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July 2021

Saturday, July 31, 2021

コロナリベンジの暑い夏

コロナ終わりそうにないなと予想した通りというか、それ以上の悲惨な状況で Go To リベンジどころかデルタ株で逆にリベンジされている暑い夏です。

デルタ型の感染力、変異前の3倍超に 米CDCが分析:日本経済新聞
米CDCの分析でデルタ株の感染力は在来種の3倍で水痘(水疱瘡)と同等で、しかも毒性も増しているし、ワクチン接種後も感染することなどが報告されました。ワクチン接種者の感染はショックですが、発症や重症化を防ぐ効果はあるものの、ワクチン接種者の感染は更に感染を広めることで、無症状でも感染拡大につながるということで、ワクチン接種者のマスク着用を呼び掛けるというもの。実際マサチューセッツ州のクラスター感染では74%がワクチン接種者と報じられています。

これが意味するところは、ワクチン接種による集団免疫作戦が出口にはならないということです。接種が進む欧米に対して接種が遅れているアジア、アフリカ、中南米にワクチン接種者が渡航すれば感染拡大につながる訳で、ワクチンパスポートの有効性も失われ、寧ろ途上国のワクチン接種の遅れが続く限り、新たな変異種の出現も覚悟する必要があるという不都合な真実です。国民国家の集合体としてのグローバル経済のサスティナビリティに疑義が生じている訳です。

そんな中でコロぶナ東京トトで指摘したように五輪開催は強行され、予想通り東京都の爆発的感染拡大とタイミングが一致しました。政府や都は五輪開催で感染拡大は無いと否定してますが、選手やスタッフを含む関係者だけでも絞り込んだとはいえ大人数ですし、関係者輸送にあたるバスは全国から召集され、警備や道路規制を担当する警察官も全国から召集され更に大会ボランティアもと、巨大スポーツイベント故に無観客でも大勢の人は動きますし、プレスセンターが置かれた東京ビッグサイトでは世界中から報道陣が大挙押し寄せ分散した競技会場を行き来するに留まらず、期間中の街の様子などの周辺取材もする訳ですね。彼らは大会終了後感染拡大中の東京から国や地元に戻る訳で、以下お察し。

仮に彼ら全てがワクチン接種済みだったとしても、自らの感染も人への感染拡大も完全には防げないし、寧ろなまじ症状が出ないから感染拡大を助長することが考えられます。水痘レベルの感染力だと、人込みにいるだけでも危険ですし、会話や会食は更に危険ということで、2020東京大会が世界に感染を広げたとIOC、JOC、組織委、国、都の5者が批判を浴びることは避けられません。五輪の歴史に汚点を残すことになる訳です。

組織委内部では感染状況のよっては中断も有り得るという議論が出ているようですが、結局五輪は期日まで行われて、興行的に旨みの薄いパラリンピックだけが中止ということもあり得ます。政権にとっては一応国民の声を聴いたポーズにはなりますし。但しこれはパラスポーツへの差別的な対応という批判も生みますから、もうここまでくると何もかもが手遅れってことです。愚かしい。尤も手遅れなのはそれだけじゃなさそうですが。

ユーロ圏、年率8.3%成長 4~6月、接種進む欧米は回復基調 日本は0%台予測:日本経済新聞
ここへ来ての欧米の経済回復の目覚ましさは確かにありますが、見落とされているのは欧米ではハードなロックダウンで経済止めていて、それがワクチン接種の進捗を機に解除され元の水準に戻った点ですが、自粛要請で国民に不安と疑心暗鬼を生んだ日本では、製造業こそ復活してますが旅行や飲食など特定分野へのしわ寄せばかりで結局感染拡大を防げず、国民に疑心暗鬼を生んでいることが問題なんです。

