米中デカップリングのリアル
米FRBがインフレ退治モードにシフトしつつありますが、そりゃ6%超のインフレが起きていればやむを得ないところ。一方米国債10年物金利が1.5%程度ですから、実質金利は4%超のマイナスで、企業の資金調達にはプラスですが、国民生活は圧迫されます。という訳で当初インフレは短期で終息すると見ていたFRBも動かざるを得なくなった訳です。
何故見誤ったというと、供給サイドのコストプッシュインフレならばいずれ供給側のボトルネック改善で解消しますが、コロナ対応の給付金で国民の懐が暖まっており、需要が旺盛なことと同時に、それ故に失業者が就職を急がず仕事を選ぶようになった結果、港湾労働者やトラップドライバーなど労働環境が厳しい業種で求人難となっていることがあります。その結果港湾の荷役が滞り、また陸揚げされたコンテナを運ぶトラックもドライバー不足で動かないから港湾に滞貨が更に積み上がり、接岸できないコンテナ船が沖合待機させられという悪循環から抜け出せない訳です。故に新規就業者数が伸びずFRBの判断に狂いが生じた訳です。その結果コンテナ不足でこんなことも起きてます。
コンテナ船、荷動き減も運賃最高 「空箱優先」のひずみ:日本経済新聞米国内の旺盛な消費の結果、製造工場が集積する中国から船便が大挙押し寄せており、クリスマスシーズンで更に追加オーダーが絶えず、オーダー受けても運ぶコンテナが無いということで、米国内で最終消費地へ荷降ろししたコンテナを早く回収する必要から空箱回送で中国へ戻す結果、通常ならば大豆など米農産品を積んで日本に寄港する行程を省き、農産品の品薄で日本の国内物価も押し上げられています。消費が冷え込んでいる中で円安もあって家計を直撃しています。衰退国は悲しいですね。
ていうのが米中デカップリングのリアルです。米国内景気の上昇が中国を潤し衰退した日本は蚊帳の外って訳です。頼みの自動車も半導体不足で生産ラインを止めざるを得ない現状ですが、逆に品薄だから値引きしないで売れるということで、日産の黒字転換をはじめ自動車メーカーは逆に潤っております。気になるのがトヨタなどの強気で、2-3月に生産ラインフル稼働で受注残を減らすとしておりますが、需給が整った段階でマイカーの買い替え需要が一巡すればまた値引きしないと売れない事態となります。デンソーも乗っかっている熊本のTSMC工場は稼働の時点では車が売れない循環の可能性大です。これに補助金を出す政府の政策には疑問を禁じ得まわせん。成長を促すワイズスペンディングには程遠いです。
16カ月予算、膨張懸念強く 政府方針「歳出改革」消える:日本経済新聞経済対策と言えば規模を訴求するのが習いとなって久しいですが、これ本予算で削減されたものを補正予算で復活させることが毎年度繰り返されてまして、結果的に財政支出は膨らむ一方になっております。それでも新規国債発行を32兆円に減らしたとしておりますが、借り換えと利払いで24兆円の国債費に消えますし、高齢化で社会保障費も膨張していますから、結局成長分野への支出は1兆円に留まります。
そんな中で増えているのが防衛費ですが、これも本予算で対応すべき兵器購入費などを補正予算に回しており趣旨に反します。しかも本予算ではイージスアショアや無人偵察機グローバルホークなどの購入が政府の指示で盛り込まれた結果でもある訳です。イージスアショアは結局中止されましたがグローバルホークは導入が決まっております。しかし韓国に導入されたブロック30と呼ばれるバージョンですが、米空軍は既に退役を決めています。何故ならば中国が電磁波妨害の能力を高めたため、米中対立のホットスポットである台湾海峡で使えないからというもの。結果的に日韓合わせて7機だけとなり、メンテナンスで必要な部品調達が高止まりするため、年間120億とも130億とも言われる役立たずの金食い虫です。つまり米軍産複合体の在庫処分を押し付けられたってことです。
この辺メディアもあまり取り上げませんが、台湾問題のデリケートさは踏まえる必要があります。国連決議に基づく一つの中国つまり台湾問題は中国の国内問題である一方、武力による統合は禁止するというのが国際的なコンセンサスであり、故に米バイデン政権も中国の武力による現状変更は認めないという立場で、あくまでも現状維持なんです。故に台湾の独立は「推奨しない」としており、台湾当局による挑発に釘を刺している訳です。
それなのに「台湾有事は日本の有事」とかノー天気にのたまう元首相とか、戦争したいのか?その割に使えない装備を購入して得意顔で責任は取らないお子ちゃまぶりはきちんと指摘しないといけません。そもそも核保有国同士である米中の軍事衝突は日本の有事どころか人類滅亡に繋がりかねないという意識が欠片もないのでしょうか。
逆に中国から見れば目障りなのは独立志向の強い祭英文の民進党政権であって、例えば国民党にトランプのような候補が現れて政権交代となれば、ディールで実質的に連携強化することができる訳で、当面そこに照準を合わせると考えられます。とするとサイバー分野での世論誘導や選挙介入などを警戒すべきですが、日本政府の対応はここにリーチできません。
一方脱炭素では中国との連携も模索しなければならないし、その点はアメリカも同じです。逆にこの問題を深掘りすることが中国への圧力になるという観点もあります。ドンパチだけが安全保障じゃありません。そういや元首相氏、武漢でコロナ感染が始まったことにお構いなく「国慶節で日本にいらっしゃい」をやって国内感染を拡大させましたし、アベノマスクという負のレガシーで国民の怒りを買いました。そして鉄道ネタはこちら。
鉄道・バスの二刀流、DMVが運行開始 四国で世界初:日本経済新聞JR北海道が開発を断念したDMVを安佐海岸鉄道が地元自治体と連携して導入した訳ですが、定員20名で完全予約制で運賃800円ということで、地元民が気軽に使える乗りものではないですね。JR北海道ではレール上では4重連で輸送力を確保しつつ、道路ではルートを枝分かれさせて面的な集客につなげるという狙いだった訳ですが、車両火災等の際の避難路として観通路を設置することが構造上困難で開発断念に至ったものを、観光の目玉として利用しようという訳ですから、コンセプトとしてはJR北海道とは異なります。
地域活性化といえば観光振興というのも食傷気味ですが、観光で地域興しするときに大事なのはリピーター獲得なんです。珍しい乗り物で釣るってのは一見客の獲得にはなりますから当初はs全国自治体関係者による視察で予約は埋まるかもしれませんが、それはリピーターになるかもしれない一般客の利用と競合する訳ですし、リピーター獲得には寧ろ地域独自の文化や生活習慣で魅力を出すことで、更にリピーターから定住者になればということが狙いの筈です。その意味でDMVの定員の少なさは致命的です。とりあえず予約を視察で埋めても元は取れるかもしれませんが、後が続かずリピーターが増えて定住者もちらほらという訳にはいかないでしょう。
という訳で観光振興で地域活性化という固定観念から離れた方が良いのではと思います。
| Permalink | 0
| Comments (0)
Recent Comments