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December 2021

Sunday, December 26, 2021

米中デカップリングのリアル

米FRBがインフレ退治モードにシフトしつつありますが、そりゃ6%超のインフレが起きていればやむを得ないところ。一方米国債10年物金利が1.5%程度ですから、実質金利は4%超のマイナスで、企業の資金調達にはプラスですが、国民生活は圧迫されます。という訳で当初インフレは短期で終息すると見ていたFRBも動かざるを得なくなった訳です。

何故見誤ったというと、供給サイドのコストプッシュインフレならばいずれ供給側のボトルネック改善で解消しますが、コロナ対応の給付金で国民の懐が暖まっており、需要が旺盛なことと同時に、それ故に失業者が就職を急がず仕事を選ぶようになった結果、港湾労働者やトラップドライバーなど労働環境が厳しい業種で求人難となっていることがあります。その結果港湾の荷役が滞り、また陸揚げされたコンテナを運ぶトラックもドライバー不足で動かないから港湾に滞貨が更に積み上がり、接岸できないコンテナ船が沖合待機させられという悪循環から抜け出せない訳です。故に新規就業者数が伸びずFRBの判断に狂いが生じた訳です。その結果コンテナ不足でこんなことも起きてます。

コンテナ船、荷動き減も運賃最高 「空箱優先」のひずみ:日本経済新聞
米国内の旺盛な消費の結果、製造工場が集積する中国から船便が大挙押し寄せており、クリスマスシーズンで更に追加オーダーが絶えず、オーダー受けても運ぶコンテナが無いということで、米国内で最終消費地へ荷降ろししたコンテナを早く回収する必要から空箱回送で中国へ戻す結果、通常ならば大豆など米農産品を積んで日本に寄港する行程を省き、農産品の品薄で日本の国内物価も押し上げられています。消費が冷え込んでいる中で円安もあって家計を直撃しています。衰退国は悲しいですね。

ていうのが米中デカップリングのリアルです。米国内景気の上昇が中国を潤し衰退した日本は蚊帳の外って訳です。頼みの自動車も半導体不足で生産ラインを止めざるを得ない現状ですが、逆に品薄だから値引きしないで売れるということで、日産の黒字転換をはじめ自動車メーカーは逆に潤っております。気になるのがトヨタなどの強気で、2-3月に生産ラインフル稼働で受注残を減らすとしておりますが、需給が整った段階でマイカーの買い替え需要が一巡すればまた値引きしないと売れない事態となります。デンソーも乗っかっている熊本のTSMC工場は稼働の時点では車が売れない循環の可能性大です。これに補助金を出す政府の政策には疑問を禁じ得まわせん。成長を促すワイズスペンディングには程遠いです。

16カ月予算、膨張懸念強く 政府方針「歳出改革」消える:日本経済新聞
経済対策と言えば規模を訴求するのが習いとなって久しいですが、これ本予算で削減されたものを補正予算で復活させることが毎年度繰り返されてまして、結果的に財政支出は膨らむ一方になっております。それでも新規国債発行を32兆円に減らしたとしておりますが、借り換えと利払いで24兆円の国債費に消えますし、高齢化で社会保障費も膨張していますから、結局成長分野への支出は1兆円に留まります。

そんな中で増えているのが防衛費ですが、これも本予算で対応すべき兵器購入費などを補正予算に回しており趣旨に反します。しかも本予算ではイージスアショアや無人偵察機グローバルホークなどの購入が政府の指示で盛り込まれた結果でもある訳です。イージスアショアは結局中止されましたがグローバルホークは導入が決まっております。しかし韓国に導入されたブロック30と呼ばれるバージョンですが、米空軍は既に退役を決めています。何故ならば中国が電磁波妨害の能力を高めたため、米中対立のホットスポットである台湾海峡で使えないからというもの。結果的に日韓合わせて7機だけとなり、メンテナンスで必要な部品調達が高止まりするため、年間120億とも130億とも言われる役立たずの金食い虫です。つまり米軍産複合体の在庫処分を押し付けられたってことです。