てことでワクチン打ったからリベンジ旅行というのは危険です。相対的に医療リソースの貧弱な地方の医療崩壊に加担する可能性があります。鉄道や航空など運輸業の冬は当面続くと見るべきです。そんな中での8号豊住線や7号埼玉高速鉄道延伸などの事業を適切に見直さないまま進めることには、前エントリーに続いて指摘しておきます。もはや日本経済は復元力を失ったと見ておくのが妥当です。その意味でとりあえず工事が止まっているリニアは幸運なのかも。最後にこれ貼っときます。

JR西の今期、最大1165億円の最終赤字 鉄道・航空 業績回復に遅れ:日本経済新聞

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Saturday, July 24, 2021

デジタルもワクチンもグリーンもポンコツが止まらない

五輪開会式直前のドタバタ劇。

五輪組織委、止まらぬ迷走 開会式演出の小林氏解任::日本経済新聞
エンブレムの盗作問題に始まり、女性タレントの容姿哄笑、森組織委員長の女性蔑視発言、ミュージシャンのイジメ問題とトラブル続きで、しかも武藤事務局長は「問題ない」としたものの、ネットで炎上が止まらず本人が辞任した一方、辞任した森氏を名誉最高顧問として迎える検討をしたとか、組織委の人権意識を疑わせるばかりですが、開会式前日にそれらをすべて吹き飛ばす問題が発覚しました。

ミュージシャンのイジメ問題も過去のインタビュー記事が発掘されたものですが、タレントのインタビュー記事はプロモーションの要素もあり、公開前に原稿のチェック、特に所属事務所のチェックが入りますから、話を盛っている可能性はありますが、辞任のときに本人は否定していません。加えて国際問題を招き入れた総合プロヂューサーの人選も含めて、ちょっと調べればわかる過去の公開情報をチェックしていなかった組織委の体たらくぶりは酷いものです。ミュンヘン五輪のイスラエル選手団への黙とうは恐らく事態を収めるための妥協だったのでしょう。

更に未確認情報ですが、女性蔑視発言で辞任した森前委員長を名誉最高顧問として迎えようとして政府に止められたという話も漏れ聞こえます。ホント懲りてないというか、人権意識の低さを世界に拡散することに無頓着なんでしょうか。こういうところは中国をはじめアジアの他国が反面教師にしてくれれば良いですが、寧ろ逆のメッセージになりそうです。アジアの各国は日本の奇跡の成長を後追いしている訳ですが、かくも貧困な哲学しか持ち合わせていないことは、別の面でも問題になります。

欧州が主導する取捨選択、ルールが決する競争力 第4の革命・カーボンゼロ GXの衝撃(5):日本経済新聞
GXとはグリーン・トランスフォーメーションの略でデジタル・トランスフォーメーションをDXというのと同じ流儀ですが、主に欧州で使われています。アメリカではグリーン・ニューディールとかグリーン・リカバリーと言っていて、主にコロナ禍で停滞した経済の立て直しの狙いですが、欧州では脱炭素を軸とした産業の見直しというより根源的な取り組みを意味します。

この違いは主に国内に油田やガス田を抱え、エネルギー産業のウエートが高い一方、製造業が空洞化して衰退しているアメリカが、雇用創出の手段としての脱炭素を目指すのに対して、欧州は製造業のインフラがアメリカよりも残っている中で、その作り替えを通じて維持しようという取り組みと言えます。そしてそれは脱炭素を通じた欧州の産業構造の見直しに留まらず、その影響力を他の地域に波及させることを通じて世界をリードしようということでもあり、それを支えるの哲学的なバックボーンがしっかりしていることがあります。Brexit で関係が悪化した英国もこの点は欧州と同じ立場です。

その影響力は大きく、特に欧州委員会が決めた国境炭素税の導入で、石油、天然ガスの輸出に経済を依存するロシアが反応を示したように、地政学リスクの軽減にもなる訳です。対ロシアではバイデン政権で雪解けも見られますが、一方でアフガン撤退でタリバンの攻勢によりテロリストの越境を警戒せざるを得なくなったロシアと中国は已む無くアフガン政府支援に動くなどしており、ロシアとしては欧州との経済関係の維持が大きな外交課題になる訳です。エネルギーの中東依存の低下も脱炭素故に現実味がある訳で、GXは安全保障問題でもある訳です。

