棚が空っぽになったけど、現在POSシステムで単品毎の需要動向が把握されていて、季節や天候などの要因まで加味した予測精度が高まった分、店頭も含めて流通在庫が圧縮されていて、しかも消費者もそれに慣れていて不必要に物を持たなくなった結果、今回のような誤情報による需要の上振れでこうなったってことです。一部で言われているような転売ヤーの買占めは、部分的にはあったかもしれまっせんが、個人の資金でできる買占めはたかが知れてます。

ジャストインタイムの流通システムで基礎的定常的な需要は把握されており、花粉症など季節や天候要因による変数も把握されていて微調整される、そんな精緻なシステムがIT技術の深化で更に磨きがかかりますが、今回のような感染症リスクの顕在化までは予測できませんから需要を満たせず、結果的に店の棚が空になれば買い損ねた人が次の入荷日を確認して集まりますから、入荷しても棚に置く暇もなく瞬間で売り切れとなり、更に次の入荷日を確認してと無限ループが続く訳ですね。そうして不安を煽られた人々は余分に買ってストックしようとしますから、ますます品薄になって無限ループは簡単には途切れません。

これ高度情報化社会の脆弱性と捉えるべき事象ではないかと思います。そもそもは人々の不安を煽るような誤情報が流通したことが起点なんで、よく考えたら金融市場のコロナショックも同じなんですね。こちらは需要のいきなりの消滅がもたらしたものですが、元々金融市場は金融緩和の金余りで行き場を失ったマネーが敢えて好材料を見つけて資金を投じる流れが続いていた訳ですから、想定外のリスクに晒されて逃げ出した訳です。しかもアルゴリズム取引などの機械取引が増えた結果、市場の振れ幅が大きくなって予測不能な混乱が続いている訳で、マスクやトイレットペーパーの騒動と変わらない背景があります。

こうして見ると今回の新型肺炎問題は新自由主義やグローバル経済の転換点になると見るべき要素が散りばめられています。例えばアメリカでの感染拡大でも、元々マスクの習慣がないアメリカでもトイレットペーパーが店頭から消えたりしていますし、欧州も含めてイベントの中止や学校の閉鎖が相次いでいます。何れも初動の遅れが響いている結果と見ることができます。

結果論ですが、中国では武漢でこそ爆発的な感染拡大が起きたものの、恐らく民主国家ではできないような武漢封鎖などの力業で、武漢を含む湖北省以外の地域では感染が下火になりつつあるようです。致死率で見ると武漢だけが突出しているようで、武漢では混乱が見られる一方結果的に国全体では封じ込めが成功しつつあるようです。同様に致死率で比較すると感染者数が多い韓国では致死率1%に満たない一方、日本の致死率は3%と高めなのは、検査数が少ないことが影響していると見られます。

もう少し突っ込んだ見方をすると、台湾も封じ込めに成功している訳ですが、韓国も台湾も選挙で選ばれたリーダーがきっちり仕事していることに注目すべきでしょう。中国の場合習近平体制で権力の集中が起きた結果、新型ウイルス発見に寄与した医師をデマ拡散で処分した武漢市当局のように現場官吏の判断がブレるんですね。同様に政権に忖度しないと冷や飯食わされる現状の日本では、初動が遅れて封じ込めに失敗しましたし、独善的な大統領を頂くアメリカも同様です。そして大声じゃ言えませんが、民主的な選挙で選ばれていないEU官吏も動けなかった。まして欧州はシェンゲン協定で国境封鎖が事実上不可能ですし。そうするとBrexitは正しいことになりますが^_^;。その英国でも日用品不足は見られますが。

つまるとこと情報の流通に問題があるとうまくいかないということで、これよく考えたらナッシュ均衡と呼ばれるゲーム理論の考え方で解ける問題です。所謂囚人のジレンマ問題で、情報が分断されていると正確な判断が出来ずに誰もが不利益を被る均衡点が存在するというアレですね。それを防ぐには情報開示を徹底するしかなく、将に韓国や台湾が実践したことです。逆に情報開示が不十分だと誤情報やデマがSNSで拡散されて混乱を招く訳です。実は新型肺炎が思わぬ民主主義のリトマス試験紙になったってことでしょうか。

