« December 2021 | Main | February 2022 »

January 2022

Sunday, January 30, 2022

コモディティの逆襲

鉄路的地政学で取り上げたウクライナ情勢が緊迫化しておりますが、結局NATOの東方拡大に対して文書でゼロ回答したことで、話し合いの余地を狭めてしまいました。勿論ロシアの肩を持つつもりはありませんが、ロシアとしても引くに引けない訳です。

とはいえ欧州各国の思惑は一枚岩には程遠い状況で、天然ガスのロシア依存が強く、ガスパイプラインのノルドストリーム2計画を温存したいドイツなど西欧圏諸国とロシアへの警戒感が強い中東欧圏諸国との認識の亀裂があります。米軍が増派を決めたものの、ロシアへの軍事行動ができる状況にはありません。故にアメリカはCNGや原油の供給を約束して欧州の意思統一を促しますが、欧州の分断はロシアには有利です。

一方北京オリパラ期間中の軍事行動は流石にロシアもしないでしょうから、オリパラ終了後に緊迫することはあり得ます。とはいえロシアにとっては欧州への石油やガス供給の減少はロシア経済を冷やすことになります。つまり長引けばロシアの方が経済的には苦しくなる訳で、ましてや戦火を交えれば供給網の破壊も有り得る訳ですから、ロシアが軍事行動に出る可能性は低いと言えます。但し想定外のハプニングは常にあり得ますので目が離せません。

てことでエネルギー資源高騰は当面続くと考えられます。日本でもガソリン価格が上がって元売りへの補助機支給が27日に始まりましたが、価格上昇で潤っている元売りへの補助金は殆ど無意味なのは汗っかきと油売りのニューノーマルでも取り上げましたが、ウクライナがどうなろうが当面原油価格の低下が見込めない状況は続きます。

理由は米FRBの緩和縮小と利上げで、株式や債券に張り付いていた資金がコモディティに向かっていることで、脱炭素で敬遠された石油や天然ガスの価格上昇が加速していることが大きな要因です。しかもだからといってエネルギー関連投資が増えるかどうかは不明で、結局消費j国が被る結果になりそうです。とはいえ金利上昇でドル高傾向のアメリカよりも、円安で購買力が低下している日本の方が影響が大きい訳です。

加えて日本だけの状況として円安で輸入インフレが避けられない一方、円安で外国為替特別会計(外為特会)の剰余金の国庫編入が1.4兆円ほどあります。つまり円安による為替差益で国庫が潤っている訳で、インフレが通貨への課税と言われる文字通りのことが起きている訳です。緩和歓迎の一方で消費減税を叫ぶリフレ派の主張の矛盾は明らかです。あとポリエチレン原料のナフサ価格の上昇で化成品の価格上昇が起きていますが、レジ袋有料化で化成品が値上げしやすくなっている影響もあります。偶然とはいえ悪い方向へ歯車は動きます。

こうした間の悪さは実は政府統計の改ざんにも原因があります。キッシーの温故知新 で取り上げた国土交通省の建築受注統計の改ざんに見られるように、そもそものGDPの数値が上振れする形で偽装されていたから、実体経済が見えていないため、景気のピークを付けた2018年11月に合わせるように消費税増税したりと、間の悪い政策が目立つ訳です。アベノミクスは目隠し運転だったという訳です。

加えて言えばインフレは政府にとっては消費税収の上振れとなりますから本音では歓迎している訳で、政府によるインフレ対策は期待薄です。あとは日銀が米FRB同様にインフレファイターに変身するかどうかですが、寧ろ買い込んだ大量の国債の減価を恐れて動けないのはゆくΔくるΟ で指摘した通りです。安倍晋三に長期政権を与えた国民の選択の結果です。森友問題での財務種の文書改ざん問題に見られるように、政府官僚の劣化も見られます。そしてさらに暗い未来を示唆するのがこのニュースです。

大学生に画像送信、解答得たか 共通テストで問題流出:日本経済新聞
11年前にもYahoo知恵袋で菅忍愚ゥで取り上げた京大入試不正事件がありました。実はこの手のデジタル不正は度々起きていますが、今回は依頼を受けた大学生が文科省へ申告メールを送ったことで発覚しましたが、未発覚のものも当然あり得ます。そしてデジタル機器の小型化で発見が難しくなっており、試験監督する大学教員や職員も見落とす可能性が高いことが今回の事件で明らかになりました。

