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January 2021

Sunday, January 31, 2021

見えざる手のたそがれ

与党議員の銀座の夜遊びのお陰で特措法改正案が野党案丸呑みになり、過料の額が減額されました。グッジョブd^_^wwwww。前エントリーで指摘した国家権力を飼い馴らす観点が機能しました。一方アメリカでは思わぬところに火の手が上がりました。

米株式市場にも分断の影 個人投資家SNS、ファンド標的:日本経済新聞
構図が複雑なんですが、個人投資家向けに売買手終了を無料にして躍進したネット証券のロビンフッドに、コロナ対策で連邦政府が配布した給付金を手にした個人投資家が殺到し、米株価上昇を支えていたのですが、一方ロビンフッドは個人投資家の売買注文データを大手ヘッジファンドなどマーケットメーカーに販売して収益を確保していました。ガラパゴス・スモールブラザーズで指摘した日本のネット証券とHFT投信の癒着と同じことがメリカでも起きていた訳です。

但しアメリカの個人投資家の対応は、ロビンフッドにデータを取得しているシトロンなどの空売りファンドを標的にした逆張りで対抗するというもの。ある意味アメリカらしいカウンターカルチャー炸裂となっているのが面白いところです。空売り勢は時価総額が大きくない中小型株に空売りを仕掛け、値下がりしたところで買い戻して借株を返却して手仕舞い、値下がり分のサヤ取りをする訳ですが、リスクヘッジで先物コール(買い注文)を仕込んでおく訳です。つまり先物市場の動きでヘッジファンドの意図がある程度見えることで、レディットというSNSののウォール・ストリート・ベッツ)WSB)という掲示板で情報を共有し、逆張りの買い注文を出すことでファンドに損失を与えることができる訳です。

勿論共謀しての株価操作は刑事罰を伴う犯罪ですが、個人のSNSによる呼びかけがこれに当たるかどうかは微妙なところです。今回ゲーム店を展開するゲームストップ株などが標的にされ、みるみる株価が上昇していった訳ですが、株価上昇に伴って売買注文の決済に責任を負うロビンフッドの準備金の積み立てが必要になり、資金繰りがタイトになってゲームストップ株その他の売買制限をかけたのですが、これが混乱に拍車をかけ、ロビンフッドが批判にさらされ、制限解除を余儀なくされました。その結果ゲームストップ株は値上がりを続けましたが、個人投資家には不信感が残り、SNS上で訴訟騒ぎにまで発展しました。

話はここで終わらず、大統領候補にもなった民主党オカシオコルテス下院議員が個人投資家に損害を与えたとロビンフッドを批判、また上院ウォーレン議員はSECに書簡を送り問題提起をしました。そのSECの次期委員長にバイデン政権は規制派のゲンズラー氏を指名する予定ということで、金融市場の規制強化の動きにつながりそうな気配になっています。トリプルブルーのアメリカが動き出した訳です。

ただ冷静に眺めると、各プレイヤーは合理的に行動している訳で、何が問題なのかは見えにくいのですが、市場経済の矛盾が見えたという意味で重要ということです。ヘッジファンドが金融テクニックを駆使してリターンを得る行為は、ネット証券の個人投資家の売買注文データを用いた先回りでもある訳で、同じことを個人投資家の共闘で仕掛けられたとも言える訳で、ある意味どっちもどっちなんですが、これを古典的な市場競争の枠組みで捉えることが適切なのかどうかってことですね。また売買の場を提供するネット証券にも言い分はある訳です。

本来は市場競争を通じて超過利潤(レント)がゼロに収束すると言われており、それ故に独占禁止などの競争政策が重要と言われてきた訳ですが、株式市場の実態は寧ろマージャンの点棒の取り合いに近い訳で、本来の企業の投資行動を支える機能は薄まっているのが実情です。特にアメリカが世界へ拡散させた株主資本主義は、結果的にこの傾向を強めました。昨今の企業の自社株買いでは、企業の余剰資金が投資家に還元されている訳で、本来は将来に備えた投資の原資を得るための、公募増資による資金調達の手段である筈の株式市場が逆方向へ動いている訳です。

同じような市場の混乱は日本の電力でも生じたのは電気が足りない訳じゃないエントリーでも取り上げましたが、報道が進むにつれていろいろなことが明らかになっています。元々コロナの影響で電力需要が低下し、卸電力市場(JPEX)の価格はキロワット5円程度まで下がっていて、新電力にとっては顧客拡大のチャンスでした。加えて在宅時間が増えて家庭の電力費が増える傾向も追い風となった訳ですが、それが何時でも簡単に余剰電力を調達できると逆に油断を生んでしまいました。