こういった世界の動きに対して日本は腰の定まらない対応が続いています。2030年度向けののエネルギー基本計画で再生エネ36-38%の構成比を打ち出しましたが、一方で原発も22%を維持しており、この部分については脱炭素目標の欺瞞で指摘したように、まともな議論がなされていないことが問題です。実は先発権と称して送電線の空き容量を稼働していない原発の容量枠を押さえている現実がある訳で、再生エネ拡大のためには送電線の容量拡大費用の負担を求められており、再生エネ普及のネックとなっています。再生エネを拡大したいなら送電線の原発枠の開放が必要ですが、エネルギー基本計画ではそれはしないということですね。

国境炭素税の問題は日本にも大きな影響が及びます。日本では民主党政権で導入された温暖化対策税はあるものの、CO2国際価格から見ればタダ同然の低い課税水準ですから、日本からの欧州向け輸出品には炭素税相当分の税が課される訳で、折角日欧EPAで関税撤廃が実現しても、事実上の関税上乗せになる訳です。回避策は同等の国内炭素税課税ということになります。当然財界は反対するでしょうけど、果たして政府は財界の反対を押して課税できるでしょうか。

短期的にはマイナスなんですが、長い目で見れば違った風景になります。火力発電の構成比の高い日本では、例えばEVを生産しても輸出できない可能性がある訳で、この点は中国なども当てはまりますが、CASE革命で電動化が避けられない中で、日本製EVが競争力を失うことを意味します。しかしこんな道もあります。

産業立地、脱炭素で再編 再生エネ不足なら空洞化 第4の革命・カーボンゼロ GXの衝撃(2):日本経済新聞
水力資源が豊富なスウェーデン北部で再生エネ電力でリサイクル材での電池生産を目論む新興電池メーカーのノースボルト社の取り組みですが、日本でも北海道石狩市で100%再生エネ電力の工業団地の造成が進んでいます。脱炭素が避けられないなら、当面コスト増でも長期的に競争力を高めることで持続可能性が高まる訳で、脱炭素シフトは実行段階と捉えている訳です。これぞGXです。

一方短期的にはエネルギー市場に混乱をもたらすこともまた事実ではあります。OPECプラスの減産で石油価格が高騰しても米シェールオイルの増産による調整が働かないことが典型ですが、日本にとって見過ごせないのがLNGスポット価格の高騰です。国際市場で最大の買い手だった日本は、長期契約で安定的に供給を受けておりましたが、脱石炭の流れで中国を含むアジア各国が買い手として台頭して厳冬の電力不安に繋がったのは記憶に新しいところですが、加えて石炭火力からのシフトで欧州が買い手として台頭していることで、今夏の電力不足が警戒されています。繰り返しになりますが、送電線の稼働していない原発枠の開放で再生エネの受け入れを増やせばクリアできる問題ですが「原発止めたから電気が足りない」と大嘘を叫ぶノイジーマイノリティが出てくるでしょう。

そして欧州ではもう一つ大きな動きとして鉄道による航空便のコードシェアが拡大しています。元々はドイツの Lufthansa Express に始まった歴史のある動きですが、その Lufthansa のコロナ禍による経営破綻で政府が支援条件として鉄道便活用を義務付けたことで拡大しております。加えてフランスでは2時間半以内の都市間の国内線運航を国際線乗継便を除いて禁止する法律が可決成立しており、オーストリアなど追随する国が出てきています。これ日本でもJRと航空2社のアライアンスの可能性を法的に裏付ける議論が欲しいところです。

