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February 2022

Sunday, February 27, 2022

火事場の憲法

ドネツク、ルガンスク両州の親ロシア勢力に対して国家承認してその要請に従う形で始まったロシアのウクライナ侵攻ですが、これ柳条湖事件をでっち上げた日本の満州事変の構図そのものですね。当然許してはいけません。ロシアの意図はわかりませんが、ベラルーシ国境からのキエフ攻略も併せてウクライナ現政権を親ロ傀儡政権に挿げ替えるつもりでしょう。電撃的侵攻で優位を得て和平交渉ということを考えているとすれば、真珠湾攻撃と同じ構図です。

てことで戦前回帰を目指す民族保守派はどうぞロシアを最後まで擁護してください。あなた方の本当の意図がはっきりします。どさくさ紛れに「9条があると対応できない」なんて火事場泥棒のロジックを振り回すなと言いたいです。そもそも憲法は自国の政府を縛るもので、9条はプーチンのようなリーダーを生まないためのものということです。その理念を前提としたアップデートの議論はあり得ますが、今はその時じゃありません。

トランプ氏、ロシア大統領を称賛 独立承認「天才的」:日本経済新聞
何故か日本の保守界隈で擁護論が盛んなトランプ氏ですが、これで政治生命終わりそうです。バイデン政権が隙を見せたのが悪いと言いたいんでしょうけど、資金負担を嫌ってNATOを弱体化させたり核ミサイル規制のINF条約を破棄してロシアに隙を与えたの誰でしたっけ?

キエフ市民は地下鉄の駅に避難して凌いでいる状況と報じられております。これこどもの日本で取り上げたソビエト東欧圏の地下鉄が、核シェルターを兼ねて地下深くに大規模な空間を設ける冷戦仕様が皮肉にも役に立った訳ですが、その結果優勢な筈のロシア軍に対するウクライナ軍の抵抗で遅れており、その一方でロシア国内では反戦デモが大規模に起きており、ロシア市民の意思でプーチン失脚もあり得るなど状況は流動的です。

下から裏からグローバルでも取り上げましたが、局地戦で勝利して和平交渉を優位に進めるというやり方は成功した試しはない訳で、プーチンの意図通りには進まないことは断言できます。実際欧米では慎重だったSWIFTと呼ばれる国際決済システムからのロシア締め出しというこれまでと次元の異なる金融制裁の発動が決まりました。但しこれに乗じて中国がデジタル人民元ベースの国際決済システムを供与することは考えられます。更にビットコインのような暗号資産で裏口取引ということもありますので、暗号資産取引の禁止に近い規制も必要です。

てことで、そうなると日本もそれに歩調を合わせる必要がありますが、もう一つプーチンとマブダチ自慢してた元首相がまとめたロシア極東開発事業の凍結も日本独自の制裁として意味があります。北方領土問題で遠慮する余地はありません。何ならプーチン失脚後に仕切りなおせば良いんですから。この辺の優柔不断はミャンマー国軍との関係を清算できない日本外交では言い訳が立ちません。そもそも国連安保理常任理事国という特権のあるロシアがその世界秩序を壊しにかかっている訳ですから、原理原則を重視すべき局面です。

つーことでソビエト仕様の地下鉄の話題を除いて鉄分抜きですが、態度をはっきりさせておきたいと考えました。

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Sunday, February 20, 2022

宇宙禍族露貧損

緊迫するウクライナ情勢をネタにするいささか不謹慎なタイトルをお許しください。米ロの対立がエスカレートする一方、当事国のウクライナの存在が遠景に退いている現状を危惧します。米バイデン政権が問題視するのは2008年のジョージア紛争や2014年のクリミア危機でロシアの情報操作が行われた可能性から来るもので、インテリジェンス情報を根拠としていますからソースは開示されておらず、検証不能ですが、可能性の問題としてはあり得ますし、構図も似ています。

しかし違いも多く、ジョージアの媒位当時のサーカシビリ政権の強権的対応にジョージア国内で分裂があり、実際に国内の小競り合いがロシアの介入の口実とされました。クリミアに関してはウクライナの政変で親ロ派ヤヌコビッチ政権が終わったタイミングでの出来事で、やはりウクライナ国内の対立が利用されたという側面はあります。故に欧米の警戒感はある意味当然です。

