« 帰らざる社畜 | Main | コロナの後遺症 »

Sunday, August 16, 2020

コロナで変わるパワーシフト

人口減少にあえぐ日本と欧州ですが、人口増加でパワーシフトが起きると言われていた日本を除くアジアに異変が見られます。

中国新幹線、2035年に総延長2倍 投資額70兆円か:日本経済新聞
これ田中角栄の日本列島魁皇論の中国版ですが、都市域の広い中国の50万都市って日本の感覚で言えばさして密集度が高くないので、ほぼ広大な大陸中国の津々浦々を高速鉄道でカバーするという狂気じみた計画です。

風邪は寝て直せで取り上げましたが、そもそも最初にcovid-19の感染拡大が見られた武漢市が交通の要衝で人の移動が活発だったことが、中国全土及び世界への感染拡大をもたらしたことを忘れてはいけません。covid-19はグローバル化がもたらした新しいタイプの感染症であり、高速移動の条件が整えばそれだけ脅威も拡大するし、今後も未知の感染症の蔓延を助けることになるということも考慮すべきです。これ日本でもアフターコロナでリニア作れという議論がありますが、同じ種類の誤謬です。

中国では香港やウイグルの人権侵害問題は取り上げられますが、実はもっと深刻な農民問題が影を落としています。中国の農業人口は7億人程度で人口のほぼ半分ですが、農村出身者は都市住民になれない制度上の制約もあり、都市で就業しても農民工として扱われ、差別的な待遇に甘んじていますが、経済成長と共に都市在住者が豊かになる一方、低賃金労働に甘んじていて、昨今待遇改善のためのストライキが頻発しています。農民工には漢族以外の少数民族も多く、不満がたまっています。

更に法改正で地方政府の土地利用権限の拡大が行われた結果、農村に留まる農民も、分散する農家を集合住宅に移住させて開発用地を生み出すということが各地で行われ、農地に隣接した農家が取り上げられ、集合住宅から農地へ通勤という笑えない事態になっております。経済成長のために地方政府の開発事業は基本的に奨励されておりますが、不正の温床にもなりやすく、習近平政権の不正撲滅運動で少なからぬ地方政府幹部が失脚してもおります。中央集権の建前と裏腹に、地方政府の暴走を手綱を締めて操る現状は、実は中央と地方の緊張感を生みます。故に地方が潤う経済対策を打って不満を和らげる必要もある訳です。

こんな状況ですから、香港だけを特別扱いできませんし、経済成長のエサを撒いて不満を封じ込める必要がある訳です。という訳で、習近平政権の経済重視は変わっておりませんし、ある意味香港市民は金儲けには熱心でも政治的にはノンポリでデモ鎮圧は支持されるという見立てをしていたと考えられます。元々香港は英国統治時代から植民地型の統治システムだった訳で、行政庁と立法会は独立していたものの、裁判官は裁判の都度行政庁長官が指名するという形で、司法の独立は確立していませんでした。それでも英国流コモンローで48時間で公判前保釈が普通に行われるのは、長期勾留当たり前の日本より遥かにマシですが。

だから習近平政権の性格はどちらかと言えば日本の田中角栄政権に近いと言えそうです。田中政権で懸案の日米繊維交渉が妥結した一方、アメリカを出し抜いてイラン原油確保に走るなど、独自外交を展開したことでアメリカに睨まれてロッキード事件で失脚することになったという見立てもありますが、米中摩擦で引かない外交姿勢などもそうですね。中国がアメリカに変わって覇権を求めているというのは当たりません。中国から見ればアメリカの言いがかりに対応しているだけってことですね。

付け加えると高速鉄道整備で資産規模を拡大した中国鉄路集団ですが、当然負債も拡大しており、このまま高速鉄道整備を続ければ早晩日本の国鉄のように経営破綻を免れません。よく見れば日本の歩んだ道をトレースしていることがうかがえます。となればいずれ日本のように低成長に陥りアジア全体の足を引っ張るようになる。中国版失われた20年に突入します。日本の場合は中国の台頭でカバーされましたが、中国の規模の経済大国が低成長になったときの成長をカバーできる国は恐らく現れません。

1897年ペスト禍の香港に派遣されてペスト菌を発見した北里柴三郎博士は、ペスト菌がネズミに寄生するノミを媒介してヒトへ感染する感染経路まで明らかにして、ネズミ駆除のためにネコを飼うことを推奨し、日本でも飼いネコブームが起きたとか。夏目漱石が雑誌ホトトギスに「吾輩は猫である」を掲載し好評を博したのが1905年という時系列ですが、北里博士は脚気菌の存在を否定して東大教授緒方正規博士と対立した一方、勤めていた国立伝染病研究所が突然内務省から文部省に移管されて東大の下部機関になる形で地位を追われます。この辺PCR検査を巡るゴタゴタに通じるものがありますね。

PCR検査自体は採取した検体に含まれる特定の塩基配列を増殖して調べる検査で、抗体検査や抗原検査など他の検査方法と比べて簡単で精度も高いのですが、それでも擬陽性や偽陰性があるから信用できないという謎理論や、医療崩壊につながるという反対論で検査拡充が進みません。後者は検査を医療から切り離して体制整備すれば済むことで、確かに鼻や喉からの検体採取は感染リスクを伴いますし、相応のスキルも必要でしょう。だから大学や民間検査機関まで動員し、必要な検査キットや防護服などの医療用品を国が手当てすれば済むことですが、今に至っても出来ていません。

その結果自粛解除で案の定感染拡大が見られますし、3月4月時点では院内感染も含めてクラスター感染が中心でしたから、クラスターを発見して対応すれば済みましたが、今や感染経路不明が半数を超え、東京や大阪など大都市の感染拡大に留まらず、地方での感染拡大が見られます。医療リソースの限られる地方の感染拡大は深刻な問題です。故に帰省自粛は賢明な対応ですが、おかげでJRや航空会社などは稼ぎ時を逃している訳ですし、当然Go Toどころじゃありませんね。感染封じ込めこそが最大の経済政策です。

実際新幹線や在来線特急の乗車率は悲惨な状況で、こんなに空いているのは見たことがない状況です。一方在来線の普通列車はそこそこ乗ってます。勿論生活動線に組み込まれていて日常利用が一定水準存在するってことでしょうけど、拠点駅で終着列車から接続の始発列車に乗り継ぐ青春18キッパーと思しき集団は見かけます。やっぱり鉄ちゃんは自粛なんかしてないな。

面白いのは車内換気のためにドア半自動扱い区間でも各駅で全ドア開閉していることですが、E531系5連ワンマン運行の東北本線黒磯―新白河間では半自動扱いのままでした。輸送量に対して過剰な5連だから敢えて社内換気は不要ってことですかね。で、運転士は運転業務のみで、乗車券発券回収や運賃収受は行いません。故に事前の乗車券購入または乗車駅証明書による降車駅精算の案内放送が繰り返し流れます。

まるで欧州式信用乗車システムですが、一方で新白河で受ける701系2連では席がさらりと埋まり立客チラホラですから、全駅ドア開閉で社内換気は必要なんでしょう。逆に言えば、黒磯新白河方式は案外汎用性があるかも。必要ならば拠点駅の改札分離で不正乗車を防ぐという方法も考えられます。アフターコロナの芽はこんなところにありそうです。

|

« 帰らざる社畜 | Main | コロナの後遺症 »

ニュース」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

鉄道」カテゴリの記事

JR」カテゴリの記事

都市間高速鉄道」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 帰らざる社畜 | Main | コロナの後遺症 »