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Sunday, April 18, 2021

台湾海峡は波高しか?

本題に入る前にJR来宮駅での電動車いすを巡るネット炎上問題を取り上げます。事実関係の詳細を把握していないので、あくまでも一般論ですが、車いす生活者に限らず障碍者は健常者に対して少数であることがあまり意識されていない感じですね。多数派である健常者が自らの意思で自由に移動ができる一方、介助者を必要とする障碍者の移動はそれだけ制約が多い訳ですが、バリアフリーが叫ばれ、障碍者でも可能な限りの移動の自由を実現することは重要です。

しかし現実は健常者目線での対策ばかりで、当事者である障碍者にとっては使い勝手が悪いケースは散見されます。それに対して注文を付けることは当然ある訳で、それを受け止める社会の側が注文を拒否することは、意識するとしないとに拘わらず差別に当たるってことは指摘しておきます。

大事なのはあくまでも個人の自由意志の実現なんで、勿論実現のハードルが高い現実はありますが、それを話し合って社会的合意を導き出す必要はあります。参議院に重度障碍者2人を送り込んだれいわ新鮮組のお陰で国会議事堂の改装が実現したように、声を挙げなければ無視される現実があることに対しては意識を持つべきです。れいわの主張には同意できないことが多いですが、この点だけは認めます。

で、本題ですが、既に中国デカップリングのエントリーでも指摘しましたが、日米の首脳が詰めで話し合った結果、52年ぶりに日米共同声明で台湾が言及されたことは、予想されたこととはいえ大きな出来事です。

日米声明「台湾海峡」明記 初の会談、中国の威圧に反対:日本経済新聞
アメリカは日本に対して軍事的にどこまで出来るかを確認した筈です。北朝鮮核開発に対して軍事行動を考え日本に協力を求めたクリントン大統領に当時の細川首相が当時の憲法解釈に則って「出来ません」と答えたけど、政府はそれを伏せてい日米通商協議の問題にすり替えて半導体協議の決裂を発表して取り繕いました。コロナ禍の中でわざわざの膝詰め会談ですから、当然今回も同様の話が出た筈ですが,管首相はどう答えたかは今後の推移から類推するしかありません。

アメリカは元々日本の安倍政権が提案したインド太平洋クワッドとして日米豪印4か国の連携を進め、おそらく北大西洋条約機構(NATO)のような集団安保体制の構築を狙っていると思われますが、これは安倍政権が解釈変更した集団的自衛権の行使より踏み込んだ話になりますし、国内世論の拒否感が強いので、即答できる問題ではないと思いますが、いずれ何らかのアクションが出てくるでしょう。

ただ心配なのは中国の国内世論の行方でして、香港やウイグルの問題を含めて習近平政権は中国の国内世論の支持を得ているという頭の痛い問題があります。この点は国民に銃口を向けるミャンマー国軍とは大違いってことです。これ喩えれば戦前の軍部の暴走を招いた日本の高揚したナショナリズムによる世論の沸騰に近い訳で、ABCDラインによる経済制裁の締め付けに寧ろ国民は怒り、主戦論を唱える皇道派が慎重な国際派を抑えて勢いを得た結果を招いた訳です。

注意が必要なのは中国が核保有国であり、しかも旧ソビエト時代からの核軍縮交渉が継続するロシアとは違って核軍縮の交渉の枠組みも存在しない中で、米中の軍事的対峙は核戦争の脅威を増すことにあります。そうなれば人類滅亡の扉を開くことになりますから、それだけは回避する必要があります。中国政府は日本の軍部よりは理性的でしょうから、いきなりそうなるという訳ではありませんが、国内世論の動向次第ではどうなるかわかりません。その意味で一方的な締め付けには慎重になる必要があります。

更にアメリカは台湾の国家承認による1つの中国政策からの離脱まで考えている可能性があります。その場合日本や欧州は共同行動を求められますが、当然中国は断交で対抗することになり、現実的に可能かといえば微妙です。特に欧州の足並みが揃わない可能性があります。中国は経済的に困窮する中東欧やギリシャなどへ接近しており、アメリカの意に反して共同行動をとらない可能性があります。

