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Saturday, March 14, 2020

コロナゲートウエイ

「マスクが消えた」と言われる現在の日本ですが、外出すると会う人のマスク率の高さに驚かされます。元々マスク習慣がないし、ウイルス感染予防に役に立たないことを知っておりますので、私自身はマスクをしませんが、結局マスクをする人が増えてマスクを一斉に買った結果、店からマスクが消えただけじゃないかと。それを証明するような報道がありました。

日用品、SNS誤情報で買いだめ 店頭で紙製品が品薄:日本経済新聞
ざっくり言えばSNSで発信された誤情報で人々が買いに走り、店の棚が空っぽになったけど、現在POSシステムで単品毎の需要動向が把握されていて、季節や天候などの要因まで加味した予測精度が高まった分、店頭も含めて流通在庫が圧縮されていて、しかも消費者もそれに慣れていて不必要に物を持たなくなった結果、今回のような誤情報による需要の上振れでこうなったってことです。一部で言われているような転売ヤーの買占めは、部分的にはあったかもしれまっせんが、個人の資金でできる買占めはたかが知れてます。

ジャストインタイムの流通システムで基礎的定常的な需要は把握されており、花粉症など季節や天候要因による変数も把握されていて微調整される、そんな精緻なシステムがIT技術の深化で更に磨きがかかりますが、今回のような感染症リスクの顕在化までは予測できませんから需要を満たせず、結果的に店の棚が空になれば買い損ねた人が次の入荷日を確認して集まりますから、入荷しても棚に置く暇もなく瞬間で売り切れとなり、更に次の入荷日を確認してと無限ループが続く訳ですね。そうして不安を煽られた人々は余分に買ってストックしようとしますから、ますます品薄になって無限ループは簡単には途切れません。

これ高度情報化社会の脆弱性と捉えるべき事象ではないかと思います。そもそもは人々の不安を煽るような誤情報が流通したことが起点なんで、よく考えたら金融市場のコロナショックも同じなんですね。こちらは需要のいきなりの消滅がもたらしたものですが、元々金融市場は金融緩和の金余りで行き場を失ったマネーが敢えて好材料を見つけて資金を投じる流れが続いていた訳ですから、想定外のリスクに晒されて逃げ出した訳です。しかもアルゴリズム取引などの機械取引が増えた結果、市場の振れ幅が大きくなって予測不能な混乱が続いている訳で、マスクやトイレットペーパーの騒動と変わらない背景があります。

こうして見ると今回の新型肺炎問題は新自由主義やグローバル経済の転換点になると見るべき要素が散りばめられています。例えばアメリカでの感染拡大でも、元々マスクの習慣がないアメリカでもトイレットペーパーが店頭から消えたりしていますし、欧州も含めてイベントの中止や学校の閉鎖が相次いでいます。何れも初動の遅れが響いている結果と見ることができます。

結果論ですが、中国では武漢でこそ爆発的な感染拡大が起きたものの、恐らく民主国家ではできないような武漢封鎖などの力業で、武漢を含む湖北省以外の地域では感染が下火になりつつあるようです。致死率で見ると武漢だけが突出しているようで、武漢では混乱が見られる一方結果的に国全体では封じ込めが成功しつつあるようです。同様に致死率で比較すると感染者数が多い韓国では致死率1%に満たない一方、日本の致死率は3%と高めなのは、検査数が少ないことが影響していると見られます。

もう少し突っ込んだ見方をすると、台湾も封じ込めに成功している訳ですが、韓国も台湾も選挙で選ばれたリーダーがきっちり仕事していることに注目すべきでしょう。中国の場合習近平体制で権力の集中が起きた結果、新型ウイルス発見に寄与した医師をデマ拡散で処分した武漢市当局のように現場官吏の判断がブレるんですね。同様に政権に忖度しないと冷や飯食わされる現状の日本では、初動が遅れて封じ込めに失敗しましたし、独善的な大統領を頂くアメリカも同様です。そして大声じゃ言えませんが、民主的な選挙で選ばれていないEU官吏も動けなかった。まして欧州はシェンゲン協定で国境封鎖が事実上不可能ですし。そうするとBrexitは正しいことになりますが^_^;。その英国でも日用品不足は見られますが。

つまるとこと情報の流通に問題があるとうまくいかないということで、これよく考えたらナッシュ均衡と呼ばれるゲーム理論の考え方で解ける問題です。所謂囚人のジレンマ問題で、情報が分断されていると正確な判断が出来ずに誰もが不利益を被る均衡点が存在するというアレですね。それを防ぐには情報開示を徹底するしかなく、将に韓国や台湾が実践したことです。逆に情報開示が不十分だと誤情報やデマがSNSで拡散されて混乱を招く訳です。実は新型肺炎が思わぬ民主主義のリトマス試験紙になったってことでしょうか。

で、臨時休校、イベント中止、テレワーク推進などで人が外出しなくなり経済が回らなくなる中で、3.14ダイヤ改正を迎えたJR各社ですが、JR東海は改正の目玉ののぞみ1時間12本体制も、利用客減少で当面間引きを余儀なくされ、福島第一原発事故の影響で復旧が遅れていた常磐線が完全復旧したものの、未だ住民の帰還は困難で祝賀ムードとは程遠くと異例ずくめの中で、山手線30番目の駅として開業した高輪ゲートウエイ駅では開業一番乗りや記念切符・入場券を求める人が集まり、最大3時間待ちとか、クラスター感染が心配されることが起きています。流石に開業式典は中止されましたが、思わぬクラスターが形成されました。コロナゲートウエイにならないことを祈りましょう。

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Comments

なるほど、囚人のジレンマですか。

確かにトイレットペーパー騒動はゲーム理論で説明がつきますが
マスク不足については、生産が追いついていない以上、
必要な人は店頭で見かけたらとにかく買うのが合理的な個人の行動です。
どちらかというと、合成の誤謬の方が近い気がします。

私のように花粉症で、なおかつ職場でCOVID-19対策で
マスク着用が義務付けられているような場合は、
ウイルス感染予防に役に立たないとか言ってられませんからね。
たぶん、そういう人が多いんだと思います。

Posted by: yamanotesen | Sunday, March 15, 2020 08:17 PM

そうですね。花粉症などでマスクを必要としている人には困った問題であり、とにかく買うのが合理的という意味で合成の誤謬の要素はありますが、その原因を作ったのは情報の攪乱による需要の急拡大にある訳ですから、情報開示が不十分という点で囚人のジレンマ状態でもあります。生産が追い付いて需要をカバーできるまでは残念ながらこの状態は続くと思います。

そういう意味で政府が打ち出した転売禁止措置はほとんど効果は無いけど、やってる感は出せるから、政権にとってはおいしいということは言えます。惑わされないリテラシーが問われますね。

>yamanotesenさん
>
>なるほど、囚人のジレンマですか。
>
>確かにトイレットペーパー騒動はゲーム理論で説明がつきますが
>マスク不足については、生産が追いついていない以上、
>必要な人は店頭で見かけたらとにかく買うのが合理的な個人の行動です。
>どちらかというと、合成の誤謬の方が近い気がします。
>
>私のように花粉症で、なおかつ職場でCOVID-19対策で
>マスク着用が義務付けられているような場合は、
>ウイルス感染予防に役に立たないとか言ってられませんからね。
>たぶん、そういう人が多いんだと思います。

Posted by: 走ルンです | Sunday, March 15, 2020 09:35 PM

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