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March 2021

Sunday, March 28, 2021

モダンマネーセオリープラクティス

アンカレッジの外交ショーに世界が釘付けになりました。

米中、ぶつかる国家観 経済から対立軸移る:日本経済新聞
通常の外交交渉は冒頭の2分ほどで報道陣を退出させて専門家同士で秘密会談をする訳ですが、SNSの時代にはどうせ漏れて世界に拡散されるリスクはある訳で、それなら思い切ってショーアップして世論喚起してしまえということですね。これ米中両国ともに自国民及び世界へのアピールで世論を味方につけようという意図が見えます。本チャンの交渉はいたって冷静に進んだらしいです。

外交交渉に限らず国防や情報当局のブリーフィング内容をツイッターで暴露するトランプ大統領の得意技がヒントになった可能性があります。報道界隈ではトランプ大統領時代に情報開示が進んだという笑い話まで囁かれています。その意味でバイデン政権としては良いアピールになったでしょうけど、同時に中国国内のSNSの反応で、義和団の乱と北京議定書が持ち出されたことで、米中対立の深刻さは逆に鮮明になりました。

1901年、義和団を名乗る扶清滅洋を唱える民衆の排外運動の蜂起があり、それに乗っかって清朝が支持し宣戦布告したために対外戦争となり、日本を含む8か国連合が2か月で平定したもので、北京議定書という不平等条約を呑まされた結果、清朝の弱体化に至ったもので、中国の屈辱の近代史を決定づけた事件でした。つまり同盟国を動員して対決を迫るバイデン政権に対する中国国民の率直な反応と見て良いでしょう。対立が国民レベルに浸透した訳で、中国との関係を簡単に見直せない日本を含むアジア諸国にとっては、対応が難しくなります。唯一喜んでいるのは、米中対立激化で中国の支援が期待できる北朝鮮ぐらいですね。

その一方で気候変動などでは協力を期待しており、対立一辺倒ではない訳ですが、これがかなりの難題です。そもそもグリーンニューディールはオバマ政権で打ち出されたものですが、リーマンショック後の中国の大規模財政種痘もあって需給がひっ迫して原油高になった結果、確かに風力などの再生可能エネルギーへのシフトは一定に起きましたが、それ以上にコスト面で無理があったシェール層の天然ガス採掘の技術革新が起き、その応用でタイト層のオイル採掘が可能となり、所謂シェール革命が起きたことで原油価格が下がったため、寧ろ再エネ投資はとん挫しました。

今回はOPECとロシアの減産で価格を押し上げていることもあり、再エネ関連やCO2貯蔵(CCS)や再利用(CCUS)などへの投資拡大が起きる可能性はあります。スエズ運河の座礁事故も復旧が長引けば原油高止まりの可能性もあります。但しCCSにしろCCUSにしろ、CO2分離や液化、固化の過程でのエネルギー消費がありますから、それを再エネで賄えなければ効果が減殺されることになります。

この点アメリカは油田に戻すことで原油の絞り出しに使えるということもあり、原油価格が高い状態を前提にすれば技術革新が進む可能性はあります。但しそれが経済成長を促すかどうかはわかりませんが。加えてCCSやCCUSは北海油田を抱えるイギリスやノールウェーでも可能性がある一方、油田のない日本ではハードルが高い訳ですが。やっぱりグレタさんに叱られる?

