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Saturday, July 17, 2021

梅雨の後先

ひらがなだと永井荷風宇の「つゆのあとさき」ですが、敢えて漢字表記としました。梅雨明けの感染拡大の予想が現実化している現状を敢えて表現してみました。

大正時代から始まったカフェーは、今でいうコーヒーショップとは異なり、アルコール類も供し女給さんの饗応サービスを売りものにする飲食店で、イメージとしては戦後のキャバレーに近いものだったようです。女給さん目当てに通う旦那衆が羽振りよく楽しむ場ということで、逆に純粋にコーヒー紅茶を楽しむためにアルコール類を供しない純喫茶は、カフェーに対置した命名だった訳で、こちらは戦後も長く続きましたが、今や絶滅危惧種です。時代の変化は容赦ありません。

カフェーの女給君江が男たちに翻弄されながら健気に生きる姿を描いた永井荷風ですが、男たちは揃って見栄っ張りで優柔不断で約束は破るし平気で噓をつくというロクデナシぞろい。はて、何か似た風景があったなあ。男たちを政府や東京都に、君江を酒類を供する飲食店に置き換えるとまんまです。

政府、西村氏発言を撤回「金融機関が飲食店に働きかけ」 与野党で批判噴出、官房長官が表明:日本経済新聞
これ深刻なのは内閣官房の官僚の発案で各省庁に根回しして関係閣僚会議で了承を得ていたけど、与野党から北的法的根拠がないと指摘されて撤回したって流れで、政治家も官僚も法令順守の意識が乏しいってことですね。しかもこの時点では酒卸しへの主犯卸しの取引停止要請とグルメサイトによるユーザーの密告要請は生きていて、批判を浴びてこれらも撤回されました。これで法の支配を標榜する民主国家なのかい!
香港紙葬った銀行の深謀 「自由なき金融」に傾斜:日本経済新聞
民主派香港紙の蘋果日報(アップル・デイリー)廃刊の裏に銀行の過剰な忖度が働いたという記事なんですが、発行者の壱伝媒(ネクスト・デジタル)の金融取引を香港国家安全法に基づいて凍結した一方、創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏をはじめ資産を現金化して発行を続ける体制を取っていたものの、一部金融機関が当局指定以外の口座も凍結して資金繰りを事実上不可能にしたために廃刊に追い込まれたという事情があります。

金融機関名は定かではありませんが、当然中国の国立銀行である筈はなく、香港に拠点を置く西側の銀行であることは確実で、HSBCなどの名が取り沙汰されています。香港問題では香港の国際金融都市としての盤石な立場が、北京政府に対峙する強固な自治権の裏付けという見方は民主派を含めて香港市民に広く共有されてきましたが、その構図が変わり、米中デカップリングの現実の中で、寧ろ閉ざされた中国金融市場へのアクセス窓口としての機能に特化されたことで、金融機関の当局への忖度が働いたようです。

それに比べて圧力かけろと呼び掛けた日本政府の狙いも金融機関の忖度狙いは明らかで、民主化よりもみみっちい「酒売るな」だったりしますし、法の是非はあるものの一応香港当局は国安法という北京政府の制定した法律に則った行動ではありますから、ある意味日本政府は中国以下の対応だった訳です。国安法に民間の忖度を引き出す狙いはあるかもしれませんが。

香港関連ではアメリカはトランプ政権時代に香港制裁法を制定し、指定金融機関に制裁を発動できる権限を持っています。バイデン政権が発動する可能性は低いですが、重要なのはアメリカではこうした対外金融制裁のようなものまで議会で法律を作って対応するという点です。例えば韓国に対する化成品輸出のホワイト国指定解除など政府の一存で決めている日本とは大違いです。こうした日本の法令軽視の姿勢はあらゆるところに見られますが、こんなニュースを取り上げます。

東京メトロの延伸・新線、国と都が建設費支援へ:日本経済新聞
報道時点では国交省内部の検討段階でしたが、この内容を反映した運輸政策審議会の新答申で、東京メトロが建設を渋る8号豊住線と7号南北線品川延伸に対して、国と都が資金支援をすることと、議論が止まっている東京メトロの株式公開を絡めて、国と都が保有する東京メトロ株の保有比率を変えずに半数程度を株式公開で売却することで、東京メトロへの影響力を維持する狙いということですね。JR3社は完全民営化して国の言うこと聞かなくなったと反省した訳じゃないでしょうけど、郵政やNTTのように国の影響力を残しておいた方が都合が良いという訳ですね。国有企業にテコ入れして民間企業への統制を強める中国の後を追っているようです。

ただ気になるのが事業見込みでして、マジ卍エントリーで指摘した試算はありますが、これによると三セクを整備主体とする上下分離スキームで開業後の他路線の利用減を含む東京メトロの収支はマイナスになります。その部分を国と都の助成で埋めようということだとすると、ちょっと待てと言いたくなります。コロナ禍の影響を見込んだ需要の見直しが行われているのかどうかによって事業推進の根拠が曖昧になる訳です。加えて整備主体となる三セクの収支も変わる訳で、そこまで見込んでいるのかどうか、現時点ではわかりません。

8号豊住線だけでも収支は厳しいのに、11号線共用区間を経て押上から亀有を経て八潮市、三郷市から野田市までの殆どホラ話レベルの構想まであります。それからすれば7号南北線の白金高輪—品川間の方が事業規模も小さく可能性がありそうですが、これも品川が中央リニアのターミナル駅になる前提の計画で、そのリニアの雲行きが怪しくなってきていることが反映されている訳ではありません。それでも1号線の泉岳寺—品川間が京急線として開業したため地下鉄との接点のない品川のまちづくろの視点はあり得ます。こうした問題を全てテーブルの上にのせて議論すべきです。また地下鉄事業を核に小売りや不動産などの関連事業にまい進したい東京メトロ自身にとっても不幸ですね。

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