君は君 我は我なり されど仲悪ゥ
G7を巡る日本のメディアの報道が台湾海峡問題と東京五輪に偏ってますが、前者は数あるアジェンダの1つで One of Them に過ぎませんし、後者はアジェンダですらないという偏った報道姿勢に疑問を禁じ得ません。バイデン大統領は「アメリカは戻ってきた」と同盟重視を演出しましたが、その割にはトランプ政権で出された鉄鋼アルミの制裁関税は解除されてませんし、ホスト国の英国に対してアイリッシュ移民でカトリックのバイデン大統領は Brexit に伴う北アイルランドの混乱に釘を刺しています。
思えば中国に留まらずトランプ政権で乱発された経済制裁は殆どそのままで、例えばイラン核合意復帰を示唆しながら経済制裁はそのままですし、イスラエルのガザ空爆でもイスラエル寄りの姿勢を示すなど、外交ではトランプ時代を踏襲している部分が多いのが実態です。アフガンの米軍撤退もトランプ政権の方針を踏襲したに過ぎません。違いが出たのはロシアのプーチン大統領との首脳会談でSTART改定に道筋をつけた点ですが、ウクライナ問題を巡る経済制裁解除は別の話として切り離してます。
実際台湾海峡有事がすぐにでも起きるような論調も見られますが、冷静に見れば台湾海峡で紛争が起きて最も影響を受けるのは中国であってアメリカじゃない訳で、紛争が生じるとして中国が仕掛ける可能性はほぼ皆無です。アメリカもバイデン政権中は可能性が低いですが、4年後にトランプが復活しないまでも、ペンスやポンペオといった対中強硬派が政権復帰した時に、ニセ情報をネタに先制攻撃で日本に作戦参加を求めたときに日本政府が断れるかどうかは結構ヤバい話です。
経済面で寧ろ重要なのが法人税問題の方でして、当初21%を主張していた最低税率を15%で妥協して同意を取り付けたり、GAFAなどのデジタルプラットフォーマーを巡る課税強化策で、超過利潤10%超の部分について居住国課税や源泉国課税でこぼれてしまう市場国課税を認めた点が大きな成果です。これ欧州が発案して先行導入に動いたことからトランプ政権が猛反対していた問題で、ここでも歩み寄っている訳です。制裁関税解除は国内のラストベルト問題で譲れないけど、大規模インフラ投資で所得税と法人税の増税を狙うバイデン政権にとってもプラスという訳ですね。
てことで武者小路実篤の標語を借りたタイトルですが、仲良きことエントリーの続編です。
調布の道路陥没、原因は土砂の取り込みすぎ 有識者委:日本経済新聞有識者会議の結論は「東久留米層と呼ばれる砂層に礫の混じった特殊地層でシールドンマシが土砂を取り込みすぎて空洞ができたもので作業ミス」としていますが、現地では事故後に事故調査のためにボーリング調査を実施しているとしております。これ施工前に調査してなかったってことで、作業ミスという評価は明らかにおかしいですね。
都市部の大深度地下トンネルでは安全確保のために丁寧な事前調査を求められている訳ですが、それがザルだったってことですね。そして本体工事で掘ってみて問題が起きたから調査のために後付けでボーリング調査を実施した訳で、事業主体の東日本高速道路に重大な責任がありますが、有識者会議では作業レベルでのミスに矮小化している訳です。また砂層に礫の混じった地層はありふれているというのは専門家も指摘しており、事前調査がきちんと行われていれば回避できた可能性がある訳です。
事業主体の責任を強く問うと、外環道の共同事業主体である中日本高速道路やリニア工事で都市部の大深度地下トンネルを作るJR東海や事業許可を出した国土交通省まで飛び火するってことなんでしょうね。こうした土木屋のいい加減さはリニア静岡工区の静岡県との対立のそもそもの原因であることはコロナでクエンチするリニアでも指摘した通りです。静岡県知事選で実際にリニア問題を前面に出して選挙戦を戦った川勝知事は30万票の大差をつけて圧勝しました。
静岡知事選、川勝氏が4選 岩井氏との一騎打ち制す:日本経済新聞これで静岡工区の着工は困難になりましたが、これを国家プロジェクトを邪魔する静岡県という構図で捉えるのはおかしいです。あくまでも私企業による営利事業です。全国新幹線網整備法に基づく国の関与はありますし、超電導リニアの技術評価でもお墨付きを出しておりますが、これもサイドバーの川辺謙一氏の著書で疑問が呈されています。元々中央新幹線自体が全幹法の基本計画線の中でも優先度の低い事業であり、それ故に優先度を重視する整備新幹線への格上げが見込めず、鉛筆なめなめ新幹線買い取りローン終了に伴うキャッシュフローを使って自前で作ると言い出した訳ですから、国家プロジェクトでも何でもありません。3兆円の財投資金もあくまでも融資ですし。
実は日本政府で国家プロジェクトと呼ぶに値するような財政支援を伴う事業は見られません。台湾TMSCの日本企業との合弁の研究拠点を茨城県ひたちなか市に誘致が決まりましたが、実は生産拠点を誘致するには投資額が膨らんで合弁に参加する日本企業をしり込みさせるから生産拠点を諦めて研究拠点という妥協なんですね。日本企業の消極姿勢の裏には、日本で最先端の微細加工半導体を作っても、国内に需要が無いから事業として成り立たないってことなんです。
これ結局DRAM特化のエルピーダメモリ―の破綻や埋め込みプロセッサーのルネサスの業績低迷に見られるように、国内に最先端半導体を必要とする産業が衰退してしまったってことなんです。80年代に世界の50%のシェアを握り、アメリカから圧力がかかった栄光の日の丸半導体は産業としての実態を失って久しい訳です。「失われた30年」という言い方は好きではありませんが、昔の成功体験をリセットしないとホントヤバいよってことですね。人口減少とコロナで変わるビジネスでも東名阪を結ぶリニアならうまくいくってのも東海道新幹線の成功体験の亡霊じゃないかと。この辺を直視できずに突き進むのは愚かとしか言いようがありません。
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