てことで、デジタルもワクチンもダメな日本はグリーンでも後れを取る。追随するアジア諸国が反面教師にしてくれる可能性も低い。アジアの時代は遠のきます。

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Saturday, July 17, 2021

梅雨の後先

ひらがなだと永井荷風宇の「つゆのあとさき」ですが、敢えて漢字表記としました。梅雨明けの感染拡大の予想が現実化している現状を敢えて表現してみました。

大正時代から始まったカフェーは、今でいうコーヒーショップとは異なり、アルコール類も供し女給さんの饗応サービスを売りものにする飲食店で、イメージとしては戦後のキャバレーに近いものだったようです。女給さん目当てに通う旦那衆が羽振りよく楽しむ場ということで、逆に純粋にコーヒー紅茶を楽しむためにアルコール類を供しない純喫茶は、カフェーに対置した命名だった訳で、こちらは戦後も長く続きましたが、今や絶滅危惧種です。時代の変化は容赦ありません。

カフェーの女給君江が男たちに翻弄されながら健気に生きる姿を描いた永井荷風ですが、男たちは揃って見栄っ張りで優柔不断で約束は破るし平気で噓をつくというロクデナシぞろい。はて、何か似た風景があったなあ。男たちを政府や東京都に、君江を酒類を供する飲食店に置き換えるとまんまです。

政府、西村氏発言を撤回「金融機関が飲食店に働きかけ」 与野党で批判噴出、官房長官が表明:日本経済新聞
これ深刻なのは内閣官房の官僚の発案で各省庁に根回しして関係閣僚会議で了承を得ていたけど、与野党から北的法的根拠がないと指摘されて撤回したって流れで、政治家も官僚も法令順守の意識が乏しいってことですね。しかもこの時点では酒卸しへの主犯卸しの取引停止要請とグルメサイトによるユーザーの密告要請は生きていて、批判を浴びてこれらも撤回されました。これで法の支配を標榜する民主国家なのかい!
香港紙葬った銀行の深謀 「自由なき金融」に傾斜:日本経済新聞
民主派香港紙の蘋果日報(アップル・デイリー)廃刊の裏に銀行の過剰な忖度が働いたという記事なんですが、発行者の壱伝媒(ネクスト・デジタル)の金融取引を香港国家安全法に基づいて凍結した一方、創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏をはじめ資産を現金化して発行を続ける体制を取っていたものの、一部金融機関が当局指定以外の口座も凍結して資金繰りを事実上不可能にしたために廃刊に追い込まれたという事情があります。

金融機関名は定かではありませんが、当然中国の国立銀行である筈はなく、香港に拠点を置く西側の銀行であることは確実で、HSBCなどの名が取り沙汰されています。香港問題では香港の国際金融都市としての盤石な立場が、北京政府に対峙する強固な自治権の裏付けという見方は民主派を含めて香港市民に広く共有されてきましたが、その構図が変わり、米中デカップリングの現実の中で、寧ろ閉ざされた中国金融市場へのアクセス窓口としての機能に特化されたことで、金融機関の当局への忖度が働いたようです。

それに比べて圧力かけろと呼び掛けた日本政府の狙いも金融機関の忖度狙いは明らかで、民主化よりもみみっちい「酒売るな」だったりしますし、法の是非はあるものの一応香港当局は国安法という北京政府の制定した法律に則った行動ではありますから、ある意味日本政府は中国以下の対応だった訳です。国安法に民間の忖度を引き出す狙いはあるかもしれませんが。

香港関連ではアメリカはトランプ政権時代に香港制裁法を制定し、指定金融機関に制裁を発動できる権限を持っています。バイデン政権が発動する可能性は低いですが、重要なのはアメリカではこうした対外金融制裁のようなものまで議会で法律を作って対応するという点です。例えば韓国に対する化成品輸出のホワイト国指定解除など政府の一存で決めている日本とは大違いです。こうした日本の法令軽視の姿勢はあらゆるところに見られますが、こんなニュースを取り上げます。