大手電力も4割を占めるLNG火力への依存が強く、やはりコロナの影響で電力需要が低下したことを受けて、またアジアのLNGスポット価格も低迷し、余剰分の転売も損失につながるので、安定供給で中東カタールからの長期契約の調達を減らしていました。そこへ暮れからの寒波がアジアを直撃し、また中国の経済回復もあってLNGスポット価格が跳ね上がり、電力需要も上ブレした結果、LNGの在庫不足となって企業の自家発電電力の買取などで凌いだわけですが、その結果JPEXへの売り物が減少して相場が跳ね上がり、顧客獲得に走った新電力が裏喰った訳です。

但し新電力の供給不足は結果的に大手電力が融通するので電力不足にはなりませんが、その転売価格はJPEX連動が原則なので、今月分が決済される3月末が地獄と言われております。これも新電力も大手電力も合理的に判断して行動した結果であり、見えざる手は機能しなかった訳です。こうして仕組みが複雑になると、市場原理が本来の働きを期待できず、コロナや寒波のようなブラックスワンの出現で混乱する訳です。

その意味では民間企業でも事実上中国共産党の指導下にあって、議決権が有名無実化している中国株が本来の姿に一番近いという皮肉な現実があります。株主は黙って金出して配当貰って満足すべしってことですね。アントの上場廃止とジャック・マー氏の消息不明は未だに謎ですが、最強の規制当局としての中国という視点で見ると、金融規制やデジタル規制に踏み込もうとするトリプルブルーのアメリカや、主権国家の上位機関として加盟国に義務を課すEUと何が違うのか?説明はなかなか困難です。

見えざる手は機能せず、中国のような見えるけど見ちゃいけない手^_^;が機能するということですが、これが可能なのは経済成長で国民が豊かになった実感があるからで、そうでなければ国民の不満が爆発します。ある意味中国のような国家資本主義体制は効率的で成長経済の推進はやり易い訳ですが、そうなると当然LNGスポット価格の高騰に見られるように資源消費が拡大してCO2排出量が増える訳で、実は中国のような成長経済にとってはここがウイークポイントになります。

自動車の電動化で中国が先を行こうとしていますが、現状EV生産や廃車後の廃棄処分家庭まで含めたライフサイクルアセスメントで見ればガソリン車よりCO2排出量は多いと言われます。特に石炭火力依存度の高い中国においては尚更ですね。てことで巷間謂われる中国封じ込めは経済制裁や軍事的圧力よりも、資源消費低減を突き付ける方が効果的ではあります。とはいえ巨大市場となった中国国内市場へのアクセスを失いたくないのが先進国の本音でもあります。だから中国封じ込めは確実に失敗すると見ておきましょう。

てことで、自動車の電動化よりも公共交通へのてこ入れによる脱クルマ社会を目指すのが実は最善手かもしれません。その意味ではネット通販の拡大による宅配便需要の増大が実は深刻だったりします。その意味ではフリュグスカムで取り上げた夜行列車の復活よりも、鉄道貨物の拡大が優先度が高いと言えます。今後も続く生産年齢人口の減少でドライバー不足は続きますから、この面からも必要です。

ってことで、アメリカやEUも見えざる手に変わって見える手の活用に舵を切る流れですが、日本でも国民目線での公正な見える手にシフトすることが、結局中国封じ込めにもつながる訳です。鉄道のような枯れた技術の活用で資源節約社会を目指す方が、大規模な研究開発を伴う技術革新に頼るよりも確実ですし。

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Sunday, January 24, 2021

民主主義は勝利しない

バイデン大統領の就任演説を否定する気は更々ありませんが、民主国家アメリカが戻ってくるという楽観論はとりあえず否定しておきたいと思います。ただトランプ政権の極端な価値観の揺り戻しが起きたという意味で、こうしたレジリエンスこそが民主主義の本質という点は指摘できます。言い換えると暴力装置としての主権国家を飼い馴らすプロセスこそが民主主義の本質なんですよね。その点でアメリカの政治制度は懐が深いとは言えます。

とはいえトランピスト総動員のような暴力沙汰も起きている訳で、おそらく当事者の訴追はキッチリ行われると思いますが、それで収まる訳じゃなくて、寧ろエスタブリッシュメントの政権復帰に対する不満は深く潜航することになります。結局格差拡大で中流から滑落した白人労働者層の不満はそのままで、分断の克服に当面精力を注ぐしかない訳で、パリ協定やWTO復帰などトランプ政権で大統領令で離脱した部分を大統領令で戻すことは出来ても、批准を要する国際条約の推進は直ぐにはできない訳です。TPP復帰論は当面ないでしょう。

