日出ずる国のサンセットクルーズ
アベノミクスを感染症に喩えたら重症化しちゃいました。
首相、感染連鎖阻止へ異例の要請 小中高の臨時休校:日本経済新聞北海道で小児の感染が出て札幌市を除く公立学校の臨時休校を決めたことに倣ったんだと思いますが、検査件数が相対的に多く、クラスター感染が疑われる状況から判断されたものですが、検査体制が不十分なまま全国に拡大することにエビデンスは示されておりません。北海道でも休校の影響で看護師が勤務できなくなって休業する医療機関が出て逆効果だったりという副作用が現れてますが、国民に不利益を強いる一方、感染拡大に繋がる公共交通機関の混雑は放置されたまま。無意味なパフォーマンスでやってるふりはアベノミクスの文脈そのものですが、今回は流石に国民から大ブーイングを受けてます。
ネットに溢れる検査の精度問題ですが、確かに偽陰性や擬陽性で正確な診断が難しいのですが、それでも感染拡大の可視化という意味で検査データを集める意味はあります。実際北海道ではさっぽろ雪まつりの直後に感染拡大が確認され、所謂クラスター感染の可能性が見えたことで、イベントの自粛や公立学校の臨時休校の判断につながった訳で、傾向を掴んで対策を打つ意味では検査体制の拡充こそ最優先事項である筈です。加えて国民の不安に寄り添う意味もあります。
後者は無発症や軽症で自分が気付かずにウイルスをばら撒いている可能性もある訳で、その不安からマスクを求める仮需要が爆発して店頭からマスクが消えた訳ですが、検査で陰性ならマスクはとりあえず必要ないと判断できる訳で、検査を行うこと自体が情報公開の一環でもある訳です。情報が伏せられれば7デマに惑わされて必要以上にマスクを買い占めたりする行動を助長する訳ですから、マスクが消えたような混乱は情報開示の不備からくると纏められます。
そして検査体制の拡充が遅れた理由としては、国立感染症研究所の処理能力に限界があり、しかも安倍政権で予算削減が行われていたこととか、今回の新型コロナウイルスの検査試薬が未承認だったり、感染研が試薬を独自開発する一方、独自開発されtたロシュの試薬に使用をためらったこととか、様々なことが言われてますが、水際作戦にかまけて検査体制の拡充を後回しにしたことは間違いありません。政治的に重大な判断ミスです。それが顕著に表れたのがクルーズ船ダイヤモンドプリンセスの検疫の不始末です。
ダイヤモンドプリンセスに関しては、国際海洋法の旗国主義の制約で日本政府が十分な対応が出来なかったという議論があります。確かにダイヤモンドプリンセスは英国船籍で運航会社はアメリカだけど専ら日本を含む東アジアでクルーズ航海をしているけど、管轄権のある英政府はこの問題では何もしていないという訳です。
しかし国際海運の世界では、船員の人件費や税制などで維持費の低い国で船籍を取ることは昔から行われてまして、日本の船会社の所有船がリベリア船籍だったりしますし、旗国主義は実際には空洞化しています。また実際問題として旗国から遠いエリアを航行する船舶に管轄権を行使することは困難です。故に今回の感染症検疫のような非常事態への対応として沿岸国が管轄権を行使することは普通に行われてますし、貧困国や途上国ならいざ知らず、豊かな先進国である日本が対応できて当たり前、できなきゃ恥ずかしいというのが通り相場です。
故にダイヤモンドプリンセスの船内足止め問題は国際的に批判を浴びた訳です。とにかく1日300件のキャパしかない検査体制で乗客乗員3,700名のウイルス検査じゃ、足止めされている間に船内で感染が蔓延するのは素人でもわかる道理です。結果的に3,700名中700名の感染確認がされて5人に1人以上の感染という結果を招いた訳ですから日本政府の責任は重いと言えます。
ダイヤモンドプリンセスは元々日本の顧客開拓の期待もあって三菱重工長崎造船所に発注された船で、乗客乗員に多数の日本人が乗船していた絵ですし、またインバウンドを国家戦略として謳ってた日本政府としては大失態と言える訳です。とはいえ受注した三菱重工はクルーズ船の敬遠が乏しく、特にホテル並みに複雑な船内設備に苦労して、挙句に建造中に火災事故を起こして納期を遅らせるなど散々な結果となり大赤字で、折角のチャンスを活かせませんでした。そして挙句にこれです。
横浜港 クルーズ船の寄港取りやめ相次ぐ:NHK NEWS WEBこれ横浜港に限らずクルーズ船寄港地として日本が忌避されている現実があります。贔屓目に見ても感染の終息が見込めないうちはクルーズ船が戻ってくることはないでしょう。しかも日本政府は相変わらずエビデンス無視のやってるふりで迷走してますから、当分この傾向は続くと見るべきでしょう。20202オリパラも最悪中止もあり得ます。
そして愛ある成長戦略でカジノを含むIR誘致も微妙になります。IR誘致に関しては、ハマのドンが猛反対とも伝えられてますが、横浜市は目のめりで、昨年秋にみなとみらいに本社を移転した京浜急行電鉄もIR誘致に期待感用命しております。裏付けのない噂レベルの話なんですが,横浜市がIR誘致を予定する山下ふ頭へ京急が新線建設を構想しているということで、これがハマのドンの怒りを買ったと言われております。
みなとみらいへの本社移転は日産グローバル本社の場合でも横浜市による便宜供与を含む強力な誘致活動があったと言われておりますが、京急に対しては山下ふ頭へのIR誘致を早い段階で知らせていたとしても不思議ではありません。そして京急はこれまでも支線の活性化に熱心なところがあります。過去エントリーでも取り上げましたが、空港線の羽田空港ターミナル延伸が大成功を収めた京急ならあり得る話です。そしてIR新線が京急誘致のエサになったとすると、東京からいきなり来た新参者が利権をさらう構図としてハマのドンの怒りを買ったというストーリーはあり得ます。
京急としては当面は羽田空港の発着枠拡大への対応と対岸の川崎殿町プロジェクトの最寄り駅として小島新田が変貌を遂げる可能性がある訳ですから、支線による活性化の成功体験を積み重ねる環境にあります。逆に言えば元々開発地が少なく人口の高齢化や産業構造の転換もあって本線筋の成長余地がないだけに、横浜市が示したエサに食いついた可能性はあります。単純に山下ふ頭に鉄道通したいなら、みなとみらい線を伸ばす方が簡単なはずですが、それじゃ京急にメリットがない訳です。
というようなインサイドストーリーがありそうな横浜市のIR誘致ですが、今回のダイヤモンドプリンセスの失態で遠のいたと見て良いでしょう。日本国をサンセットクルーズにいざなうアベノミクスいいとこなしです。
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