一方バイデン大統領が打ち出し議会で承認された総額200兆円の財政出動で景気回復することで長期金利が上がり株価が下がるなどの市場の反応が見られますが、法人税と富裕層所得税の増税も打ち出しており、当面は経済回復を優先して増税は後回しになると見られますが、これが重石となって結局長期金利も株価も落ち着きを取り戻しつつあります。つまり増税予告付き財政出動という訳で、これ主流派経済学者からトンデモ理論と言われた現代貨幣理論(MMT)の実践と捉えることも可能です。

日本ではリフレ派が節操なく飛びついたMMTですが、彼らが見落としているのは増税オプション付きという部分でして、元々は貨幣を負債と捉え、政府と中央銀行を連結した統合政府としての政策対応というもので、くしくもイエレン財務長官がFRB議長時代に持論として唱えた高圧経済論とも通じるるもので、後任のパウエルFRB議長も承知の上とすれば、それなりに整合性のある政策にはなります。但しインフレ対応が必要になった時には財政緊縮と金融引き締めを同時に行うことになる点が難点と言えば難点ですが、イエレン財務著菅は当面その心配はないと見立てているようです。

何故かと言えば中立金利の低下が背景にあるからで、結局アメリカの潜在成長力がそれだけ低下した現実が見えているのかもしれません。経済を過熱させるような過度な景気浮揚は望めないことに気付いているんじゃないかと思います。逆に主流派にどっぷり浸かったサマーズ氏には理解できず、インフレ懸念から批判した訳です。で、上記のグリーンニューディールが進むと仮定すると、その果実は成長よりも温暖化を遅らせるという公益の形でもたらされる可能性が高く、コスト負担で成長が相殺されてしまう可能性が高い訳です。温暖化が進めば別のコスト負担が増えますから、よりマシな未来はどちらかは自明ですが。

加えて言えばこれまで移民の受け入れで労働力を補充してきた移民国家のアメリカですが、コロナ禍でその持続可能性に疑問符が付きます。これは欧州も同様ですが、技能実習生などで「移民ではない」と強弁しつつ外国人で労働力を補充しようとしている日本はどうなるでしょうか。寧ろ増税を予告して財政出動するアメリカをこそ見習うべきではないかと思います。

日本も含めてですが、先進諸国の低金利が、コロナ禍では政策余地をもたらしていることも確かです。緊急の低利融資や劣後ローンに加え、公募増資もやり易い市場環境なので、業績面では厳しくてもつなぎ資金は豊富という状況です。そして中国デカップリングで指摘したように、途上国のワクチン供給が見通せない状況では、感染拡大に伴う変異種の侵入で先進国も感染再拡大を繰り返すとすると、移民に頼った労働力補充は難しい訳です。それ以前に国内雇用が戻らなければ移民受け入れの余地も狭まりますし。

長くなりましたが、整理すればグリーンニューディールによる成長は見込めない一方、成長余地のある中国は成長の結果としての温暖化ガス排出増が避けられないと見れば、グリーンニューディールに別の意味が見えてくるということですね。つまり中国に協力を呼び掛けながらコスト負担のプレッシャーをかけることが可能ってことです。但しそのためにはアメリカ自身が本気で温暖化ガス排出削減に取り組む必要がある訳ですが、この辺のは一時米中軍事演習を敢えて行い、実力差を見せつけた流れと同じ狙いがあると言えそうです。

ということを踏まえると、日米同盟強化は軍事面に留まらずこの面でも同盟国の協力を求めることになるということですね。中国をさし置いて日本が排出拡大する訳にはいかなくなるってことです。再エネで出遅れている日本にとっては厳しい話になるでしょう。生産年齢人口減少が急な日本では、マイナス成長も覚悟する必要があると見込まれます。鉄道関連で言えば北陸新幹線や北海道新幹線の工事遅れに見られるように、作業員が集まらない現実があります。その北韓同新幹線関連でJR貨物が危機感を持っています。