この辺メディアもあまり取り上げませんが、台湾問題のデリケートさは踏まえる必要があります。国連決議に基づく一つの中国つまり台湾問題は中国の国内問題である一方、武力による統合は禁止するというのが国際的なコンセンサスであり、故に米バイデン政権も中国の武力による現状変更は認めないという立場で、あくまでも現状維持なんです。故に台湾の独立は「推奨しない」としており、台湾当局による挑発に釘を刺している訳です。

それなのに「台湾有事は日本の有事」とかノー天気にのたまう元首相とか、戦争したいのか?その割に使えない装備を購入して得意顔で責任は取らないお子ちゃまぶりはきちんと指摘しないといけません。そもそも核保有国同士である米中の軍事衝突は日本の有事どころか人類滅亡に繋がりかねないという意識が欠片もないのでしょうか。

逆に中国から見れば目障りなのは独立志向の強い祭英文の民進党政権であって、例えば国民党にトランプのような候補が現れて政権交代となれば、ディールで実質的に連携強化することができる訳で、当面そこに照準を合わせると考えられます。とするとサイバー分野での世論誘導や選挙介入などを警戒すべきですが、日本政府の対応はここにリーチできません。

一方脱炭素では中国との連携も模索しなければならないし、その点はアメリカも同じです。逆にこの問題を深掘りすることが中国への圧力になるという観点もあります。ドンパチだけが安全保障じゃありません。そういや元首相氏、武漢でコロナ感染が始まったことにお構いなく「国慶節で日本にいらっしゃい」をやって国内感染を拡大させましたし、アベノマスクという負のレガシーで国民の怒りを買いました。そして鉄道ネタはこちら。

鉄道・バスの二刀流、DMVが運行開始 四国で世界初:日本経済新聞
JR北海道が開発を断念したDMVを安佐海岸鉄道が地元自治体と連携して導入した訳ですが、定員20名で完全予約制で運賃800円ということで、地元民が気軽に使える乗りものではないですね。JR北海道ではレール上では4重連で輸送力を確保しつつ、道路ではルートを枝分かれさせて面的な集客につなげるという狙いだった訳ですが、車両火災等の際の避難路として観通路を設置することが構造上困難で開発断念に至ったものを、観光の目玉として利用しようという訳ですから、コンセプトとしてはJR北海道とは異なります。

地域活性化といえば観光振興というのも食傷気味ですが、観光で地域興しするときに大事なのはリピーター獲得なんです。珍しい乗り物で釣るってのは一見客の獲得にはなりますから当初はs全国自治体関係者による視察で予約は埋まるかもしれませんが、それはリピーターになるかもしれない一般客の利用と競合する訳ですし、リピーター獲得には寧ろ地域独自の文化や生活習慣で魅力を出すことで、更にリピーターから定住者になればということが狙いの筈です。その意味でDMVの定員の少なさは致命的です。とりあえず予約を視察で埋めても元は取れるかもしれませんが、後が続かずリピーターが増えて定住者もちらほらという訳にはいかないでしょう。

という訳で観光振興で地域活性化という固定観念から離れた方が良いのではと思います。

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Sunday, December 19, 2021

キッシーの温故知新

18歳以下への10万円給付がすったもんだで年内現金一括給付を認めることになりました。朝令暮改ぶりは管政権の強引な政権運営に比べっると柔軟性があるという評価の声がありますが、そもそも政策が生煮えだったから世論の動向や野党の批判で揺らいだのが実際です。消費かさ上げのための給付なのか、困窮世帯への支援なのか、子育て支援なのか、そもそもの政策の意図があやふやだった結果です。クーポンにかかる事務費もデザインを含めた民間企業への委託事業となり、下請け孫請けで抜き取られる金額も見込んでいる訳ですし、また参加店舗は限られますから、競争が抑制されて高値の値付けが可能だったり、あるいは地方議員も含めて政治家の口利きの温床にもなりかねません。政策的な消費者余剰の搾取ですね。現金2回給付は手数料が倍かかります。

