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June 2020

Saturday, June 27, 2020

風邪ひかない人たち

5月25日の記者会見で日本のコロナ対策を自画自賛した安倍首相や日本の感染者の少なさを問われて国民の民度の高さと答えた麻生財務相のニュースを聞くと、この国で古くから言い伝えられたフレーズが頭の中でリフレインします。山中伸弥京大教授のファクトX はこれかい?

よく考えたら国民は風邪ひくからコロナ禍は恐怖であり不安なんですが、その国民の代表が風邪ひかない人たちだとすれば、風邪ひく人の恐怖や不安がわからないから的外れなのかも。アベノマスク然りアベノコラボ然り。検察庁法改正案然り。国民もいい加減風邪ひく普通の人を代表に選ばなきゃ^_^;。当然自粛解除後に感染者数が高いレベルで続いている東京都の知事選びも普通に風邪ひく人が良いのは言うまでもありませんwww。

そして鉄道界で最大の話題はこれでしょう。リニア27年開業延期へ 

JR東海と静岡県の協議平行線:日本経済新聞
予想された結果ですが、JR東海と静岡県の主張は平行線のまま、川勝知事は折れなかった訳です。

名古屋リニヤだがや以来リニアに否定的なスタンスを取ってきましたが、特に自己負担で名古屋までの先行開業を打ち出したことで、決定的に無理と判断しました。つまり新幹線買い取り代金のローン負債5.1兆円の支払いが2017年に終わり、その部分のキャッシュフローが余剰となるので、名古屋までならギリギリ何とかなるということですね。名古屋まで先行開業して収益化した上で、大阪延伸を後回しにすれば国の支援なしに事業化可能と弾いた訳です。

これの何が問題なのかはわかりにくいかもしれませんが、ほとんど綱渡りに近い資金計画ってことです。よく言われる東海道新幹線との比較では、東海道新幹線の事業計画では事業費2倍で収益が半分でも収支は黒字という手堅い投資だった訳で、経営判断としてやらない理由がなかった訳で、実際当初1,900億円と見込んだ事業費は倍以上の3,900億円に膨張した一方、開業後の営業成績は好調で、赤字体質の国鉄の屋台骨を支える存在になりました。背景には戦後復興で人口増と経済成長が軌道に乗っていて、需要の上振れが見込める時代だったとこもあります。

それに対してJR東海の中央リニアエクスプレスのそれは事業費の大枠が決まっている上、人口減少が始まって経済成長がほぼ見込めなくなっている中で、リニアの収益も不透明なんですから、ほとんど綱渡りと言って良いほどリスキーなんです。故に事業費膨張が避けられない開業延期はJR東海にとっては不都合ですが、だからと言って環境問題を犠牲にして良い訳ではありません。だからJR東海は開業延期を避けたいから着工を認めてくれの一点張りで、川勝知事が求める厳格な環境アセスメントにはほぼゼロ回答ですから、もの別れに終わるのは当然です。

伝えられるところでは川勝知事はリニアには反対しないことを表明し、品川―山梨県駅間の部分開業の提案もしたということですが、まさか山梨リニアエントリー読んだ?但し私の提案はもっと過激で^_^;どうせリニアは実現可能性低いんだから、コンセプト見直して100km程度の中距離の高速輸送システムにすれば汎用性が出て実現可能性が高まるという提案だったんです。

つまり実験線として神奈川県駅と山梨県駅の駅間の大半が出来ていて、前後に数キロ伸ばすだけで実現でき追加コストが抑えられる上、距離と速度から1編成による機織り運行で需要をカバーできるから制御も容易で低コストで実現できます。あとは京王電鉄が相模原線内160km/hのリニアリレー号で新宿―橋本間30分で結べば需要は取れるというもの。実現してシステムとしての優位性や安定性が実証できれば、札幌―新千歳空港間、羽田空港―成田空港間、伊丹空港―関西空港間など短時間移動の需要が見込めるところへ外販できるから開発費の元もとれるよっていう前向きな(笑)提案だったんですけどね。しかも火元は葛西敬之JR東海会長(当時)なんですが。