そういう意味で官邸に権力を集約している日本では、こうしたレジリエンスが働く状況にはなく、日本国民は国家権力を十分飼い馴らしているとは言えません。緊急事態宣言発出を巡る混乱がありましたが、期限の2月7日まであと2週間。延長せざるを得ない状況ですが、また混乱がありそうですね。問題なのは見かけ上新規感染者数は高止まりながら低下しつつありますが、濃厚接触者追跡中止で検査数自体が減っているので、ある意味当然の結果ですが、その一方で自宅待機中に症状急変で死に至る人が少なからず出ている現実がある訳で、結局保健所による検査体制がボトルネックのままです。

これ地方自治法の改正で国の機関委任事務が廃止され、保健所が自治体行政に委ねられた結果、官邸が厚労省に指示を出しても現場が動かないというリアルな問題が起きている訳で、地方への権限移譲が伴わない結果こうなっている訳です。これ特別給付金の手続きを巡る混乱も同じことが起きた訳で、地方分権がお題目だけだったことが災いしてます。そして官邸への権力集中の結果、不都合な情報は上がらないから適切な判断が出来なくなっている訳です。

ある意味制度の不備からくる行政のレジリエンスとは言えますが、これを民主主義と呼べるかどうか?昨年1月27日に中国武漢市長の周先旺市長が国営中央テレビのインタビューに答えて危機対応の遅れを認めると同時に、疫病の情報を公開する権限が無いことを述べて事実上中央政府を批判したことがありました。同じことが日本で起きている訳です。

確かに武漢封鎖で見せた中国の強権体質はおぞましいところですが、日本でも特措法と感染症法の改正案で罰則規定を設けることが議論されてます。特に入院拒否に対する刑事罰ですが、現実は感染が確認されても入院できない人が多い中で、罰則を設け実効性を上げるというのは明らかにおかしいですね。実態として入院拒否によって感染拡大したという立法事実がある訳じゃありません。ひとり親や介護老人を抱える家庭などで入院が難しいケースもありますし、立件は難しいかもしれませんが、明らかに悪質な感染拡大をもたらしたケースなら傷害罪の適用の可能性もあります。中国を見倣うのかい(怒)。

今回の緊急事態宣言では会食の抑制から飲食店の午後8時以降の営業自粛を求められ、更に1都3県の知事からの要請で終電繰上げが行われました。元々3月改正で実施予定でしたが、改正前の段階での繰上げは、車両や乗務員の運用変更が困難なため、実際は回送扱いなどの形で対応しているようですが、客扱い時間の短縮は駅係員の人件費の圧縮になりますので、緊急事態宣言でただでさえ打撃を受ける鉄道各社にとってもコストダウンになるということで、ほぼ横並びで実施されております。

お陰で夜の人出は確実に減っているようですが、コロナウイルスの変異種も見つかり、当面この状態が続く訳で、また3月改正でどのみち終電繰上げとなる訳です。かつてナイトエコノミーとか言って終夜バス走らせた時代とは様変わりですね。寧ろ脱炭素のためには夜更かしやめて活動時間を短くした方が良い訳です。

残業が減れば社畜の悲劇も減るかな?いやリモートで見えなくなるだけか。

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Sunday, January 17, 2021

電気が足りない訳じゃない

緊急事態宣言の中いかがお過ごしでしょうか。しかしアメリカやイギリスに比べれば2桁少ない感染者数で医療崩壊が叫ばれる日本の現状はどうしたものか。要因はいろいろありますが、医療機関に占める公立病院比率が2割程度で残りは民間という日本の医療体制が災いしているようです。

政府は各病院にコロナ病床の設定を要請していますが、風評を恐れる民間病院は申し訳程度の病床数でお茶を濁し、公立病院にしわ寄せがされている状況です。民間病院では1桁の病床数しか用意されていないtころが多いですが、そのために呼吸器感染症専門医や看護師、保健師張り付かせる訳ですから、勢力場分散して非効率になる訳です。加えて経営の要請で病床を空けておくわけにはいかず、他の疾病の患者を入院させるなどしていざというときに使言えなかったりしますし、また救急車が電話で受け入れ病院を探すシステムが災いしてコロナが疑われる救急患者の受け入れ拒否も頻発している状況です。