その他にも金融所得課税問題も批判されて直ぐ引っ込めました。これも総合課税にしない限り根本的な解決にはなりませんし、そもそも企業保有株の配当所得は法人税との二重課税という謎理論で免除されています。個人間の格差もさることながら、企業の内部留保資金の拡大が問題視されており、例えば消費税のように配当課税を法人税から税額控除すれば文句はない筈です。困るのは法人税払っていない赤字企業の場合ですが、逆に言えば税逃れに利用できる訳ですから、その穴を塞ぐ意味はあります。

という具合に世論に敏感に反応するのは、管政権のかたくなさに比べれば確かに「柔軟」ではありますが、逆に言えば確たる裏付けのない思いつきであることに変わりはなく、単に批判された時の反応が違うだけってことですね。頑なな態度で炎上するより批判をかわす方を選ぶという意味で、前政権から学んだってことなんでしょうけど、それ故きを温ねて新しきを知ることじゃない、単なる処世術です。実際に政治判断を求められる場面ではこんな具合です。

森友文書改ざん、国が賠償責任認める 真相解明困難に:日本経済新聞
既に刑事事件としては不起訴処分となっておりますが、自殺した赤木俊夫氏の妻昌子氏が真相究明のために財務省と佐川元理財局長を訴えた損害賠償請求裁判で、国が1億700万円の賠償責任を認め、裁判は終結しました。その結果証人調べなど公判での事実確認が出来なくなりました。つまり国は税金使って事実確認に蓋をした訳です。

文書改ざんを苦にした赤木氏は自死を選んだ一方、指示した上司たちは揃って栄転しており、真実は遺族にも国民にも知らされず、その費用も税金で負担ですからふざけた話です。原告に名を連ねる佐川氏がどうするかは不明ですが、同様に賠償に応じれば公判は開かれませんが、その可能性が高いでしょう。

一方国土交通省の建築工事受注動態統計の数値改ざん問題が発覚し、2013年から始まり二重計上でGDPを上振れさせていたということで、ウソノミクスの厚労省毎月勤労統計の偽装と同様の統計偽装です。手口は業者から提出される調査票が遅れて提出されるので、60%相当の回収率で100%相当の推計値を算出した後、遅れて提出された調査票のデータをプラスしたというもので、国の指示に従って行われたということで、森友の公文書偽造と似た構図ですが、国交省の役人は赤木氏のように抵抗せずに実行したということになります。これ国民に対する背信行為ですね。そして2019年に会計検査院から指摘を受けて見直されて二重計上は止まったものの、メディアで報道されるまで発表もしませんでした。そしてこれ。

国交省の統計問題、過去データ破棄 GDP再計算が困難に 18年度以前遡れず:日本経済新聞
安倍。管政権の悪いところはしっかり継承されている訳です。つまり統計135°の歪みに悩まされる訳です。しかも偽装の疑惑はこれだけに終わらない可能性があります。例えば総務省の家計調査から推計される消費支出を経産省の商業統計に切り替えた件ではインバウンドの売上が混入している可能性がありますし、持ち家の帰属家賃など恣意的に書き換えても気付きにくいものもあります。つまりアベノミクス以来、ウソの統計数字で経済政策が立案され執行されてきた訳で、効果の測定もままならない現実があります。これを断片的事実を拾い集めて復元することで温故知新するしかない訳です。アベノミクスのインチキ極まれりです。

そんな中でオミクロン株の感染拡大が世界で広がり、国内でも海外渡航歴のない人の幹線まで確認されており、事実上市中感染が始まったと見ざるを得ない状況です。そんな中で年末年始の飲食や旅行の予約は増えており、一気に感染拡大する可能性があります。結局水際作戦はザルだったってことですね。こういうところはさっぱり学習効果が働きません。そんな中で鉄道に幾つかの動きがあります1つ目はこれ。

