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August 2020

Sunday, August 30, 2020

アベノミクスを終わらせろ

健康上の理由による突然の辞任ですが、腑に落ちないのが代理を立てて直ちに静養しないことです。来月の自民党総裁選で後継者が決まるまで執務を続けるのは、責任の取り方としておかしいです。当然国会召集も新総裁に丸投げとなる訳です。自分の任期中に後継者を競わせることで、影響力を維持したいってことでしょうけど。

それはそれとして、アベノミクスの総括がどうなるのかが興味深いところです。成果として株価の上昇と雇用環境の改善が取り上げられますが、いずれもアベノミクスの成果ではありません。株価といっても日経平均株価ばかりが取り上げられますが、これ225の優良銘柄の平均値ですから、上がらない方がおかしいんです。ま、バブル崩壊で実際下がった訳で、38,000円台を付けた最高値に未だに届いていない訳です。

この225銘柄は定期的に入れ替えられますし、合併や上場廃止などで銘柄数が減れば補充されます。謂わば日本のチャンピオン企業を集めた指標ですから、上がらないってことは日本経済の成長力の劣化を意味する訳ですし、実際バブル崩壊以来下がりっぱなしだった訳で、下がった水準から少し戻したことを以て成果とするのはおかしい訳です。

あと雇用に関しては、完全失業率の低下や有効求人倍率の改善が言われますが、非正規雇用が4割を占める質の劣化は問題です。これも90年代後半から生産年齢人口の減少が始まり、2007年以降には団塊世代の大量退職もあった訳ですから雇用情勢が売り手市場になるのは必然ですが、一方で企業の求人難に対しては非正規雇用の拡大で穴埋めされた訳で、その結果高齢者と女性の労働力率は高まりましたが、見方を変えれば、その間GDPはほとんど伸びていない訳で、労働生産性が低いまま労働力の投入量を増やしてGDPを維持したというのが実際です。

これ前エントリーで指摘したように政府の成長戦略で経済成長する訳じゃなくて、企業の成長力が結局経済成長をもたらすという当たり前のことを申し上げておきます。その意味で示唆に富むのがこれ。

角栄メモは今も問う ポスト安倍の金融センター構想は 本社コメンテーター 梶原誠:日本経済新聞
コラムでは今度こそ東京をアジアの金乳センターにすべしという希望的観測が語られてますが、1974年に東証理事長に就任した谷村裕氏に当時の田中首相がメモを渡して株式市場の抜本改革を求めたことが、国際金融都市東京の出発点ということです。

その「角栄メモ」の中身は「エクイティファイナンスは利払いがなく低コスト」とする日本企業のあり方を根本的に見直すべきことが綴られていたそうで、株主価値の向上と株主還元に重きを置くものだったということです。所謂コーポレートガバナンス問題ですが、株式持ち合いで安定株主対策を取りながら、株主に煩わされることなく意思決定していた日本企業の姿がその後どう変わったかは問われます。

リーマンショックで株主資本主義の弊害が指摘されましたが、それ以前に株主という外部の目を排除して独善的に意思決定してきたことが、バブル期に財テクと称して土地や株へ投資資金を振り向け、次の成長に繋がる投資を怠った結果、バブル崩壊で競争力を失った訳で、基本的に日本経済は当時の失敗を乗り越えられていない訳です。

かつて電子立国と言われ世界の半導体市場を席巻した日本の電機産業が典型的です。バブルに踊りIT革命の波に乗り損なった間に、ムーアの法則に則って大規模投資を継続した米インテルや、後発ながら積極投資でグローバルプレイヤーに成長した韓国サムスンやLGの後塵を拝する結果となった訳です。

余談ですが日韓事変の後日談ですが、日本の化成品輸入が滞った結果、サムスンもLGも製造工程を見直し、例えばディプレイパネルなど精度を要求されない工程で韓国産化成品を使う一方、日本の化成品メーカーが現地進出することで、同等品の入手も可能になり、今後製造技術の移転で韓国メーカーもキャッチアップが期待されるという状況になり、財閥企業と中小企業のギャップ解消が進んだことで、韓国から「安倍さんありがとう」の声が上がってます。これをアベノミクスの成果と呼ぶかどうかは微妙ですが^_^;。