で、臨時休校、イベント中止、テレワーク推進などで人が外出しなくなり経済が回らなくなる中で、3.14ダイヤ改正を迎えたJR各社ですが、JR東海は改正の目玉ののぞみ1時間12本体制も、利用客減少で当面間引きを余儀なくされ、福島第一原発事故の影響で復旧が遅れていた常磐線が完全復旧したものの、未だ住民の帰還は困難で祝賀ムードとは程遠くと異例ずくめの中で、山手線30番目の駅として開業した高輪ゲートウエイ駅では開業一番乗りや記念切符・入場券を求める人が集まり、最大3時間待ちとか、クラスター感染が心配されることが起きています。流石に開業式典は中止されましたが、思わぬクラスターが形成されました。コロナゲートウエイにならないことを祈りましょう。

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Sunday, March 08, 2020

グローバルコロナショック

アジア中心だった新型肺炎COVID-19が欧米に飛び火しています。欧州ではイタリアで感染拡大し、徐々に他国へ広がっていますし、アメリカでも感染が拡大し、世界規模の感染症となった感があります。

世界史的には感染症が歴史を変えた事例は多数あり、中世欧州のペスト禍はもちろん、スペインの新大陸植民地化では旧大陸住民には免疫があった天然痘の新大陸住民への感染拡大がもたらしたと言われます。とすると湖北省を除いて感染者の減少が見られ、免疫獲得が推定されるる中国が勝者になるのかなあ?

そんな河北省を除く中国を韓国と共に新たに入国制限を課した日本の対応はズレまくりです。しかも第三国経由は本人の自己申告で制限という意味のない水際作戦で、喜ぶのはネトウヨぐらいのもんです。これも臨時休校要請と共にエビデンスに基づかない官邸の独断だってことで、どこまでアホなんだ。

大変なのは主婦でして、臨時休校の子供とテレワークで在宅勤務になったダンナの世話をしなきゃならなくなって大忙し。専業主婦ならまだしも看護師、介護士、保育士などで出勤が難しくなって病院や介護施設や保育園が人手不足で回らなくなったり、また学校は休みだけど学童保育は実施されていて、しかも放課後限定から全日となり人手が足りないと学校の先生も駆り出される事態になり、こうなると休校とはいえ授業をやらないだけで、しかも特定の教室にすし詰めで濃厚接触を助長するという笑えない事態になっています。

病院での院内感染防止は確かに大きな課題ですが、それを理由に検査体制の拡大に反対するってのはどうかしてます。受付や病室を分けるとか受付時間や診察時間をずらすなどの可能な対応を取った上で、街のクリニックでも検査できるようにするなど可能なことはあります。また介護士の人手不足は高齢者の多い介護現場での感染拡大を助長する恐れがあります。施設に預けた高齢者を引き取って一家で感染とかあり得ます。

テレワークがまた問題でして、今までは掛け声だけで進んでいなかっただけに、急にテレワークが増えてビデオ会議やろうとしたらトラフィックの急増で繋がらないトラブルが多発という笑えない現実があります。何事も準備が大事なのは政府に限らずです。一方、ビデオ会議アプリの米ズームはコロナショックによる株安の中で株価を上げてますし、物事は備えが大事だと改めて気づかされます。そして政府は余計なことはせず必要な資金を予算化するのが最大の役割です。その意味で注目するのがこのニュースです。