あとちょっと気になったこのニュース。

JR4社、持ち合い株増 「信頼醸成へ有効」:日本経済新聞
JRの上場4社間で株式持ち合いが進んでいるということですが。元々鉄道事業者は長期的に安定した取引関係を重視する傾向から株式持ち合いは多いんですが、国鉄改革の成果として上場を果たした4社間での株式持ち合いとなれば、国鉄一家の再現という有り難くないものを連想させます。実際4社トップは揃って国鉄OBですし。JR東日本初代社党の元運輸官僚住田正二氏がリニアをけなしていたようなことは考えにくくなります。風邪ひかない人たちなんだろうか?

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Sunday, June 21, 2020

Suica甘いか消費税のウヨ曲説

県境越えの移動自粛解除で迎えた初の週末ですが、電車は以前と比べれば空いています。一方駅へ向かうバスは渋滞にはまってましたから、密を避けてマイカーで出かけた人が相対的に多かったってことでしょう。公共交通にとっては逆風です。東京都では2桁の感染者が出てますし、決して終息した訳じゃありませんから、警戒は続けざるを得ませんが、電車に乗るのにマスク必須となるとは夢にも思いませんでした。

てことで疫病退散祈願のために鎌ヶ谷大仏を訪ねて手を合わせてきました。慎ましくコンパクトな大仏様でした。元々仏教は日本では呪術として天皇家を含む支配層に浸透したものですから、本来の在り方ではあります。三蜜エントリーで取り上げた密教は典型的です。鎌ヶ谷市内高架化した新京成線探訪はついでです^_^;。しかし立派な高架橋も初富駅前後の急カーブで減速を強いられる一方、鎌ヶ谷大仏に向かって高架橋を地上へ駆け下りた途端に動揺が始まったのはご愛敬。安定した自然路盤上をゆっくり走るから敢えて高規格化する必要がない訳ですね。

かくして高架下のプレハブ然とした新京成線新鎌ヶ谷駅も高架上で隣りの北総線/成田スカイアクセス線と肩を並べましたが、大きく立派な割に人が疎らな北総線/スカイアクセス線よりも新京成線の方が人の出入りが多い現実があります。実は新京成電鉄は京成グループ随一の優良企業なんですね。本体がコロナ禍による国際線航空の蒸発で減収著しい一方、地域密着で安定した利用があります。加えて沿線地域のバス事業の寄与も大きく、鎌ヶ谷大仏はバスの拠点にもなっています。

そして乗っていて感じるのが短距離利用が多い点です。松戸、八柱、新鎌ヶ谷。北習志野、新津田沼、京成津田沼で他社線と接続していますから、所謂フィーダー輸送中心で賃率の高い短距離利用が多く、しかも利用が分散されますから、効率よく稼げる構造になっています。地味ながら侮れない実力者です。

北総線との関係で言えば、北初富―小室間の一次開業時、地上駅の北初富で平面分岐して北総二期区間の高架橋を潜って上り勾配で当時の新鎌ヶ谷信号場で合流するルートで、新京成と当時の北総開発鉄道が相互直通で松戸―小室間を結んでおりました。北総は1号線規格で冷房車の7000系に対して新京成は非冷房の吊り掛け車というアンバランスで、北総二期開業(京成高砂―新鎌ヶ谷間)で解消するまで続きました。北総線は高運賃で利用が伸びず、成田スカイアクセスはある意味北総線のてこ入れでもありました。コロナ禍で先が見えなくなりましたが。

で、本題。れいわ新鮮組の山本太郎氏が都知事選に立候補しましたが、何でも持論の消費税5%を打ち出さない宇都宮けんじ氏への不満かららしいとか、自分が立つから降りてくれと告げて宇都宮氏を激怒させたとか聞こえてきます。真相はわかりませんが、都知事選に立つと言っても勝算がある訳ではなく、次の国政選挙を睨んだ話題作りなんですよね。