JR貨物社長の期待と懸念、「第2青函」具体化後押し:日本経済新聞
第2青函トンネル問題は脇へ置きます。実現可能性も含めて現時点で論じるに値しないからですが、それより以前に北海道内の貨物ルートの分断の可能性に危機感を表したインタビューです。背景には七飯町と長万部町が鉄道に拘らない姿勢を示し、長万部以南の函館本線が廃止の可能性が出てきたことによります。愛なき成長戦略でも触れましたが、仮に廃止となれば青函トンネル経由で運行する貨物列車が存続の危機に直面します。船やトラックによる代替輸送となれば積み替えによるコスト増もあり、消費者に負担をかけることになりかねないということですね。仮に貨物列車を廃止するするとなると、貨物調整金で存続しているIGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道、道南いさり火鉄道が一蓮托生で危機に瀕することになります。ネット通販の普及で北海道向け貨物も好調で、北海道発の農産品輸送と相まって双方向の需要が旺盛なだけに、JR貨物としても捨て置けない問題ですが、逆に言えばそんな重大問題を七飯町や長万部町レベルの自治体の判断に委ねるというのが異常でもあります。はっきり言って国の出番です。鉄道貨物に関してはアメリカではこんなニュースがあります。
カナダ貨物大手、米社買収 3兆円 メキシコまで鉄道網:日本経済新聞
大陸国のアメリカでは貨物鉄道は有力な投資先と見られており、環境負荷が低いということでグリーンニューディール銘柄でもあります。3か国の新たな貿易協定(USMCA)発効やサプライチェーン見直しも追い風で、買収額290億ドル、日本円で3兆円余りを民間資金で賄えているのですが、日本の鉄道貨物の置かれた状況とは大きく異なります。とはいえリニアに財投資金3兆円出せるなら、貨物ルート維持に資金提供は問題なく可能な筈ですね。貨物は選挙の票にならないから放置されるでしょうけど-_-;。

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Saturday, March 20, 2021

みずほLINEにゆうせい楽天的なドコモかしこ

そういえばLINE銀行なんて話もありました。

LINE新銀行、開業を最大2年延期 120億円追加出資:日本経済新聞

開業延期は主にセキュリティに関するみずほFGとLINEの認識の違いから作業が遅れていて、当初の想定よりも開発費が上振れしていることのようですが、みずほFG傘下のみずほ銀行に続いてLINEもやらかしちゃいました。そもそも会員の個人情報の管理がIT企業なのに甘いってのはいただけませんが、みずほに言われちゃおしまいだよな。一方こんなニュースも。
楽天、郵政と資本提携 2400億円調達 テンセントも出資、携帯・EC協業拡大:日本経済新聞
何故か株式市場では好感されたニュースなんですが、これ安直に参入したものの基地局投資が追い付かず投資拡大が避けられない楽天が日本郵政の出資で資金調達しようって話ですね。年寄り騙して不必要な保険契約させた全国の郵便局員にスマホ売らせようって話ですね。ずうぇったい契約したくない-_-;。テンセントは一応楽天の提携関係があるからということですが、政府出資の特殊会社と中国企業の呉越同舟もシュールです^_^:。

管政権の目玉政策である通信料金値下げですが、このエントリーで取り上げたNTTのドコモ完全子会社化と共に、値下げの先鋒役が国の資本ってわかりやすいところで、結果的にauとソフトバンクもそれに合わせた値下げを発表してとりあえず手打ちってところも日本的ですが、その結果競争政策で誕生したMVNO事業者による格安スマホ勢は居場所を失います。これJPEXの機能不全で混乱した電力小売りと同じ構図ですね。

よく見ると通信も光ケーブルの基幹通信網はNTT東西が保有していて各通信事業者が利用する構図で、送電網を大手電力の別会社が保有する電力業界とよく似ています。ある意味通信事業者はNTT東西の通信網に対して使用料を支払っている訳で、競争市場での利益相反を防ぐ為に,NTTのグループ協業は規制されている訳ですが、そんな中でのNTTによるドコモ子会社化で国は拒否権を行使せずに認めた訳です。加えてNECへの出資も決めた訳で、かつての電電ファミリーの再構築を疑われる動きです。NECは傘下のビッグローブモバイルをドコモのサブブランドと見れば、民間2社に準じた体制を得たと言えます。総務省のNTT接待疑惑が真っ黒な状況証拠は揃っています。一方東北新社関連ではこのニュースに注目しました。