バブル崩壊で沈んだ日本の電機産業ですが、コロナ禍で沈むとすれば自動車産業でしょうか。自動車メーカー本体は何とか持ちこたえるとしても、部品メーカーから悲鳴が上がっています。1台3万点と言われる自動車部品の供給がコロナショックで止まり、感染防止の観点からも国内メーカーの操業停止が相次ぎ、結果的に国内部品メーカーも操業を止めざるを得なくなりました。その結果資金繰りが悪化しており、いずれ廃業も出てくるでしょう。そうすると結果的に国内サプライチェーンが弱体化し、生産再開が早かった中国依存が短期的には強まる可能性があります。そうなると危機対応で国内回帰が叫ばれるのと逆の動きとなって、国内サプライチェーンが立ち枯れていく可能性があります。

元受けの大手メーカーが資本を入れるとかすれば何とかなるかもしれませんが、CASEなど100年に一度の変革期を迎える自動車産業で、在来型のガソリン車の部品供給が滞ればEVシフトが進む可能性も視野に入れる必要があります。逆に大手メーカーにはある意味チャンスかもしれませんが、それは多数のサプライヤーを犠牲にしての生き残りということになる訳で、そこまで腹の座った経営者が果たして現れるかどうか?

そしてEVシフトはある意味自動車メーカーの強みを失うことにもつながります。内燃機関をコントロールしてて適切に動力を取り出し駆動する技術はアナログなチューニングの塊であり、それが参入障壁にもなっていた訳ですが、その強みが失われれば、新規参入者との競争を覚悟しなければなりません。

生産台数では劣るテスラがトヨタを時価総額で上回るってのはそれなんですね。部品メーカーとのしがらみのないテスラは、オンラインでバージョンアップしながら性能を高めるというスマホのような繋がるクルマを実現してますが、これが既存メーカーには高いバリアなんです。自動車の世界も電子化自体は進んでますが、それは主にロッドやワイヤーを電子回路に置き換えることが中心で、機能的にひと塊のユニットを組み立てるモジュール化とも関連します。個々のモジュールに制御用のプロセッサーが組み込まれており、独自OSで動いている訳で、モジュールに不具合があればモジュール単位で交換するという形でブラックボックス化しており、これがコネクテッドカーへの進化を阻んでいる訳です。

てことで、心配なのが政府による自動車産業への介入なんですが、実際窮地にある日産をホンダに救済合併させようとして双方から断られたなんて話もあります。仮に構造変化でつぶれる自動車メーカーが出るとしても、それは市場の正常な作用であって、政府が手を突っ込むような問題ではありません。

逆に気になるのが密を避けるという意味で公共交通忌避に乗じて自動車を売ろうという方向へ進む可能性もあります。公共交通の独立採算原則の下では放っといても公共交通は立ち枯れるから車を売るチャンスという訳ですね。国民の移動の権利が規定されていない交通政策基本法の下ではそうなります。

同じ公共交通でも、鉄道やバスは換気に配慮して対応してますが、それが出来ないのが航空でして、空気の薄い成層圏を飛ぶ以上、気密性も保持が優先されます。実際航空機の前後の席での感染が報告されてますし、航空産業にとっては逆風は続きます。ある意味フリュグスカム(飛び恥)実現のチャンスでもある訳ですが、恐らく政府は航空の救済に向かうでしょう。

あと気になる動きとしてはJR東日本が時間帯別運賃の導入を検討するというにゅーすですが、これ運賃制度へのダイナミックプライシング導入が意図されています。その問題点はデジタル経済はビッグブラザーの夢を見る? で指摘した消費者余剰の搾取を意味します。届け出制の特急料金やグリーン料金では既に繁忙期と閑散期あるいは事前購入か車内購入かで格差をつけてますが、これわかりやすく言えば客の足元を見て高く取れるところから取るという話であり値上げの口実です。つまりSuica甘いかエントリーで指摘したように、仮に消費税減税が実現しても交通運賃の値下げは無いってことです。

書きたいことはまだありますが、長くなりましたので一旦終わります。アベノミクスには終わってほしいけど。

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Sunday, August 23, 2020

コロナの後遺症

covid-19の感染拡大が続いていますが、日本の場合検査が少なすぎて、感染拡大の実態が見えないまま、国民の疑心暗鬼ばかりが拡大します。故に大学ラグビー部の寮でクラスター感染が確認されたら。ラグビー部と無関係の教育実習生受け入れが断られたりという差別的なことが起きてしまいます。相変わらず保健所の窓口能力がボトルネックになっていて改善は見られません。

東京都や大阪府の知事がメディア露出で政治利用している実態もあり、国民に寄り添う政治姿勢は見られません。一方で世界中からコロナ感染者が回復後も心臓や肺に延焼が見られるなど後遺症が指摘されており、とてもじゃないけど普通の風邪レベルの話じゃありませんし、感染力の強いウイルスの生存戦略としての弱毒化も見られません。確実に長引くコロナ禍の中で、出来ることを積み重ねるしかありません。