東京メトロの延伸・新線、国と都が建設費支援へ:日本経済新聞
報道時点では国交省内部の検討段階でしたが、この内容を反映した運輸政策審議会の新答申で、東京メトロが建設を渋る8号豊住線と7号南北線品川延伸に対して、国と都が資金支援をすることと、議論が止まっている東京メトロの株式公開を絡めて、国と都が保有する東京メトロ株の保有比率を変えずに半数程度を株式公開で売却することで、東京メトロへの影響力を維持する狙いということですね。JR3社は完全民営化して国の言うこと聞かなくなったと反省した訳じゃないでしょうけど、郵政やNTTのように国の影響力を残しておいた方が都合が良いという訳ですね。国有企業にテコ入れして民間企業への統制を強める中国の後を追っているようです。

ただ気になるのが事業見込みでして、マジ卍エントリーで指摘した試算はありますが、これによると三セクを整備主体とする上下分離スキームで開業後の他路線の利用減を含む東京メトロの収支はマイナスになります。その部分を国と都の助成で埋めようということだとすると、ちょっと待てと言いたくなります。コロナ禍の影響を見込んだ需要の見直しが行われているのかどうかによって事業推進の根拠が曖昧になる訳です。加えて整備主体となる三セクの収支も変わる訳で、そこまで見込んでいるのかどうか、現時点ではわかりません。

8号豊住線だけでも収支は厳しいのに、11号線共用区間を経て押上から亀有を経て八潮市、三郷市から野田市までの殆どホラ話レベルの構想まであります。それからすれば7号南北線の白金高輪—品川間の方が事業規模も小さく可能性がありそうですが、これも品川が中央リニアのターミナル駅になる前提の計画で、そのリニアの雲行きが怪しくなってきていることが反映されている訳ではありません。それでも1号線の泉岳寺—品川間が京急線として開業したため地下鉄との接点のない品川のまちづくろの視点はあり得ます。こうした問題を全てテーブルの上にのせて議論すべきです。また地下鉄事業を核に小売りや不動産などの関連事業にまい進したい東京メトロ自身にとっても不幸ですね。

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Sunday, July 11, 2021

盛土の灰色すぎる夜叉

サンビーチやお宮の松など観光地の印象が強い熱海市ですが、新幹線こだまで東京まで43分の地の利があり、気候の良さや適度な集積もあって、コロナ禍で注目されている郊外移住の受け皿としても注目されていただけに、残念なニュースです。

斜面の街・熱海、警告された土石流 12年に警戒区域指定:日本経済新聞
箱根火山の末端に位置する海に面した傾斜地であり、元々開発余地は大きくないですが、加えて都市計画法に基づく市街化調整区域の指定のない非線引き自治体で、利便性から開発が止まらずに今回の伊豆山地区のような山の頂上近くまで開発の手が入ることになります。

しかし元々火山性の岩盤に軽石や火山灰などの火山噴出物が堆積した土壌が乗っかる傾斜地ということで、透水性が高く滑りやすい地質でもあります。加えてそこへ盛土すれば3層構造となりますし、今回のように元々水の集まる谷筋を建設残土で埋める形の場合、排水施設を埋め来ぬなどの対策をしなければ寧ろ水を含んだ重い土壌となって滑りやすくなります。盛土は突き固めしても火山性堆積土壌レベルのスカスカさにしかならない訳で、道路や鉄道の路盤を構成するような恒久施設の場合は排水設備や土留め擁壁の整備などが求められますが、建設残土の仮置き場などはほぼ規制がありませんし、産業廃棄物を埋めてもパッと見わからないしということで、特に地権者が自覚的にやっている場合、摘発は困難です。

その後の報道で2007-2010年に所有していた神奈川県小田原市の不動産業者の開発が不適切だったことが明らかにされます。1ha未満の開発は市の規制によるとする静岡県条例に基づいて0.9haの開発計画を熱海市に申請して許可を得ていたものの、開発面積が1haを越えていることが発覚し市が県に通知して県が実態調査して、開発面積以外にも15mとされた当初の申請の3倍以上の盛土だったり、産廃が埋められていることが発覚したりで、県はその都度是正勧告をしていたけれど無視され、その後転売されて地権者が変わりました。