総務省、東北新社からの報告「記憶にない」 外資規制違反 衆院予算委、食い違い変わらず:日本経済新聞
東北新社側は不祥事として社内記録に残っていたものを述べただけですが、官僚は記憶を失っています。面談記録は残っている訳ですから、規制官庁として業界関係者との面談で内容を文書で残していないとすればそれ自体問題ですが、出せない理由がある訳ですね。モリカケと同じです。こんな子供だましで誤魔化せると見ているとすれば、国民はなめられたものです。そこを指摘しない新聞報道もおかしいですが。

まるで中国を思わせる国有企業頼みですが、その中国でアリババのEC取扱高が首位陥落しています。アマゾンが攻略し損ねたのはアリババのせいとまで言われたのが、政府に睨まれて規制でがんじがらめにされて没落とは気の毒ですが、同じことが日本で起きても不思議ではないことは指摘しておきます。通信を巡るNTTと郵政の動きもそうですが、コロナ禍で逆境にある民間企業の大手航空2社統合が与党でささやかれているように、ことあるごとに市場介入しようという動きdが出てきます。しかも「国際競争に勝てない」という理由付けがされます。通信やITでも日本のGAFA狙いをてらいなく騙るから始末が悪いです。

ということで上記の日本企業のポンコツぶりを再度見てみましょう。みずほとLINEが組んでフィンテック?冗談でしょ。郵便局員にスマホ販売のノルマ課すのか?やめてくれ。NTT統合で市場競争を抑制してどーすんの?それで世界で戦える訳ないじゃん.株式全数放出で完全民営化したJR3社は例外中の例外で、民営化と言えどもNTTとJTは国の出資が続きます。JTは専売制維持の観点から国の関与をあえて残すという意味がありますが、NTTはあえて言えば基幹通信網を保有する東西2社以外は完全民営化しない理由が見えません。JR東日本と西武HDの包括提携も完全民営化だからこその話です。

一方風邪ひかない人たちで危惧を述べたJR各社の株式持ち合いですが、コロナ禍でも協業の機運は見られず国鉄一家復活はなさそうです。というよりは各社間で温度差が大きくて手を合わせて乗り切ろうという機運は見られません。財務状況の違いがありすぎることが背景のようです。東海道新幹線依存の強いJR東海は10-12月期に黒字を計上しているように、財務の強さが際立っている一方、多数のローカル線を抱えるJR西日本や無理めの上場で財務の弱さを抱えたJR九州には余裕が乏しく苦しい訳です。

加えて災害復旧や飛べないジョナサンの長崎新幹線の開業は現状重荷以外の何物でもありません。なまじ上場したがために国に泣きつくこともできませんし、コロナ禍で当面インバウンドも当てにできません。一方駅の無人化やみどりの窓口の縮小などで自治体との関係も微妙になっており、結構四面楚歌状態ですね。ビートル用の新造高速船も今は博多港に停泊中でこれも痛いところです。コロナが収まって韓国との往来が活発化する展望は開けません。今や韓国の1人当たりGDPは日本を上回っており、韓国の助けが必要になってしまいました。これもアベノミクスのお陰です-_-;。

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Sunday, March 14, 2021

復興は不幸の始まり?

前エントリーでは福島に偏ったい記述となりましたが、ちょっと補足すると、再生エネ電力を使った野菜工場のプロジェクトも複数立ち上がったものの、殆ど実現しておりません。その理由は野菜工場は分類上工場となるので農地には作れないという規制が邪魔した結果です。住宅地域も不可ですから、作るとすれば工業用地乃至準じる地域か、山林を切り開くかしかない訳ですが、そうするとコスト面で引き合わない訳で、結局産業振興による被災地の自立的復興は規制に阻まれた訳です。