そしてまともなコロナ対策を打ち出せない政府の無能に批判が集まるようになりました。アベノミクスが始まる前から批判していた身としては、ここへ来ての内閣支持率低下に今更感しかありませんが、歴代政権の実質GDP成長率の比較を見ても、大規模財政出動で経済を下支えした小渕・橋本政権で1.0%、規制緩和中心に新自由主義的な構造改革路線の小泉政権で1.0%、何だかよくわからなかった民主党政権で1.6%、大規模金融緩和の2019年までの安倍政権で1.2%です。しかも安倍政権にはオマケがついてます。

日米欧GDP戦後最悪、4~6月 日本はデジタル化カギ:日本経済新聞
統計不正などのインチキで数字を作ってきた安倍政権ですが、コロナで吹っ飛びました。しかも19年10-12月期、20年1-3月期に続く3期連続の下落ですから、ザックリ元の水準から1割減ってところです。しかもコロナ禍が長引くから回復には3-4年程度あるいはそれ以上の相当の時間がかかると見るべきでしょう。安倍政権下の成長率はさらに下がる訳です。

歴代政権の比較で何だかよくわからなかった民主党政権時代が最も高いってのは意外ですが、これ東日本大震災の復興による部分もありますから、やや下駄を履いた数字ではあります。しかし大災害に対して汗かいて国民に寄り添って努力したことは認めて良いと思います。つまり成長戦略ぶち上げて景気の良い話を煽った自民党系政権に対して、目先の課題に取り組んだ結果、経済が反発した訳です。ここ重要です。

てことでまともなコロナ対策も打ち出せずに国会も開かずに逃げている限り、安倍政権の評価は下がらざるを得ない訳です。そもそも財政政策や金融政策を成長戦略とするのは疑問です。マクロ経済政策を理論化したケインズが、報道記者に成長理論を問われて「アニマルスピリット」と答えた逸話が有名です。ケインズの理論は経済成長過程で生じる景気変動を平準化する理論であって、実際の成長は企業家のアニマルスピリットに依存するという意味です。つまり自らの経済理論に成長理論は無いと認めた訳です。

政府が打ち出す成長戦略は当てにならない訳です。結局企業がリスクを取って投資することが成長に繋がる訳で、その意味で成長できないのは政府のせいだという新自由主義者の主張も要注意です。例えば民主党政権で実現した高速乗合バスの規制緩和も、ツアーバス事業者からすれば規制強化なんですが、規制をクリアして乗合免許を取得した所謂新免事業者が輸送市場の活性化に寄与したように、ルールの変更は重要ですが、岩盤規制があるから成長できないなんてほざく経営者は、無能を晒しているに等しい訳です。運輸省や郵政省と戦ったヤマト運輸の事例を挙げるだけで十分でしょう。

ただ悲観すべきではないのは、GDPは付加価値の合計であって、例えば外出自粛や飲食店の営業自粛で必然的に自宅で食事をとる機会が増える訳ですが、飲食店の原価率が3割程度で元々付加価値が高かった一方、スーパーで食材を買って自宅で調理すれば、飲食店が生み出す付加価値は消える訳ですから、生存には問題がない訳です。付加価値って選択的消費の結果生じる訳ですから、早くコロナ感染を封じ込めて、手間のかかる自宅調理より外食を楽しめる環境を作ることが大事ってことです。

心配なのは雇用でして、既に多くの企業が来年度の新規採用を見直していて、JALやANAは既に採用停止を打ち出しておりますし、JR西日本も新規採用抑制を打ち出しております。JR各社は国鉄末期の採用停止で空白の世代があり、今後国鉄OBの社員の大量退職が見込まれるため、計画的に新規採用を拡大してきたのですが、コロナ禍による運輸収入の減少でそれどころじゃなくなりつつあります。

一方でネット通販の利用拡大で宅配便のドライバーは増えてますが、急激な拡大には正社員主義のヤマト運輸も追いつかず、利益を減らすとして減少傾向にあった外部委託に頼らざるを得ないですし、更に外食の宅配でウーバーイーツなどの拡大が見られますが、これも飲食店の営業自粛でアルバイト先を失った学生、フリーター、外国人留学生などが更に不安定なギグワーカーに転落したとも取れる訳で、雇用の劣化は止まりません。ただでさえ低下著しい日本の労働分配率はさらに低下し消費を冷やすことは間違いありません。

