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Sunday, September 12, 2021

終わらないアベノミクス

総裁選とかいう自民党の内輪の祭をメディアが無批判に扱う日々ですが、本当にコロナ対策したいなら国会開いて野党と協議することが大事だし、アフガン撤退で自衛隊の救出作戦が失敗したことに対する説明も必要です。総裁選報道は完全な目くらましですね。

とはいえ漏れ聞こえる候補者の政策論が揃いも揃ってヒデー-_-;。新自由主義見直しとか所得再分配強化とか耳障りの良い話が聞こえますが、大前提としてアベノミクスの継承は暗黙の了解事項なんですね。つまり誰が選ばれても政策は変わらない訳で、おそらく総選挙を睨んだメディア露出拡大が狙いなんでしょうけど、寧ろ国民の不満や失望を強めるんじゃないかと思います。

てことでアベノミクスの検証には踏み込まず目先を変えるだけで何とかなると考えていることが見て取れますが、それには理由があります。結局日銀の異次元緩和以外に取り立てて経済政策としては何もしていない訳ですが、その結果円安で大企業の利益が嵩上げされ株価が上昇したことで、財界から評価されており、財界寄りの与党としては変える動機がない訳です。また日銀の国債爆買いで金利が抑え込まれている結果、利払い費が圧縮され財政出動がやり易くなっている点もあります。2年で2%の物価目標の達成は見通せないけど、政府にとっては居心地の良いことになっている訳です。

過去エントリーでも度々取り上げましたが、国民目線で言えばアベノミクスは終わらせるべきですが、同時に政府や財界にとってのアヘンのような心地良さがあり終われない訳です。

てことでアベノミクス勝手に総括しますと、何故インフレ目標がうまくいかないかは実はシンプルな答えがありまして、日本のような貯蓄過剰経済では、貯蓄が投資で消化しきれないため余剰資金が多いのに、量的緩和が加わってその傾向を強める一方、資金の調達価格である金利が下がるため、政策金利ゼロで量的緩和を続けると余剰資金の行き場がなくなり現金や国債の超過需要が発生してしまい、経済成長を促す投資が低迷して長期停滞を招くことになります。

これがアメリカのように貯蓄不足経済では金利の低下が投資を促し経済成長を促しインフレが実現する訳で、リーマンショックの時もそうでしたが、コロナ禍でも日本だけが経済の回復が遅れるということになる訳です。だから簡単ではないけれど、アベノミクスを終わらせる出口の議論は今必要なんですね。

アベノミクスを礼賛してきたリフレ派は消費低迷を消費税増税のせいにしていますが、これは間違いです。そもそも消費税収は社会保障財源とするとされており、政府支出に回る建付けですからプラスマイナスゼロでそれ自体の経済への影響は軽微です。これ経済学的には常識に属します。実際89年4月の3%での導入時にはバブル経済真っただ中だったこともあり影響は見られませんでした。97年4月の5%への改定では、橋本行革による社会保険料の値上げと重なりそちらで国民負担が増えたことと、アジア経済危機と日本の金融危機で景気が落ち込んだことの影響が大きく、消費税の影響は必ずしも明らかではありません。

14年4月の8%改定時には政府が価格転嫁を後押ししたこともあり、改定前の駆け込み需要が膨らんだ一方、改定後の落ち込みが大きく出ましたが、結果は均せば影響は消えて単なる需要の先食いだった訳です。そして19年10月の改定では14年の時のような駆け込みは見られませんでしたが、これは別途キャッシュレス決済普及を狙ったポイント還元策によると見られます。但しそれ以前にアベノミクスの影響で実質賃金が低下したこともあり、18年11月に景気はピークアウトしていた訳で、それが今に至る消費低迷の原因と見ることができます。という訳で、実証面では消費税減税は無意味ということですね。