元々東京都は転入人口が多く、特に大学生や新卒会社員など若い世代の転入が多いため、彼らへのアピールという意味では知名度が決定的に重要な選挙になります。故に青島幸雄に始まってタレントの立候補が続いています。一応政治家としてキャリアを積んだ小池知事をタレント呼ばわりはどうかなとは思いますが、テレビキャスター出身でメディア露出が巧みな小池氏はやはり政治家としては特異な存在です。コロナ禍の初動の失敗を悟らせずにメディアで発信しているあたり、本当に巧みです。褒めてませんけど。

逆に言えば地方の首長選としては異例ながら全国区でメディアが取り上げますし、知名度を上げるにはうってつけ。300万円の供託金払えば公共の電波使った政見放送で言いたい放題言えるという訳で、今回も22人の立候補者が立ちました。しかもコロナ禍で集会などはやりにくいけど、テレビやネットでうまくアピールすれば、在宅ワークの有権者への露出はそれなりに可能ってこともあります。尚、このところの内閣支持率がダダ下がりなのは、在宅でネットの国会中継を視聴する機会が増えたからと言われてます。安倍政権の化けの皮がはがれてきてる訳です。

そんな中での山本太郎氏の立候補ですから、端から勝つ気はないでしょう。それより消費税下げろと主張して有権者にアピールしたいのが本音ですね。この点で山本氏は評価できません。消費税減税論者が見落としているか意図的にスルーしている問題があるからです。例えばSuica甘いか消費税で取り上げた鉄道運賃の改定に伴うシステムの改修問題です。

消費税が下がれば鉄道運賃の値下げはは期待されるでしょうけど、コストかけて値下げする義務が鉄道事業者にあるかどうかは微妙です。勿論世論の圧力で値下げの可能性は皆無ではありませんが、コロナ禍で密を避ける人々の行動で利用者が減る中で、寧ろ負担増の要因もありますから、それを理由に値上げも考える局面でもあります。となると消費税減税で負担が減った分で値上げ回避という理屈が成り立ちます。この辺政府がどう判断するかにもよります。

ちなみに消費税に当たる付加価値税減税を打ち出したドイツですが、欧州の付加価値税は日本の消費税と違って税額票(インボイス)を用いていて複数税率に対応可能な上、価格表示が総額表示ですから、税率を下げても事業者は値下げの義務を負いません。勿論値下げしても良いですが、全て事業者の判断に委ねられます。今回のコロナ禍では寧ろ事業者への補助金の意味合いが強いと言えます。

それと日本の消費税制度は社会保障財源として紐付けされてますから、消費税減税は社会保障財源の縮小を意味し、それを口実に社会保障給付を減らされることもあります。実際そうして年金も医療保険も給付を削られ逆に保険料を値上げされているのが実際です。消費税を下げればますますこの傾向は強まる訳です。

加えて地方消費税のことも語らないですよね。間違いだらけの消費税で指摘した通り、税収比22%相当は地方消費税として自治体に配分されます。つまり消費税減税すると地方税収が減るという不都合がありますが、減税論者はこの点もスルーしてます。

翻って東京都は財政的には恵まれた存在ですが、それ故に地方交付税不交付な一方、ふるさと納税制度で税源が流出する一方、地方税の法人事業税の一部の地方配分を強要されるなど、このところ税源の棄損が目立つ一方、五輪でコスト負担もあり、今に至っては開催でも中止でも都の負担は避けられませんし、コロナ禍に伴う営業自粛の協力金などで積立金を取り崩しており,更に第2派の感染拡大でもあればどうなるかわかりません。故に次期都知事はどのみち敗戦処理しかない訳です。それなのに地方消費税減らしてよいというのは暴論です。

勿論今消費税を上げる議論は論外ですが、法改正して多大なコストをかけてまでやるべきことか?ってのは冷静に考えればわかります。寧ろ緩んだ財政規律を考えれば、事後的な増税も視野に入ります。消費税と共に基幹税とされる所得税と法人税の増税と累進課税の強化が王道ですが、法人税の租税特例の見直しや炭素税やデジタル税の導入など、議論すべき問題は寧ろそちらです。

