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Sunday, March 14, 2021

復興は不幸の始まり?

前エントリーでは福島に偏ったい記述となりましたが、ちょっと補足すると、再生エネ電力を使った野菜工場のプロジェクトも複数立ち上がったものの、殆ど実現しておりません。その理由は野菜工場は分類上工場となるので農地には作れないという規制が邪魔した結果です。住宅地域も不可ですから、作るとすれば工業用地乃至準じる地域か、山林を切り開くかしかない訳ですが、そうするとコスト面で引き合わない訳で、結局産業振興による被災地の自立的復興は規制に阻まれた訳です。

三陸地方に伸びる巨大防潮堤ですが、海が見えなくなるという指摘は当時からあったものの、事業は進み海が煮えないことへの不満が住民からも上がっております。この辺10年前のエントリーでも指摘してますが、悪い予想ほど当たるもんです。加えて言えばこれで将来の巨大津波が防げるかというと疑問があります。

世界が脱炭素に舵を切る中、それだけ気候変動問題が深刻な訳ですが、忘れちゃいけないのが温暖化による海水面の上昇です。極地氷や陸生氷河の融解により嵩が増すことと共に、案外見落とされているのが海水温の上昇による熱膨張の影響です。今後温暖化が加速すれば、現在十分な高さであっても、将来は安泰ではない訳です。寧ろ海が見える状態で迅速な高台避難を心掛ける方が望ましいと言えます。また巨大コンクリート建造物は作る過程で大量の二酸化炭素を排出しますし。この観点から鉄とセメントの塊となる原子力発電所の新設は温暖化対策としては不適当な訳ですが。

集落の高台移転も法令変えずに区画整理事業として行った結果、地権者は減歩を強いられる一方、造成に時間も費用もかかりますから、道路やライフラインまで整った時には、避難先で職を得て戻るに戻れない状況となりました。加えてコンパクトシティということで中心市街地に商業集積を狙ったところ、逆に居住地から遠くなって使いにくくなり、人気のない中心街になったりしています。これは元々人口減少が始まっていたにも拘らず,人口増加を見込んだ復興計画を立てた結果こうなってしまった訳です。現地には売地、貸地の立看板が乱立する状況になっております。

加えてこんな問題も起きております。

被災地で弱る「住民の足」 バス事業、自治体の重荷に 国の補助金終了、14市で負担増す:日本経済新聞
高台移転はしたものの、住民の足となるバスが整備されたところはありますが、復興支援事業としての補助金が打ち切られることで、路線の存続に暗雲が漂っていたり、造成を急いだ結果移転先の高地にバスが走れる広い道路は無く、住民は30分歩いて低地のバス停を利用するとか、いろいろあります。

加えて地域の人口減少でバス事業そのものも苦戦しており、またドライバー不足から賃金を上げて経営を圧迫したり、そこへコロナ禍で外出自粛が重なります。感染を恐れてバス利用からマイカーへシフトした人も少なからずいますが、歳とって運転ができなくなればバスに頼らざるを得ない訳で、そうなると住み続けられずに地域を離れ都市部へ移転する人が出てくれば、ますます人口減に拍車がかかる訳です。加えて人口減は自治体の体力を奪いますから、国の補助金の肩代わりも困難となれば、地域の衰退を止める手立てがない訳です。

そんな中での三陸鉄道の奮闘は称賛に値します。JR山脱線引受区間を除く旧北リアス線南リアス線区間は、鉄道公団施工の高規格だったことから、元々道路事情が良くなかった三陸地域での高速輸送機関として機能したことが幸いしたのですが、BRT化された気仙沼線と大船渡線気仙沼―盛間が失われたことで、大都市の仙台へのアクセスを失ったのは残念です。

これは復興加速の観点から三陸縦貫道の整備が行われたことと関わりますが、特に大船渡線区間の線形の悪さもあり、ローカル線規格で貨物輸送も困難ということもあり、復興工事や物流の観点から三陸道の整備は避けられなかった事情は分かります。しかしレールが繋がっていればまた違った結果になった可能性はありますが、当時の宮城県は鉄道で残す意思を示しませんでした。このあたりは同じ被災地でも岩手県との温度差はあります。

BRTの呼称に関してはイチャモン付けてる専門家がいるようですが、それでも一般道路より高規格で渋滞の心配がないという意味での相対的高速度(RAPID)はある訳で、路面電車に対する高速電車のような用例もありますから、そんな原理主義的な議論は不毛です。加えて九州の日田彦山線の復旧など他の災害復旧への波及を考えれば、それなりに意義を認めても良いと思います。アイデア自体は戦時中の不要不急路線として廃止された白棚線に遡りますが、災害f復旧のメニューに追加されたことは意味があります。

あとつけ加えれば、震災復旧で全国の自治体が支援人員を出した結果、災害復旧の問題点や急所を学び、熊本地震や西日本豪雨などで活かされたという意味では悪いことばかりじゃなかったと言えるのは救いですね。

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