あとウヨ曲説でも取り上げましたが、消費税減税が必ずしも値下げに繋がらない点は繰り返しておきます。消費税増税で税率が上がった分の価格転嫁は独占禁止法で禁止されている価格カルテルの例外の扱いになる一方、消費税減税で税率が下がった場合に事業者が値下げする義務はありません。特に総額表示が義務付けられている現状から言えば、値下げはあくまでも任意で大半はスルーされると見るべきです。まして交通運賃のようにシステム改修に多大なコストがかかるケースでは尚更です。総裁選候補者で消費減税に言及はありませんが、一方で総選挙を睨んで野党からは共産とれいわが消費減税の公約を掲げておりますが賛同できません。

また税法を改正するのは相当な力業でもあり、立法府のリソースを浪費することにつながりかねませんし、結果的に空手形になる可能性大です。出来ない約束はすべきではありませんね。寧ろ19年改定時のようなポイント還元策や給付金の方が現実的です。年をまたいだ結果確定申告の結果が自治体の課税台帳に反映されており、例えば住民税非課税世帯などの条件付きでの実施は直ぐにでも可能ですし、また事業者向けの持続化給付金も申請を簡素化する一方、来年の確定申告で所得減穴埋め後の剰余を返還するルールにすれば実施が早まり不正受給も阻止できます。仮に所得減がなくても実質無利子融資で資金繰りを助けることにはなります。つまり融資とのハイブリッド給付金とする訳です。

あと上記ウヨ曲説エントリーでも触れましたが、アベノミクス礼賛のリフレ派が消費減税に言及する理由は高額所得者ほど担税額が大きく、税収が社会保障費に使われることへの嫌悪感に由来します。金持ちから巻き上げて努力が足りない貧乏人のために使うなというロジックですね。消費減税はその片棒を担ぐことにもなる訳です。

またこの視点が実はMMTの決定的な欠陥を示します。MMT論者が言うように政府は中央銀行に当座預金口座を持ち、国債発行して銀行が引き受けた場合中銀当座預金口座同士のやり取りで政府口座に代金が振り込まれ、これを実際に執行して政府支出することで見かけ上銀行のような信用創造が起きている訳ですが、国債はあくまでも政府の徴税能力を担保に発行される点で中銀発行の貨幣と異なる訳です。つまり将来税で穴埋めされる前提での信用創造であり、その前提が疑われれば信用を失い大暴落するリスクを抱えている訳です。

そして税金ですが、政府に徴税権が付与されているのは社会運営上必要なコストを国民の負担してもらうことですが、その過程で担税能力に応じた課税に対して必要に応じて政府支出という形で事後的に所得移転が起きる訳で、これこそが社会を安定させる再分配の本質に他なりません。故にMMT論者が言うように財政赤字で社会保障費をファイナンスすることは再分配の原則に反します。MMTはリフレ派に留まらずれいわも飛びついておりますが、注意が必要です。最後に鉄分補給^_^;。

JR東日本、特急料金の変動幅拡大 来春に新幹線など
とりあえず届出だけで対応可能な特急料金の繁忙期料金の値上げでダイナミックプライシング的な対応ですが、今回はささやかな値上げに留まるものの、コロナ禍で乗客減による収支悪化を受けて取れるところから取る姿勢を鮮明にしたものです。密を避ける意味で乗客減でも大幅減便はできない一方、密を避ける意味で混雑緩和への取り組みも避けられませんし、安全対策やホームドアなどのバリアフリー投資は減らせないということで、需要のピークカットでピーク対応投資の削減も狙っている訳です。

いずれ許可が必要な運賃値上げも視野に入ると見るべきで、東急などで初乗り運賃の見直しが検討されてもいます。JRに関しては他社との協議の段階ですが、既にJR東海は対応を表明しています。コロナ後の回復が見通せない中、前エントリーのJR西日本の公募増資の話題もありますし、今後鉄道は値上げの季節になると見ておいた方が良いでしょう。消費税減税しても値下げしない可能性も高い訳です。

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