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Sunday, October 18, 2020

デカップリングで謝謝トランプ

風邪と共に去るかと思ったトランプ大統領が巻き返しに躍起になっています。バイデン氏に対して劣勢なのは否めませんが、強力なステロイド剤まで処方して回復して意気軒高ですが、異常なテンションの高さは副作用の可能性もあります。ドラッグでの復活劇ですが、あたかもキリストの復活になぞらえるような展開はキリスト教右派の心を掴むストーリーとしてアピールポイントにもなります。ある意味アメリカらしいですが。

てことでどう転んでも接戦が予想される米大統領選ですが。今心配されているのは、仮にトランプ大統領が敗れても、ホワイトハウスを明け渡さない可能性があることで混乱が心配されてます。特に過激派によるテロの心配が言われ、実際民主党系のミシガン州知事拉致未遂事件でFBIが6名の身柄を拘束したという事件が起きました。下手すりゃ南北戦争以来の内戦すら心配する声まであります。

こうなってくるとトランプ推しと見られていた経済界の対応が微妙になってきてまして、どうせならバイデン氏に圧勝してもらって、加えて上下両院も民主党が多数派となって民主党のシンボルカラーにちなんだブルーウエーブ(民主党による連邦政府上下院独占)を望むようになりつつあります。議会で共和党が多数派を占める捩れ現象が起きると何も決められない政治が実現し、経済政策が滞ることを寧ろ危惧している訳です。一方一般国民はコロナ問題に関心が高く、経済政策は主要な争点にならないという珍しい展開です。

米大統領選「経済重視」最低水準の9% コロナは25% 関心集中:日本経済新聞
てことで経済よりもコロナ対策を巡る国民の分断の深刻さが可視化されていて、アメリカの混乱は長引きそうです。その経済政策で不都合なことが起きています。
中国の対米貿易黒字が最高に 7~9月、医療品など輸出増:日本経済新聞
偉大なアメリカを目指すトランプ大統領にとっては悲報です。医薬品その他のy対米輸出が増えた一方、ハイテク品の半導体関連の輸入が減って対米貿易黒字が拡大した訳です。つまりコロナ禍で需要が拡大した医薬品はアメリカの国内調達が間に合わず輸入依存に追い込まれた一方、Huawei排除などのハイテク品制裁の影響でアメリカからの輸出が減った訳で、自業自得になっている訳です。

またアメリカの経済指標で消費が強い数字を示しますが、一方で7%を超える最悪の失業率が示すように、雇用は戻っていない訳で、加えて貯蓄率も上がっているという謎な動きですが、給付金の影響と見れば腑に落ちます。つまり派手な財政出動で経済の落ち込みを防ぐことはある程度実現できたものの、生産は戻らずその分輸入依存が進んだ訳です。つまりアメリカの国内消費のお陰で中国の製造業yが一息ついた訳です。

これには2つの意味があります。1つは中国叩きのデカップリング政策はうまくいかず弊害ばかりということと、2つ目は元々アメリカに限らずグローバル化で製造業が低賃金の新興国へ移転した結果、先進国ほど製造業の比重が低下し、サービス業比率が高まったことによります。サービスは基本的に生産と消費が同時進行するから輸入で調達できない上に、製造業に比べて労働生産性が低く低賃金の傾向があります。つまり生産性の高い製造業が海外へ流出して生産性の低いサービス業が残ったところへコロナ禍がサービス業を直撃した訳です。

程度の差こそあれこの傾向は先進国全般に見られる傾向で、格差社会の原因とされています。中にはドイツのように製造業ウェートが高い国もありますが、主にEU圏向けの輸出で調整している訳で、製造業を維持するためには、生産能力を活かせるだけの外需に依存せざるを得ない訳です。但しそれは輸出相手国の工業生産を圧迫する要因になり、国際的な摩擦に晒されることでもあります。ドイツの場合ユーロ導入で為替変動から解放された結果可能になった訳で、対米輸出依存が突出していた80年代の日本では円高阻止のために低金利政策を続けた結果バブルを発生させ弾けて長期停滞に至った訳です。その反省が活かされない異次元緩和は論外ですね。

てことで、つまり製造業を国内に呼び込めた新興国がコロナショックからいち早く立ち直るのは当然な訳で、中国はますます強くなる訳です。但し中国も問題だらけで、改革開放路線で製造業を呼び込んだものの、過剰生産能力を持て余すレベルとなり、外需依存せざるを得ない状況にある訳です。その結果としての一帯一路であり、あくまでも国内の過剰生産能力を活用するためであって、相手国を借金漬けにして軍事拠点を得るためというのは違います。ただ融資審査が出鱈目だから通常ならば借入できないような国が群がった結果ですね。

そう考えるとそもそも対中強硬策は現実的には難しいし、新冷戦として中国包囲網を構築とかは、ただの妄想でしかないですし、中国には確かにいろいろ問題はありますが、うまく付き合いつつ、徐々に変化をもたらすしか選択肢はないですね。またこれこそが西欧の啓蒙思想の本来の姿ですが、非西欧世界では簡単には受け入れられないかもしれませんが、だからこそ強硬策は愚策と心得るべきです。