公共事業、人手不足で滞る 入札不成立4年連続増へ:日本経済新聞
人手不足で公共事業の執行が滞っていて、現在18年度補正予算の執行に目途がついて19年度本予算上期分の入札が始まったものの入札不調続きで執行が滞る流れですが、つまり予算の計上と執行がほぼ1年ズレている訳です。これつまり予算上の事業年度を執行の実態に合わせてズラせばほぼ1年分の資金が捻出できる訳で、その規模は6兆円超となります。これ全部でなくても、民間検査機関や大学まで動員してPCR検査の拡大の体制を作ることは可能でしょう。ま、地元に公共事業引っ張って有権者にアピールするのが仕事と勘違いしている政治家はやりたくないでしょうけど。

こんな状況で東京五輪が重荷になっていることは度々指摘してきましたが、その五輪にも暗雲が漂います。COVID-19の世界への拡大は当然五輪開催の可否を左右します。既にIOCとWTOのビデオ会議で東京五輪の無観客開催が議論されたそうで、貧テック貪テックで予想したような事態になってきてます。そうなると臨時休校要請やイベント自粛要請までして開催にまい進する日本政府は、非常事態宣言を可能とする新特措法と相まって、国民を押さえつけて戒厳令下の五輪という歴史に汚点を残しそうです。

マーケットも異変が起きています。株価の下落に対しては、日によって戻したりはしてますが、乱高下で下げ基調という荒れた状況ですが、これまで金融当局の緩和期待で起きていた低金利下の株高が変調を来してFRBの緊急利下げにもほとんど反応しませんでした。所謂適温相場が終わった訳で、リーマンショックを上回る経済ショックはいよいよ現実のものになりそうです。

しかもコロナショックでは主に航空や自動車などの下げが主体ですが、裏にもっと重大な問題が潜んでいます。それを示すのがこのニュース。

OPECプラス決裂、背後にサウジ皇太子の指令? 客員編集委員 脇祐三:日本経済新聞
これ当面原油安が続くってことですが、この点がリーマンショックの時と大違いなんですね。

リーマンショックの時はアメリカを起点にショックが波及しましたが、成長途上にあった中国を筆頭とする新興国経済は好調だった訳で、石油需要の先高観から原油価格は一時1バレル140ドルまで上がりました。それが結果的に欧米のエネルギー関連企業の株価を下支えし、米株式の早い回復を実現した訳ですが、今回はその中国経済にブレーキがかかって原油価格も60ドル前後から40ドル近くまで下がった訳ですから、事情が異なります。

中国に限らず例えば中東の産油国でも石油精製や石油化学工業の国内立地が進んでます。つまり工業立地の世界への拡散が進んで新たなフロンティアが見当たらない状況にある訳です。加えて欧州中心に再生可能エネルギーの普及もあって、基礎的な需要の将来的な縮小が見込まれる一方、米シェール革命で供給力は増えているという四面楚歌状況ってことです。謂わば逆オイルショックってことですね。余談ですが150万バレルの減産目標の内50万バレルをロシアに割り当てると独断で決めてロシアの怒りを買ったサウジ皇太子ですが、どっかの国の愚鈍なリーダーと似ています。

そしてグローバリゼーションと共に世界に拡散した新自由主義ですが、その流れに逆行するような動きが日本で起きました。

北神急行線と市営地下鉄との一体的運行(市営化)について:神戸市交通局
北神急行電鉄の経営不振は以前にも取り上げましたが、2008年時点では高運賃対策として上下分離して神戸高速鉄道を第三種事業者として北神は第二種事業者となって資産圧縮を図り、神戸高速が当時三セクだったこともあって固定資産全減免対象だったので、線路使用料負担を軽くした上で、神戸市と兵庫県の補助金で運賃を430円から350円に下げた訳ですが、それでも三宮へは市営地下鉄との運賃合算となり550円となる訳で、割高であることに変わりはありませんでした。

更に状況は変わり第三種事業者の神戸高速鉄道の神戸市の持ち分が圧縮され阪急阪神HDに譲渡されて関連会社となったことで上下分離の意義が薄れたこともあり、北神は阪急阪神HDのお荷物であり続けました。そこへ神戸市が2018年に北神の運賃低廉化の検討について協議を開始し、翌19年に資産譲渡の申し入れを行い、阪急阪神HDも三宮地区の活性化に資するとして応じたものです。しかも北神の認可運賃を捨てて神戸市営地下鉄と一体の運賃制度とすることで、三宮まで280円とほぼ半減の水準まで下げます。