そして新卒の正規雇用減少はいつか来た道ですね。90年代後半のロズジェネ世代の再現となり、多くの若者が社会人としてのキャリアの始まりで躓く訳です。とはいえベンチャーキャピタルの弱い日本では起業もままならずですし、コロナ禍が収まるまでは海外渡航もリスクがあります。ある意味ロスジェネ世代より過酷な現実に直面しているとも言えます。

そして現役世代の賃金低下は年金や医療保険など社会保障にストレスを与えます。年金給付の減額や診療の自己負担増で対応すれば、寧ろ老後不安から現役世代の貯蓄性向を高めますから、これも消費を冷やします。そしてロスジェネ再現以上に問題なのが、学校教育の遅れです。学校の閉鎖でカリキュラムの消化が遅れていて、夏休みを極端に短縮しながら密を避けで授業を行う教育現場のストレスは相当高いですが、問題は小中高大と幅広い世代に影響が及んでいることで、将来「ゆとり世代」ならぬ「コロナ世代」が長期に亘って経済にマイナスインパクトを与えかねません。安直に学校閉鎖を決めたツケが重くのしかかります。

てことできりがないのでこの辺にしておきますが、この状況で公共交通の逆風をどう乗り切るかは重大です。おそらく独立採算原則を見直さない限り、立ち枯れていく未来が見えますが、民主党世間が提案した交通基本法を自公政権で交通権部分を省いた交通政策基本法として成立させたことがネックになりそうです。憲法に紐付けされた交通権を盾にしないと、結局自治体は金を出し渋り事業者は撤退せざるを得なくなることになりかねません。

また欧州で見られる交通税のようなものを導入する手はありますが、これも恐らく課税対処になる沿線住民や企業の反対で潰されるのがオチになりそうです。あるいは揮発油税など燃料税を事業者への補助金に使うとか、国税レベルで炭素税のような新税を導入して補助財源にするとか、公的サポートを考えないと持続可能性を損なうことになります。

てことで経済社会にも深刻な後遺症を残しそうなコロナ禍です。国会召集早よ!

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Sunday, August 16, 2020

コロナで変わるパワーシフト

人口減少にあえぐ日本と欧州ですが、人口増加でパワーシフトが起きると言われていた日本を除くアジアに異変が見られます。

中国新幹線、2035年に総延長2倍 投資額70兆円か:日本経済新聞
これ田中角栄の日本列島魁皇論の中国版ですが、都市域の広い中国の50万都市って日本の感覚で言えばさして密集度が高くないので、ほぼ広大な大陸中国の津々浦々を高速鉄道でカバーするという狂気じみた計画です。

風邪は寝て直せで取り上げましたが、そもそも最初にcovid-19の感染拡大が見られた武漢市が交通の要衝で人の移動が活発だったことが、中国全土及び世界への感染拡大をもたらしたことを忘れてはいけません。covid-19はグローバル化がもたらした新しいタイプの感染症であり、高速移動の条件が整えばそれだけ脅威も拡大するし、今後も未知の感染症の蔓延を助けることになるということも考慮すべきです。これ日本でもアフターコロナでリニア作れという議論がありますが、同じ種類の誤謬です。

中国では香港やウイグルの人権侵害問題は取り上げられますが、実はもっと深刻な農民問題が影を落としています。中国の農業人口は7億人程度で人口のほぼ半分ですが、農村出身者は都市住民になれない制度上の制約もあり、都市で就業しても農民工として扱われ、差別的な待遇に甘んじていますが、経済成長と共に都市在住者が豊かになる一方、低賃金労働に甘んじていて、昨今待遇改善のためのストライキが頻発しています。農民工には漢族以外の少数民族も多く、不満がたまっています。

更に法改正で地方政府の土地利用権限の拡大が行われた結果、農村に留まる農民も、分散する農家を集合住宅に移住させて開発用地を生み出すということが各地で行われ、農地に隣接した農家が取り上げられ、集合住宅から農地へ通勤という笑えない事態になっております。経済成長のために地方政府の開発事業は基本的に奨励されておりますが、不正の温床にもなりやすく、習近平政権の不正撲滅運動で少なからぬ地方政府幹部が失脚してもおります。中央集権の建前と裏腹に、地方政府の暴走を手綱を締めて操る現状は、実は中央と地方の緊張感を生みます。故に地方が潤う経済対策を打って不満を和らげる必要もある訳です。