他方2012年には開発が続く傾斜地ということで土砂災害警戒区域に指定されたこともあり、その後の開発行為は停滞していた模様です。現在の地権者は前地権者の不法行為は知らなかったとしていますが、一方の小田原の不動産業者は適法に処理したとして責任のなすり合い状態になっております。また開発を止められなかった熱海市や改善命令など強い措置を取らなかった静岡県に対しても批判が起きています。そういう意味で県も経過を検証することで情報開示の姿勢を見せています。行政にもネガティブな部分がある中で、これは評価すべきでしょう。

思い出されるのが豊中市の国有地払い下げをめぐる国の対応との違いです。そういやあの土地も地下にゴミが埋まっているという理由でゴミの撤去費用相当の値引きを森友学園に示したように、ゴミを埋めること自体はありふれた話として処理されていた訳です。実際ゴミは無かったみたいですが、総理案件としての不当な値引きを隠すために公文書の改ざんまでして、しかも強引に実行させた近畿財務局職員の赤木俊夫氏を自殺に追い込んだのとは大違いです。

その意味で気になるネットの反応なんですが、川勝知事も難波副知事も批判が県に向く可能性を認識しながら情報開示姿勢見せているのですが、このコンビはリニア静岡工区の工事を止めている張本人でもある訳で、それを揶揄する「水出て良かったね」とか「メガソーラー認めて土砂災害起こした」とか謂れのない悪意ある言葉が投げつけられています。今回の土砂災害では流出土砂のほぼ全量が件の盛土由来で岩石を含まない泥流だったことも明らかになっています。思い込みで事実に基づかない批判は話になりません。

てことで見かけ上区別のつかない恒久施設としての盛土と建設残土の仮置き場ですが、建設残土が法令で再利用が義務付けられている資源であることと関連します。基本的に発生した残土は再利用されなければならないのですが、そうそう都合よく再利用で持ち込める現場があるとは限りません。故に仮置きが発生する訳ですが、空き地や開発途上の土地でも仮置きを受け入れれば臨時収入が得られたりしますし、例えば耕作放棄地となっている農地へのゴミの不法投棄も地権者が「施肥だ」と強弁すればお咎めなしという現実がある訳で、どんな利用価値の低い土地でも現金収入が得られる訳です。

リニアに関連してトンネル工事で大量の残土の発生が見込まれてますが、受け入れ先が決まっているのそのうち2割ということで、実はリニア工事が順調見進めばJR東海は残土処理で手詰まりになると見込まれます。この面からも見切り発車の傾向が読み取れますし、静岡県の反対で工事が滞ているのは寧ろ猶予を得ているとも見ることができます。加えてコロナ禍による工事停止や調布の陥没事故による市街地大深度地下トンネル区間の工事停止も重なっており、リニア工事の遅延の静岡県のせいにするのはおかしいですし、県条例に抵触する工事ヤードの拡張を認めろとするJR東海の言い分は開発面積を誤魔化した小田原の不動産業者の手口と変わりません。

最後に鉄路的蛇足。今回の崩落した土地は長さ200mで50mの高低差ですから、鉄道で使われる千分率では250/1,000となります。普通鉄道構造規則の最大勾配35/1,000や廃止された碓氷峠の66.7/1,000はおろか、国内債急勾配の箱根登山鉄道の80/1,000と比べても傾斜が急なのがわかります。そこを水分をたっぷり含んだ土砂が滑った訳で、その破壊力は計り知れません。尚、特殊鉄道に属するリニアは40/1,000ですが、粘着駆動音はないリニアでは原理的には60/1,000程度までは問題ない筈ですが、鉄軌道式での実現という保険をかけていることから、ドイツICE高速新線で実績のある40.1,000が採用されたというどーでもいいウンチクで閉めたいと思います。

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Saturday, July 03, 2021

コロぶナ東京トト

徳仁天皇は温厚そうな顔してますが、皇太子時代にお世継ぎ問題で「俺の嫁にケチつけるな(意訳)」と記者会見でキレて見せたぐらいはっきりした性格です。五輪東京大会名誉総裁として「笑顔で開会宣言なんかできるか」と思っていても不思議ではありません。それが言えないストレスを宮内庁長官が代弁して収めた訳ですが、今や国民にとって五輪開催がコロナ感染拡大のリスク要因という認識が共有されている訳です。