先日の東大前での高校生による無差別傷害事件もそうですが、日本の学歴社会の矛盾が噴出した事件と言えます。学歴社会と言われて久しいですが、偏差値の高い有名大学の卒業生が結局就職でも就職後の出世競争でも優位ということで、受験生にとっては自分の一生を決めるイベントというプレッシャーに晒されます。

にも拘らず大学入学後に何を学んだかはあまり問われず、高偏差値の有名校の受験を突破したことがとあれるので、受験勉強で頑張っても入学後は勉強しなくなるし、よほどのことがない限り入学したら卒業は容易という日本の大学教育の矛盾がそのまま表れています。尤も大企業が新卒一括採用と年功賃金のメンバーシップ型雇用の見直しに動いており、巷間謂われるジョブ型雇用では必要なスキルを身に着けている前提で雇用される訳ですから、今のような大学の在り方では対応できません。

それでも高偏差値の有名難関校の入試を突破したことに対する評価はある訳で、一発勝負のペーパーテストを突破できる程度に地頭が良ければ楽々クリアできるし、そうでなくても受験突破のための勉強に集中できる能力というのはある訳で、企業にとっては入社後に鍛える余地があるということで評価される訳です。だから日本企業は容易にブラック化するとも言える訳ですが-_-;。

だから政権の意向に沿って統計や公文書の改ざんに手を染めることが出来てしまう劣化官僚が排出される訳ですね。逆にノンキャリアで実務に通じて公務員としての矜持を持った赤木俊夫氏のような人にとっては屈辱的な文書改ざんの押し付けだった訳ですね。こういう現実を目の当たりにすると、受験突破のための不正に躊躇なく踏み込めるメンタルのタフさも世渡りには役に立つかも。但し人の役に立つ仕事は望むべくもありませんが。

こんなだからコロナ対策もまともにできず、感染拡大を許しまん延防止で経済活動を抑える愚を繰り返します。欧米がウィズコロナで感染と経済の両立という形で出口を模索する一方、相変わらず検査が追い付かなかったり医療逼迫したりという同じ過ちを繰り返すばかりです。結局国民の自粛が頼りで、特にオミクロン株では10代以下の若年者の感染が増えていることから、結果的に会う人が陽性者かもしれないという疑心暗鬼で陽性者が出る前に学校閉鎖といった事態にまでなっております。そして年末年始に危惧された生乳廃棄がまたしても危惧される事態です。

こんな状況ですから外出自粛は続き、公共交通に客は戻らず、今年春のダイヤ改正はラッシュ時減便を含む減量ダイヤ改正となります。そんな中で珍しく輸送実績を伸ばしているのが相模鉄道ですが、新横浜戦部分開業によるJRとの直通運転開始が寄与したもので、当然輸送原価は膨張しているので収支は赤字という逆風です。それでも来年3月には新横浜戦延伸と東急との相互直通が始まります。

相鉄・東急「新横浜線」、23年3月に開業 日吉駅に接続:日本経済新聞
東急線を介して東京メトロ南北線、副都心線、都営三田線と3方向へ直通するということで7社局による相互直通運転虚偽が始まっており、具体的な詰めはこれからでしょうけど、新横浜駅は2面3線で東急の折り返し列車が設定されるということですから、素直に見れば東横線からの列車が原則新横浜折り返しで目黒線系統が相鉄線に入り主にいずみ野線方面へ直通というあたりが原則でしょうか。但し朝夕ラッシュ時や土休日でパターンを変えるのは現在のJR直通列車と同様に考えられます。

しかしコロナ禍での新線開業というのはついてないですが、コロナ禍で東京都区部の転出超過が起きており、郊外移転の傾向が見える現状から、沿線への転入増もあり得ます。また相鉄は不動産部門の比重が高く、経営的には安定していることも強みと言えば強みです。そして必ずしもアクセスの良くない新横浜へのアクセスがプラスに働くかどうかも注目です。

| | | Comments (0)