ならば公立病院に専門医、看護師、保健師を応援に出して集中的に対応した方が効率よく受け入れられそうなものですが、その公立病院が赤字体質をたたかれて予算が縮減されてやはり対応を困難にしているという面もあります。例えば民間病院にコロナ受け入れの免除の見返りとして医師、看護師、保健師の人的支援を求めるといった対策が取られれば良いのですが、国の支援が無ければこれも難しいということで、医療制度改革で疲弊した医療体制が災いしている訳です。

公立病院の比率や状況はそれでも地域差がありますし、専門スタッフ偏在している状況ですから、そもそも国が差配するのは難しい訳ですが、ならば緊急事態宣言の発出は都道府県知事の権限として必要な予算は国が提供する制度が望ましい訳で、法制度の問題です。また当初から言われ続けてきた検査体制の問題も「医療崩壊を防ぐために検査を絞る」という謎理論で抑制されてきましたが、これも未症状や軽症の人向けの隔離施設として地域のホテルを借り上げて食事提供と医療チーム派遣で対応することでホテルの支援にもなりGo To で無理くり需要を作り感染拡大で蒸発という混乱を考えたら遥かにマシは支援策です。

Go To に関しても緊急事態宣言で県境を越えた移動を制限しても、状況が許せば県内 Go To といった形で対応するなど地方の実情に合わせた対応が可能なのに、そうした建付けになっておらず、結果的に国の迷走に振り回されてしまう訳です。政府は国民を不幸にするばかりです。

ついでながら予想通りイギリス、南アフリカ以外の地域からもコロナ変異種が見つかりました。元々不安定なRNAウイルスですから、世界規模で感染拡大すれば多数の変異種が顕れることは必然です。変異は全方位に出現しますが、生き残るのは免疫迂回などでより感染力を増した変異種となりますから、更に警戒を強める必要があります。一方弱毒化の証拠は見当たらず、今後も未知の変異種の出現を見込む必要があります。世界から人を呼ぶ五輪を止めないというのは、商業イベントの方が国民の命より大事ってことになりますが-_-;。

で、コロナも怖いけど寒さも怖いということで、先日の大雪以外にも問題山積です。

新電力、料金2倍に高騰も 需給逼迫で卸価格が急上昇:日本経済新聞
世界規模の大寒波で天然ガスの需要が上振れしており、特にLNGの調達が困難になっている結果、燃料不足で発電量が制約された結果、卸電力取引所(JPEX)の価格が高騰し、自前電源を持たない新電力の料金が跳ね上がっています。元々大手電力が余剰電力を出し惜しみしていて、市場規模が小さいため、燃料需給のひっ迫で価格が跳ね上がってしまうという構造的欠陥が明らかになったものです。

とはいえ大手電力各社は節電要請は出しておりません。その一方で企業保有の向上などの自家発電設備からの電力買い取りを進め、また地域間の連携線で大手同士の電力融通は行われており、結果的に電力不足は起きていない訳です。加えて石炭火力の重油併燃で出力アップして凌ぐなどしており、脱炭素に逆行しています。これは電力自由化に逆行する行為です。2020年実施の電力自由化で大手電力の送電部門の法的分離が実現した訳ですが、これ単なる分社ですから、親会社の大手電力のガバナンスに委ねられている訳です。

加えて先発券が認められており、稼働していない原発の容量枠は空いていますし、本来原発のバックアップ電源の筈の石炭火力の容量まで上乗せされていたりしていて、言ってみれば既得権の塊となっております。そんな中で新電力が再生可能エネルギー電源の託送を求まる場合、必要な容量アップのための送電線増強投資は原因者たる新電力に求められる訳ですから、資本力の劣る新電力は担いきれず、送電線はがら空きなのに利用できないという不条理がある訳です。

一方大手電力同士の連携線を通じた電力融通には好都合な訳で、これで電力自由化とは笑わせます。結局大手電力の既得権を守り新電力の参入障壁となっている訳です。大手電力が涼しい顔して節電要請を見送るのはこういうからくりなんですね。あと公式な連携線とは別に、東電と東北電力のエリア間には未使用の送電線が休眠しています。福島と柏崎刈羽から首都圏へ向けての送電線です。発送電分離を前倒しした東京d燃力パワーグリッドに東北電力の送電網を移管する話が進んでいるそうで、巨大送電網となりそうです。

裏には完成間近で3.11以後止まっている東通原発の完成推進の狙いがあると言われており、これに関電の美浜3号と高浜1,2号機の40年超の再稼働の条件として福井県から使用積み燃料増やさないことが条件づけられ、この関連で青森県むつ市の中間貯蔵施設への移管受け入れの決定があると言われております。裏には原発事業集約の狙いがあり、それに反発する関電に貸しを作るためとか。東電は実質国有化状態にあり、電力自由化の陰で政府の影響力を拡大する意図が透けて見えます。