こんな状況ですから、香港だけを特別扱いできませんし、経済成長のエサを撒いて不満を封じ込める必要がある訳です。という訳で、習近平政権の経済重視は変わっておりませんし、ある意味香港市民は金儲けには熱心でも政治的にはノンポリでデモ鎮圧は支持されるという見立てをしていたと考えられます。元々香港は英国統治時代から植民地型の統治システムだった訳で、行政庁と立法会は独立していたものの、裁判官は裁判の都度行政庁長官が指名するという形で、司法の独立は確立していませんでした。それでも英国流コモンローで48時間で公判前保釈が普通に行われるのは、長期勾留当たり前の日本より遥かにマシですが。

だから習近平政権の性格はどちらかと言えば日本の田中角栄政権に近いと言えそうです。田中政権で懸案の日米繊維交渉が妥結した一方、アメリカを出し抜いてイラン原油確保に走るなど、独自外交を展開したことでアメリカに睨まれてロッキード事件で失脚することになったという見立てもありますが、米中摩擦で引かない外交姿勢などもそうですね。中国がアメリカに変わって覇権を求めているというのは当たりません。中国から見ればアメリカの言いがかりに対応しているだけってことですね。

付け加えると高速鉄道整備で資産規模を拡大した中国鉄路集団ですが、当然負債も拡大しており、このまま高速鉄道整備を続ければ早晩日本の国鉄のように経営破綻を免れません。よく見れば日本の歩んだ道をトレースしていることがうかがえます。となればいずれ日本のように低成長に陥りアジア全体の足を引っ張るようになる。中国版失われた20年に突入します。日本の場合は中国の台頭でカバーされましたが、中国の規模の経済大国が低成長になったときの成長をカバーできる国は恐らく現れません。

1897年ペスト禍の香港に派遣されてペスト菌を発見した北里柴三郎博士は、ペスト菌がネズミに寄生するノミを媒介してヒトへ感染する感染経路まで明らかにして、ネズミ駆除のためにネコを飼うことを推奨し、日本でも飼いネコブームが起きたとか。夏目漱石が雑誌ホトトギスに「吾輩は猫である」を掲載し好評を博したのが1905年という時系列ですが、北里博士は脚気菌の存在を否定して東大教授緒方正規博士と対立した一方、勤めていた国立伝染病研究所が突然内務省から文部省に移管されて東大の下部機関になる形で地位を追われます。この辺PCR検査を巡るゴタゴタに通じるものがありますね。

PCR検査自体は採取した検体に含まれる特定の塩基配列を増殖して調べる検査で、抗体検査や抗原検査など他の検査方法と比べて簡単で精度も高いのですが、それでも擬陽性や偽陰性があるから信用できないという謎理論や、医療崩壊につながるという反対論で検査拡充が進みません。後者は検査を医療から切り離して体制整備すれば済むことで、確かに鼻や喉からの検体採取は感染リスクを伴いますし、相応のスキルも必要でしょう。だから大学や民間検査機関まで動員し、必要な検査キットや防護服などの医療用品を国が手当てすれば済むことですが、今に至っても出来ていません。

その結果自粛解除で案の定感染拡大が見られますし、3月4月時点では院内感染も含めてクラスター感染が中心でしたから、クラスターを発見して対応すれば済みましたが、今や感染経路不明が半数を超え、東京や大阪など大都市の感染拡大に留まらず、地方での感染拡大が見られます。医療リソースの限られる地方の感染拡大は深刻な問題です。故に帰省自粛は賢明な対応ですが、おかげでJRや航空会社などは稼ぎ時を逃している訳ですし、当然Go Toどころじゃありませんね。感染封じ込めこそが最大の経済政策です。

実際新幹線や在来線特急の乗車率は悲惨な状況で、こんなに空いているのは見たことがない状況です。一方在来線の普通列車はそこそこ乗ってます。勿論生活動線に組み込まれていて日常利用が一定水準存在するってことでしょうけど、拠点駅で終着列車から接続の始発列車に乗り継ぐ青春18キッパーと思しき集団は見かけます。やっぱり鉄ちゃんは自粛なんかしてないな。

面白いのは車内換気のためにドア半自動扱い区間でも各駅で全ドア開閉していることですが、E531系5連ワンマン運行の東北本線黒磯―新白河間では半自動扱いのままでした。輸送量に対して過剰な5連だから敢えて社内換気は不要ってことですかね。で、運転士は運転業務のみで、乗車券発券回収や運賃収受は行いません。故に事前の乗車券購入または乗車駅証明書による降車駅精算の案内放送が繰り返し流れます。

