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Sunday, November 08, 2020

ハイブリッド・シビル・ウォー

開票が進みやっと大勢が決まった米大統領選です。

「分断ではなく結束」 バイデン氏が勝利宣言:日本経済新聞
バイデン氏が勝利宣言をしましたが、トランプ氏は敗北宣言をしておらず。法廷闘争に持ち込む姿勢を見せており、すんなり政権移行するかどうかは微妙ですが、既に欧州首脳は祝意を表明しています。トランプ政権で悪化した外交関係の修復に対する期待でもあります。

英国ジョンソン首相も貿易交渉や気候変動問題での連携に期待しており、EUと足並みがそろっております。バイデン氏の同盟重視の姿勢に対する期待ですが、アジアの某日本国は微妙です。安倍政権でトランプべったりだったことで、同盟重視があまりピンと来ていないこともありますが、バイデン氏が復帰を明言したパリ協定の目標が低すぎるとか石炭火力に依存しているなどで非難されたから、トランプ政権は居心地が良かったとも言えます。それに日本学術会議問題の国会答弁で炎上中でそれどころじゃないかも。また任命拒否した6名は反政府運動に関わっているという政府関係者の証言が報じられております。中国かよ!

しかしトランプ大統領は敗北宣言をしておらず、法廷闘争に持ち込む算段をしています。但し現時点ではトランプ陣営からの不正の訴えは裁判所に退けられており、また欧州から派遣された選挙監視団も今のところ不正の証拠はないとしております。但し州によって手続きが異なるため、提訴を受け付ける州も出てくる可能性はあります。

また既にSNSでフェイクニュースが拡散されており、何故か日本でも翻訳されたツイートが拡散されてますが、そのほとんどはファクトチェックされてフェイクとされております。寧ろトランプ陣営の立会人のあからさまな開票妨害が見られ、また両陣営のデモも起きており、下手すると両者の衝突もあり得ます。これ既に内戦状態と見て良いかもしれません。

ザ・シビル・ウォーで取り上げた南北戦争も元はと言えば大統領選でリンカーンが勝利して奴隷解放を進めたことに対する南部諸州の離反によりますが、当時リンカーンが所属する共和党は保護主義と工業化推進の立場で、逆に民主党は国際貿易重視で有力な輸出品だった綿花栽培農家の利害を代表していたため、安い労働力としての奴隷制度維持の立場で、今とは立場が逆だったのが面白いところです。時代が変われば立場も主張も変わる訳です。

てことでバイデン氏は同盟重視、国際協調の立場ですが、一方でバイ・アメリカンで国内工業重視の姿勢も見せており、経済下支えのための大規模公共事業も公言しています。しかし既にトランプ減税の大盤振る舞いとコロナ対策で財政赤字拡大が続いており、法人税増税を打ち出してはいるものの、上院がで民主党が多数派を取れなければ実現可能性に疑問符が付きます。そうなるとFRBが金融緩和で支えざるを得なくなり、金利の低下でドル安基調で円高が進むと言われております。

実際円は対ドルでジリジリ上げておりますし、欧州のコロナ第2波でユーロ圏もマイナス金利で円独歩高の様相です。しかし異次元緩和で手詰まりな日銀は打つ手がありませんし、政府の為替介入も現実的には不可能です。この面からもバイデン氏に祝意を表しにくい某日本国です。残る手は欧米並みにコロナ第2波で経済失速か。ひょっとして Go To って-_-;

話を戻しますが、フェイクニュースや開票妨害などはある意味現代的な実力行使でもある訳で、ハイブリッド戦争ならぬハイブリッド内戦と言えるかもしれません。ハイブリッド戦争または非対称戦争と呼ばれるのは、主権国家同士の実力紛争を意味する通常の戦争に対して、例えばテロのように民間人に紛れて攻撃を仕掛けたり、あるいは軍事的衝突は伴わないけどサイバーセキュリティの弱点を突くハッキングや攪乱とか、フェイクニュースの流布とか、武力行使を伴わない妨害行為など、紛争関係が非対称で見えにくいものを指します。

典型的なのは9.11とその後の対テロ戦争だったり、ウクライナ紛争のように明らかにロシア軍が実態の義勇軍とか、その他もろもろの紛争形態の総称です。政権移行のために連邦軍がホワイトハウスからトランプ氏をエスコートといった事態もあり得ますし、仮にそうなると遺恨が残りバイデン氏の政策遂行の現場で様々な妨害工作が行われることも視野に入れておく必要があります。となると同盟重視で国際社会へのコミットを公言するバイデン氏ですが、国内問題に忙殺されて国際協調に手が届かない事態もあり得ます。かくして頼りにならないアメリカは継続し、中国、ロシア、トルコなどの権威主義国家がますます勝手に動くことになります。トランプ時代に負けず劣らず国際秩序は混乱すると見るべきでしょう。