加えてバス乗り継ぎの定期券割引制度を拡充し、谷上駅―神戸北町間に市バス路線を新設するということですから、従来新神戸トンネル経由で運行されていた三宮駅―神戸北町間の路線の見直しということですね。ドライバー不足で都市部でも減便を余儀なくされる路線バスの合理化も併せて行うということのようです。

三セクですらない純民間事業者の北神急行電鉄を市営地下鉄と一体化するという珍しい動きですが、一方で大ゴケの海岸線を抱える神戸市としては苦しいところでしょうけど、震災を機に国際港湾としての評価を失った神戸市としては中心部の活性化は待ったなしの課題なんでしょう。カジノ誘致で迷走する横浜市より遥かに誠実です。

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Sunday, March 01, 2020

日出ずる国のサンセットクルーズ

アベノミクスを感染症に喩えたら重症化しちゃいました。

首相、感染連鎖阻止へ異例の要請 小中高の臨時休校:日本経済新聞
北海道で小児の感染が出て札幌市を除く公立学校の臨時休校を決めたことに倣ったんだと思いますが、検査件数が相対的に多く、クラスター感染が疑われる状況から判断されたものですが、検査体制が不十分なまま全国に拡大することにエビデンスは示されておりません。北海道でも休校の影響で看護師が勤務できなくなって休業する医療機関が出て逆効果だったりという副作用が現れてますが、国民に不利益を強いる一方、感染拡大に繋がる公共交通機関の混雑は放置されたまま。無意味なパフォーマンスでやってるふりはアベノミクスの文脈そのものですが、今回は流石に国民から大ブーイングを受けてます。

ネットに溢れる検査の精度問題ですが、確かに偽陰性や擬陽性で正確な診断が難しいのですが、それでも感染拡大の可視化という意味で検査データを集める意味はあります。実際北海道ではさっぽろ雪まつりの直後に感染拡大が確認され、所謂クラスター感染の可能性が見えたことで、イベントの自粛や公立学校の臨時休校の判断につながった訳で、傾向を掴んで対策を打つ意味では検査体制の拡充こそ最優先事項である筈です。加えて国民の不安に寄り添う意味もあります。

後者は無発症や軽症で自分が気付かずにウイルスをばら撒いている可能性もある訳で、その不安からマスクを求める仮需要が爆発して店頭からマスクが消えた訳ですが、検査で陰性ならマスクはとりあえず必要ないと判断できる訳で、検査を行うこと自体が情報公開の一環でもある訳です。情報が伏せられれば7デマに惑わされて必要以上にマスクを買い占めたりする行動を助長する訳ですから、マスクが消えたような混乱は情報開示の不備からくると纏められます。

そして検査体制の拡充が遅れた理由としては、国立感染症研究所の処理能力に限界があり、しかも安倍政権で予算削減が行われていたこととか、今回の新型コロナウイルスの検査試薬が未承認だったり、感染研が試薬を独自開発する一方、独自開発されtたロシュの試薬に使用をためらったこととか、様々なことが言われてますが、水際作戦にかまけて検査体制の拡充を後回しにしたことは間違いありません。政治的に重大な判断ミスです。それが顕著に表れたのがクルーズ船ダイヤモンドプリンセスの検疫の不始末です。

ダイヤモンドプリンセスに関しては、国際海洋法の旗国主義の制約で日本政府が十分な対応が出来なかったという議論があります。確かにダイヤモンドプリンセスは英国船籍で運航会社はアメリカだけど専ら日本を含む東アジアでクルーズ航海をしているけど、管轄権のある英政府はこの問題では何もしていないという訳です。