一方のウクライナのゼレンスキー政権はロシアが履行を求めるミンスク合意をかわしながら、とりあえず冷静に対応していますが、NATOへの加盟の実現可能性はほぼありません。米国自身が推奨せずの立場ですし、集団安保の枠組みですから独仏など西欧諸国も万が一ロシアがウクライナに侵攻すれば対応せざるを得ず、ウェルカムとは言い難い訳です。加えてウクライナ国内でも親ロ派も居れば対ロ強硬派もいるし宗教的にも東部のロシア正教と西部のカトリックに加えて大多数のウクライナ正教という具合にモザイク模様で複雑です。この辺を単純化する佐藤優氏の評には疑問があります。

公用語もウクライナ語ですが大多数の国民はロシア語も話せるし場面によって使い分けているという状況で、地理的に分割されている訳ではありませんし国民意識もそれだけ複雑です。加えてロシアにとってはロシア帝国のルーツとされるキエフ・ルーシ公国発祥の地でもあり、自国内という意識が強い一方、独立した主権国家となったことでストレスがたまる状況にはあります。

一方でソビエト時代は軍需産業の立地地域で核装備もあったことから、ウクライナの独立後に同様に核武装のあったカザフスタン、ベラルーシと共にINF加盟を機に核を放棄してロシアが引き取る一方、ロシアは3国へ侵攻しないというブダペスト覚書が交わされました。クリミア危機でもこれを根拠に欧州はロシアの違反を問題視しましたが、鉄路的地政学で指摘したようにカザフスタンへのロシアの介入に対する姿勢との間にはギャップがあります。ちなみに「ウクライナは核放棄したからロシアに脅された」とのたまうアホなネトウヨの不勉強ぶりも可視化されました。

ウクライナはNATO加盟国じゃありませんから、米軍の派兵もNATO加盟国のルーマニアに歩兵を送っただけ。ウクライナを助けるよりもNATO加盟国への支援なんですね。つまり孤立無援で宙に浮いた当事国ウクライナの困難な状況はそのままに米ロ両国の舌戦が繰り広げられている訳です。当面このままのにらみ合いが続く膠着状態から抜け出せないというのが現状でしょう。アメリカはロシアに経済制裁をちらつかせてますが、国際金融取引からロシアを外すことなどが検討されているものの、サウジアラビアに続く世界第2位の石油輸出国であるロシアへの経済制裁は影響が大きすぎて実現可能性は低いでしょう。そしてこの点は日本にも深くかかわります。

既に日本はLNGの国内在庫の欧州への拠出を約束してますが、コロぶナ日本の鉄路で指摘したように安定供給のためにカタールと結んだ長期契約を破棄していて米ロなどLNG供給源の多様化に舵を切った後だけに間が悪く、また現行で電力不足が心配されていたのですが、実際はLNG火力の多くが点検休止中ということで、電力会社は寧ろ値上げの口実が出来て大喜びだったりしますが、ロシアからのLNG禁輸は流石にできないでしょう。尚、カタールはアフガンのタリバンとのパイプがあり、NATO準会員としたのは元々NATO軍で対応したアフガン戦争の後始末の意味もあります。

加えてコロナ禍による海運逼迫の影響緩和のために商船三井などはシベリア鉄度ルートの貨物輸送強化を打ち出しており、対ロ経済制裁の影響は図り知れません。G7で対ロ経済制裁を発動というような事態は本音では避けたいところですね。優柔不断な岸田政権がまともな判断ができる気がしません。寧ろ再生エネルギーを活用したエネルギー自給を実現できれば、こうした地政学リスクの軽減につながる訳で、経済安保を言うなら尚更です。それに関連したニュースです。

JR東日本、国内初の水素車両を公開 30年実用化へ:日本経済新聞
JR東日本が日立製作所とトヨタとの共同開発で燃料電池ハイブリッド車「HYBARI」の開発に着手し30年実用化を目標とするということですが、30年じゃ遅いなというのが正直なところです。トヨタは燃料電池車開発を進めますが悩みが水素供給網の構築で、それ故に本格的なセールスを展開できない現実があります。日産がリーフで量産EVに先鞭をつけながら充電設備の拡充が進まず伸び悩んだのと同じ構図ですが、重量の嵩むバッテリーに対して軽量な水素は大型車こそ活用の可能性が高い訳で、燃料電池バス「SORA」を開発した訳ですが、鉄道車両への応用で水素供給網の強化につなげようという狙いですが、これ既に欧州では実現していることです。

しかも欧州では元々水素は不安定な再生エネルギー活用のための蓄電システムとして着目されていたこともあり、例えばアイスランドの首都レイキャビークで地熱発電由来の電力を利用した水の電気分解による水素を利用した燃料電池バスを市営バスとして走らせるといった先進的な取り組みが行われていて多くのメーカーから燃料電池バスが供給されています。加えて例えばベンツやフィアットなどの自動車メーカーも鉄道部門を持っていたこともあり、何れも後に部門売却されたとはいえ自動車メーカーと鉄道車両メーカーの垣根が低いこともあり、ドイツでは燃料電池車が既に登場しています。