となるとヤルタ・ポツダム体制下で惰眠を貪る日本も、アメリカを当てにできないことを自覚すべきでしょう。日本が提唱しアメリカが乗っかっている開かれたインド太平洋という防衛構想も、当てにはできないと考えた方が良いでしょう。結局米中のパワーバランスの中でポジションを模索するしかないのが日本の立場です。しかも日本の経済的プレゼンスはダダ下がりの中での話です。そんな中で気になるのがこのニュース。

アント、香港・上海上場を延期 中国当局が創業者ら聴取:日本経済新聞
アリババグループの金融サービス会社のアント・フィナンシャルグループが上場直前に創業者の馬雲(ジャック・マー)氏の発言を問題視して聴取したことで、上場が遅れたというニュースです。マー氏は当局の規制が時代に適合していないと政府批判ととれる発言をしたことが問題視されたようです。

アリペイによりQRコード決済システムでテンセントのウイチャットペイと市場を分ける巨人ですが、更に踏み込んでECでアリババに出店する事業者の資金支援サービスまで手掛ける結果、銀行の領域に迫る訳ですが、それ故当局の干渉は大きいのでしょう。それに対する不満を述べたことが当局の知るところとなっての事態ってことらしいですが、この辺中国の国有企業と民間企業の二重構造が表面化したと見ることができます。

ITの巨人として米GAFAと中国BATHという言い方があります。GAFAは省略しますが、BATHはバイドゥ、アリババ、テンセント,ファーウエイの頭文字です。この中に国有企業は無く、全て新興の民間企業なんですね。中国と言えば規模ばかり大きく非効率な国有企業のイメージが強く、実際そのような企業は多いですし、政府も雇用の観点から国有企業の保護の姿勢は見られますが、実際に中国の経済成長を支えてきたのはBATHに代表される新興民間企業です。但し競争を勝ち抜いて大企業に成長すると政府の干渉が強まるというジレンマが中国社会でも見られる訳です。これどこかの国と似ています。

NTT再編と政府による通信料金値下げにキナ臭い関係が噂されます。稼ぎ頭のNTTドコモが他社の攻勢でシェアを落として3位となった結果、優越的地位による規制が現実にそぐわなくなってきていることは確かですが、ドコモに留まらず東西やコミュニケーションズ、ITベンダーのデータまで統合してNTT再編が目論まれていますが、政府が34%の議決権を保有する特殊会社ですから、根拠法の改正は避けられないところですが、おそらく政府も法改正などの支援を内々に示唆しているのでしょう。上場したJRが完全民営化されたのとは異なります。

具体的には°ドコモの完全子会社化で、株主配当は不要になり、それがドコモにとっては値下げの原資になります。となるとauとソフトバンクも追随せざるを得なくなり、政府が目論む値下げが実現するという見取り図ですね。またsuもソフトバンクもUQモバイルやYモバイルといったサブブランドを活用してMVNO事業に進出し、安値志向の顧客をドコモから奪って囲い込む戦略でシェアを伸ばしてきましたが、このビジネスモデルはNTT法の縛りでドコモはできません。ですから見方を変えればドコモの子会社化でやっと追いついたという見方も可能です。

実際auもソフトバンクも本体は高機能端末でバリバリ通信するヘビーユーザーを囲い込んで高い料金を取っている訳ですが、ここに落とし穴があります。つまり高額通信料を承知で利用するユーザ―のお陰で基地局などの投資の原資を得ている訳で、それがドコモの値下げで利益が圧迫されるとやりにくくなります。折しも5G投資がは事案るタイミングでの話ですから、日本の5G投資は遅れることが心配されます。

今のところ専用基地局を増やすより既存の4G基地局をソフトエミュレートで疑似5G化する形でサービスを始めて5G端末を売って投資原資を得る形が考えられているようですが、これつまり通信速度は速くならないなんちゃって5Gってことで、5Gならではのサービスが起こる可能性を狭めます。アントの上場延期じゃないけれど、政府による民間介入はろくな結果にならないってことだけは言えそうです。

この調子で地方銀行や地方バス会社の統廃合とかやる気でしょうか?やめてくれ!

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