JR東・西、最大の本数減 首都圏で朝ピーク2割削減:日本経済新聞
国鉄末期を思わせる減量ダイヤ改正ですが、大都市圏の通勤時間帯の減便に踏み込むのは国鉄時代から見ても初めてのことでしょう。混雑緩和目標150%以下が実現できなかったのがコロナ禍で」一気に100%そこそこまで下がりました。密解消とまではいきませんが、特に運賃先払いの定期券売上の減少はボディブローのように堪えるところです。その一方でこんな動きもあります。
東京メトロ有楽町線・南北線延伸へ 22年度から影響調査【イブニングスクープ】:日本経済新聞
コロナ前の需要予測でも事業化を渋っていた東京メトロですが、コロナ禍での通勤需要の減少は東京メトロも同じ筈です。東西線などの混雑緩和の必要性から東陽町駅や九段下電留線の増強工事を行っている一方で、新線引受の余地があるのかどうかは定かではありませんが、株主である国と都の意向には逆らえないということでしょうか。補助金で補填ってことなんでしょうけど、気になるのが東京の国際競争力強化という目的が掲げられている点です。特に豊住線で湾岸と東京スカイツリーが直結されて観光周遊に便宜とか、コロナ禍が収まらない中でインバウンドの取らぬ狸はいかがなものかと思います。

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Sunday, December 12, 2021

ウィズコロナの鉄道の未来

オミクロン株が世界で拡散されてます。アフリカ南部で発生し、南アフリカで発見されましたが大元はわからず、結局医療体制の整った国で見つかったということですね。医療体制の脆弱な途上国では感染拡大を抑えられず、それだけ変異が起きやすくなる訳で、途上国ワクチン支援の重要性が叫ばれますが、医療の脆弱さ故に進まないのもまた事実です。その隙間を突いてウィルスはより巧妙に変異します。

コロナ、変異繰り返し「盾」獲得か 感染力長く保つ恐れ:日本経済新聞
スパイクタンパクの変異で正の電荷を持つ一方、肺などの粘膜に含まれるムチンと呼ばれる成分は負の電荷を持ち、両社が結合することで、飛沫の乾燥でエアロゾル化したときに空気や光の影響を防ぐ盾の役割を果たし、それだけ長時間空気中を浮遊するというメカニズムが明らかになりました。折悪しく北半球は冬を迎え乾燥シーズンでエアロゾルの延命が起きやすい状況で警戒が欠かせません。

その感染力の強さは麻疹並とも言われます。デルタ株が水痘並みと言われましたが、それを越えるもので、電車1車両に1人感染者が居れば乗り合わせたほぼ全員が感染するレベル、あるいは病院の空調ダクトを通して院内感染が広がるレベルということで、患者を収容する病床は陰圧室にしないとまずい訳で、補助金出して病床数を確保するだけでは感染拡大を防げない訳です。相変わらず政府の危機管理は穴だらけです。水際対策が言われますが、こちらのも大穴があります。

水際「抜け穴」の恐れ 空港検疫、経由国など申告頼み:日本経済新聞
国内で確認された1人目のオミクロン株感染者はナミビアからの渡航者ということですが、直行便がないので当然乗り継ぎで成田に到着した訳ですが、現状乗り継ぎの有無は空港検疫でのヒアリングでの確認しか手段がなく自己申告に依存しております。加えてこのケースでは空港での抗原検査をすり抜けて一旦入国した後に発熱し、検査の結果コロナ感染が分かり、また結果が出るまで数日かかるゲノム検査でやっとオミクロン株感染が分かった訳で、その間にどれだけの人と接触しているかを考えると震えます。精度の高いPCR検査なら発見されたかもしれませんし、また遺伝子検査故にオミクロン株のような変異株対応も可能で、実際海外では対応検査キットが開発されています。水際強化するなら当然やるべきことが行われていない訳です。