つまり完全な周回遅れなんですが、自動車を売るための駆動システムとして発想されたプロダクトアウト型の発想から抜け出せず、ソリューション供給の発想がなかったことが原因ですね。トヨタもハイブリッド車の技術囲い込みで孤立した失敗もあり、遅ればせながら燃料電池技術の無償提供に舵を切りました。しかし水素供給に関しては相変わらず化石燃料由来のブラウン水素を中心に植林事業などの排出権クレジットでカーボンニュートラルとするグレー水素といった発想から出られません。逆に国内では電力網への接続が進まず再生エネルギーの普及が制限されている状況がある訳で、余っている再生エネルギー由来の水素供給インフラを整備する方が現実的に早いし低コストです。

JR東日本もコストダウンが課題で、現状では電車よりコストは高めですが、低コスト化が見通せれば逆に地方路線の電化設備撤去といったことも視野に入りますが、そこに至るには時間がかかるという見立てないでしょう。但しディーゼル車との比較ではもう少し前倒しの可能性もありますが、例えば自治体に働きかけて地産地消再エネの水素供給プラントを作ってもらうといったアプローチもあり得ます。同時に地域振興が図れますから興味を示す自治体が出てくる可能性はあります。

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Sunday, February 13, 2022

キッシーの優柔不断

コロナの猛威が続いております。オミクロン株感染の拡大で死者が増えています。若年層で感染拡大して同居家族に感染拡大して結果的に高齢者や既往症持ちの人が重症化して死に至るという経路ですが、特徴として死因は必ずしも肺炎ではなく、既往症の症状悪化で死後診断でコロナ感染が確認された事例が増えているということです。この場合でもコロナ感染がトリガーになっているのでコロナ感染死にカウントされます。結果的に医療崩壊に近い状況が起きており、特に大阪府では死者数が異常に増えています。

そんな中でワクチンの3回目接種は進まないし、自主検査用の抗原検査キットの枯渇問題まで起きています。このグダグダぶりは感染拡大を見越した準備が出来ていなかったってことですね。第6派確実と言われていたのに何やってたんだってことで内閣支持率も低下傾向にあります。現状は明らかにトップの優柔不断がもたらしたものと言えます。とにかく岸田政権で打ち出した対策と言えば水際対策の強化ぐらいですが、それも在外邦人の帰国困難問題で批判されて邦人帰国の規制を緩和しましたが、国籍による緩和な訳で、これが世界から非難を浴びました。

強まる「開国」要求 在日米商議所など、入国制限批判 ドイツ企業「損失130億円超:日本経済新聞」
それでビジネス目的の短期出張や赴任、留学生の一部などで規制緩和を打ち出しましたが、これもおかしいんで、問題はワクチン接種や検査履歴などの客観的な基準によらない規制であることや、国内で就労中の外国人が身内の不幸などで一時帰国できないといったことが起きて人権問題になっているということです。なるほどこれじゃ中国の人権問題を強く言えない訳だ。過去エントリーのフレーズを再掲します。
コロナには政治がわからぬ
佐渡金山のユネスコ世界遺産申請問題も、外務省などが韓国の反対で実現可能性が低いと判断して見送りを決めたものの、自民党内の保守派から「歴史戦」とか意味不明の批判を受けて申請に舵を切りました。韓国の言い分は戦前の強制連行など負の歴史が反映されていないことなので、それも含めて未来へ残すと言えば済むのに、保守派に忖度して結果言いなりです。

元々韓国との関係改善にも意欲を示していた筈ですが、徴用工問題で韓国との対話も始める気配はありません。これ日韓事変で取り上げた通り、韓国の司法判断に対するイチャモンを韓国政府につけた訳で、三権分立を無視してますし、そもそも民間レベルでは和解による解決が模索されていたのを日本政府が和解するなと介入したことが起点です。結審すればこうなるという結果が見えていたにも拘らずですから、愚かとしか言いようがありません。佐渡金山世界遺産申請と似た構図です。

てことで岸田首相はリーダーとしてほとんど機能していない訳です。調整型リーダーという見方もあるようですが、元々利害の調整こそ政治過程そのもので、時に既得権に切り込むこともあり得ます。やはり調整型リーダーと言われた宏池会の先達の鈴木善幸政権では国鉄の地方交通線問題で三セク引き受けやバス化の筋道をつけて結果的に地元である岩手県の三陸鉄道がローカル線転換三セク第1号として誕生した経緯があります。下手すりゃ選挙区で大ブーイングの可能性もあった決断です。

