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Sunday, February 06, 2022

コロぶナ日本の鉄路

ウクライナを巡る動きが騒がしいですが、前エントリーで取り上げた日本の間の悪さがここでも見られます。

崩れたカタールとの蜜月 天然ガス危機招く日本の変心 編集委員 松尾博文:日本経済新聞
東電と中部電力の合弁の火力発電大手JERAが昨年12月にカタールと結んだ長期契約を破棄しました。長年の長期契約ですが、昨年の電力危機でのゴタゴタがあったこともあり、厳寒が予想された今年の電力事情のひっ迫が予想されながら、長期契約を破棄したというのですから訳ワカメです。

JERAの言い分としては余剰分の転売に制約が課されていたりして、使い勝手が悪いってことのようですが、その一方で現在複数のLNG火力発電所を停止して点検中ということで、手持ちの在庫でやりくり可能という見通しだったのでしょう。加えて米シェールガスやサハリンなどロシア産LNGなど調達先の多様化の意図もあったようですが、ウクライナ危機で裏目に出ています。米バイデン大統領はカタールをNATO準メンバーに加える形で欧州へのLNG供給の約束を取り付ける一方、米シェールも欧州に振り向けられるし、日本にも在庫の拠出や対ロシア経済制裁への参加を要求しており、詰んでしまいました。一方ロシアは中国へのガス供給で経済制裁回避を狙います。

中ロ首脳、相互支持 台湾・ウクライナ 民主勢と対決 ガス供給でも協力:日本経済新聞
これを中ロ接近と見ると間違えます。鉄路的地政学で指摘したカザフスタンを巡るせめぎあいのように、中ロはそれぞれの利害に則って動いているだけで、欧米の経済制裁で販路を失うロシア産天然ガスの別の販路として中国を確保することが念頭にあります。てことでドツボジャパン-_-;。

一方国内ではコロナ感染爆発が止まりません。オミクロン株が上気道への感染が確認されており、おそらくその影響で潜伏期間が短く、気道の繊毛運動が活発な若年者でも感染するし、逆に感染速度が高いから軽症でも濃厚接触者への感染が進むし、家庭内で子どもが親に感染させて炎症が上気道に留まらず肺に達して重症化といったことも起きているようで、重症者が少ないから弱毒という見立ては違うようです。

そして感染速度が高まった結果、見かけ上の再生産数は低くなり、一向に収束が見えません。そして夏と違って元々心筋梗塞や脳梗塞といった季節性疾患の多い時期でもあり、コロナのために病床を空けておくことも難しいということで、東京や大阪では医療逼迫状態になっております。加えて保健所業務の逼迫で検査結果の集計が枚合わず大阪では積み残しが発生しておりますし、東京でも陽性率3割超と明らかに検査件数が過小であるサインも出ています。宣言解除後に医療体制と検査体制の強化が打ち出された筈なのに、またしても足りないという現状です。

ホントこの国で生きていくのはイノチガケです。政府も企業も国民の命二の次で好き勝手やってますね。そんな中で鉄道やバスなど公共交通は除菌や換気に配慮しながらサービスを続けていますが、一方で減便を伴うコスト削減を進めており、その結果が四半期決算にも表れました。

JR3社の10~12月、営業黒字に 宣言解除で鉄道利用回復 コロナ感染再拡大に懸念:日本経済新聞
20年10-12月期は Go To キャンペーンの寄与により乗客が戻ったもののJR東海のみ黒字でしたが、今年は東日本、西日本も黒字ということで、減便によるコスト削減が寄与しています。宣言解除が寄与したもので Go To 無しでも利用は戻るし寧ろ密を避ける意味でGp Tp はやるべきではないでしょう。加えて雇用調整助成金を活かした一時帰休に踏み込んだ一方、希望退職募集は避けており、雇用維持は果たせています。空運のANAが拡大路線の反動で希望退職募集が確実視されている一方で、鉄道はそこまでは起き尾まれていない訳です。

加えて不動産など関連事業への注力や保有不動産の転売リースバックによる流動化などの寄与もありますが、あくまでも宣言空白期の四半期決算ということで、年度ベースでの黒字化はコロナ感染状況の現状から言えば暫くお預けでしょう。また大企業による雇用調整助成金の利用は雇用保険の財源枯渇による保険料値上げに繋がりますから、より苦しい中小企業が新線書類の不備で助成金を受けられない中で、全企業と全雇用者に費用を転嫁した結果ということで微妙な気分です。こういった制度の不備による格差拡大は日本では多く見有られます。しかし一方でこんなニュースもあります。

JR西日本、大糸線のあり方協議へ 糸魚川―南小谷間:日本経済新聞
元々財務基盤が弱く投資家の損失となる株式希薄化を覚悟の上で公募増資に踏み切ったJR西日本ですが、それに留まらずローカル線の整理にも踏み込む姿勢を見せています。大糸線に関しては末端の非電化区間ではありますが、糸魚川で北陸新幹線と接続しておりますが、LRT転換した富山港線のような活性化策も見当たらず、地元協議と言っても三セク引き受けの可能性も低いしバス化しても何処まで維持できるかというぐらいに立地条件が厳しい路線です。

末端の非電化区間だけの引き受けとなったJR西日本としてはこうするしかないでしょうけど、もしも分割民営化でこの区間がJR東日本に振り分けられていれば違った結果になった可能性はありますが、ピーク時から90%減という厳しい現実からすると時間の問題という気がします。またこの区間が非電化で残された事情に北陸本線糸魚川電化で北陸電力のAC60Hz電化となったことから交直接続問題が起きて、高価な交直両用車の投入がためらわれたという事情もあったかもしれません。また地形が険しくトンネル拡張などの電化工事自体が困難だった可能性もあります。ちなみに北陸新幹線はかがやきの電源で指摘したように東北電力のAC50Hz電化なので、新在で電力が異なります。

第三セクター引き受けの困難という意味では北海道の並行在来線問題でも動きがありました。

JR北海道の余市ー長万部廃線へ 並行在来線は全国2例目:日本経済新聞
並行在来線ではありませんが、根室本線の富良野―新得間も廃止方針が打ち出されており、北海道の鉄路はミッシングリンクが増えることになります。元々過疎化で自治体の財政力が弱まっている事情はありますが、広域自治体としての北海道の冷淡な姿勢が背景にあります。鈴木直道知事は元夕張市長として石勝線夕張支線の廃止協議をまとめた本人ですが、夕張支線は夕張市域内の行き止まり線で対応が容易だったし夕張鉄道という地場の有力バス事業者の存在もあって特異な立地です。この成功体験で道全体の交通政策を一般化するのは乱暴です。

一方で熊本豪雨で鉄橋流出して休止中の肥薩線の復旧に熊本県は河川予算や道路予算の活用を検討しているということで、実現すれば画期的ですが、北海道と熊本では人口の密集度も違いますし、一般化は慎重にすべきなのは言うまでもありませんが、コロナ禍で逆風の公共交通をどうするかは行政がもっとコミットすべきでしょう。人口減少下にある日本で過疎化を嘆いていても誰も助けてはくれませんし。

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