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Friday, January 01, 2021

カーボンニュートラないとグレタさんに叱られる

コロナ感染拡大がシャレにならない状況ですが、ホントGo To とか無理矢理経済を動かそうとすればろくなことにならないってことですね。人の移動が増えれば感染拡大は不可避です。病理的な因果関係は明らかではありませんが、強い相関があり蓋然性が高いならば因果関係の有無を問わないのが疫学でありエビデンスの議論は不毛です。現実に医療崩壊が現実味を帯びてきている現状は人災です。くれぐれも餅をのどに詰まらせないようにご自愛ください。

てな不穏な新年のスタートですが、日経新聞の元旦トップ記事がこれです。

脱炭素の主役 世界競う 日米欧中動く8500兆円 排出削減特許、日本なお先行:日本経済新聞
頭痛い。記事は技術革新を競い合う世界のトピックスの紹介で正直退屈な中身ですが、付随するグラフが示す絶望的な現実をこそ注目すべきです。

グラフから読み取れるのは、2020年時点の世界人口80億人弱が2050年に100億人弱と25%増え、石油換算のエネルギー消費量が140億トンから180億トンに増えると予測しています。つまり人口の増加以上にエネルギー消費量は増える訳で、内化石燃料は120億トンから145億トン程度と増加率は減るものの、絶対量は増え続ける訳で、カーボンニュートラルは遠く及ばない訳です。それを科学技術のブレークスルーで何とかしようって話なんですね。

勿論現状を維持した場合の予測ですから、対策を講じることで変えられる可能性はありますが、2050年のカーボンニュートラルという目標の困難さは実感できると思います。思えば1990年比マイナス6%という京都議定書のなんと牧歌的だったことか。それすら渋々受け入れた日本ですが、言い出しっぺのアメリカが離脱し、東日本大震災で原発が止まったことを口実に離脱した日本が、今回は本気のようですが、具体策はこれからです。

大きな要素としては経済界のヒアリングで前向きな回答を得たことですが、既に欧米ではESG投資の考え方が浸透していて、石炭火力発電プラントへの投資などに資金が集まらなくなってきたことと、特にCO2排出量の多い電力や鉄鋼で水素活用の機運が出てきたことで、日本でも欧米に乗り遅れるなということのようです。相変わらず周りを見ながらの「みんなで渡れば怖くない」ってことのようです。それでいて先進国ではほぼ世界標準の炭素税には反対とチグハグですが。

水素といっても現状では化石燃料由来でカーボンニュートラルになりませんが、当面はアンモニア(NH3)の利用で凌ぐということのようです。NH3は常温で気体ですが、沸点が-35°Cと比較的高いので水素ガスよりも液化しやすく水素の弱点である保管運搬の問題をクリアしやすいこと、水溶性が高く溶液とすることで保管運搬しやすいという面もあり、また直接燃焼できるので、火力発電燃料としても使えるということもあります。

半面強い臭気と毒性を持つため取り扱いが難しい面もありますし、爆発物ですし燃料用途の場合窒素酸化物の発生という問題も抱えます。窒素酸化物についてはディーゼルエンジンで使われる尿素水噴霧により窒素と水に還元する技術が使えということで、既に国内の一部の火力発電所で使われています。そして将来カーボンフリー水素の供給体制がk¥出来れば水素燃焼に切り替えることも視野に入っているようです。つまり水素社会への移行の現実解ってことのようです。

但し現状では産油国の精製所で副産物として発生したNH3の輸入で調達ということで、化石燃料由来ですからカーボンフリーではありませんし、再生可能エネルギーと違って輸入エネルギーという意味でも問題です。ただ自国で石油精製すればCO2排出がカウントされますから単に排出源を国外へ出しただけという意味ではグリーンウォッシュでしかない訳で、どこまでも姑息です。

一方鉄鋼ではコークス製鉄を水素製鉄に切り替える検討が始まっていますが、まだ研究段階で実現可能性を現時点で評価できるようなものではありません。ただ自動車産業でのFCVの普及で水素ステーションの少なさがネックになっている現状もあり、電力の水素シフトと併せて技術革新を共同で進める思惑もあるようです。同時にガソリン車が減ることで苦境が予想される石油産業の水素ステーションへの業態転換の思惑も乗っかってきます。

てことでつまり現状の重厚長大産業の温存の意図ありありです。加えて技術革新のための研究開発費を分担するということですね。最早単独では世界と戦えないと同時に、現政権の統制姿勢とも親和性があるということですね。頭痛くなってきた。思えば原子力発電もCO2を出さないクリーンエネルギーとして電力会社がキャンペーン打ってきた訳ですし、太陽光その隊の再生可能エネルギー発電でFITを導入した結果電力会社の拒否権で普及が進まなかったこともあり、同じ轍を踏む可能性は指摘しておきます。

コロナ禍での地方私鉄のエントリーでも取り上げましたが、火力依存の日本ではEV普及による電力需要の増加はDO2排出を増やすことになりますし、水素のカーボンフリーもすぐに実現できる訳じゃありません。つまりどう転んでも当面のCO2排出量は増える訳ですが、一方で近年堰合では2度ほど排出が減りました.1つはリーマンショック後2009年とコロナ禍の2020年です。つまり経済活動が停滞すれば排出量は減る訳です。成長と排出s苦言は両立できないと見るべきです。

但し世界的な人口増は成長を促しますし、止めることのマイナス面もある訳で、この辺所謂マルサスの人口論がグローバルに実現していると見ることができます。脱炭素で経済成長しても、結局化石燃料消費の拡大で脱炭素は遠のく訳です。これ首都圏の通勤ラッシュがいつまでも解決しないことと似ています。

2009年のエントリーでポスト京都議定書で25%削減が求められた時の考えをまとめましたが、これすら2050年のカーボンニュートラル目標に比べれば実現可能性はあったと思います。この時は結局まとまりませんでしたが。加えて末尾で指摘した首都圏の通勤ラッシュの解消が進まないことに触れており、当時複々線化の遅れで混雑と遅延の日常化から小田急が忌避された一方、輸送サービスの改善で利用者のシフトが起きて混雑率トップとなった東急田園都市線のケースを取り上げましたが、結局投資して改善した結果寧ろ好ましくない結果を招いてしまった訳です。

コロナ禍で鉄道各社は春のダイヤ改正で終電繰上げと共にピーク時の減便まで打ち出しています。共に人件費の圧縮効果はありますが、夜の街のクラスター叩きで需要が減った終電に対して、在宅勤務も自粛解除で元に戻りつつあり混雑も見られる通勤ラッシュ時間帯での減便は密の解消の観点から問題ですが、減収減益ではこうならざるを得ない訳です。災いを福に転じることができない訳です。

同様に製造業の水素社会移行も既存のビジネスで稼げなければ進まない訳で、カーボンニュートラルも収益化に至るまでの期間は既存事業での利益確保が必要な訳で、収益をもたらす化石燃料利用を拡大させるインセンティブが働きます。市場経済を前提とする限りカーボンニュートラルも同じ展開となる可能性が高い訳です。結果的にフリュグスカムのグレタさんに叱られる。

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