そして資源高と円安でインフレ傾向はますます進みますが、ガソリン価格の上昇を受けた石油元売りへの補助金が上限の5円に達したものの店頭価格は上昇を続け、上限の見直しをしようとしておりますが、汗っかきと油売りのニューノーマルで指摘したように、原油の値上がりで潤っている元売りへの補助金は違和感しかありません。実際こんなです。

企業利益、素材エネ4倍 金融を抜き10年ぶり首位:日本経済新聞
日本の元売りに限らずエネルギー企業の業績上振れが起きている訳で、そこへ補助金出しても無意味どころか害悪ですらあります。例えばENEOSの和歌山製油所の閉鎖も補助金で減損処理が進め安くなったってことです。老朽施設で閉鎖は時間の問題だったとはいえ地元は大騒ぎです。二階氏の幹事長退任で重石が取れたという見方もありますが。

同様に賃上げ減税もそうですが、そもそも賃上げ余力のある企業に補助金出す意味が分かりません。内部留保を積み増している大企業は一方で希望退職を募っており、狙いは人件費の抑制です。当然労働力不足の懸念もありますが、当面は定年退職者の嘱託による継続雇用や派遣労働者の受け入れで凌いで総人件費を枠内に抑えつつ、過剰雇用の傾向があったバブル入社組の年功賃金の上昇圧力を抑えるでしょう。その上で残存者の賃金を上げて減税をせしめるという流れですね。当然ながら慢性的に人手不足な上賃上げの原資も乏しいし法人税収めるほど設けていない中小零細企業に恩恵はありません。

あと前エントリーでも取り上げたウクライナ問題を受けての欧州へのLNG融通に踏み切りました。確かこの冬の電力不足が危惧されていた筈ですが、実際は火力発電所の休止で余裕があるようですね。一方エネルギー価格の上昇で電力料金の値上げも控えます。まさか電力会社に補助金?

コロナ対策もダメ、経済もダメ、インフレで国民生活は窮地にあるのに優柔不断で何もできない最低のリーダーを抱える日本です。

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Sunday, February 06, 2022

コロぶナ日本の鉄路

ウクライナを巡る動きが騒がしいですが、前エントリーで取り上げた日本の間の悪さがここでも見られます。

崩れたカタールとの蜜月 天然ガス危機招く日本の変心 編集委員 松尾博文:日本経済新聞
東電と中部電力の合弁の火力発電大手JERAが昨年12月にカタールと結んだ長期契約を破棄しました。長年の長期契約ですが、昨年の電力危機でのゴタゴタがあったこともあり、厳寒が予想された今年の電力事情のひっ迫が予想されながら、長期契約を破棄したというのですから訳ワカメです。

JERAの言い分としては余剰分の転売に制約が課されていたりして、使い勝手が悪いってことのようですが、その一方で現在複数のLNG火力発電所を停止して点検中ということで、手持ちの在庫でやりくり可能という見通しだったのでしょう。加えて米シェールガスやサハリンなどロシア産LNGなど調達先の多様化の意図もあったようですが、ウクライナ危機で裏目に出ています。米バイデン大統領はカタールをNATO準メンバーに加える形で欧州へのLNG供給の約束を取り付ける一方、米シェールも欧州に振り向けられるし、日本にも在庫の拠出や対ロシア経済制裁への参加を要求しており、詰んでしまいました。一方ロシアは中国へのガス供給で経済制裁回避を狙います。

中ロ首脳、相互支持 台湾・ウクライナ 民主勢と対決 ガス供給でも協力:日本経済新聞
これを中ロ接近と見ると間違えます。鉄路的地政学で指摘したカザフスタンを巡るせめぎあいのように、中ロはそれぞれの利害に則って動いているだけで、欧米の経済制裁で販路を失うロシア産天然ガスの別の販路として中国を確保することが念頭にあります。てことでドツボジャパン-_-;。

一方国内ではコロナ感染爆発が止まりません。オミクロン株が上気道への感染が確認されており、おそらくその影響で潜伏期間が短く、気道の繊毛運動が活発な若年者でも感染するし、逆に感染速度が高いから軽症でも濃厚接触者への感染が進むし、家庭内で子どもが親に感染させて炎症が上気道に留まらず肺に達して重症化といったことも起きているようで、重症者が少ないから弱毒という見立ては違うようです。

