社畜の国のリモートワーク
予想通り東京がえらいことになっております。前エントリーで指摘した指数関数的な感染拡大が現実となってきています。流石にヤバいんで、私も自粛して渋谷の銀座線ホーム見物や高輪ゲートウエイ駅訪問やアーバンパークライン全線急行乗車や発着枠増加に関連してターミナルを刷新した羽田空港見に行ったりは断じてしておりません(汗)。
首都圏 鉄道利用7割減 小池知事「爆発的な感染増への岐路」:日本経済新聞先週末は小池知事の脅しと寒さや雪など悪天候も手伝って人手は大幅に落ちたようです。平日はどうなのかは鉄道通勤をしない立場になって久しい私の知るところではありませんが、リモートワークの拡大で減ってはいるようです。てことで今回はリモートワークを取り上げますが、その前にアベノマスク(笑)。
これ経産省系の官邸官僚の進言を受け入れたものらしいんですが、「国民に喜ばれる」という言葉を真に受けたものらしい。人気取りのつもりが炎上案件となった訳ですが、この唐突な思い付きを誰も止めなかったというのが現政権の病巣を示します。最早官邸には国民の気持ちを理解できている者がいない訳で、なるほど、これじゃ私権制限を伴う緊急事態宣言なんか出しようがない訳です。
とはいえ法的拘束力は限られていて医療機関に対して指定医療機関に指名するなどの権限が生じる一方、外出制限などは要請の域を出ない訳ですが、既に医療部門に負荷がかかっていて医療従事者の感染も見られますし、そうなると濃厚接触者も含めて自宅待機となって逼迫したマンパワーを更に追い込む悪循環です。故に厳しい現実に直面する医療関係者から「緊急事態宣言を出すべき」の声が上がってますが、そんな現状認識も出来てないってことです。という訳で今週末は不本意ながら本気の乗り鉄自粛です。
ただこの状況でも中国をはじめ感染症診療の有効性が実証された遠隔診療は医師会が難色を示して厚労省が反対している現状です。勿論対面診療と同等とはいきませんが、命に係わる重症者以外は自宅で経過観察とすることで、医療現場での感染拡大が防げて医療崩壊を防げる訳で、既に医療部門が悲鳴を上げているのに医師会トップが渋い顔って構図です。
これ貧テック鈍テックでも指摘しましたが、日本では遠隔診療どころか医療機関横断で共有可能な電子カルテも未導入ですし、電子処方箋も無いし処方箋薬のネット購入も限定的にしか認められない現状ですが、その結果どういうことが起きているかというと、同一人物が異なった医療機関を受診し同じ薬を処方されて飲みきれないほどの薬を抱える現実があります。医療のフリーアクセスが原則の日本ではこれ防ぎようがありません。
そして処方箋の期限を迎えて追加の薬欲しさに受診して処方箋を受け取りのエンドレスですが、特に高齢者で回復の見込みがない人ほどこういう行動に陥りがちな一方、医師が継続して処方箋を出さなければ別の医療機関に行って同じ薬の処方を受けますから、所謂薬漬け状態に陥る訳で、保険診療の負荷を高めている一方、薬の処方箋欲しさに通院するから院内感染のリスクを知らずに負っている訳で、医療情報が共有されていないから生じる無駄ですし、当人にとっても無駄な通院を誘発し想定外のリスクを負っている訳ですね。これ結局医療機関にとっては保険点数稼ぎになりますから放置しても困らない訳で、改革の動機づけが乏しい訳です。
今回のような感染症に対してこういった日本の医療体制が脆弱なのが問題なんですが、感染の実態を知るための検査すら「医療崩壊につながる」と反対の声が上がるって、結局現状維持したいだけだろって話です。その結果医療崩壊が避けられない事態になって緊急事態宣言をおねだりするってのも大概です。しかし事態は確実に切迫してきています。
てことで本題ですが、リモートワークにもいろいろ落とし穴がありまして、例えば会社印が必要な契約は結局押印のために出社する必要がありますし、その会社印を管理する部門も当然出社していなければなりません。こうしたリモートワーク不可能な事務仕事ってのは意外とありまして、結局リモートワークは一部に限る訳です。しかも契約を扱う営業社員は書類づくりは自宅で出来ても、こうして節目節目で出社しなければならない訳ですから、場合によっては寧ろ負担が増える場合もあります。
にも拘らず自宅勤務はタイムカードなど勤務時間を客観的に示す証拠が得にくい訳で、社印押印のための出社にかかる移動時間は通勤時間と見做されて勤務時間にカウントされず、結果的にリモートワークで残業カットという会社にとっては美味しい事態が生じますから、コロナ禍が去ってもリモートワークは続く可能性はあります。社畜の国あるあるですね^_^:。