三陸地方に伸びる巨大防潮堤ですが、海が見えなくなるという指摘は当時からあったものの、事業は進み海が煮えないことへの不満が住民からも上がっております。この辺10年前のエントリーでも指摘してますが、悪い予想ほど当たるもんです。加えて言えばこれで将来の巨大津波が防げるかというと疑問があります。

世界が脱炭素に舵を切る中、それだけ気候変動問題が深刻な訳ですが、忘れちゃいけないのが温暖化による海水面の上昇です。極地氷や陸生氷河の融解により嵩が増すことと共に、案外見落とされているのが海水温の上昇による熱膨張の影響です。今後温暖化が加速すれば、現在十分な高さであっても、将来は安泰ではない訳です。寧ろ海が見える状態で迅速な高台避難を心掛ける方が望ましいと言えます。また巨大コンクリート建造物は作る過程で大量の二酸化炭素を排出しますし。この観点から鉄とセメントの塊となる原子力発電所の新設は温暖化対策としては不適当な訳ですが。

集落の高台移転も法令変えずに区画整理事業として行った結果、地権者は減歩を強いられる一方、造成に時間も費用もかかりますから、道路やライフラインまで整った時には、避難先で職を得て戻るに戻れない状況となりました。加えてコンパクトシティということで中心市街地に商業集積を狙ったところ、逆に居住地から遠くなって使いにくくなり、人気のない中心街になったりしています。これは元々人口減少が始まっていたにも拘らず,人口増加を見込んだ復興計画を立てた結果こうなってしまった訳です。現地には売地、貸地の立看板が乱立する状況になっております。

加えてこんな問題も起きております。

被災地で弱る「住民の足」 バス事業、自治体の重荷に 国の補助金終了、14市で負担増す:日本経済新聞
高台移転はしたものの、住民の足となるバスが整備されたところはありますが、復興支援事業としての補助金が打ち切られることで、路線の存続に暗雲が漂っていたり、造成を急いだ結果移転先の高地にバスが走れる広い道路は無く、住民は30分歩いて低地のバス停を利用するとか、いろいろあります。

加えて地域の人口減少でバス事業そのものも苦戦しており、またドライバー不足から賃金を上げて経営を圧迫したり、そこへコロナ禍で外出自粛が重なります。感染を恐れてバス利用からマイカーへシフトした人も少なからずいますが、歳とって運転ができなくなればバスに頼らざるを得ない訳で、そうなると住み続けられずに地域を離れ都市部へ移転する人が出てくれば、ますます人口減に拍車がかかる訳です。加えて人口減は自治体の体力を奪いますから、国の補助金の肩代わりも困難となれば、地域の衰退を止める手立てがない訳です。

そんな中での三陸鉄道の奮闘は称賛に値します。JR山脱線引受区間を除く旧北リアス線南リアス線区間は、鉄道公団施工の高規格だったことから、元々道路事情が良くなかった三陸地域での高速輸送機関として機能したことが幸いしたのですが、BRT化された気仙沼線と大船渡線気仙沼―盛間が失われたことで、大都市の仙台へのアクセスを失ったのは残念です。

これは復興加速の観点から三陸縦貫道の整備が行われたことと関わりますが、特に大船渡線区間の線形の悪さもあり、ローカル線規格で貨物輸送も困難ということもあり、復興工事や物流の観点から三陸道の整備は避けられなかった事情は分かります。しかしレールが繋がっていればまた違った結果になった可能性はありますが、当時の宮城県は鉄道で残す意思を示しませんでした。このあたりは同じ被災地でも岩手県との温度差はあります。

BRTの呼称に関してはイチャモン付けてる専門家がいるようですが、それでも一般道路より高規格で渋滞の心配がないという意味での相対的高速度(RAPID)はある訳で、路面電車に対する高速電車のような用例もありますから、そんな原理主義的な議論は不毛です。加えて九州の日田彦山線の復旧など他の災害復旧への波及を考えれば、それなりに意義を認めても良いと思います。アイデア自体は戦時中の不要不急路線として廃止された白棚線に遡りますが、災害f復旧のメニューに追加されたことは意味があります。