Sunday, January 23, 2022

リア充爆発感染で草生えるwww徒然

ゆくΔくるΟが進みます。予想通りデルタ株からオミクロン株への置き換えで感染爆発となりました。一部に弱毒化の指摘もあり、その根拠として従来株では肺にしか見られなかった感染部位が喉や上部気道に見られ、その分潜伏期間が短くなっていることが挙げられています。つまりウィルスが肺に達する前に発症するので重症化しにくいというロジックですが、だから軽症で済むわけではなく、感染者の増加に伴い重症化も増えており、死亡者数も今後増えるでしょう。有効な治療薬が無い状況は変わらず、また検査体制の拡充が追い付かないレベルの新規感染者増では、未知の陽性者との遭遇の恐れがある訳で、第5派までと同じ心理的不安は解消されません。当然医療逼迫も時間の問題です。

これまでの経過を見ると人が動いたり集まったりすると感染が拡大するということを繰り返している訳で、言うなればリア充感染症という傾向を示している訳で、国民としては自粛せざるを得ない状況が続きます。但し感染力の強さはそれだけ感染拡大のスピードが上がる分、終息も早い可能性があり、早ければ2月中旬にも終息となる可能性があります。とはいえウィルスが消滅した訳ではありませんから、年度替わりの異動シーズンでまた次の波が立ち上がる可能性はあります。コロナとは長い付き合いにならざるを得ないようです。

一方地政学エントリーで取り上げたように中国のゼロコロナ下の北京五輪開催がどうなるかが注目されます。東京五輪のときの経験則から言えばゼロコロナ下でも感染拡大を抑え込むことは難しいと考えられます。但し失敗が明らかになっても中国当局がそれを認めるかという問題もあり、評価の難しい問題でもあります。そして実際中国経済は確実に冷え込んでおり、人民銀行による利下げが繰り返されていることがそれを示します。

一方米国経済は順調とは言えそれ故にFRBの緩和縮小と早期の利上げ警戒から株価は下げております。特に我が世の春を謳ったハイテク株の高値が意識され始めており、巨大ハイテク企業への規制強化の動きと相まって先が読みにくくなっております。ただ米利上げは新興国からの資本逃避を呼び起こすため、それを阻止するために利上げを余儀なくされます。ただでさえコロナで経済が痛んでいる中での利上げは経済にマイナスです。

そしてこの点は実は日本も他人事ではありません。最近の円安傾向が進みドル円120円の水準を突破すれば、日本でも同じ問題が起こる可能性があります。アベノミクスによる異次元緩和や財政の拡大で円の信任が低下しており、そこへインフレが襲う訳ですから、国民生活を圧迫します。故にアフターコロナの回復は見込みにくい状況です。但し世界3位の経済大国であることには変わりなく、2,000兆円に達する国内貯蓄は陰に日に海外から狙われることになります。

例えば防衛費の拡大は米軍産複合体にとっては美味しい話です。軍事機密を理由に防衛装備品は日米政府間取引として扱われ、防衛企業から米政府が買い取って日本政府に売るスタイルで、価格は言い値プラス保守契約と秘密保持契約締結を義務付けられます。つまりリバースエンジニアリング不可で国産化も出来ず、自国防衛をアメリカの軍産複合体に依存する状況になる訳です。

これに限らず政府支出が国債で調達される状況は、つまるところ国内貯蓄でファイナンスされることですから、国民の家計防衛が米政府と企業を太らせる訳です。そうしてジワジワと蓄えた富を侵食される訳です。その変化は劇的ではありませんが、それ故に気づかないうちに貧乏になっていたということになります。

あと米利上げでハイテク株下落の結果、損失を抱えた人は日本にも少なからずいる筈です。日本株のさえない状況から米国株にシフトした投資家は、結果的に米経済を支えて損失を被ったと見ることもできます。一方日本株に投資してきた海外勢はここへ来て資金を引き揚げております。高値で手の出しにくい米国株に比べてリーズナブルだし低金利の米債券に比べればリターンも見込めるということで買われてきた訳ですが、米利上げでその構図も変わります。つまり米投資家に配当を貢いだ挙句に使い捨てられた構図です。

