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Sunday, September 05, 2021

リニアも撤退しよう

管さん辞めちゃいますね。ま、コロナでこれだけしくじった上にアフガン撤退でも後れを取って責任取ることは必要です。アフガン問題では現地大使館や外務省の動きも鈍かったようですが、外務省は係官が官邸通いして5日目に対応の指示を受けたそうですから、結局官邸の判断が遅れた結果の失態ですね。でも国民放ったらかしで内輪の祭りに興じる自民党といい、それをニュースとして垂れ流すメディアといい、危機感が見られません。

管首相に悪魔の囁きですが、党内の支持が得られない中でコロナ問題に専念したいなら、総裁選祭りの間に臨時国会召集して総裁任期が来ても総理で居座り、会期延長で衆院議員の任期切れも合法的に乗り越えたら?その間にワクチン接種が進めば感染拡大が沈静化する可能性もありますし。但し乾季でコロナが狂暴化して裏喰う可能性もありますけどね。基本政局には興味ないんでこれで終わり。

取り上げるのは前エントリーの最後で取り上げたリニア問題です。元々必要性に疑問を持っておりましたし、資金計画も無理があるし、南アルプスルートを選択したことで難工事必至ということで、実現可能性は低いと考えておりましたが、趙電導リニアの不都合な真実(川辺謙一著)で技術的に解決困難な課題があり、また地震学者の石橋克彦氏の著書の指摘もあり、事業継続は現実的ではないと評価できます。

川辺氏の指摘する技術的に解決困難な問題は大きく3つあります。1つは以前に取り上げたクエンチで他は火災事故の可能性と気密荷重です。まずクエンチの方ですが、超電導コイルと地上コイルで支持、案内、推進を行うという超電導リニアの技術的根幹に関わる問題です。クエンチで超電導コイルが磁気を失い浮上走行できなくなると共に、超電導を失ったコイルの抵抗熱による液体ヘリウムの沸騰問題もあります。液体が気体になり体積が爆発的に膨張する訳ですから、駅やトンネル内で起きれば危険でもあります。

クエンチ自体は無くせないので、発生確率を減らすことと、起きた時の安全対策が重要なんですが、JR東海は情報公開に消極的です。安全性に問題が無くても発生確率次第では安定運行が困難になる可能性があり、営業運行に供することが難しくなる可能性があります。但し高温超電導コイルの開発である程度回避可能性はありますが、未だに根幹的技術が確定していない中で2027年開業を謳う姿勢には疑問があります。

火災事故の可能性に関しては火災発生元が3つあり、1つは地上コイルで、強度と絶縁性能を両立させるために樹脂製となっており、発熱による発火の可能性がります。2つ目は先頭車に搭載されたサービス電源用のガスタービン発電機で、3つ目は支持輪と案内輪のゴムタイヤです。いずれも通常は防火性能の範囲内で使えるでしょうけど、高負荷がかかるなどの異常時にも安全ということはできません。

実際宮崎実験線では試験車両が全焼したことがありますし、山梨実験線でも配電盤のショートで出火し社員が負傷しています。問題はメディアに抜かれるまでJR東海が発表しなかったことで、情報開示に消極姿勢を見せています。ガスタービン発電機ですが、車上の超電導コイルの一部を集電用として地上コイルの磁気による電磁誘導集電が一応試されていますが、L0系先頭車の一部で採用されているのみで、実用レベルにあるかどうかは不明です。

3つ目の気密荷重問題は川辺氏が山梨実験線での試乗で耳ツンを体験しており、気密性能が不十分な可能性があるということです。従来の新幹線でも初期に耳ツンがありましたが、気密性能の向上で現在はほぼ解決されてますが、気密性を高めると換気が出来ないので新幹線では特殊なファンで気密性能を維持しつつ換気をする仕組みになっております。当然リニアでも同様の処理はされている筈ですが、速度が速いこととトンネル通過や40/1,000という勾配で外気の気圧変動が大きいことから、十分な性能を実現できていないということですね。

気密構造では外気の気圧変動に対して車内の気圧変動を抑えることで、車体が膨らんだり縮んだりする訳で、それに耐えられる車体強度が求められますが、高速走行のために軽量化も求められることから、大幅な改善は見通せないため、現時点では汚物タンクの逆流の恐れがありトイレも設置できないという困った問題です。これは自動ウン転エントリーでも触れております。

気密荷重問題はトンネル区間が多くアップダウンの激しい現行南アルプスルートの固有の問題と見ることも可能であり,敢えて事業を継続するなら明かり区間の多い伊那谷ルートへの変更も一応選択肢にはなります。静岡県の反対姿勢もありますし。また現行新幹線規格への変更ならば既存技術の範囲内で対応可能ですが、そうすると財政投融資資金まで投入した事業の公共性に疑義が生じることから返済を求められる可能性もあります。国会承認は必要ですが、事業停止に伴う損失の補填資金にシフトすることは考えても良いでしょう。そう思うのはこんなニュースがあるからです。

JR西日本、公募増資など最大2786億円調達 グループ初:日本経済新聞
JRとしては初の公募増資の実施ですが、コロナ終わりそうにないエントリーで指摘した税効果資産の資本計上で黒字化が求められる今期の見通しがコロナ禍の長期化で見通せなくなった結果、公募増資せざるを得なくなった訳ですね。数字上は自己資本比率も高く公募増資は寝耳に水と見られ株が売られ下げましたが、事業規模が大きく借入金依存が強い故に資本の健全性が強く求められるため、背に腹は代えられなかった訳ですね。ちなみにJAL,、ANA、SKYの航空3社は既に公募増資実施積みです。

JR西日本の場合本州3社の中では経営基盤が弱くやむを得ないところですが、株式市場では鉄道株全般が売られる展開となりました。JR東日本はコロナ禍で早まった人口減少対策の前倒しとコスト削減で乗り切る姿勢ですし、JR東海は東海道新幹線という金の成る木がある一方、その儲けをリニアに投じている現状がある訳ですから、リニアをやめれば持ちこたえられる可能性はあります。その際に財政投融資の低利融資を引き揚げずに維持すれば、JR東海に事業停止の判断を促しやすくなります。逆に言えば許可した国の責任も帳消しという政治判断になります。この辺が落としどころとしては妥当なところかなと思います。

あとコロナ後を展望すれば、東名阪メガ集積の経済効果よりもリモートワークの拡大で地方の活性化の方がニーズがあると考えられます。東海道新幹線で言えばのぞみよりもこだまの時代になるということです。その意味でもリニアは時代錯誤な存在と言えます。コロナを口実に撤退するなら理解も得やすいでしょう。

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