まるで欧州式信用乗車システムですが、一方で新白河で受ける701系2連では席がさらりと埋まり立客チラホラですから、全駅ドア開閉で社内換気は必要なんでしょう。逆に言えば、黒磯新白河方式は案外汎用性があるかも。必要ならば拠点駅の改札分離で不正乗車を防ぐという方法も考えられます。アフターコロナの芽はこんなところにありそうです。

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Sunday, August 09, 2020

帰らざる社畜

お盆に家に帰るのはご先祖様と社畜で、家から居なくなるのがアニオタと鉄ちゃんと書いた社畜人ヤプーから4年。コロナ禍で様変わりしました。バーチャルなご先祖様はコロナ禍に無縁ですが、感染拡大の心配から帰省を自粛する社畜たちは、せめてネット動画で孫の姿を両親に見せるリモート帰省がせいぜいです。お盆に限りませんが、両親の介助と妊婦の安心感から選択される帰省出産もままならず、少子化は促進されるでしょう。もはや日本では消費をリードする中間層の再生産が成り立たなくなりつつあります。

コミケの中止はやむを得ないとしても、コロナ禍が無くてもオリパラで東京ビッグサイトが使えないから、アニオタは巣篭りしてネット動画チェックで本来のオタク道に回帰するから家から居なくならないけど、鉄ちゃんは相変わらず全国に散っています。帰省ラッシュ消滅でラッキーですらあります。臨時快速ムーンライトは走らないけど。

てことでご先祖様と鉄ちゃんは変わらないってことで、共に尊い?(笑) 社畜とアニオタは共に巣篭りだけど前者は強制後者は自発と中身は大違いで、ニューノーマル(新常態)での社畜人ヤプーの幸福はいずこ?

所定外給与24.6%減 6月、過去2番目の下げ幅:日本経済新聞
これ正規雇用者の残業の減少とボーナスの削減が原因ですが、非正規雇用者の雇い止めやアルバイト・パートの時間短縮を反映しておりませんから、消費へのマイナスインパクトはより大きい訳です。そんな中でのGo To トラベル強行はそもそも消費喚起効果が限られます。正規雇用者の残業減少も、不況による調整の意味に留まらず在宅ワークによる残業代ゴマカシも含まれますし、通信費や水道光熱費の負担増による消費のマイナスも考慮する必要があります。

結局旅行業界のロビーイングの成果なんでしょう。JTB、HIS、KNT、日旅の旅行業大手4社の5月の取扱高前年比が軒並み1-3%という惨憺たる状況です。これ前年比ですからね。しかも旅行業者は旅客と運輸、宿泊その他の事業者との仲介で手数料率は10%程度ですから、もはや社員の給料の支払いさえ覚束ない逆風です。

旅行業界では所謂団体扱いってのがありまして、国鉄→JRをはじめ運輸、宿泊、その他施設でも団体利用の割引料金が存在します。実際に日本人の旅行形態は戦後長らく団体旅行が主流でしたし、個人旅行のニーズ自体は60年代後半にやっと顕在化するといったレベルでした。しかも個人旅行の発生手配は手間ばかりで僅かなマージンしか得られないから旅行会社には歓迎されないものです。

ただ旅行業法で旅行会社は主催旅行を催行できることから、団体扱いで運輸や宿泊を割引料金で仕入れて、それを組み合わせて個人向けに販売するパック旅行という旅行商品を企画販売できます。しかも大手ほどバイイングパワーを駆使して相対取引で値下げを要求できますから、仕入れを安くして利益を乗せて個人向けには個別手配と同等若しくはやや割安程度でもワンストップで申し込めて旅客側の手間が省けますし、加えて一部の史跡や施設で団体のみの見学客受け入れというところを組み込めれば、付加価値としてアピールできます。

勘の良い人はお気づきでしょうけど、ツアーバスの仕組みがこれなんですね。旅行会社が団体旅行のオフシーズンに当たる盆暮れに貸切バスを割引価格で仕入れて、主催旅行として個人客を募集し運行する形です。しかも旅行業法で最少催行人数以下の場合は催行中止が出来ますからノーリスクな訳で、乗合免許で旅客の有無に関わらず運行する義務を負う高速乗合バス事業者から不公正と是正を求められ、関越道の事故で注目を集めました。

本題に戻しますが、加えて旅行会社は旅客から前払いで代金を収受し、乗車券や航空券など大手キャリア向けの仕入れに一部使いますが、宿泊などは事後精算となりますから、国の支援を梃子にパックツアーが売れるなら、資金繰りの助けにはなります。Go To トラベルの場合、個人で支援条件を見極めて個別手配するのは手間がかかりますが、条件を踏まえた旅行商品を組むのは旅行会社にとってはお手のものですから、結局旅行会社のパックツアー利用に誘導されます。ワンストップが活かせるわけです。