インバウンド観光がコロナで打撃を受けてますが、これも簡単には回復しないでしょう。というか、結局円安で日本の物価の相対的な安さが訪日客を増やしただけで、特に中国からの訪日客は富裕層より中間層中心で、所謂爆買いも物価の安さが後押ししたもので、リフレ派が目の敵にしてきた「デフレ」のお陰なんですよね。その結果京都などで観光公害が顕在化して国民生活を圧迫しております。という具合に様々なルートで日本の富が海外に流出している訳です。結局アベノミクスは日本大安売りの経済政策で国民を不幸にしました。

加えて脱炭素で自動車産業のゲームチェンジが避けられない中で、そのことに対する国内メーカーの意識が追い付いていないことが気がかりです。砂を嚙む半導体争奪戦でも指摘しましたが、欧州メーカーを中心に自動車産業のゲームチェンジが進行中で、電動化でHEVが除外されたことにトヨタが憤っていて内燃機関養護発言をしていますが、ベンツのツウェッチェCEOが言い出したことですが、単なる電動化ではなく自動化やシェアリングを同時進行させるもので、自動車産業の在り方を変えてしまおうということです。

特にシェアリングが重要なんで、自動車は耐久消費財からモビリティのツールとして資産となる訳です。故に販売数は激減し価格も上がるけど、稼働率は上がるしメンテナンスやソフトウエアのアップデートを通じて販売後も収益化されるし、生産量の減少はライフサイクルアセスメントでも脱炭素になる訳で、現在のマイカーはよほどの金持ちの道楽になるということですね。そして選択される車はベンツのようにブランドが確立しているメーカーほど有利ですし、販売減少による販売価格の上昇はリセールバリューの上昇でチャラにできるということですね。

トヨタのEV戦略はHEVを含む全方位戦略で、特にアジア地域での内燃動力の優位性を主張しているように、明らかに量の拡大を狙っている訳で、それ自体が脱炭素に反するって視点がないんですね。てことで日本の最後の砦とも言える自動車産業もガラパゴス化が見られます。また五輪選手村内での自動運転バスとパラ選手の接触事故でも「信号があるべき場所になかった」と自己弁護しましたが、それも公的に否定されました。

記事公開が終わってますが、日経記事ではトヨタの自動運転バスは横断歩道横断中の視覚障害者の選手を認識しながら、添乗していたトヨタ社員のオペレーターが誘導員の存在から選手を「制止してくれると思った」として発車ボタンを押した結果の事故ということで、完全な人為ミスです。信号機の有無は関係ありません。この程度の安全認識で自動運転に挑戦とはあまりにもお粗末です。

一方でJR東日本のドライバレス自動運転は本気度が高く、2030年頃をメドにとりあえず手前のワンマン運転は実現するつもりのようです。鉄道事故では被害が大きいこともあって安全意識が高いのは当然ではありますが、モビリティサービスの提供者としての経験値の違いは大きいと言えます。ただトヨタの場合は生産技術は高い水準にある訳で、台湾TSMCのようなOEMメーカーとしての生き残りの可能性はあると思いますが、自社ブランドでの販売は厳しいかもしれません。

貧すれば鈍すというか、衰退国企業は生き残りも茨の道かもしれません。但し別のところに面白い現象が見られます。

EVシフト、地方が先行 岐阜・愛知は東京の2倍普及 データで読む地域再生:日本経済新聞
過疎化でガソリンスタンドの維持が難しい地方でEVによる活性化が進みます。電力は過疎地にも届くし、災害時にはEVのバッテリーが非常用電源にもなりますし、また再エネ電力で地産地消という形での活性化にもつながります。この辺が案外現実解かもしれません。

| | | Comments (0)

Saturday, January 15, 2022

鉄路的地政学

前エントリーで取り上げた中国ゼロコロナリスクが現実になりました。

中国・天津、1400万人PCR検査 北京五輪控え厳戒:日本経済新聞
北京五輪間近で厳戒態勢です。天津にあるトヨタ自動車の工場の操業停止に留まらず、港湾都市の天津ですから、国際的な海運のひっ迫を助長する可能性もありますし、高速鉄道で30分という北京との近さも気になります。感染力の強いオミクロン株感染者も確認されております。

繰り返しになりますが、中国のゼロコロナリスクは、それによって都市封鎖などで経済が止まり、サプライチェーンが分断されることで、世界規模の影響があることが問題なんで、米中デカップリングのリアルがより深刻になる訳です。他人事ではない訳です。