そして感染速度が高まった結果、見かけ上の再生産数は低くなり、一向に収束が見えません。そして夏と違って元々心筋梗塞や脳梗塞といった季節性疾患の多い時期でもあり、コロナのために病床を空けておくことも難しいということで、東京や大阪では医療逼迫状態になっております。加えて保健所業務の逼迫で検査結果の集計が枚合わず大阪では積み残しが発生しておりますし、東京でも陽性率3割超と明らかに検査件数が過小であるサインも出ています。宣言解除後に医療体制と検査体制の強化が打ち出された筈なのに、またしても足りないという現状です。

ホントこの国で生きていくのはイノチガケです。政府も企業も国民の命二の次で好き勝手やってますね。そんな中で鉄道やバスなど公共交通は除菌や換気に配慮しながらサービスを続けていますが、一方で減便を伴うコスト削減を進めており、その結果が四半期決算にも表れました。

JR3社の10~12月、営業黒字に 宣言解除で鉄道利用回復 コロナ感染再拡大に懸念:日本経済新聞
20年10-12月期は Go To キャンペーンの寄与により乗客が戻ったもののJR東海のみ黒字でしたが、今年は東日本、西日本も黒字ということで、減便によるコスト削減が寄与しています。宣言解除が寄与したもので Go To 無しでも利用は戻るし寧ろ密を避ける意味でGp Tp はやるべきではないでしょう。加えて雇用調整助成金を活かした一時帰休に踏み込んだ一方、希望退職募集は避けており、雇用維持は果たせています。空運のANAが拡大路線の反動で希望退職募集が確実視されている一方で、鉄道はそこまでは起き尾まれていない訳です。

加えて不動産など関連事業への注力や保有不動産の転売リースバックによる流動化などの寄与もありますが、あくまでも宣言空白期の四半期決算ということで、年度ベースでの黒字化はコロナ感染状況の現状から言えば暫くお預けでしょう。また大企業による雇用調整助成金の利用は雇用保険の財源枯渇による保険料値上げに繋がりますから、より苦しい中小企業が新線書類の不備で助成金を受けられない中で、全企業と全雇用者に費用を転嫁した結果ということで微妙な気分です。こういった制度の不備による格差拡大は日本では多く見有られます。しかし一方でこんなニュースもあります。

JR西日本、大糸線のあり方協議へ 糸魚川―南小谷間:日本経済新聞
元々財務基盤が弱く投資家の損失となる株式希薄化を覚悟の上で公募増資に踏み切ったJR西日本ですが、それに留まらずローカル線の整理にも踏み込む姿勢を見せています。大糸線に関しては末端の非電化区間ではありますが、糸魚川で北陸新幹線と接続しておりますが、LRT転換した富山港線のような活性化策も見当たらず、地元協議と言っても三セク引き受けの可能性も低いしバス化しても何処まで維持できるかというぐらいに立地条件が厳しい路線です。

末端の非電化区間だけの引き受けとなったJR西日本としてはこうするしかないでしょうけど、もしも分割民営化でこの区間がJR東日本に振り分けられていれば違った結果になった可能性はありますが、ピーク時から90%減という厳しい現実からすると時間の問題という気がします。またこの区間が非電化で残された事情に北陸本線糸魚川電化で北陸電力のAC60Hz電化となったことから交直接続問題が起きて、高価な交直両用車の投入がためらわれたという事情もあったかもしれません。また地形が険しくトンネル拡張などの電化工事自体が困難だった可能性もあります。ちなみに北陸新幹線はかがやきの電源で指摘したように東北電力のAC50Hz電化なので、新在で電力が異なります。

第三セクター引き受けの困難という意味では北海道の並行在来線問題でも動きがありました。

JR北海道の余市ー長万部廃線へ 並行在来線は全国2例目:日本経済新聞
並行在来線ではありませんが、根室本線の富良野―新得間も廃止方針が打ち出されており、北海道の鉄路はミッシングリンクが増えることになります。元々過疎化で自治体の財政力が弱まっている事情はありますが、広域自治体としての北海道の冷淡な姿勢が背景にあります。鈴木直道知事は元夕張市長として石勝線夕張支線の廃止協議をまとめた本人ですが、夕張支線は夕張市域内の行き止まり線で対応が容易だったし夕張鉄道という地場の有力バス事業者の存在もあって特異な立地です。この成功体験で道全体の交通政策を一般化するのは乱暴です。

一方で熊本豪雨で鉄橋流出して休止中の肥薩線の復旧に熊本県は河川予算や道路予算の活用を検討しているということで、実現すれば画期的ですが、北海道と熊本では人口の密集度も違いますし、一般化は慎重にすべきなのは言うまでもありませんが、コロナ禍で逆風の公共交通をどうするかは行政がもっとコミットすべきでしょう。人口減少下にある日本で過疎化を嘆いていても誰も助けてはくれませんし。

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