新たな電力国家管理と見ることもできますが、政府は沈黙しており、実際は単なる行き当たりばったりでしょう。未だにエネルギー基本計画も明らかにされない中でトップダウンでカーボンニュートラルの方針が示されたことから、原発利権が動き出したとも言えます。リソースの集約の観点から原発集約自体は反対はしませんが、この辺は注意深く見ていく必要があります。

そしてもう1つ、カーボンニュートラルに反応したニュースがこちらです。

日本郵船、鉄道で車を大規模輸送 CO2排出半減【イブニングスクープ】:日本経済新聞
中国から中央アジアを経て中東から欧州へと通じる鉄路のちゃにあランドブリッジを利用した自動車輸送ですが。日本郵船が実施というところがミソです。

船会社にとって頭が痛いのは燃費の悪い老朽船の代替問題ですが、アンモニアや水素などの燃料動力にシフトする必要がある一方、技術開発はこれからで船舶も燃料も当面高価なのは避けられないことから、輸送の一部を鉄道に振り替えることで、老朽船を廃船して資産を圧縮しながらCO2削減を図る繋ぎの施策ということですね。カーボンニュートラルには程遠いけど、とりあえずできることからってことですね。同様に国内の鉄道貨物の見直しが進めばJR貨物にとっては老舗ですし、JR東日本やJR北海道が計画するカーゴ新幹線も有望ってことにはなります。

但しE5系ベースの10連で積載量は70t程度ということで、コキ20連の標準的な1,000t貨物列車で12ftコンテナ5t換算での積載量500tの1/7に過ぎず、運賃が高くなることは避けられません。つまり在来線貨物の代替にはなりませんが、元々積載量の少ない航空貨物に対しては競争力があると見られます。貨物もフリュグスカムの時代を拓くかもしれません。

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Monday, January 11, 2021

トランピスト総動員の後始末

アメリカが大変なことになりました。

トランプ支持者、議会占拠 大統領選出が一時中断:日本経済新聞
米議会へのトランプは野乱入で混乱し、景観を含む5人の死者を出す騒ぎとなりました。しかもトランプ大統領自らSNSで扇動した結果ということで、事態は重大です。

1月5日に上院で行われる選挙人投票の集計結果を認定して新大統領制出を確定する手続きに対して、上院で議長を務めるペンス副大統領に圧力をかけて阻止しようとしたものの、当然ながらペンス氏は従わず手続きに入ったことで裏切り者呼ばわりされた一方、最後の手段として支持者へ実力行使を訴えた結果の出来事ですが、SNS各社は大統領のアカウントを凍結するなどしたものの、Qアノンなどの陰謀論者やネオナチなどの極右を中心に武装して乱入したものです。

トランプ大統領自身はイデオロギーに基づいてというより、単純に負ければ在任中の数々の不法行為が訴追の対象になることを回避するための行動で合理的エゴイストたるレントシーカーに過ぎない訳ですが、不満を抱えた国民の分断を利用した暴挙ではあります。

しかし密な支持者集会を繰り返し自らコロナに感染し風邪と共に去るかに見えたものの、ステロイド剤服用までしてドラッグで大復活してますます支持者を喜ばせた訳で、ハイブリッド・シビル・ウォーの現実が顕れたと見ることができます。問題なのは狂信的な支持者ほどバイデン新大統領が不正によって選ばれた正当性のない大統領という見解を持つ訳で、国民の文題は今後も続き、バイデン氏の政策実現は難しくなります。

但し議事堂乱入はある意味建国以来の国体を傷つける行為で、日本で喩えれば天皇に不敬を働いたに等しい行為として糾弾されますから、かなり徹底した訴追と掃討が行われると見られ、寧ろ現場での実力行使を封じる方向へ変化するとも見られます。ジョージア州の上院選再投票でも民主党が2議席確保で結果的に伯仲しながらでもトリプルブルーともブルーウエーブとも呼ばれる大統領と上下院の民主党独占が成った訳で、バイデン氏にとってはやり易い形ではあります。

但し対中制裁の見直しなどは当面行わず、香港やウイグルなどの中国の人権問題への厳しい対応も考えられ、交渉カードとして温存されると考えられます。中国は経済的なライバルであり安全保障面でも無視できないけれど、是々非々の対応で成果を導き出そうとするでしょう。また経済界などが期待するTPP復帰も、国内の労働者への配慮から見送られるでしょうし、既に貿易協定ではTPPと同等の権利を得ているから今のままでしょう。寧ろ米議会がオバマ政権時に議決した為替条項盛り込みの要求がありますから逆にヤブヘビの可能性もあります。