それと社内会議のビデオ会議化にも落とし穴がありまして、パソコンやスマホの画面を見ながらのやり取りで会議を行うこと自体は可能であっても、特に利害対立のある面倒な案件で腹落ちする落としどころを探して確実なアウトプットを得ることが可能かどうかは微妙です。ツールとしてはスカイプやズームなど手軽に使えるものが出てきてますが、ただでさえ空気に流されやすいと言われる日本人が果たしてモニター越しに本音をぶつけ合えるでしょうか。特におっかない上司に対して。この辺は会議の進行役となるファシリテーターの実力次第ではありますが、こういった訓練を重ねた人材がどれだけ居るかというとお寒いですね。
加えて社外秘の扱いやセキュリティがデリケートな問題を孕みます。そもそも会社支給のPCを自宅に持ち帰ることを認めるかどうか?あるいは社員の私物のPCで会社のネットワークへの接続を認めるかどうか?そしてビデオ会議も含めてそもそも社員の自宅のネット環境のセキュリティが適切かどうか?またビデオ会議の発言が外部へ洩れないか?他にも考えられますが、この辺の問題をクリアするのは結構ハードルが高いと言えます。しかし確実い言えるのは、万が一情報漏洩があればリモートワークに励む社員に責任転嫁されるだろうということです。
そして微妙だなと思うのが通勤手当の扱いです。これも最悪の想定をすれば、リモートワークを理由に通勤手当の支給を渋る企業が出てくる可能性はあります。その場合社印押印などで出社した時の交通費精算をその都度行うならば問題ないですが、それをシステムがカバーしているとは限らない訳で、下手すると経費の自己申告のために出社せよってばかげた話もあり得ます。今は非常時ってことでどさくさ紛れに始めた会社ほど、この辺は要注意です。
てことで先週末の乗客減だけで7割減ったと即断はできませんが、コロナ禍が終わってもリモートワークが続く可能性は、会社にとっての好都合である限り一定に存在します。仮に7割減までには至らずとも5割減ぐらいになれば首都圏でも快適通勤が実現する可能性はありますが、その場合現在の輸送力水準が維持される前提でって話になりますから、当然鉄道事業者にとっては逆風です。あまり想像したくはありませんが、通勤手当不支給が広がれば割引運賃ながら先払いの安定収入となる定期券の売上減少は鉄道事業者の経営にボディーブローのように効きます。そうなると現行の輸送力水準の維持が難しくなる訳で、輸送力の減量に踏み込む可能性はあります。
それを防ぐための増収策があれば現状維持はある程度可能でしょうけど、例えば通勤ライナーのような着席サービスは、混雑が緩和されたときにどこまで有効かという問題を抱えます。あとMaaSによるラストマイル輸送との連携で付加価値を生む方向性は考えられますが、欧州でのMaaSの実現例は都市圏の運輸連合方式による共通運賃制度がプラットホームの役割を果たしていることから、事業者が多くそれぞれ沿線の囲い込みに余念がない日本でうまく機能するかどうかの疑問は残ります。あるいは戦後ほとんど見られなかった事業者の合従連衡に進む可能性も指摘できますが、阪急阪神の経営統合で大騒ぎしたぐらいですから、簡単ではありませんが。
あとは東京メトロなどで社会実験が行われた宅配便荷物の客貨混載が進む可能性はあります。ドライバー不足が背景にある一方、感染症対策としてのECの拡大に対応する必要から宅配事業者側の都合で実現する可能性が高まるという点もあります。その反面鉄道沿線の商業施設の利用が忌避されるとすれば儲けの大きい定期外客を減らすことと裏腹となりますので、プラスマイナスは微妙です。
一方トヨタがNTTと組んで静岡県裾野市に建設するスマートシティ構想を推進すると発表しています。つまりこれ自動車メーカーのトヨタがまちづくりを事業化するって話なんですが、CASEの繋がる、自動化、シェア、電動化のいずれも開発費負担が重くて利益見通しが持てない中で、トヨタ流のMaaSを実現して付加価値を得ようって話です。ある意味日本では大手私鉄の専売特許に近かったまちづくり事業への参入となる訳で、トヨタ自身にも迷いがあると思われるので、直ちに手強いライバルになるとは限りませんが、鉄道事業者の連携や合従連衡無しに太刀打ちできるとも思えません。
そして高輪ゲートウエー駅開業でまちづくりに乗り出したJR東日本ですが、安中榛名や喜連川の宅地開発分譲でコケたJR東日本にとっては、まちづくりは未踏の分野です。しかもグローバル化を前提とした職住近接の国際都市というコンセプトも、コロナ後を睨むと見直した方が良いと思います。特に最近の地価上昇をけん引してきたホテル関連がコロナ禍でブレーキになると、緩和マネーで膨らんだ土地バブルも終わる可能性が高まります。まちづくりの経験豊富な東急やこの地域に根を張る京急や西武との連携を図る方が賢明ですが、果たしてそういう判断ができるでしょうか。COVID-19の後始末は簡単ではないでしょう。
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