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Sunday, October 03, 2021

COP26の中の嵐の予感

ドイツ総選挙で社会民主党(SPD)が第1党となり、現与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)、緑の党、自由民主党(FDP)の順となり、連立協議は難航が予想されています。予想通りに緑の党は躍進したものの、その結果連立協議を難しくしている面があります。最も有力とされるSPD、緑の党、FDPの組み合わせでは環境対策に重点を置く緑の党と市場主義的なFDPが組めるのか?という問題があります。ちなみにこの組み合わせ、各党のシンボルカラーから「交通信号」と呼ばれています^_^;。

選挙戦ではスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが演説したりして気候変動問題への関心を高めましたが、欧州では洪水や熱波などの異常気象の被害が広く認識されており、有権者の関心も高い訳ですが。同じころアジアの某日本国では、自民党総裁選とかいう内輪の祭に興じて「ぼくがかんがえたさいきょうのこっか」を競うものの、気候変動問題への言及はほぼなく、関心の低さが見えています。これはメディアにも責任がありますが。

そして10/4の臨時国会召集で首班指名し岸田新首相が組閣して新政権を発足させ施政方針演説とそれを受けた各党の代表質問をこなし会期末の14日に衆院解散して総選挙という段取りですが、忘れてならないのが10/31から英グラスゴーで始まるCOP26が選挙期間と被ることです。なるほど日本の政治家たちは人類共通の課題よりも自分たちの立場の維持を優先させる訳ですね-_-;。

2015年のCOP21で締結されたパリ協定に基づき締結各国が目標を定め出揃った今回は、目標の評価へと歩を進めます。つまり各国が自国のロードマップを示し進捗を報告し、それを他国の評価に晒す訳です。つまり目標と進捗のツッコミ合戦の始まりとなる訳ですが、エネルギー基本計画で明らかにした電力構成でもツッコミどころ満載の日本が火だるまになることは目に見えています。

ちょっとおさらいですが、2012年に期限を向かえる京都議定書の後のポスト議定書の議論で日本が示したのが2005年比15%削減の目標でしたが、それでは不十分として国際的に非難を浴びました。当時の議論のベースとなったIPOOのシミュレーションでは、このまま対策をしない場合の世界の平均気温の上昇が2100年には産業革命前プラス4℃となるので、これを半分の2℃に抑えるということで、当時は過去の排出による環境悪化の責任ということで先進国だけに削減義務を割り当てるということで、日本には少なくとも90年比25%の削減が求められている中での話だった訳です。この辺はエコだましエントリーでも取り上げました。

ちなみにIPOOの最新のシミュレーションでは対策しない場合の気温上昇は4.4℃とされており、やや悪化しております。これはデータが増えたことで精度が増した面と、実際に排出が増えた面と双方が影響したものですが、今上昇はカナダやシベリアが温帯化する一方現在の温帯域は熱帯化して砂漠化するなど経済面での大きなダメージをもたらしますし、シベリアの永久凍土の解凍で未知のウイルスが環境中に放出され新たな感染症をもたらす可能性とか、病原性ウイルスの熱耐性が高まり代謝を高めて体温を上げてウイルスを弱らせる人体の免疫力の低下など影響は多岐に亘ります。

その後2009年の総選挙で民主党政権が成立し、2009年のCOP15コペンハーゲン会議で踏み込んだ目標を示したものの具体策に乏しく、3.11以後は原発稼働停止による火力発電依存が避けられないとポスト議定書から脱退しました。ちなみに京都議定書の6%削減目標はクリアしていましたが。民主党政権では炭素税に相当する温暖化対策善が既存の石油石炭勢に上乗せする形で導入されたものの、税率が低く実効性は殆どありません。財界の反対が大きかったという事情はあるにせよこの中途半端な腰砕け的日和見で日本の気候変動問題への関心は低いままですし、再生エネ導入のための固定価格買取制度も詰めが甘く既得権として悪用されました。

また発送電分離を目指した電力改革でも分社した別法人ならオーケーという緩い法的分離の結果、大手電力会社の市場支配力は温存され、結果九電ショックが起きる訳です。これも繰り返し述べてますが、大手電力としては自社の原発や大規模石炭火力などの大規模電源の接続を優先し、他社が電源接続を希望する場合は原因者たる発電事業者に送電線容量増加投資負担を求めるものです。