そのアメリカが18年に制定した輸出管理改革法で、米技術を組み込んだ半導体製品の特定国(主に中国)への輸出に外国企業も米商務省の許可が必要になり、日本製半導体の輸出が減ったのですが、それを穴埋めするように米国産半導体チップの輸出が増えている現実があります。経済安保を口実とした国内産業保護策になっている訳です。

半導体に関して言えば日本産半導体は汎用品主体で市況により値動きが大きい旧世代のものが中心ですが、台湾TSMCの駒本工場誘致に4千億円も補助して、それでもTSMCが渋ったのは、市況悪化による値崩れリスクを嫌ったからで、ソニーとデンソー以外の日本企業に出資を求めたのもそのためです。高額補助金で外国企業に来てもらうのにも苦労しているのは砂を噛む半導体争奪戦で指摘した通りですが、無理が通れば道理が引っ込む経済安保問題です。

この構図は三菱電機の検査不正で似たことが起きています。三菱電機は鉄道車両用機器で実質国内トップ企業で、空調機やコンプレッサーの他パワー半導体その他の重要機器も取り扱い、海外輸出も行われていますが、海外企業が検査項目や詳細な内容を契約書に記載する一方、国内向けには記載がなく、一応国の基準で検査を行うことになっていますが、海外企業向けの検査はきちんとやっている一方、国内向け出荷分は検査数値を書き換えたり省略したりという状態になっていたことが第三者委員会の報告書で明らかになっております。つまり煩いい相手には対応し馴れ合いの国内企業向けで手抜きをしていた訳です。これ日本企業にありがちなことで笑えません。

背景としてそもそも検査部門はコスト部門としてコストカット対象ですから、人員の補強も検査機器の導入も後回しで、現実的に出荷全数を検査できる能力が欠けていたことが背景にあります。更に言えば行政改革で保健所が減らされた結果、コロナ禍で保健所がボトルネックになったこととも共通した問題点があります。社会が壊れつつある衰退国でトップダウンで物事を進めようとするとこうなる訳です。そんな中でちょっと希望が持てるかなというニュースです。

送電ロスなし「超電導」実用へ JR系、脱炭素を後押し 【イブニングスクープ】:日本経済新聞
以前から超電導技術はリニアより送電線でも実用化が先と見ておりましたが、JR総研が実用化にめどをつけた模様です。コイルに用いる新素材によって-269℃から-196℃都より高温で超電導が実現する結果、液体ヘリウムの1/10の価格の液体窒素を冷媒として利用可能になりコスト削減が可能になる訳です。既に鉄道数社が興味を示しています。DC1,500V電化路線での回生ブレーキによる負荷変動や大電流問題は既に指摘しましたが、変電所間隔を空けてコストダウンになるに留まらず、複数饋電区分間の電流制御で回生電流を遠く離れた力行列車へ回すといったことも考えられます。

またヘリウムはアメリカの天然ガス由来のもが世界唯一の商業輸出品ですが、シェールガスにはほとんど含まれず近年生産量が減っている一方、半導体洗浄などハイテク分野で使われることから、米政府が輸出規制を強めており、ディズニーランドのミッキーマウス風船が姿を消したのもそのためですが、リニアの超電導コイルに使うには量の確保が欠かせず、リニアの実現可能性に疑問符がつく要素の1つでもあります。今回の技術が即大出力の超電導コイルに応用できるかどうかはわかりませんが、クエンチの問題は引き続き残ります。

一方安全保障問題ではウクライナとカザフスタンが火種になっており、何れもロシアが絡みます。ウクライナ問題の背景としてソビエト崩壊で冷戦が終結したときに、NATOと対峙してきたワルシャワ条約機構(WTO)は共に不要ということで相互に解散と申し合わせられ、WTOは解散しましたがNATOは残り、旧ユーゴ紛争ではベオグラード空爆など軍事行動を取っている訳で、ロシアからすれば「約束が違う」という話なのですが、EUの東欧圏への拡大までは容認できても軍事同盟のNATOへの加盟は容認できないし、ましてウクライナは隣国でもあります。