てことで表面上は平静を取り戻すものの、対立の構図は深く潜航する訳で、特に狂信的な支持者はたとえ訴追され罰を受けても独自の世界観を捨てずにバイデン政権の不当性を信じ続けるでしょう。つまり広く国民に共有される正史とは異なるアナザーヒストリーの誕生となって対立がイデオロギー的にロックインされる訳で前途多難です。

一方でトランプ現象と並び称されたBrexitですが、こちらは土壇場で英EUFTA合意が成立し、明けて1月1日から発効しています。一説によれば年末のコロナ変異種が英国内で発見されEU側が緊急に国境を閉じた結果物流が滞り、Brexitの予行演習^_^;になったと言われております。結果的にイギリスはEUの関税同盟に留まりながら独立を勝ち取った形ですが、大幅譲歩を余儀なくされております。北アイルランド問題では当面EUルール適用としたほか、英EEZ内の漁業権問題でも譲歩を迫られました。これは主にフランス漁船の操業継続に対して経過措置を設けて当面維持するもので、当初案の漁獲割り当てをイギリスが一方的に決められるルールから譲歩したものです。

最後まで揉めたEU規制の英国内適用問題は、関税同盟に残るのであれば競争条件を揃えるイコールフッティングの主張ですが、本音はロンドンの金融機能の代替の狙いと言われます。ダブリン、フランクフルト、アムステルダム、ルクセンブルク、パリなどが名乗りを上げていましたが、何れもロンドンの機能を代替するには規模の点で劣り実現可能性はほとんど無いと言えます。この辺香港の代替を狙う東京と同様で、政治的思惑では進まないところです。

関税同盟に留まったとはいえ通関手続きは始まった訳で、これが原因の物流の滞貨が生じていて現場は混乱していますが、これは主にイギリス側のインフラ整備の遅れに起因しますので、いずれ解消へ向かうと思われます。思えばBrexitに注文付けていたのは主にEU内の拠点としてイギリスに生産拠点を置いた日本企業が中心だった訳ですが、Brexitの結果日英EPAの締結に至りBrexit後も関税同盟に留まって一安心でしょうが、別の問題も起きています。

これはEPAの原産国証明の問題で、自動車で7年の経過措置を得たものの、従来のように日本から部品を輸出して現地で組み立てる形は見直しを迫られます。加えて2030年のEV規制でガソリン車ディーゼル車の新車販売が出来なくなり、日本メーカーもEVシフトを迫られる中でのことですから、下手すればサプライチェーンをそっくり現地化せざるを得ないことも視野に入れるべきです。イギリスの交渉上手の伝統は生きているようですが、裏を返せば日本の交渉下手でもある訳です。

ただ指摘しておきたいのは、トランプ現象もBrexitも背景として労働者の反乱の産物という点で共通しています。Brexitは保守党キャメロン政権の緊縮財政への拒否感から出てきたものですし、トランプ現象も所謂ラストベルトの白人労働者の支持があったこと「は見落とせません。これは元々労働者の支持を得ていた左派陣営の変質に由来するもので、アメリカで言えばクリントン政権の経済重視や英ブレア政権の第三の道で置き去りにされたと労働者が感じたことが起点です。

サッチャーやレーガンに始まった新自由主義とグローバル化の流れを去派指導者が追認し経済成長に軸足を置いた結果、支持層の国内労働者が置き去りにされた構図です。この面では独シュレーダー政権の労働市場改革も同じ文脈に属します。その結果東西統合が経済の重石となっていてEUのお荷物だったドイツは一転EUの優等生に変身し豊かにはなりましたが、そこまで踏み込めない他国の労働市場を圧迫し、ギリシャ危機を初めとする経済危機を呼び起こした訳で、Brexitもその帰結の1つと見ることができますし、東欧のポピュリズム政治もそうですね。

これ結局左派がエリート主義を脱却できないことに由来すると考えられます。左派のエリート主義の起点は2つありまして、1つはレーニンのボルシェビキですね。マルクスの言うプロレタリア革命はパリコミューンの住民自治にヒントを得た労働者による自覚的な解放運動ですが、レーニンはロシアの後進性から労働者bの自覚を待てないことから、意識の高い職業革命家による扇動で大衆を分極化し騒乱の中で政権を奪取することを構想し実現した訳ですが、これが左派の成功体験として広く共有された結果、エリート主義が肯定された訳です。

