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Saturday, July 24, 2021

デジタルもワクチンもグリーンもポンコツが止まらない

五輪開会式直前のドタバタ劇。

五輪組織委、止まらぬ迷走 開会式演出の小林氏解任::日本経済新聞
エンブレムの盗作問題に始まり、女性タレントの容姿哄笑、森組織委員長の女性蔑視発言、ミュージシャンのイジメ問題とトラブル続きで、しかも武藤事務局長は「問題ない」としたものの、ネットで炎上が止まらず本人が辞任した一方、辞任した森氏を名誉最高顧問として迎える検討をしたとか、組織委の人権意識を疑わせるばかりですが、開会式前日にそれらをすべて吹き飛ばす問題が発覚しました。

ミュージシャンのイジメ問題も過去のインタビュー記事が発掘されたものですが、タレントのインタビュー記事はプロモーションの要素もあり、公開前に原稿のチェック、特に所属事務所のチェックが入りますから、話を盛っている可能性はありますが、辞任のときに本人は否定していません。加えて国際問題を招き入れた総合プロヂューサーの人選も含めて、ちょっと調べればわかる過去の公開情報をチェックしていなかった組織委の体たらくぶりは酷いものです。ミュンヘン五輪のイスラエル選手団への黙とうは恐らく事態を収めるための妥協だったのでしょう。

更に未確認情報ですが、女性蔑視発言で辞任した森前委員長を名誉最高顧問として迎えようとして政府に止められたという話も漏れ聞こえます。ホント懲りてないというか、人権意識の低さを世界に拡散することに無頓着なんでしょうか。こういうところは中国をはじめアジアの他国が反面教師にしてくれれば良いですが、寧ろ逆のメッセージになりそうです。アジアの各国は日本の奇跡の成長を後追いしている訳ですが、かくも貧困な哲学しか持ち合わせていないことは、別の面でも問題になります。

欧州が主導する取捨選択、ルールが決する競争力 第4の革命・カーボンゼロ GXの衝撃(5):日本経済新聞
GXとはグリーン・トランスフォーメーションの略でデジタル・トランスフォーメーションをDXというのと同じ流儀ですが、主に欧州で使われています。アメリカではグリーン・ニューディールとかグリーン・リカバリーと言っていて、主にコロナ禍で停滞した経済の立て直しの狙いですが、欧州では脱炭素を軸とした産業の見直しというより根源的な取り組みを意味します。

この違いは主に国内に油田やガス田を抱え、エネルギー産業のウエートが高い一方、製造業が空洞化して衰退しているアメリカが、雇用創出の手段としての脱炭素を目指すのに対して、欧州は製造業のインフラがアメリカよりも残っている中で、その作り替えを通じて維持しようという取り組みと言えます。そしてそれは脱炭素を通じた欧州の産業構造の見直しに留まらず、その影響力を他の地域に波及させることを通じて世界をリードしようということでもあり、それを支えるの哲学的なバックボーンがしっかりしていることがあります。Brexit で関係が悪化した英国もこの点は欧州と同じ立場です。

その影響力は大きく、特に欧州委員会が決めた国境炭素税の導入で、石油、天然ガスの輸出に経済を依存するロシアが反応を示したように、地政学リスクの軽減にもなる訳です。対ロシアではバイデン政権で雪解けも見られますが、一方でアフガン撤退でタリバンの攻勢によりテロリストの越境を警戒せざるを得なくなったロシアと中国は已む無くアフガン政府支援に動くなどしており、ロシアとしては欧州との経済関係の維持が大きな外交課題になる訳です。エネルギーの中東依存の低下も脱炭素故に現実味がある訳で、GXは安全保障問題でもある訳です。

こういった世界の動きに対して日本は腰の定まらない対応が続いています。2030年度向けののエネルギー基本計画で再生エネ36-38%の構成比を打ち出しましたが、一方で原発も22%を維持しており、この部分については脱炭素目標の欺瞞で指摘したように、まともな議論がなされていないことが問題です。実は先発権と称して送電線の空き容量を稼働していない原発の容量枠を押さえている現実がある訳で、再生エネ拡大のためには送電線の容量拡大費用の負担を求められており、再生エネ普及のネックとなっています。再生エネを拡大したいなら送電線の原発枠の開放が必要ですが、エネルギー基本計画ではそれはしないということですね。

国境炭素税の問題は日本にも大きな影響が及びます。日本では民主党政権で導入された温暖化対策税はあるものの、CO2国際価格から見ればタダ同然の低い課税水準ですから、日本からの欧州向け輸出品には炭素税相当分の税が課される訳で、折角日欧EPAで関税撤廃が実現しても、事実上の関税上乗せになる訳です。回避策は同等の国内炭素税課税ということになります。当然財界は反対するでしょうけど、果たして政府は財界の反対を押して課税できるでしょうか。

短期的にはマイナスなんですが、長い目で見れば違った風景になります。火力発電の構成比の高い日本では、例えばEVを生産しても輸出できない可能性がある訳で、この点は中国なども当てはまりますが、CASE革命で電動化が避けられない中で、日本製EVが競争力を失うことを意味します。しかしこんな道もあります。

産業立地、脱炭素で再編 再生エネ不足なら空洞化 第4の革命・カーボンゼロ GXの衝撃(2):日本経済新聞
水力資源が豊富なスウェーデン北部で再生エネ電力でリサイクル材での電池生産を目論む新興電池メーカーのノースボルト社の取り組みですが、日本でも北海道石狩市で100%再生エネ電力の工業団地の造成が進んでいます。脱炭素が避けられないなら、当面コスト増でも長期的に競争力を高めることで持続可能性が高まる訳で、脱炭素シフトは実行段階と捉えている訳です。これぞGXです。

一方短期的にはエネルギー市場に混乱をもたらすこともまた事実ではあります。OPECプラスの減産で石油価格が高騰しても米シェールオイルの増産による調整が働かないことが典型ですが、日本にとって見過ごせないのがLNGスポット価格の高騰です。国際市場で最大の買い手だった日本は、長期契約で安定的に供給を受けておりましたが、脱石炭の流れで中国を含むアジア各国が買い手として台頭して厳冬の電力不安に繋がったのは記憶に新しいところですが、加えて石炭火力からのシフトで欧州が買い手として台頭していることで、今夏の電力不足が警戒されています。繰り返しになりますが、送電線の稼働していない原発枠の開放で再生エネの受け入れを増やせばクリアできる問題ですが「原発止めたから電気が足りない」と大嘘を叫ぶノイジーマイノリティが出てくるでしょう。

そして欧州ではもう一つ大きな動きとして鉄道による航空便のコードシェアが拡大しています。元々はドイツの Lufthansa Express に始まった歴史のある動きですが、その Lufthansa のコロナ禍による経営破綻で政府が支援条件として鉄道便活用を義務付けたことで拡大しております。加えてフランスでは2時間半以内の都市間の国内線運航を国際線乗継便を除いて禁止する法律が可決成立しており、オーストリアなど追随する国が出てきています。これ日本でもJRと航空2社のアライアンスの可能性を法的に裏付ける議論が欲しいところです。

てことで、デジタルもワクチンもダメな日本はグリーンでも後れを取る。追随するアジア諸国が反面教師にしてくれる可能性も低い。アジアの時代は遠のきます。

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