例えばイスラエルは中東に出現した西欧圏の国と見れば、存在自体が摩擦を生むものであると知れます。イスラエル建国以前はイスラム教徒が多数派だったものの、ユダヤ教徒や少数キリスト教のコブト教徒が共存していた訳で、イスラエル建国は主に西欧のユダヤ人が迫害され続け、シオニズムでアイデンティティ確立を目指したものの、ナチスの迫害を受けた結果、西欧の贖罪意識から建国を認めざるを得なかったことに由来しますし、それ以来紛争が絶えないという困難を呼び込んだ訳です。

加えてソビエト末期に連邦を形成する共和国の1つであるアゼルバイジャンで少数派のユダヤ人と多数派のトルコ系イスラムのアゼルバイジャン人の紛争が起きたことから、手を焼いたソビエト政府がユダヤ人のイスラエル移民を認めた結果、入植地が必要になってヨルダン川西岸などに入植地を作ったことでパレスチナ人を圧迫することになりました。ただしコーカサス地方のユダヤ人は西欧のそれとは別物で、元々古代ヘブライ時代からの遊牧民の末裔と言われます。アゼルバイジャンは産油国としても知られており、またロシア人やアルメニア人も少数存在するなどややこしいところで、紛争が絶えない訳です。

その意味では中東産油国も欧米石油メジャーの関与で国際社会に組み込まれた結果、経済中心に西欧化が進んだものの、政治体制は部族社会を維持したまま分断されている訳で、これ戦国時代の明、スペイン、ポルトガルが関わりながら戦国大名が相争う日本の戦国時代をイメージすると理解しやすいでしょう。当時日本は石見銀山、生野銀山など鉱物資源に恵まれていた資源国で、戦国大名は戦費調達のために鉱山開発を推進していましたし、南蛮貿易もそれ故に活発だった訳です。

その意味で中国から見れば香港や台湾は中東のイスラエルと同じような存在に見える訳で、西欧=侵略者という過去の歴史もありますし、簡単にはいかないでしょうけど、拗らせればますます解決困難になります。てことで対中強硬論や新冷戦やデカップリング論は現実的には不可能です。また辛亥革命で西欧流民主国家になる筈の中華民国が軍閥の跋扈で混乱し、蒋介石の独裁国家になったことも影響しています。ただ台湾の民主化のように中国人も理解すれば民主化に舵を切る可能性はあります。

話を戻しますが、経済のサービス化は日本でも進んでいる訳ですが、アメリカとの違いはバブル崩壊で投資が減速した結果、IT関連でアメリカが劇的に生産性を高めているときに停滞していたことが決定的ですね。気が付けば国内製造業の競争力は低下し、新興国に太刀打ちできなくなった一方、IT革命の波にも乗れず失われた30年とか言われている訳です。

結果的にアメリカのハイテク企業は技術革新の恩恵で生産性を劇的に改善しました。特にデジタル経済はコピーが容易なので、追加的な増産のコストである限界費用が限りなくゼロに近い訳です。所謂知財ですが、オリジナルの権利を確保すればほぼゼロコストで増産して市場を席捲できる訳で、それによってGAFAのような巨大デジタル企業が形成され他業種まで圧迫する存在になった訳ですね。

GAFAなどのハイテク企業の従業員は故に高額報酬を得ている訳で、製造業に従事するブルーカラーを圧倒するに留まらず、製造業の衰退でサービス業に転じた多くの人を取り残すことになりました。なまじ巨大ハイテク企業が出現したばかりに、格差が拡大して国民が分断されている訳です。その結果シリコンバレーに本社を置くグーグルが従業員送迎バスのドライバーを高給で募集した結果、公共の乗り合いバスがドライバー不足で休止に追い込まれるという事態に至っています。格差拡大が公共サービスを圧迫している訳です。

同じ時に日本ではバスドライバーの賃金が目に見えて低下した一方、震災復興などによる需要増で多くのバスドライバーがダンプドライバーに転職した結果、地方に留まらず大都市圏のバスまで減便や休廃止が相次ぐ状況になっております。違いは日本では国がわざわざ公共事業を進めて国費で公共交通を圧迫している訳で、愚かすぎます。そこへコロナ禍で鉄道、バス、航空が明日をも知れない逆風に陥っている訳ですが、公的支援の議論は見られません。ましてこれね。

GoToトラベル、急ごしらえ設計に穴 予算を追加配分:日本経済新聞Go To トラブルは続きます。指摘したように旅行会社救済が狙いだった訳で、それどころか大手旅行会社で予算配分を決めていたことが、予算消化の結果発覚したというお粗末な顛末です。コロナで需要が蒸発したホテルや遊戯施設の支援ならば、国が感染症対策の認証施設を決めて、認証施設の利用時に割り引いて割引分を国が補填するといったシンプルな仕組みにすれば何も問題ないし、旅行会社や旅行サイト経由で対象商品を予約しないと使えないというのでは、万人が利用可能でもないし不公平感は残ります。

さらに踏み込めばコロナが終息した訳でもない中で旅行に補助金を出すってのもおかしいし、医療や介護、保育などのケア労働への補助とか、経営が苦しい公共交通への支援とか、より緊急度の高い問題は山積しているなかでのことですから怒りが湧いてきます。特に固定費の高い鉄道事業者にとっては大変です。終電繰り上げや通勤定期運賃値上げなど自衛策がボチボチ出始めてますが、いずれ大幅な運賃値上げや減便に留まらず、路線の廃止も避けられない場面が来るでしょう。携帯料金よりこっちをどうにかしてくれ!

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