あとつけ加えれば、震災復旧で全国の自治体が支援人員を出した結果、災害復旧の問題点や急所を学び、熊本地震や西日本豪雨などで活かされたという意味では悪いことばかりじゃなかったと言えるのは救いですね。

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Sunday, March 07, 2021

帰らざる人

みずほ銀行のシステム障害って毎度感ありますが、その深層には深い闇があるようです。

みずほATM障害、危うい月末処理 必然の「パンク」:日本経済新聞
うるう年ではない2月末の日曜日という特異日にシステム弄ることに対しては他行からも疑問の声が漏れてきます。通常の月末処理では4年に一度の2月29日の分が月末処理から漏れてしまうので、2月28日ははうるう年かどうかを問い、Noならば29日分を拾って併せて月末処理をするという処理をする訳で、その分データ処理量が多くなる特異日なんですね。

しかも今回のシステム改修はデジタル口座化と称してますが、ぶっちゃけ通帳発行の有料化を目論んだものですが、先送り必至となりました。疑問なのは作業指示を出した側の認識不足はあったとしても、指示を受けた側から異論が出なかったのか?ってことですね。同様の認識不足だったとすればそれ自体問題ですが、もう1つわかってたけど言い出せなかったというケースもあり得ます。どちらなのかは外からはわかりませんが、忖度した結果とすればより深刻な事態ではあります。

てことで官僚の忖度だけが問題じゃないということですが、総務省を巡って中年ロン毛ドラ息子接待疑惑以上の問題が発覚しました。

総務審議官、NTTと会食認める「3回あった」:日本経済新聞
通信の巨人たるNTTからの供応となると東北新社どころじゃない問題ですね。ハイブリッド・シビル・ウォーで取り上げたNTTによるドコモ統合という出来事があった訳で、国が議決権の34%を保有し競争政策の観点から敢えてグループ協業を規制されていたNTTの意思決定を国がすんなり認めたように、NTT側には供応の動機があった訳です。政権が目玉とする通信料金値下げ政策とも絡み、結局利権でしか動かない政府の意思決定に疑義が生じる訳です。

前エントリーで取り上げた吉川元農水相とアキタフーズ元代表との会食に同席した農水官僚の問題も、背景には経済動物に対するアニマルウェルネス問題があり、日本の養鶏場の密集飼育がやり玉に挙げられている問題で、現状維持を求める鶏卵業界の代表としてアキタフーズ元代表が動いていた訳です。所謂レントシーキングですが、レントシーキングでしか政治的な意思決定ができないのかという病巣が見えてきます。

そんな文脈で迎える震災後10年の現実を見たとき、ため息を禁じ得ません。復興が進みきれいに造成された被災地に人がいない現実があります。被災地の多くが過疎地であることから、当時の民主党政権が打ち出した創造的復興の方針の下、新産業を興し人が戻ることに重点を置いた訳ですが、現実はハードの復興は進んだのに人は戻っていない訳です。特に原発事故の影響をもろに受けた福島県の惨状です。

当時の菅政権が打ち出した再生可能エネルギー政策で、福島県ではメガソーラーへの期待が高まり、相馬市にはテスラCEOイーロン・マスク氏からソーラーシステムを寄贈されたのに、公共施設への限定的な給電に留まっています。農地としての復興が難しい汚染地域をメガソーラーでよみがえらせる構想や風力発電の民間プロジェクトが多数立ち上がったものの、結果的には電力会社による接続拒否によってことごとく頓挫してしまいました。