そして最後に、消費税減税論者は藤井聡京大教授など保守派の論客が好んで仕掛けております。上記の社会保障の圧縮の口実になる点を踏まえると、実は何でも減税の保守派の議論なんです。てことでウヨ曲説に騙されるな!と申し上げたいです。

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Sunday, June 14, 2020

DXでは解決しないコロナ後

デジタルトランスフォーメーション(DX)がコロナを機に進むという見立てがあります。

コロナが招く「金利の死」 1%未満の国、5割  チャートは語る:日本経済新聞
前エントリーで取り上げた金利の死ですが、金融の新常態(ニューノーマル)は確実に進んでいます。少し補足しますと、金利の消滅は異なる資産を交換する金融市場が意味を失うということです。例えば日銀が国債を爆買いして金利上昇を抑えてますが、本来金利のある国債と金利のない貨幣との交換によって、金利水準が微調整されて長短金利差が生じるから、短期資金を集めて長期資金を融資する銀行のビジネスモデルが意味を持つ訳です。

融資先企業は利払いを意識して最終利益の最大化を図りますから、イノベーションが進んで経済を成長させる訳ですが、融資の金利が下がると、本来退場すべきゾンビ企業が延命して成長企業への資金の流れを阻害しイノベーションを足踏みさせる訳です。将に90年代の金融危機以降、日本で起きたことがこれですが、それが世界規模に拡大したという訳です。

日経の記事ではコロナ禍をきっかけにDXが進むことで長期停滞から抜け出す楽観シナリオで結ばれてますが、実際にはリモートワークは進んだものの、医療や流通、公共交通など国民生活に欠かせない業種ではリモートワークの導入は難しい上、人との接触が避けられず感染リスクも高いという問題を抱えています。海外でエッセンシャルワーカーと呼び、国のトップがエールを送るなどしてモチベーション維持に配慮する訳です。マスクも検査も特別給付金も現場へ丸投げでリスペクトしない某日本国の首相とは大違いです。

で、前エントリーのおさらいになりますが、国民の行動が制限され経済が収縮する中で、彼らへ支払われる賃金の原資は縮小を余儀なくされるわけで、何時まで持ちこたえられるかは心許ないところです。コロナ禍では医療問題に注目が行きやすいですが、国民生活の基盤が侵食されている中で「DXで明るい未来」なんてノー天気なことは言ってられません。

そして気になるのが生産現場の問題です。今のところ深刻なクラスター感染はないようですが、密を避けるために床にシールで間隔を空ける目安にしたり、ラインの配置を見直して密を避けるなどの工夫が行われているようですが、フル稼働には程遠い状況で、需要が冷えてるから何とかなっているという皮肉な状況です。ドイツのようにIoTが進んでおらず、生産現場の密解消は程遠い状況です。

そして気がかりな事故が起きてしまいました。

京成電鉄青砥駅で脱線事故が発生 脱線の原因は台車の亀裂で確定か?
台車枠の亀裂による変形が脱線の原因のようですが、過去に取り上げた台車枠の亀裂の中で触れた東武東上線上板橋駅での10000系の脱線事故と日韓事変で取り上げた南海電気鉄道ラピートと共に、住友金属工業(現日本’製鉄)製SUミンデン台車という共通点があります。私鉄を中心にユーザー多数だけに、仮に構造的欠陥があるとすれば一大事です。

一方でユーザーでる鉄道事業者から見れば、台車枠の経年劣化による亀裂は検査で発見できれば修理して問題なく使える訳で、見落としが無かったかが問われます。このことは全般検査8年重要部検査4年という検査周期の延長を国に求めていただけに、微妙な問題となります。事業者によっては超音波による非破壊検査を実施して発見に努める一方、ハンマーによる打音検査も広く行われてますが、後者ではスキルを身に着けた若手が育っていない可能性があります。台車の構造的欠陥にしろ検査の見落としにしろ、日本企業の現場力の劣化を疑う事態ではあります。

これDXの阻害要因になります。ITと呼ぼうがデジタル化と呼ぼうがDXと呼ぼうが、つまるところ現場で積み上がった暗黙知を形式知に変換することが出来ていないことに他なりません。この辺日本企業の多くであまりうまくいっていないところです。これ企業だけの問題じゃないことではありますが。

