民主主義は勝利しない
バイデン大統領の就任演説を否定する気は更々ありませんが、民主国家アメリカが戻ってくるという楽観論はとりあえず否定しておきたいと思います。ただトランプ政権の極端な価値観の揺り戻しが起きたという意味で、こうしたレジリエンスこそが民主主義の本質という点は指摘できます。言い換えると暴力装置としての主権国家を飼い馴らすプロセスこそが民主主義の本質なんですよね。その点でアメリカの政治制度は懐が深いとは言えます。
とはいえトランピスト総動員のような暴力沙汰も起きている訳で、おそらく当事者の訴追はキッチリ行われると思いますが、それで収まる訳じゃなくて、寧ろエスタブリッシュメントの政権復帰に対する不満は深く潜航することになります。結局格差拡大で中流から滑落した白人労働者層の不満はそのままで、分断の克服に当面精力を注ぐしかない訳で、パリ協定やWTO復帰などトランプ政権で大統領令で離脱した部分を大統領令で戻すことは出来ても、批准を要する国際条約の推進は直ぐにはできない訳です。TPP復帰論は当面ないでしょう。
そういう意味で官邸に権力を集約している日本では、こうしたレジリエンスが働く状況にはなく、日本国民は国家権力を十分飼い馴らしているとは言えません。緊急事態宣言発出を巡る混乱がありましたが、期限の2月7日まであと2週間。延長せざるを得ない状況ですが、また混乱がありそうですね。問題なのは見かけ上新規感染者数は高止まりながら低下しつつありますが、濃厚接触者追跡中止で検査数自体が減っているので、ある意味当然の結果ですが、その一方で自宅待機中に症状急変で死に至る人が少なからず出ている現実がある訳で、結局保健所による検査体制がボトルネックのままです。
これ地方自治法の改正で国の機関委任事務が廃止され、保健所が自治体行政に委ねられた結果、官邸が厚労省に指示を出しても現場が動かないというリアルな問題が起きている訳で、地方への権限移譲が伴わない結果こうなっている訳です。これ特別給付金の手続きを巡る混乱も同じことが起きた訳で、地方分権がお題目だけだったことが災いしてます。そして官邸への権力集中の結果、不都合な情報は上がらないから適切な判断が出来なくなっている訳です。
ある意味制度の不備からくる行政のレジリエンスとは言えますが、これを民主主義と呼べるかどうか?昨年1月27日に中国武漢市長の周先旺市長が国営中央テレビのインタビューに答えて危機対応の遅れを認めると同時に、疫病の情報を公開する権限が無いことを述べて事実上中央政府を批判したことがありました。同じことが日本で起きている訳です。
確かに武漢封鎖で見せた中国の強権体質はおぞましいところですが、日本でも特措法と感染症法の改正案で罰則規定を設けることが議論されてます。特に入院拒否に対する刑事罰ですが、現実は感染が確認されても入院できない人が多い中で、罰則を設け実効性を上げるというのは明らかにおかしいですね。実態として入院拒否によって感染拡大したという立法事実がある訳じゃありません。ひとり親や介護老人を抱える家庭などで入院が難しいケースもありますし、立件は難しいかもしれませんが、明らかに悪質な感染拡大をもたらしたケースなら傷害罪の適用の可能性もあります。中国を見倣うのかい(怒)。
今回の緊急事態宣言では会食の抑制から飲食店の午後8時以降の営業自粛を求められ、更に1都3県の知事からの要請で終電繰上げが行われました。元々3月改正で実施予定でしたが、改正前の段階での繰上げは、車両や乗務員の運用変更が困難なため、実際は回送扱いなどの形で対応しているようですが、客扱い時間の短縮は駅係員の人件費の圧縮になりますので、緊急事態宣言でただでさえ打撃を受ける鉄道各社にとってもコストダウンになるということで、ほぼ横並びで実施されております。
お陰で夜の人出は確実に減っているようですが、コロナウイルスの変異種も見つかり、当面この状態が続く訳で、また3月改正でどのみち終電繰上げとなる訳です。かつてナイトエコノミーとか言って終夜バス走らせた時代とは様変わりですね。寧ろ脱炭素のためには夜更かしやめて活動時間を短くした方が良い訳です。
残業が減れば社畜の悲劇も減るかな?いやリモートで見えなくなるだけか。
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