その一方で宿泊を提供する旅館やホテルは感染防止策が求められ、館内消毒や従業員の手指消毒に留まらず、大部屋での食事提供やバイキングとはいかず、個室配膳となると手間が増えますしで、追加費用も発生します。いくら国が支援するとはいえ、儲けにつながるかは微妙で、実際Go To 便乗値上げのような動きも見られます。

てことで旅行会社にはメリットがあるかもしれませんが、そもそも消費の前提となる雇用者報酬が縮んでいるんだから効果は知れてますし、運輸や宿泊に留まらず裾野が広いから経済効果が大きいとのたまう経済学者がいますが、現場を知らないにも程があります。

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Sunday, August 02, 2020

北へ届かなかったひかり

両親ともに見送った身ですが、父は誤嚥性肺炎による心肺停止、母は老衰による多臓器不全で、ともに天寿を全うしたとは言えますが、最後は苦しそうで、眠るように安らかとはいかない現実を見てきました。特に母は食物の経口摂取が困難な状況で、医師から胃ろうを勧められたのですが、当時あまりに不自然な延命処置としか思えず断りました。

冷静に考えれば既に食べる行為そのものが本人にとっては苦痛だったかもしれず、緩和ケアとして捉えられなかったのではないか?これって健常者の発想でしかなかったのではないか?という疑問が残ります。既に後の祭りですが、その想いを生き残った者として抱いていくしかありません。生きる苦しみは終末期の高齢者や難病患者だけの問題ではありませんが、せめて近親者が気持ちに寄り添うしかありません。本人が「死にたい」と漏らすのはそんな過酷な生の現実こそが問題なんであって、QOL問題と整理できます。「死にたいなら楽に死なせてあげましょう」は解決策ではない訳です。

医師による嘱託殺人事件の問題は、死後の本人に「死んでよかったか」を問うことができない不可逆性にある訳で、故に倫理にもとることなんです。それを「これをきっかけに安楽死、尊厳死の議論を深めよう」という政治家が現れる不快な現実があります。こんな奴ら次の選挙で落としましょう。生きることにこそひかりが届くことが大事です。リモートよで触れたスウェーデンの社会的トリアージと言える高齢者への医療制限は広範な社会的合意の産物であって、安楽死や尊厳死乗り\議論とは別物ですので念のため。

てな重いテーマは置いといて、東京駅新幹線ホームの内、東海道新幹線用の第7ホームが東北新幹線に寄り添うように北へ向かってカーブしていることから始めます。第7ホームは元々東海道線の長距離列車の発車ホームとして新幹線開業前の特急、急行の乗客が大きな鞄を持って乗車待ちしていたところですが、新幹線開業後も残った急行列車や夜行ブルートレインが使い続けていて、独特の雰囲気がありました。

一方、全国新幹線鉄道整備法に基づく東北、上越、成田の3新幹線が1971年に基本計画線として公示され翌年整備計画線に昇格し、東北新幹線は国鉄が、上越、成田新幹線は鉄道建設公団が建設を担当することになり、整備計画が策定されますが、当初計画では起点は東京駅、終点は盛岡駅で既存駅併設とされ、東京駅に関しては首都圏五方面作戦で横須賀線横須賀線分離で空く6番ホームと新幹線の利用拡大でいずれ不要となる7番ホームを新幹線用に転用することが計画されました。

結果的に東海道新幹線に2面4線、東北新幹線に2面4線を割り当てると同時に、南側は東海道新幹線に繋いで4面8線中5線を東海道と東北を直通できる構造として新大阪のようにスルー運転する計画でした。直通客を当てにするというよりは、折り返し運転で避けられないホーム在線時間の短縮が狙いということで、故にAC25kv50hzの東北新幹線ですが、東京駅北方にデッドセクションを設けて東海道新幹線の60hzと電源切替するとして、車両側も2電源対応とする計画でした。実際200系は2電源でした。

早速事業着手した国鉄の当時のキャッチフレーズは「ひかりは北へ」でした。また当初東京の次の駅は大宮で、上野は駅設置を計画されていませんでした。また大宮以南は新宿起点とされた上越新幹線の大宮以南の事業化を先送りすることで、当面大宮以南は東北と上越の共用とされました。つまり山陽新幹線と同様に東海道新幹線の延長線として計画された訳です。