オミクロン株に関しては重症化の報告が少なく、故に問題ないとする議論もありますが、ワクチン接種が進んだ結果重症化していないだけの可能性もありますし、感染拡大すれば感染力を維持したまま強毒化する変異が起きる可能性もある訳で油断できません。当然ながら Go To トラベル再開などもってのほかです。という訳で、緊急事態宣言解除で戻りつつある国内旅行ですが、昨年秋冬の Go To で密になったことの反省からも慎重であるべきです。というかどのみちウィズコロナで旅行需要が元に戻らない前提で、補助金ディスカウントでしか生き残れない観光施設はこの機に淘汰されるべきです。

という訳でJR各社の逆風は当面続くと見るべきですが、各社の対応に違いが出てきていることが興味深いところです。JR西日本の公募増資はリニア撤退エントリーで取り上げましたが、今のところ希望退職など雇用に切り込む事業者は出てきておりません。鉄道の場合事業の専門性から社内での育成にコストを費やしており、簡単に切れないということはありますが、それでも一時帰休には踏み込んでおり、苦しい台所事情がうかがえます。

加えて国鉄分割民営化で誕生したJRの場合、元々発足時点から旧国鉄職員の継承を絞った経緯があり、特に国鉄末期の新規採用停止の影響もあってスタート時点から身軽だったという事情はありますが、それでも民営化後に各社で新卒採用を積極的に行っておりますから、それなりの大所帯にはなっております。加えて余剰人員引受問題もあり、特にローカル線廃止で規模が縮小した北海道では深刻な雇用難があり、国鉄清算事業団が本州3社に余剰人員受け入れを要請し各社が対応した訳ですが、余剰人員として選別された国鉄OBは国労組合員が多く、それ故にひと悶着ありまして、JR東日本は所属組合差別として不当労働行為の中労委裁定を受けております。

事実上の処分を受けた訳ですが、元を質せばJR北海道の人選と事業団の対応にも問題があった訳ですが、そんなこともあり、また規模が大きく受け入れを強く要請されたこともあって引き受けます。その結果国鉄末期の採用停止期間もあって国鉄OBの高齢社員が多いのもまた確かです。ですから数年以内に定年を迎える55歳以上の社員が多く、新卒補充を調整して自然減を狙うことで、わざわざ組合を刺激するような雇用調整は必要ないということですね。特にウィズコロナで輸送需要が戻らないなら尚更です。その結果こうなります。

JR東日本、山手線などでワンマン運転 25~30年に導入:日本経済新聞定年による大量退職の補充を減らすには避けて通れない合理化ですが、短編成の地方線区ではなく大量輸送を行う大都市路線でのワンマン化というところにJR東日本の意図が明確です。大都市路線の合理化は地方線区のチマチマした合理化よりも省力化効果が大きく、また地方線区でもワンマン化となればそれなりの設備投資が必要になります。例えば伊東線来宮駅の電動車いす利用問題の解決困難さを見ればわかります。投資効率を考えた判断です。

報道では山手線を皮切りに京浜東北線、横浜線、南武線、常磐緩行線での導入を目指します。勿論ワンマン化のための環境整備としてはホームドア設置や保安装置の改修(ATOやTASC)、踏切の除去などいくつかのハードルがありますが、条件が整ったところからの導入ということになりそうです。ということでこのニュースと結びつきます。

駅バリアフリー化で運賃上乗せ 23年春から10円程度:日本経済新聞
バリアフリー化と言っても特に視覚障碍者のホーム転落事故が絶えない中でのホームドア設置推進が狙いですが、そのために特定都市鉄道整備促進特別措置法(特特法)と同様認可運賃に少額の上乗せを行いそれを無税積み立てして事業費に充てるという枠組みですね。既にJR東日本の深沢社長がインタビューで同法に基づいた運賃値上げを表明しており、JR東日本単独認可の電車特定区間運賃への上乗せということでJR3社共通道認可の幹線、地方交通線運賃には触らないということですね。バリアフリーを理由に利用者に運賃負担を求めた上で合理化につなげるということです。