ただし実現可能ならば中国が主張する第一列島線以西の領有権は根拠を失う訳で、中国の海洋進出を抑制することが可能になります。戦前日本の国際連盟委任統治領だった南シナ海の島嶼群は、日本政府が台湾に属する行政区分としていたものが、サンフランシスコ講和条約と同時に発効した日華平和条約で台湾の領有権を放棄した一方、中国の国連加盟で中華民国が地位を失い、南シナ海が空白地帯になったことで、ベトナムやフィリピンなどの沿岸国が一部の島を占拠して既成事実づくりに動いた後で、日本統治時代の行政区分を盾に中国が海洋進出の足掛かりにしようとしたことで拗れた訳で、元を質せば戦後処理のバグのようなものです。

仮にそこまで考えたアメリカの戦略があるとしても、経済的に深く繋がった現在のサプライチェーンを前提にする限り、米中の軍事賞衝突は経済を大混乱させるだけになりかねません。故に経済的なデカップリングをアメリカは日本を含む同盟国に求めるでしょう。加えて自国の基幹産業の立て直しをその中で図ることになりますから、軍事面に限らずコスト負担を求めてくるでしょう。どこまで付き合うかは難しい判断になります。アフガン撤退は戦力の集中の為とすればアメリカの本気を伺わせますが。

実際はもっと手前でコロナ禍への対応で中国に後れを取っている現実がある訳ですが、ワクチン接種が進むアメリカに対しても後れを取る日本政府の無能ぶりは際立ちます。前エントリーで指摘したように自粛による人々の行動変容以外に対策を打たないでコロナを克服できる訳ないんで。実際まん延防止等重点措置がまん延しつつあります^_^;。今年も自粛で我慢のGW確実ですね。これがどれだけ経済を痛めているか。コロナか経済かという二択じゃないんです。

ワクチン接種も医療従事者への接種が終わらないうちに一般高齢者への接種が始まりましたが、これつまりワクチン接種を受けていない医師による一般人へのワクチン接種というクラスター発生原因になりかねない愚策で、限られたワクチンをどう配分するかの戦略不在です。こういった広義のロジスティックスがデタラメじゃ、中国との軍事的対峙なんて現実的に無理です。そしてこんなデタラメも。

多重委託、無責任の連鎖 COCOA不具合の重い教訓:日本経済新聞
デタラメトランスフォーメーションの深い闇が可視化されました。これ発注者の厚生労働省の問題であると同時に受注側の問題も浮き彫りにしました。巷間IT土方とも謂われる土建業界も真っ青な多重下請け体制で公金がピンハネされ責任は曖昧ということですね。コスト意識が希薄で言い値で受注できるからこういうことが起きる訳で、構図は公共事業と同じです。

減耗する固定資本エントリーで指摘したように、公共事業不要論ではなく、公共投資を積み重ねて見かけ上のGDPをかさ上げしても、資本の維持費である固定資本減耗の増加で財政が圧迫され経済厚生を低下させることが問題なんです。まして生産年齢人口の減少で現役世代の負担が高まる訳ですから、公共インフラを増やし過ぎないことは大事です。加えて生産年齢人口減少は労働力減少を意味しますから、事業の遅れによる負担増も見る必要があります。ただでさえ乗数効果の見込めないコスパの悪い事業を無理に進めることは経済の足を引っ張ります。

その意味で整備新幹線やリニアにも慎重であるべきで、実際北陸新幹線の工事の遅れや静岡県との対立と関係のないリニアの工事遅れもあります。あと宇都宮ライトレールも用地買収と工事の遅れから開業が1年延期で23年3月となり、事業費も1.5倍に膨らんでます。北海道新幹線も工事が足踏みしており、開業延期もありそうです。それでも公共事業を求める声が大きいのは、それで潤っているノイジーマイノリティがいるからということですね。

こうした土建国家体質が実はDXをも阻害している訳です。DX関連ではマイナンバーカードの普及が進まないのは、こうしたいい加減な政府の姿勢が国民に見透かされているからです。しかもマイクロソフトのインターネットエクスプローラーのプラグイン機能を利用して様々な紐付けを試みている訳ですが、IEのプラグイン機能の脆弱性が明らかにされてマイクロソフトがエッジという新ブラウザに切り替えを推奨しているのに、古いテクノロジーで開発されたマイナンバーカードの安全性に疑問符が付くことには無頓着では、なるほど国民の信頼は得られない訳です。一事が万事の日本政府はどこへ向かうのでしょうか?

あと中国武漢のハードなロックダウンはハイテクを駆使して強制的に個人の行動変容を求めた結果の封じ込めであったことも忘れてはいけません。冒頭の個人のセルフコントロールによる自由意志の実現が大事なんで、行政の効率化のためのマイナンバーカードでは見向きもされないということを理解すべきです。

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