勿論東部ウクライナへの介入がそれで正当化される訳ではありませんが、NATOの東方進出禁止はそれでもロシアからすれば譲歩なんですね。また譲歩を引き出すための高めの要求という面もあります。加えてアメリカの中国シフトでロシアへの圧が弱まっている面もあります。鬼の居ぬ間の洗濯でもあります。

中央アジアのカザフスタンの紛争でもロシア軍を送り込んで鎮圧しましたが、産油国でもあるカザフスタンが石油価格上昇で国内向けに低価格で出荷していたのをやめた結果の国民の不満が爆発したもので、ロシアが介入する謂れはなく、こちらの方が問題ですが、米欧の利害に絡まないからなんでしょう。実は慌てているのは中国でして、国境を接し石油供給源でもあるに留まらず、中国と欧州を結ぶチャイナランドブリッジと呼ばれる鉄道輸送路の要でもあります。ルートはウイグルからカザフスタンを経てカスピ海北側ルートではロシアからポーランドを経てドイツに至るもので、日通が日本発の船と鉄道の継走ルートとして売り込んでいます。

カスピ海南側ルートではイランからトルコを経て欧州へということですが、カザフスタンとロシアは1,520㎜のロシアンゲージであり、国境でコンテナの積み替えが発生するものの、スエズ運河経由の船便で40日かかるルートを25日程度で結ぶということで、スエズ運河座礁事故のときも生きていたルートです。

カザフスタンで内戦となればこのルートが使えなくなり、中国経済にも打撃となる訳で、中国は気が気じゃなかったでしょう。加えて言えばカザフスタンを含む中央アジア諸国と中国、ロシアは上海協力機構という同盟を結んでおり、今回のロシアの行動はそれも無視している訳で、機構を主導する中国に顔を潰すことにもなります。そういう意味で西側諸国は「勝手のやっとれ!」ってことなのかもしれませんが、民主主義や普遍的価値を理由に中国に圧力をかける西側諸国のダブルスタンダードではあります。

一方でウイグルから中央アジア、ロシア南部を経てイラン、トルコに至る地域はイスラム回廊でもあり、中国、ロシア、イランの反米同盟という上部構造とイスラムという下部構造の乖離もあり、元々火種を抱えているということも言えますが、米欧にとっては触らぬ神に祟りなしが本音かもしれません。最後にこれ。タイに延びない中国「一帯一路」鉄道 すれ違う思惑 アジア総局長 高橋徹:日本経済新聞一帯一路構想で昆明から南下してラオスに至る高速鉄道が整備され、客貨両用で整備されたのですが、それに繋がる筈のタイの高速鉄道がタイの計画変更で旅客専用となり、しかもラオス国境に至らない可能性が出てきたということです。

中国の思惑としてはタイからマレーシアを経てシンガポールまでの構想で客貨両用が前提だったものが、タイ政府が一方的に計画を変更したもの。建設や技術指導は中国に依存するものの、中国の思惑は崩れることになります。タイ政府が中国に伍してこうした動きを見せているように、米中のはざまで振り回されるだけじゃないしたたかさは日本も見習うべきところがあります。日本にとってはつらいオチだ-_-:。

| | | Comments (0)

Sunday, January 09, 2022

走れコロナ

コロナ走っちゃ困るんですが年始早々の予想は当たりました。しかも沖縄、山口、広島の3県にまん延防止等重点措置ということで、何れも米軍基地から漏れ出たと疑われております。その結果日米地位協定の話に飛び火しておりますが、オミクロン株対策で水際対策強化した時点で日米合同委員会に諮ってアメリカに協力を求めるのが筋ですが、やってなかったってことで、日本政府の不作為でもあります。林外相がアメリカに注文付けましたが、公式文書が残るだけで実効性はどうでしょうか。やったふりのアリバイ作りの域を出ないんじゃないでしょうか。てことで医療体制が整わないうちに第6派が始まります。

第5波収束から3カ月、準備なお不足 医療体制やワクチン:日本経済新聞
第5波までの教訓は何だったんでしょうか。特に保健所原則って何?検査や入院の診断は医療行為の筈なのに、未知の感染症を恐れて保健所に丸投げした医療機関が多数あって、結果的に保健所の業務が激増したのであって、この部分を変えなければ第5波のような医療崩壊が起きる可能性はあります。第5波は結局医療のキャパシティの不足によって重症化が進んだ結果と捉えることができます。