もう1つはケインズのハーベイロードの賢人主義とも言うべきもので、もろにエリート主義を肯定しています。結果広い意味で左派とされるマルクス主義者もケインズ主義者もエリート主義に毒されてしまった訳です。余談ですが、日本は元々保守派もエリート主義に凝り固まっていて、40年代の革新官僚による国家総動員体制で戦争へ突き進んだ訳ですが、同時に戦前非合法だった日本共産党もボルシェビズムを受け入れて中央の指導への従順さを求めており、この点は今も変わりません。とはいえ格差拡大でネトウヨの出現など大衆の分極化が見られる日本の現状で美装闘争を仕掛けないから武装闘争放棄は本気でしょうが、日本の労働者に寄り添っているのかは疑問を禁じ得ません。

最後にこの話題。北陸道など一時1200台動けず 富山・福井が災害派遣要請:日本経済新聞年末の関越道の混乱と同じことが北陸道でも起きました。元々寒波で日本海側の広い範囲で豪雪の予想があったわ訳ですが、通行止めの判断が遅れた訳です。今回は高度な雪対策がされた筈の北陸新幹線まで止まるぐらいですから、より大きな災害ということになりますが、高速道路会社にとっては通行料収入を失う通行止めの判断は出しにくいと考えられます。高速道路民営化が私たちを幸せにしたのでしょうか?

新神瀬が止まるぐらいですから、鉄道は全滅、一般道も使えないで、結局交通は全滅状態です。これも気候変動による海水温の上昇が原因と考えられます。前エントリーのカーボンニュートラルで経済成長は無理でも、こうして経済損失を被ることを考えると、経済成長以上の経済損失が発生して台無しということは考えられます。経済成長に結びつくかどうかに関わらずカーボンニュートラルは進める必要があります。

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Friday, January 01, 2021

カーボンニュートラないとグレタさんに叱られる

コロナ感染拡大がシャレにならない状況ですが、ホントGo To とか無理矢理経済を動かそうとすればろくなことにならないってことですね。人の移動が増えれば感染拡大は不可避です。病理的な因果関係は明らかではありませんが、強い相関があり蓋然性が高いならば因果関係の有無を問わないのが疫学でありエビデンスの議論は不毛です。現実に医療崩壊が現実味を帯びてきている現状は人災です。くれぐれも餅をのどに詰まらせないようにご自愛ください。

てな不穏な新年のスタートですが、日経新聞の元旦トップ記事がこれです。

脱炭素の主役 世界競う 日米欧中動く8500兆円 排出削減特許、日本なお先行:日本経済新聞
頭痛い。記事は技術革新を競い合う世界のトピックスの紹介で正直退屈な中身ですが、付随するグラフが示す絶望的な現実をこそ注目すべきです。

グラフから読み取れるのは、2020年時点の世界人口80億人弱が2050年に100億人弱と25%増え、石油換算のエネルギー消費量が140億トンから180億トンに増えると予測しています。つまり人口の増加以上にエネルギー消費量は増える訳で、内化石燃料は120億トンから145億トン程度と増加率は減るものの、絶対量は増え続ける訳で、カーボンニュートラルは遠く及ばない訳です。それを科学技術のブレークスルーで何とかしようって話なんですね。

勿論現状を維持した場合の予測ですから、対策を講じることで変えられる可能性はありますが、2050年のカーボンニュートラルという目標の困難さは実感できると思います。思えば1990年比マイナス6%という京都議定書のなんと牧歌的だったことか。それすら渋々受け入れた日本ですが、言い出しっぺのアメリカが離脱し、東日本大震災で原発が止まったことを口実に離脱した日本が、今回は本気のようですが、具体策はこれからです。

大きな要素としては経済界のヒアリングで前向きな回答を得たことですが、既に欧米ではESG投資の考え方が浸透していて、石炭火力発電プラントへの投資などに資金が集まらなくなってきたことと、特にCO2排出量の多い電力や鉄鋼で水素活用の機運が出てきたことで、日本でも欧米に乗り遅れるなということのようです。相変わらず周りを見ながらの「みんなで渡れば怖くない」ってことのようです。それでいて先進国ではほぼ世界標準の炭素税には反対とチグハグですが。