PCR検査が少なすぎる問題にしろアベノマスクにしろ、トップの無茶ぶりで現場に負荷をかけているのは国からしてそうなんです。特別給付金ではマイナンバーカードでオンライン申請すれば早いという無責任なデマが政治家から発せられて自治体窓口が混乱しましたが、そもそも発行が伸びず行政実務との紐付けが進まない中では絵空事ですし、もっと手前の問題として自治体の行政事務のデジタル化が進んでいないから、紐付けしようがないです。自治体の窓口業務こそリモートで対応出来れば良いですが、文書主義ハンコ主義がそれを阻害しています。

てことで、見えない明日に向かって今できることを積み上げるしかない訳で、DXでトランスフォーメーション(変換)と未来展望を語るのは無責任です。

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Sunday, June 07, 2020

ウィズコロナ・ウィズデジタル・ウィズグローバル

緊急事態宣言解除で予想されたこととはいえ、感染者は増えています。但しこれを第2波と見るべきではないでしょう。自粛で経済にブレーキをかけて感染拡大を止めた結果感染者が減っただけですから、克服できている訳じゃありません。単に爆発的感染のピークを後ずれさせただけですから、今後も感染者は一定ボリュームで発生しますし、それ故に警戒は続ける必要があります。コロナ克服を意味するアフターコロナではなくコロナと共生するウィズコロナってことですね。そんな中で気になるニュースがこれ。

新型コロナ、病院経営を直撃 「第2波来たら持たない」:日本経済新聞
地味ながら「神奈川モデル」と呼ばれる医療体制を構築し「ダイヤモンドプリンセス号の教訓を活かした」と評価される神奈川県ですら現状がギリギリ。救急搬送のたらい回しが複数報じられた東京都や大阪府の脆弱さは推して知るべし。院内感染もチラホラ見られ、濃厚接触者として医療スタッフが2週間の経過観察で戦線離脱という悪循環もあって、医療体制は万全とは言い難いのが現実です。見方によってはソフトな医療崩壊という辛辣な評価もあり得ます。この状態で第2波の備えが万全と言えるのか?国民経済の犠牲にして時間稼ぎをしている間にやるべきことがあったんじゃないかという点は指摘しておきます。

ウィズコロナで盛んに言われる新常態(ニューノーマル)ですが、経済関連では以前から使われてきた言葉で、しかも幾つかの国の立場の異なる人から発せられているのですが、日本ではコロナ禍に対する「新しい生活様式」と結びつけられております。しかし経済、金融の世界ではコロナ禍のずっと以前からニューノーマルが言われていました。その議論の前提としてジャパニフィケーションとリバーサルレート論があります。

これらはリーマン後のトレンドですが、所謂日本化は、元々長期停滞論としてアメリカなどで議論されたもので、人口減少と高齢化によって人口ボーナスが消滅し逆転する結果の低成長が言われるようになり、実際米FRBは3次に亘る量的緩和(QE)として日本の非伝統的金融政策を模倣し、ECBもこれに続きます。欧州ではギリシャショックをきっかけとする危機で財政力の弱い加盟国の国債を買い支える必要もありました。いずれも日本のようにデフレに陥ることを回避しようとしましたが、効果は限定的で、結果緩和の長期化による副作用も意識され、金融政策の正常化が模索されましたが、市場の反応や政治圧力もあって長期化を余儀なくされました。

一方欧州のスイスや北欧など非ユーロ諸国ではECBの緩和政策で通貨高圧力に晒された結果、マイナス金利政策へ踏み込みます。これがきっかけとなりECBや日銀もマイナス金利に踏み込むことになりますが、その結果長短金利差が消滅して銀行が貸し出しを絞る結果、緩和効果を失う水準としてリバーサルレートが意識されるようになりました。現在ECBがマイナス0.5%、日銀がマイナス0.1%で動けないのはこのためです。