さらに先発権を盾に稼働していない原発とそのバックアップ電源の筈の石炭火力の双方の合計出力分の枠を押さえている訳で、実際は物理的に空きがあっても接続拒否される建付けとなっております。加えて例えば太陽光発電の累計出力合計で接続の可否を見ることで接続拒否している訳ですが、そもそも立地や気候によって出力が変動する太陽光がフル稼働になることはあり得ず、せいぜい7-8割程度が上限です。つまり送電線の運用が圧倒的に大手電力に有利な形になっている訳ですね。

そして安倍自公政権では電力容量市場の立ち上げという大手電力に有利な仕組みを作りました。これは予想される電力需要に対して各発電事業者に出力容量を申告させ入札することで電力の安定供給に資するという触れ込みですが、出力が不安定な再エネ排除の仕組みでしかありません。曲がりなりにも50年カーボンゼロを謳う日本政府の本気度が知れます。

これも繰り返しになりますが、電力の安定供給を狙うなら蓄電こそが王道です。化石燃料電力の比率を下げるには再エネと省エネが2本柱であって、蓄電はその双方にとって有力な技術となります。蓄電池の性能改善は著しいですが、一方で素材となるリチウムやコバルトなどの獲得合戦で途上国の強制労働や児童労働が問題視されている現実もあります。また容量の大きい蓄電池は発火事故の可能性もありますし、容量を増やせば質量が嵩みますから厄介なところですが、家庭用電力に限って言えばEVのバッテリーの活用が1つの解になります。

一方で地域にマイクログリッドをベースとした仮想発電所(VPP)では余剰電力で電気分解した水素を貯蔵し必要に応じて燃料電池で出力することで出力調整するのが現実解ですね。所謂エネルギーの地産地消ですが、同時に余剰電力を系統送電網へ供給することでVPPとしての機能を果たす訳です。それによって電力料金の低減に留まらず地域に現金収入をもたらす可能性もある訳で、国の交付金に頼るより確実な地方活性化策になります。

この意味からも小型モビリティとしての乗用車はバッテリーEV、蓄電池重量が嵩みバランスが悪い大型トラック・バスや鉄道車両には燃料電池という棲み分けが目指すべきモビリティの未来ということになります。脱炭素で注目される水素ですが、自動車メーカーが開発をリードした日本の現状はガラパゴス化の気配が見えます。

最後にカーボンプライシングに関してですが、炭素税と排出量取引の2つの方法論がある訳ですが、制度のシンプルさで言えば炭素税に軍配が上がります。但しその際に既存の石炭石油税と温暖化対策税との関係を整理する必要がありますが、ほぼ100%輸入頼みの日本のエネルギー事情に鑑みれば石炭石油税に上乗せする形を基本として実際に加工や消費で排出される段階での課善と組み合わせる形で数千円/tぐらいから始めて段階的に引き上げていくというのが現実的な方法でしょう。

その際に道路財源に充てられる部分に関しては現状維持として炭素税の間接税としての性格から、逆進性緩和策として税収増分は社会保障財源として国民の還元することが望ましいところです。財政悪化で圧迫されている社会保障財源の確保の意味でも望ましいし地齋欧州の炭素税導入国ではそうしています。実質的に大量排出する企業にストレスを与えて排出削減のインセンティブとすると同時に法人善減税で厳しい財政を助ける意味もある訳です。

一方道路財源の温存は潤沢すぎる道路財源問題の温存につながりますが、排出削減の視点から公共交通の補強策としての支出によって排出削減を図る余地はある訳で、鉄道の基盤整備などへの支出が認められるような法改正が望ましいところです。

という訳で、来る総選挙でこういった議論が与野党で展開されるなら良いのですが、例えば脱原発を打ち出す立憲民主党からして連合の集票力に頼らざるを得ない中で、連合の有力単産である電力労連は原発再稼働を肯定してますし、実際民主党政権は福島第一原発事故のときも電力自由化のときも足を引っ張られました。一方脱原発を打ち出す共産党は産業別労組の立ち上げを政治的理由から邪魔した過去があります。つまり大企業正社員クラブで労働運動を停滞させた連合と、その連合と犬猿の仲ながら労働運動をつぶした過去を持つ共産党に頼らなければならない立憲民主党の立ち位置は端からハンディキャップマッチなんですね。それ以前に脱炭素政策の軸を示す必要はありますが。

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