水素といっても現状では化石燃料由来でカーボンニュートラルになりませんが、当面はアンモニア(NH3)の利用で凌ぐということのようです。NH3は常温で気体ですが、沸点が-35°Cと比較的高いので水素ガスよりも液化しやすく水素の弱点である保管運搬の問題をクリアしやすいこと、水溶性が高く溶液とすることで保管運搬しやすいという面もあり、また直接燃焼できるので、火力発電燃料としても使えるということもあります。

半面強い臭気と毒性を持つため取り扱いが難しい面もありますし、爆発物ですし燃料用途の場合窒素酸化物の発生という問題も抱えます。窒素酸化物についてはディーゼルエンジンで使われる尿素水噴霧により窒素と水に還元する技術が使えということで、既に国内の一部の火力発電所で使われています。そして将来カーボンフリー水素の供給体制がk¥出来れば水素燃焼に切り替えることも視野に入っているようです。つまり水素社会への移行の現実解ってことのようです。

但し現状では産油国の精製所で副産物として発生したNH3の輸入で調達ということで、化石燃料由来ですからカーボンフリーではありませんし、再生可能エネルギーと違って輸入エネルギーという意味でも問題です。ただ自国で石油精製すればCO2排出がカウントされますから単に排出源を国外へ出しただけという意味ではグリーンウォッシュでしかない訳で、どこまでも姑息です。

一方鉄鋼ではコークス製鉄を水素製鉄に切り替える検討が始まっていますが、まだ研究段階で実現可能性を現時点で評価できるようなものではありません。ただ自動車産業でのFCVの普及で水素ステーションの少なさがネックになっている現状もあり、電力の水素シフトと併せて技術革新を共同で進める思惑もあるようです。同時にガソリン車が減ることで苦境が予想される石油産業の水素ステーションへの業態転換の思惑も乗っかってきます。

てことでつまり現状の重厚長大産業の温存の意図ありありです。加えて技術革新のための研究開発費を分担するということですね。最早単独では世界と戦えないと同時に、現政権の統制姿勢とも親和性があるということですね。頭痛くなってきた。思えば原子力発電もCO2を出さないクリーンエネルギーとして電力会社がキャンペーン打ってきた訳ですし、太陽光その隊の再生可能エネルギー発電でFITを導入した結果電力会社の拒否権で普及が進まなかったこともあり、同じ轍を踏む可能性は指摘しておきます。

コロナ禍での地方私鉄のエントリーでも取り上げましたが、火力依存の日本ではEV普及による電力需要の増加はDO2排出を増やすことになりますし、水素のカーボンフリーもすぐに実現できる訳じゃありません。つまりどう転んでも当面のCO2排出量は増える訳ですが、一方で近年堰合では2度ほど排出が減りました.1つはリーマンショック後2009年とコロナ禍の2020年です。つまり経済活動が停滞すれば排出量は減る訳です。成長と排出s苦言は両立できないと見るべきです。

但し世界的な人口増は成長を促しますし、止めることのマイナス面もある訳で、この辺所謂マルサスの人口論がグローバルに実現していると見ることができます。脱炭素で経済成長しても、結局化石燃料消費の拡大で脱炭素は遠のく訳です。これ首都圏の通勤ラッシュがいつまでも解決しないことと似ています。

2009年のエントリーでポスト京都議定書で25%削減が求められた時の考えをまとめましたが、これすら2050年のカーボンニュートラル目標に比べれば実現可能性はあったと思います。この時は結局まとまりませんでしたが。加えて末尾で指摘した首都圏の通勤ラッシュの解消が進まないことに触れており、当時複々線化の遅れで混雑と遅延の日常化から小田急が忌避された一方、輸送サービスの改善で利用者のシフトが起きて混雑率トップとなった東急田園都市線のケースを取り上げましたが、結局投資して改善した結果寧ろ好ましくない結果を招いてしまった訳です。

コロナ禍で鉄道各社は春のダイヤ改正で終電繰上げと共にピーク時の減便まで打ち出しています。共に人件費の圧縮効果はありますが、夜の街のクラスター叩きで需要が減った終電に対して、在宅勤務も自粛解除で元に戻りつつあり混雑も見られる通勤ラッシュ時間帯での減便は密の解消の観点から問題ですが、減収減益ではこうならざるを得ない訳です。災いを福に転じることができない訳です。

同様に製造業の水素社会移行も既存のビジネスで稼げなければ進まない訳で、カーボンニュートラルも収益化に至るまでの期間は既存事業での利益確保が必要な訳で、収益をもたらす化石燃料利用を拡大させるインセンティブが働きます。市場経済を前提とする限りカーボンニュートラルも同じ展開となる可能性が高い訳です。結果的にフリュグスカムのグレタさんに叱られる。

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