しかし国際海運の世界では、船員の人件費や税制などで維持費の低い国で船籍を取ることは昔から行われてまして、日本の船会社の所有船がリベリア船籍だったりしますし、旗国主義は実際には空洞化しています。また実際問題として旗国から遠いエリアを航行する船舶に管轄権を行使することは困難です。故に今回の感染症検疫のような非常事態への対応として沿岸国が管轄権を行使することは普通に行われてますし、貧困国や途上国ならいざ知らず、豊かな先進国である日本が対応できて当たり前、できなきゃ恥ずかしいというのが通り相場です。

故にダイヤモンドプリンセスの船内足止め問題は国際的に批判を浴びた訳です。とにかく1日300件のキャパしかない検査体制で乗客乗員3,700名のウイルス検査じゃ、足止めされている間に船内で感染が蔓延するのは素人でもわかる道理です。結果的に3,700名中700名の感染確認がされて5人に1人以上の感染という結果を招いた訳ですから日本政府の責任は重いと言えます。

ダイヤモンドプリンセスは元々日本の顧客開拓の期待もあって三菱重工長崎造船所に発注された船で、乗客乗員に多数の日本人が乗船していた絵ですし、またインバウンドを国家戦略として謳ってた日本政府としては大失態と言える訳です。とはいえ受注した三菱重工はクルーズ船の敬遠が乏しく、特にホテル並みに複雑な船内設備に苦労して、挙句に建造中に火災事故を起こして納期を遅らせるなど散々な結果となり大赤字で、折角のチャンスを活かせませんでした。そして挙句にこれです。

横浜港 クルーズ船の寄港取りやめ相次ぐ:NHK NEWS WEB
これ横浜港に限らずクルーズ船寄港地として日本が忌避されている現実があります。贔屓目に見ても感染の終息が見込めないうちはクルーズ船が戻ってくることはないでしょう。しかも日本政府は相変わらずエビデンス無視のやってるふりで迷走してますから、当分この傾向は続くと見るべきでしょう。20202オリパラも最悪中止もあり得ます。

そして愛ある成長戦略でカジノを含むIR誘致も微妙になります。IR誘致に関しては、ハマのドンが猛反対とも伝えられてますが、横浜市は目のめりで、昨年秋にみなとみらいに本社を移転した京浜急行電鉄もIR誘致に期待感用命しております。裏付けのない噂レベルの話なんですが,横浜市がIR誘致を予定する山下ふ頭へ京急が新線建設を構想しているということで、これがハマのドンの怒りを買ったと言われております。

みなとみらいへの本社移転は日産グローバル本社の場合でも横浜市による便宜供与を含む強力な誘致活動があったと言われておりますが、京急に対しては山下ふ頭へのIR誘致を早い段階で知らせていたとしても不思議ではありません。そして京急はこれまでも支線の活性化に熱心なところがあります。過去エントリーでも取り上げましたが、空港線の羽田空港ターミナル延伸が大成功を収めた京急ならあり得る話です。そしてIR新線が京急誘致のエサになったとすると、東京からいきなり来た新参者が利権をさらう構図としてハマのドンの怒りを買ったというストーリーはあり得ます。

京急としては当面は羽田空港の発着枠拡大への対応と対岸の川崎殿町プロジェクトの最寄り駅として小島新田が変貌を遂げる可能性がある訳ですから、支線による活性化の成功体験を積み重ねる環境にあります。逆に言えば元々開発地が少なく人口の高齢化や産業構造の転換もあって本線筋の成長余地がないだけに、横浜市が示したエサに食いついた可能性はあります。単純に山下ふ頭に鉄道通したいなら、みなとみらい線を伸ばす方が簡単なはずですが、それじゃ京急にメリットがない訳です。

というようなインサイドストーリーがありそうな横浜市のIR誘致ですが、今回のダイヤモンドプリンセスの失態で遠のいたと見て良いでしょう。日本国をサンセットクルーズにいざなうアベノミクスいいとこなしです。

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