おそらく山陽区間のwひかり、Aひかり、Bひかりのように、主にひかりを延長するイメージだったようです。Wひかり相当の速達列車はNひかりだったかも。故に速達列車が必ず停まる仙台、盛岡と上越の新潟を除く各駅は通過線を持っていました。Nひかり(仮)の停車駅は東北は仙台のみ、上越はノンストップで、Aひかりは東北が大宮、宇都宮、郡山、仙台以遠各駅、上越が大宮、高崎、越後湯沢、長岡、燕三条、Bひかりは全駅停車として東北は仙台止まりとして段落としで輸送力調整というところでしょうか。

ところが誤算だらけで、73年のオイルショックによる不況で総需要抑制策による工事自粛による遅れと、所謂狂乱物価と呼ばれた物価上昇で事業費の膨張という逆風を受けます。加えて東海道新幹線名古屋騒音訴訟問題で新幹線の騒音問題が意識され、東北新幹線沿線各地で反対運動が展開されます。故に人口密集地の荒川北岸から大宮駅までは地下トンネルで計画されたものの、軟弱地盤で地盤沈下の恐れありと反対され、別ルートの高架案で通勤新線併設として埼玉県に提案しますが、埼玉県は認めず、工事の遅れが膨らみます。

一方で東海道新幹線の需要が堅調で東京駅の処理能力が限界に達したため、東北新幹線用に考えられていた7番ホームの東海道新幹線転用により、東北新幹線の受け入れ余地が狭まります。そのため国鉄は計画を変更して上野に2面4線の地下駅を設置してサブターミナルとするための工事実施計画変更が1977年に行われます。大宮以南の計画が大きく変わった訳です。

他方首都圏五方面作戦の誤算もあり、反対運動で遅れた東海道貨物線の建設による横須賀線の分離運転は1980年にやっと実現しますが、東北方面は大宮以南の客貨分離と電車線列車線分離は実現したものの、大宮以北の中電区間の開発が活発な一方、東北、高崎両瀬が合流する大宮以南の線路容量の限界で混雑が年々激化し、1973年3月に上尾事件が起きるなど深刻化しておりました。

その中で一旦県が却下した東北新幹線併設の通勤新線に期待が集まり、新幹線の騒音振動対策の強化と引き換えに高架案を県が認めるに至ります。但しルートは人口密集地を避けるため600Rなどの曲線が連続し、元々110km.h制限がかかる上、線路沿いに緩衝帯を設けたり防音壁を設置したりとコストのかかる構造になりましたが、逆にだから通勤新線の併設も容易ではありました。

後に埼京線として開業する通勤新線ですが、当初上尾事件の影響もあって高崎線宮原まで建設し高崎線の都心ルートとする構想で、武蔵浦和付近に車両基地を建設する計画が、用地買収難で断念され、代わって都市近郊の非電化線で残っていて開発余地が大きいと見なされた川越線の電化とセットで同線南古谷駅に車両基地が作られました。結果的に宮原延長は断念され、埼京線は川越線と直通することになった訳です。中電の都心ルートとしては貨物線を利用した赤羽折り返し列車の設定に始まり湘南新宿ラインとして実現することになります。

こうして大宮以南の工事は特に遅れた訳ですが、大宮以北の工事進捗で1982年に大宮起点で暫定開業し、上野―大宮間に185系200番台の新幹線リレー号で繋ぐというツギハギだらけのスタートでした。上野開業は1985年で埼京線っも同時開業しましたが、103系が轟音を轟かせていて新幹線の騒音対策の筈が新幹線より五月蠅いという笑えないオチも。

この状態で1987年の国鉄分割民営化を迎えますが、新たな問題の出現でもあります。開業済みの各新幹線は新幹線鉄道保有機構に移管され、東海道をJR東海、山陽をJR西日本、東北、上越をJR東日本にリースし、リース料に旧国鉄債務を一部乗っけて債務圧縮を図ることになりました。この時点で工事中だった東北新幹線の東京延長は機構に継承されて継続されたものの、上記の東京駅の利用区分問題が浮上します。

JR東日本としては当初計画に則って6番ホームの新幹線移転と同時に、東海道新幹線で使われていた7番ホームの移管を主張したものの、JR東海はこれを拒否します。また両新幹線の直通運転もJR東海の反対で実現せず、現状のように双方が折り返し乗客が乗り換えるという利便性を損なうものになりました。同時に折り返しによる在線時間の長さは地価の高いターミナル駅の有効利用の観点からも問題ですが、両社の主張は平行線のまま、別々の道を歩むことになります。ひかりは北へ届かなかった訳です。

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