心配なのは人身事故その他のトラブル発生時の対応で、当然マンパワーが減る訳ですから、復旧に時間がかかるとか別のところに影響が出る可能性もあります。その辺最大労組のJR東労租の大量脱退で組合が睨みを利かせる状況が失われていることが気がかりです。JR化後の入社社員はストの経験がなく組合指導者の高齢化もあって意思疎通がうまくいかない状況にはあったと思いますが、安全輸送で睨みを利かせた実績は指摘しておきます。それがない現状での大規模な合理化に不安がないとは言い切れません。

いずれにしても人件費の圧縮でウィズコロナを乗り切ろうということですが、これも元々少子化で社員の採用が困難になる事態を想定して以前から準備してきたことですから、コロナで前倒しされたこととバリアフリー値上げが可能になる制度改正がタイミングよく揃った訳です。その意味で尼崎事故で安全対策強化に舵を切ったJR西日本には逃げ場がなく、なにわ筋線の建設が決まり大阪万博対応もあり、この先の資金需要からも株価下落につながる公募増資を余儀なくされた訳ですね。

JR東海は東海道新幹線の利用が戻っているとはいえリモートワークの浸透もあり、リモートワーク対応のS Work 車両の設定とかしてもビジネス利用は元に戻らない前提で、観光利用の掘り起こしに舵を切ります。その結果お子様連れ専用車両の設定などで、明らかに家族連れを狙っております。その意味でGo To トラベル復活に期待したいところでしょう。

JR東海はリニア建設関連の人件費を建設仮勘定に計上して営業費用から除外しております。その額凡そ86億円ほどですが、この建設仮勘定というのは建設中の工事費などの支払いを固定資産として資産計上し、建設完了後の未来の利益から償却する仕組みで、人件費も建設に専念していることを証明すれば認められます。つまり本来営業費に計上すべき人件費を資産計上している訳で、その分開業後の減価償却費の負担が重くなりますが、コロナで赤字転落したJR東海にとっては目先の決算を整えることを優先したということです。その結果事業費は膨らみ開業後の収支見通しを不透明にしますが、それでもリニア事業を見直す気はなさそうです。

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Sunday, December 05, 2021

草生えるwww師走の徒然

徒然に師走になりました。

脱炭素へ私鉄加速 京急、まず1日400本の空港線 小田急、再エネのロマンスカー:日本経済新聞
京急はとりあえず空港線で、小田急はロマンスカーVSE2編成分で限定的ながら再エネ電力を導入し、東急では世田谷線で19年4月に導入済み、西武はAGTの山口線で来年4月からの予定と、限定的ながら鉄道事業者の再エネ電力によるCO2排出削減が動き出しました。これが拡大して再エネに消極的な電力会社を動かせるようになれば良いですが道のりは遠そうです。

一方でGAFAのカーボンゼロ宣言やトヨタの再エネ電力買収などの動きもあり、石炭火力依存の日本の電力ガラパゴス化が進行中です。規模の大きすぎるJRは更にハードルが高い訳で、自ら電力事業を立ち上げるとかしないと追いつかない可能性もあります。

日本の設備、停滞の20年 総量1割増どまり チャートは語る:日本経済新聞
分配問題で日本の固定資本減耗の微増と営業余剰の増加の一方、雇用者報酬が減少していることを裏付ける結果です。企業は辛うじてキャッシュフローの範囲内を少し超える設備投資はしているものの、生産性を改善するレベルには達せず、賃金の低迷を招いている訳です。というよりもゼロ年代のベアゼロ春闘かや非正規雇用の拡大で労働市場を圧迫し続けた結果、企業が国内設備投資のインセンティブを失ったという方が実態に近いと言えます。

つまり固定資本減耗を減らして営業余剰を増やした訳です。これを賃上げの原資にしなかったから国内消費市場が委縮してしまう訳です。あるいは再エネ電力など脱炭素投資の原資にするならばそこを起点に新たな雇用も生まれるものを、むざむざ経営者と株主で山分けした訳です。汗っかきと油売りのニューノーマルの時代でもあり脱炭素が産業競争力を規定する現実を見てコロぶナ日本変異ウイルス命名、中国に配慮? 米FOXニュース:日本経済新聞WHOが習さんに忖度?そんな声が聞こえること自体がWHOの命名判断に繋がった訳ですが、日本じゃ「尾身苦労」とか言われてます。尾身さんにも忖度しろってこと?www