つまり人口減少と高齢化によって金融政策による景気浮揚効果が失われ、長期停滞による低成長が常態化したのがニューノーマル論という訳です。アベノミクスや黒田バズーカが有効ではないことが世界規模で証明された訳ですが、ニューノーマル論には続きがありまして、非伝統的緩和策で世界をリードする日本で^_^;、2016年9月に導入されたイールドカーブコントロール(YCC)で長期金利を誘導目標とした訳ですが、FRBの利上げにも拘らず米国債金利の低迷が続き、アメリカでも長短金利差が消滅している現実があります。

元々積極財政で赤字拡大基調の上、コロナ禍で財政への負担が増す中で、FRBは米国債を買い支えて長期金利を抑え込まざるを得なくなりました。これ意図せざるYCCと言えます。日本と事情が異なるのは、米国債は外貨準備として世界各国で保有されている訳で、金利上昇=価格下落は米国債投げ売りを誘い米ドルの信認を脅かすため、FRBは買い支えせざるを得ない訳です。ECBが加盟国の国債購入をやめられないことと同様の事態になった訳です。ザックリ言えば日米欧の主要通貨の長期金利がほぼゼロ近辺の水準で膠着し、為替相場も膠着させている訳です。

てことで、各国の財政赤字拡大が続き、金利上昇圧力を抑え込むために金融緩和もやめられず、結果主要国通貨間の金利差が消滅して為替市場も動かなくなるというのがグローバル経済の現実です。コロナ禍が終息してV字回復があり得ない訳で、その中で経済を冷やさずに国民生活を守るためには、国民の不安に寄り添う政府の働きかけが大事ですが、現政権にその意識はなさそうです。

但し悲観する必要はありません。90年代後半の金融危機をきっかけに始まった日本のデフレですが、ゼロ年代以降のベアゼロ春闘による賃上げの低迷に加えて非正規労働の解禁による労働者の非正規化もあって賃金が下がってきた中で、物価下落のお陰で快適な生活を維持しつつ貯蓄を増やすことができたのが日本の現実です。それに世界が追い付いてきた訳です。グローバルデフレが始まる訳です。

補足すれば先進国ではGDPの6割は個人消費が占めますが、個人消費は生存的消費と選択的消費に分けられます。前者は削れないけど後者は削れる謂わば不要不急の部分で、所得水準によりますが先進国ではおよそ半分は後者の選択的消費となります。てことで緊急事態宣言が出た4-6月期のGDPは年率換算でマイナス20%程度と予想されてます。マクロには余裕があると見なせますが、所得階層によっては厳しい訳で、特別給付金の迅速な給付が必要なのは言うまでもありません。

てことで、当面のウィズコロナ時代でキモになるのがリモートワークなどのデジタル技術を活用した社会的距離の確保策ですが、前エントリーで指摘した日本の住宅事情がネックになる可能性があります。逆に言えば、この問題を解決できるビジネスモデルを生み出せれば、そこにビジネスチャンスがあるということでもあります。その点から首都圏の各社で始まったシェアオフィス事業が化ける可能性は指摘できます。

シェアオフィスといっても主にスタートアップ向けの共用スペースをシェアするタイプではなく、パーティションで仕切られた1-2人用ブースを駅構内に複数設置するタイプのもので、セキュリティ対策された高速ネット環境で、出来ればユーザーの所属企業のVPNとの接続が可能な仕様で、例えば午前中はシェアオフィスでリモート勤務して午後出社といった使い方が出来れば、朝のピークタイムをヘッジする効果もありますから、鉄道会社にもメリットがあります。

更にIT系中心に続いてきたオフィス増床で都心オフィスの賃料が高止まりしていることもあり、企業にとってもサテライト型シェアオフィスの活用で都心オフィスの縮小などでコスト削減の可能性が出てきます。浮いたコストでシェアオフィス会費を含むリモート勤務で生じる従業員の負担を手当てでカバーするなどすれば、様々な問題解決につながります。

あと医療分野の遠隔診療やカルテ電子化とか、教育分野のリモート学習など、デジタル技術による問題解決の可能性は多岐に亘りますが、医療も教育もそれを阻む障害が多い現実があります。日本ではウィズデジタルが最も困難かも。

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