そうなったのは保健所の煩雑な手続きの連鎖による業務集中で処理に時間がかかったことが指摘されます。東京オリパラの影響も当然あります。そうした現場レベルの問題点を洗い出すこともしないで、思い付きのように水際対策強化やワクチン3回目接種や内服薬利用に期待して何とかなると楽観視していたのではないかと疑われます。喉元過ぎれば熱さをを忘れる喩え通りですね。アメリカやイギリスでは日本のより感染者数が増えているのに規制を緩めているじゃないかと言われますが、感染拡大時の医療体制が整っているからできることです。それでも厳しくなると「マスクしてくれ」「ワクチン打ってくれ」とお願いするバイデン氏やジョンソン氏のニュースが流れる訳です。国のトップが現場を把握していることを意味しますから、日本の現状にはため息しかありません。

その一方でひとりゼロコロナ政策を続ける中国ですが、北京五輪でどうなるかも注目されますが、米シンクタンクのユーラシアグループが22年の世界の10大リスクに中国のゼロコロナリスクをトップに取り上げたのはなるほどと思います。同社は覇権国不在のGゼロを予想したりして地政学的視点からの予想に定評がありますが、ゼロコロナの結果デルタ株やオミクロン株などの変異種への対応で後手を踏み、現在でも入国制限を続けている状況です。また武漢や西安など1千万都市レベルのハードロックダウンを躊躇なく行うため、それに伴う経済停滞やサプライチェーン分断に世界が振り回されるということです。尚、冒頭の米軍基地発の感染拡大は、日米の規制を含む国内事情の違いによる部分が大きいことではあります。

米中デカップリングのリアルでも指摘しましたが、中国問題というと台湾海峡有事にばかり言及されるのですが、実際は両国ともに国内問題で手一杯で、とても軍事行動を起こせるような状況にはありません。だからゼロコロナリスク自体は台湾海峡有事の可能性を下げることになるという意味では喜ばしいことですが、経済的に巨大になった中国がアメリカすら振り回している現実を見ると、やはり大きなリスクと言えます。中国恒大問題が小さく見えます。という訳で、太宰治作品の有名フレーズに倣います。

コロナに政治はわからぬ
という訳で、コロナはかなり深い部分で世界に分断をもたらしたかもしれません。分断は世界に留まらず各国国内でもあります。とりあえず Go To 再開は遠のいたと見て間違いないでしょう。鉄道や航空などの輸送サービス業の回復も展望できません。そんな中でこんなニュースです。
東急電鉄、23年の運賃値上げは13% 国交省に申請:日本経済新聞
東急電鉄にとっては Go To はあまり恩恵はないでしょうけど、リモートワークの普及で通勤利用が減ったことで余力が失われたってことです。一方ホームドア設置などの安全対策の設備投資は継続する訳で、その為には現行運賃では厳しいってことですね。

JR東日本は国交省のバリアフリー対尾策新法を利用した現行電車特定区間運賃への上乗せで対応するのに対し、東急は認可運賃そのものの値上げで距離帯によって10-60円程度の値上げを申請しました。コロナ後の回復はないと見たのでしょう。また沿線の所得水準が比較的高く、リモートワークしやすい人が多いってこともあります。同様の沿線環境の阪急がコロナの影響は軽微として運賃値上げは考えていないというのは、JR西日本との競合路線を抱える中で、首都圏に先行して通勤需要が減少に転じたこともあり影響が軽微だった可能性と、JRとの運賃差も小さく、値上げ余地が限られるという事情もありそうです。

一方で京阪電気鉄道は基本ヘッドを10分ヘッドから15分ヘッドにする減量ダイヤで対応を発表しており、ここでも判断が分かれています。恐らく並行JR線が15分ヘッドだからここまでは減らせるという判断なのでしょう。当然その分車両や要員を減らせますから、コストダウンになる訳ですが。比較的横並び意識が強い鉄道業界で今回は判断が分かれて様々な対応が見られます。

| | | Comments (0)

Saturday, January 01, 2022

ゆくΔくるΟ

オミクロン株の市中感染が次々報告されており、おそらくデルタ株からの置き換えが進んだと見て間違いないでしょう。またワクチン接種等で免疫獲得されている筈の人のブレークスルー感染も多数報告されており、感染力の強さを見せております。幸い重症化の報告は少なく、今のところ医療逼迫は見られないのは幸いです。