連合の有力単産の電力労連の圧力を民主党政権は突破できなかった訳ですが、政権交代後の自公政権でも電力会社の既得権益に配慮した電力自由化で徹底的に骨抜きにされました。発送電分離と言いながら形式的な分社化しか求めない法的分離に留まり、また菅政権による差し止めで浜岡原発が止まった中部電力と東電の発電部門を統合してJERAとして切り出したのも、原発事故の当事者である東電の救済策の色彩が濃いものです。原発停止で火力発電依存が強まり、LNG火力への依存を強める中で、規模を拡大してバイイングパワーを発揮するという目論見でしたが、この冬の寒波で需給逼迫の原因になりました。

ちなみに米テキサス州の停電は、寒波による需給逼迫は同じですが、評議会のよる需要予測が低かったことと、寒波による天然ガスパイプラインの凍結や発電所のトラブルが重なったもので、加えてテキサス州は全米に拡がる州間連携線に繋がらないスタンドアローンだったことで、復旧が遅れました。同州は電力自由化の先進地を任じておりましたが、その結果300を超える小売事業者がひしめき合い、価格競争が劇最多結果、電力料金でカバーしきれない発電設備や送電設備の更新投資が滞り、加えて予備電力確保のための容量市場がなかったことから、評議会の需要予測ギリギリの発電量しか供給されないという問題もあります。規制緩和に名を借りた完全な人災です。

こうした経緯から、現管政権の(ややこしいな^_^:)カーボンニュートラル政策は鼻白むものがあります。再生可能エネルギーの普及に弾みを付けられた可能性のある震災復興計画を既得権擁護で潰していながら、どの口で言うのかって話ですね。福島の再生可能エネルギーに関しては、福島第一第二の廃炉で首都圏向けの送電線が空いている訳ですから、東電に開放させればすぐにでも可能な事なんですねどね。

勿論震災当時の菅政権(ややこしー^_^:)が打ち出した再生可能エネルギー買取制度(FIT)で当初高額な買取価格としたことから、申請して得た認可を権利として転売する事業者が後を絶たず、結果的にメガソーラー発電所が作られずに放置されたケースも多数あります。加えて高額買取は国内のソーラーパネルメーカーの企業努力のインセンティブを奪う一方、寧ろ中国や欧州のメーカーの台頭を許す結果となった訳で、再生可能エネルギー後進国として置いてけぼりになってしまいました。この辺は官民共に認識の甘さがあります。

最後に取り上げたいのがこのニュース。

電車、再生エネで運行 JR東、30年度に使用電力の2割に:日本経済新聞
首都圏の輸送時用に対応するために国鉄時代に直営発電所を持っていた訳ですが、それを継承したJR東日本が再生可能エネルギーに切り替えるということですが、直営6割買電4割ですから、直営の1/3相当ってことですね。目標としてはちょっとぬるいんじゃないかと思います。勿論コストとの見合いなんでしょうけど、せっかく発電所を持っているんだから、余剰電力の外販まで視野に入れてコスト回収まで考えることが出来なかったのかが疑問です。

これは同時にコロナ禍で明らかになった運輸事業収入依存の経営の危うさから収益源の多様化を図る意味があります。加えて巨大電気鉄道でもあるJR東日本には、中小私鉄のマイクログリッド事業と桁違いのビジネスチャンスがあると考えられます。JR東日本とJR東海限定ですが、直流電化区間が東日本の50hzエリアと西日本の60hzエリアに跨っている訳ですが、この周波数の異なるエリア間の連携線の容量不足は以前から指摘されていたところです。

しかし技術革新で直流高圧送電が可能になり、津軽海峡の海底ケーブル連携線で使われたりしている訳ですが、電気鉄道の直流き電線を高圧直流化してDC-DCコンバータ―で降圧して架線給電するシステムにすれば、変電所の集約が出来てコストダウンなる上電力託送の事業化で収益を得られる訳です。特にリニア関連で超電導技術に強いJR東海ですが、超電導送電線で技術が活用できるチャンスでもあります。国鉄OBの経営陣では出てこない発想なのかな。

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