中国「北京五輪、予定通り開催」 開幕まで2カ月:日本経済新聞
その中国の北京五輪が注目されています。オミクロン株の感染が世界に拡大する中で、東京のバブル方式を参考により厳格化して開催という算段ですが、その結果待機期間28日とかアスリートには致命的な拘束期間が設定されたりしています。フィギュアスケートのグランプリファイナル中止など選手選考元何処る中で実施できるのか?状況は東京大会以上に厳しいものがあります。それでも開催にこぎつけて感染対策も万全だったとなれば東京のバブル方式がザルだった証明になりますし、逆に感染拡大につながればやはり東京大会は中止すべきだったことの証明になります。

一方党幹部からの性暴力を暴露したテニス選手の安否を巡る問題もあり米主導で外交ボイコットが呼びかけられておりますが、IOCバッハ機長とのビデオ面談で寧ろ疑惑を深める四面楚歌です。バッハ会長の人望のなさもあるでしょうけど^_^;。気になるのが日本の政治家やメディアの人権問題への意識でして、中国に問題があることは確かなんですが、そもそも人権は人間が自然状態で自由であるというルソーの社会契約論からきている概念で、元々主権者は国民であり国民国家はその国民から社会液役によって負託を受けて主権を行使できる存在であり、主権行使が国民に害をなす場合はそれに対抗できるとする権力対抗概念です。

その意味で人権問題がない国は無く「BLMやコロナ禍でアジア人虐待するアメリカに言う資格なし、単なる内政干渉」という中国の言い分にも一理ある訳です。但し国民国家を前提とする現在の国際社会では国を超えた普遍概念故に、その観点から中国を説得しなければならないんですが、対決姿勢を取ってしまうから説得にならないという悪循環に陥っております。オミクロン株命名に関する習さん忖度論と同根の問題があります。

鉄道車両の防犯カメラ、設置にばらつき 国が基準整備へ:日本経済新聞
予想された動きですが、防犯カメラと言っても位置や台数をどうするか?音声ありなし?指令への転送機能を持たせるか?費用負担はどうするなど論点多数でまとまるには時間がかかります。加えて画像は事後的な編集が可能なんで厚労省村木さん事件のような検察による証拠捏造による冤罪の可能性もある訳で、中途半端な議論では済みません。ハロウィンの魔物は簡単には退散しませんね。
日大理事長逮捕 マンモス大学トップ、利権構造解明へ:日本経済新聞
少子千万!国公立大学の法人化で学費が上がり私学との差が縮まっている一方、私学は補助金を得ながらもコロナ禍でも学費値上げをしており、そのために奨学金という借金を学生に背負わせ、親元離れてアパート暮らしで生活費はアルバイトで稼ぎ、そのアルバイトもコロナ禍でシフトが減らされと痛めつけられている学生を食い物にする私学の闇が問われます。背信行為での立件は難易度が高いと見て国税とタッグ組んで脱税で立件を目指しますが、文教予算を削り続けてきた政府の対応も問題です。思い切って膿を出して欲しいところです。
需要読めず負担重く 横浜市の「上瀬谷ライン」暗雲:日本経済新聞
最後は Go To リベンジ幻想で取り上げた上瀬谷ラインAGTの話題です。米軍上瀬谷通信施設跡地に巨大テーマパーク建設で相鉄が乗り出したもののコロナ禍で断念。その後三菱地所が開発事業者として検討を重ねるものの具体策が見えず、横浜市がAGT運営を依頼した横浜シーサイドラインが検討の結果降りることになり年内要諦の事業者選定が困難になりました。計画自体に無理があるし事業の見直しは避けられませんね。

つーことで師走も草生えるわ!

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