しかしウィズコロナの経済社会運営としては難しい局面です。重症化が抑えれれているのはワクチン効果による可能性があります。ワクチン接種されていない若年層の感染例が増えていることもこの仮説を補強します。そして感染者が増えれば医療へのストレスは増しますし、重症化する人も出てきます。また軽症でも後遺症が残る人もいて、結局感染拡大防止は続けざるを得ない状況です。そのための隔離病床や宿泊隔離施設の確保、そのための隔離期間の見直しなど微調整が必要な変数が多数あり、難しい舵取りを強いられます。年が変わっても我慢は続きます。

そんな中での経済の変調に世界は翻弄されます。米中デカップリングのリアルで米FRBがインフレ退治モードへ動く一方、他国はその影響を受けます。日本も大豆やジャガイモが入ってこないからマクドナルドの一部店舗でフライドポテト販売中止に追い込まれました。

金融正常化 コロナ下の模索 インフレ懸念、米は複数回利上げへ 世界経済に逆風リスク:日本経済新聞
アメリカの利上げは投資資金の米回帰を促し新興国からの資金流出をもたらします。故に資金を繋ぎ止めるために利上げに動かざるを得ず国内景気を冷やすことになる訳です。これ実は日本も他人事ではなくて、元々ニューヨークのサブ市場と見做されていた東京市場も同様の動きが見られます。という訳で新年早々不吉な予想ですが、株価は下がる年になると見ることができます。

日銀は現在の緩和政策の継続をアナウンスしてますが、これ正確に言えばゼロ金利で日銀自身も利ザヤを失って株式ETFとREITの配当で運営資金を辛うじて捻出している状況で、仮に利上げに動いたらほぼゼロ金利の保有国債の減価で損失が出ますから動けないし、やはり国債を保有する市中銀行も損失を出して金融危機のトリガーを引くことになるので動けない訳です。その一方で貯蓄過剰な日本では資金流出が大規模に起きる可能性は低く、言ってみればやせ我慢状態で持ち堪えている状況ってことです。アベノミクスの結果ジャガイモの買い負けに留まらずマイルドな資本逃避の気配も見えます。

東京市場からの資金流出はそれ以外にも経済安保で外資の株保有に1%ルールが適用されたこと、東証改革で発足するプライム市場へ一部上場企業も8割が移行表明していて骨抜きになっていることなども影響しておりますし、先の見えないコロナ禍による消費低迷で貯蓄過剰が進んでいることなど複数の要因によりますから、このトレンドを変えるのは容易ではありません。当然ウィズコロナの微調整による影響も受ける訳です。

そんな中で不動産価格の上昇は続いており、マンション販売価格が高騰しております。その結果商業ビルがマンションに建て替えられる事例も増えており、しかも外資による投資が増えているんですよね。経済安保を言うなら株式市場よりこっちの方が問題じゃないかと思いますが、逆に国内不動産を取得した外国人は容易に永住権を取得できるのが現実です。ということで東京の湾岸地域のマンションブームはまだ続きそうではあります。

動き出した東京の鉄道新路線構想 「臨海」に成長託す TOKYO 変わる交通網㊤:日本経済新聞
有楽町支線(豊住線)と南北線品川駅延伸は東京メトロを事業主体と知ることで動き始めておりますが、臨海部地下鉄道は事業主体が決まらないからお預け状態です。3線に共通するのは臨海部と内陸部を結ぶルートということで、品川は港区の高輪地区再開発とも連動しておりますが、臨海部地下鉄道は事業主体が決まりません。直通運転が示唆されるつくばエクスプレスは沿線開発が急で輸送力増強に追われており、車両更新や8連化などに資金が取られて東京駅延伸構想も先送りされている状況で、その先の臨海部への延伸など無理という状況です。それに加えてコロナ禍で需要予測も見直しが求められますから、元々需要的には弱いところだけに、現時点で実現可能性を云々するものではありません。

ウィズコロナで鉄道の未来が見えにくい中での新年初エントリーは夢がなくてゴメンナサイ m(_ _)m。

| | | Comments (0)

« December 2021 | Main | February 2022 »