や―似てますね。大阪トトで都構想の住民投票を強行した後、案の定感染拡大して医療崩壊状態に至った大阪府の状況を思い出させます。実際リバウンドと見られるジワリ感染拡大が続いており、11日に予定されるまん延等防止措置の解除は見送られる公算が大きいですが、政府や組織委の対応は後手後手で、ウガンダの選手団から陽性者が見つかった経緯を見ても、そもそも空港検疫で濃厚接触者への対応が出来ていないなど穴だらけの現実です。そんな中で違和感しかないのがこのニュース。

五輪期間、終電繰り下げ 山手線は午前2時ごろまで
米NBCの放映時間の関係で競技時間が深夜に及ぶ以上、観客の救済は必要ですが、既に観客は国内に限り、且つ入場制限まで決めている上、場合によっては無観客という話まで出ている中では違和感しかないニュースです。公共交通を動かせば五輪と無関係に夜間外出する人が増えることは避けられません。ただでさえ長い自粛生活でストレスが溜まってますし、実際夜間の人手はじわじわ増えている現状です。

わざわざ夜間外出を誘うようなことはすべきではありません。観客も上限1万人で5千人に半減とか無観客といった話もちらほら出ている状況です。観客の人数分のホテル確保で対応すれば済みますし、無観客なら必要ありません。組織委がその辺を決めきれずに思考停止しているから、鉄道各社は組織委の要請に従って準備しましたってことになる訳です。また大会スポンサーへの忖度発言が政府閣僚がするなどホント金まみれ五輪の実態も明らかです。人命よりも金が大事という政府もレントシーカーに乗っ取られている状況です。

一方でワクチンキャンペーンを大々的に進めた結果、ここへ来てワクチン不足という笑えない状況になっています。五輪開催のために安心を演出したい下心が勝っての行き当たりばったりです。しかし根拠のない安心の演出は寧ろ不安を増大させます。安心はあくまでも主観的感情です。科学的根拠で安全を確保する前提があって安心を言えるのであって逆じゃないってことですね。

ロジカルなリスクコントロールの前提があって初めてリスクマネジメントが可能であり、その際には事実を誤魔化さずネガティブな情報も含めて開示した上で個人の判断に任せるのがリスクコミュニケーションという関係ですね。客観的な安全を担保して主観的な安心感を持ってもらうために説得的な説明を尽くすということです。これ政府や組織委に留まらない日本の組織全般に見られる病弊かもしれません。そんなニュースがこちら。

三菱電機、鉄道車両空調で「不適切」検査 30年以上か
これ評価が難しい問題なんですが、空調機に留まらず空気圧縮機でも検査を誤魔化していたということで、鉄道事業者に衝撃が走りました。ブレーキやドア開閉の動力源であり、空気ばねへも供給される圧搾空気を作るコンプレッサーの性能試験を誤魔化していたということで、安全に関わる可能性が出てきた訳です。

一方で30年以上にわたって行われていて、具体的にこれが原因と言える事故が起きた訳じゃないから良いじゃないかという議論もあります。確かに国鉄時代からのユーザー優位がメーカーへの過剰な品質保証を求める傾向はあるでしょうし、メーカーから見ればウザい話かもしれませんが、例えばJR四国が圧搾空気供給が間に合わないからということで、傾く台鉄で指摘した土讃線向け特急車に車体傾斜システムの2600系を諦め制御付き振り子の2700系という新形式を起こしたりしている訳で、鉄道事業者にとっては重大な経営判断を左右した可能性も指摘できます。鉄道各社も三菱電機製圧縮機の使用状況を開示すべきことは言うまでもありません。

てことで、こうして見るとそもそも日本の組織はリスクマネジメントが下手ってことかも。失われた30年は必然かもしれません。

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