電気が足りない言い訳じゃない
イントネーション次第でニュアンスの変わるタイトルですが、好きにお読みください。言うまでもなく今回の東電管内の電力非常事態の話題です。実は去年も電力需給逼迫はありました。電気が足りない訳じゃない去年の1月の極寒で予備率が低下した訳ですが、このときは東電が企業の自家発電電力をかき集めて対応した結果、電力卸市場(JPEX)の価格高騰で電力小売りの新電力各社に逆ザヤが起きて収支が悪化し、結果的に多くの新電力事業者が撤退に追い込まれました。大手電力のなりふり構わぬ振舞いがあった訳です。
今年は先日の福島県沖地震で東電と中部電力の合弁のJERAが保有する火力発電所の被災に季節外れの寒の戻りが重なったものですが、16日の地震当日には200万戸の停電が起きていまし足し、節電要請は避けられない状況ではありました。しかしコロナ同様国民に自粛を求める政府の危機管理のお寒い状況は指摘しておきます。そして22日は揚水発電フル稼働で凌いだものの、翌23日はそれ故に養親発電上部調整池の水量が戻らず危惧されましたが、結果的には天気が回復して晴れたお陰で太陽光発電量の増加に救われたということで、薄氷を踏む綱渡りだった訳です。
このドサクサで柏崎刈羽を動かせと発言する人が複数いましたが、この人たちはそもそも柏崎刈羽が何故動かせないのかを知らないのでしょうか。昨年3月24日に原子力規制委が東電に対して核物質防護に関して是正措置命令を出し4月7日に確定し、事実上の運転停止命令となっています。元々は20年9月20日の東電社員による他人のIDカードによる中央制御室へ不正侵入したことが21年1月23日に発覚し、規制委による甘い処分も問題視され、更に今日ry9億企業作業員が誤って侵入検知装置を壊したり安全対策工事が終わっていないことが発覚したりしたことが重なって、21年6月とされた再稼働手続きの保留を規制委が決めてという風に迷走したあげく再稼働が出来なくなった一連を無視しています。ニュース見てないのか、見て知っていて敢えてならば不誠実な発言です。
更に言えばロシアデカップリング進行中 で指摘した大規模電源のリスクこそが問題の本質だということを改めて申し上げたいところです。当たり前ですが大規模電源がダウンしたら出力カバーが困難なのは当然で、ウクライナでもザポロジエ原発のロシア軍制圧で給電が制限されて無差別攻撃されているマリウポリでは電気も水道も止まっていると言われます。大規模電源は安全保障上も弱点になりますし、今回の地震のように災害で被災した場合も弱点になります。そもそも柏崎刈羽も2007年の中越沖地震で全停止してそれ以来再稼働出来ていない訳ですが、当時も東電は節電要請で乗り切りました。
その意味で再エネによる小規模分散電源ならば一部が止まっても全体への影響は軽微で済みますからリスク分散になる訳です。実際上記のように23日の節電要請は天気回復により午前11時には解除されました。確かにお天気次第という不安定さはありますが、広域に分布する太陽光発電が全て雨天や曇天で発電できないという状況は考えにくい訳で、この点も分散電源に優位性があります。これらは単体での主tryく調整が困難という弱点を補って余りある利点です。
にも拘らず汗っかきと油売りで取り上げた九電ショックのように再エネの接続拒否が普通鵜に行われ、結果的に日本は再エネ発電のコストダウンも進まず再エネ後進国となっている訳です。余談ですがこの当時もロシアのクリミア併合に繋がるウクライナ危機がありました。加えてEUの国際送電網による送電である程度カバーされており、こういうことも危機管理上重要です。周波数の違いなどを言い訳に電力会社間の連系線の整備すら進まない日本の電力網には大きな弱点があります。
当時九電は太陽光発電の定格出力の合計値が送電線空き容量をオーバーすることを根拠に接続拒否した訳ですが、元々再エネの稼働率は7-8割程度で、需要ピークを満たすには3割増しの定格出力が必要、つまり予備率を30%程度取ることで需給をマッチングさせる訳ですが、その為には送電網に需給調整が可能な柔軟性が備わっている必要がある訳で、その為に蓄電池や水素による蓄電とセットで対応することで、出力の不安定さを調整することが必要ですが、そちらはあまり進まず、あまつさえ水素を輸入する話にすり替えられている現状は危機意識の欠如としか言えません。
で、よく考えてみれば火力にしろ原子力にしろ発電所で出力調整をしている訳で、例えば原子力発電の場合、発電電力の3割は制御電源として自家諸費している訳で、故にアh津田効率自体は再エネと変わらない訳で、ただ送電網の安定のために冗長性をどこに持たせるかの違いしかない訳です。逆に停止時の原子炉や使用済み核燃料の冷却のためには外部電源が必要な訳で、それが失われた結果が福島第一原発の事故だった訳です。そもそも不確定性原理が働く原子力の出力は先験的に安定している訳ではありません。それでも調整しきれずに揚水発電所で出力調整せざるを得ない訳ですが、それが今回の電力危機では助けとなったけど、本来の目的とは異なった使い方だったのですが。
という具合に大手電力の既得権に食い込めないことが問題を引き起こしているとまとめることができます。この辺はコロナ禍での保健所の機能不全、政治家や高級官僚の科学的根拠のない思いつき、保健所の機能不全、厚労省の事なかれ主義、医師会の非協力など既得権でがんじがらめで機能しない日本のコロナ対策と通底する本質的問題があります。一言で言えば公共の喪失ということでしょう。
例えば全国に先駆けて水道事業の民営化を行った宮城県ですが、今回の地震で断水が続き批判を浴びています。所謂コンセッション方式でヴェオリア日本法人が受託し、水道料金の値上げなどは行われたものの老朽水道管の耐震管への交換は進まず今回の事態となった訳です。運営権を得て料金改定の自由度は増したけど、自己保有資産ではないので減価償却されず設備の補修や更新の費用は手当てできない訳です。制度の問題としては元々地方公営企業の水道事業は独立採算で水道料金で維持運営されている訳ですから、水道管の更新が必要なら利用者の同意を得て料金値上げすればよいところを民間へ丸投げすれば、請け負った企業は権利行使としての値上げはするけど設備の保全は自治体の仕事としか見ない訳です。
という訳で、民営化なら何でもよい訳ではなくJRのような完全民営化ならば減価償却資金で自社資産の保全が可能な訳で、東北新幹線の脱線事故でも自前で復旧を図る訳です。そして新幹線は万能ではないで全幹法で国の事業とされた新幹線事業を国を法改正せずにJR各社と読み替えた結果、様々な矛盾が出てきています。そして北海道新幹線の並行在来線問題で続報です。並行在来線の小樽―余市、北海道小樽市がバス転換容認へ:日本経済新聞鉄道での存続を希望していた余市町の意向に拘わらず小樽市がバス転換を容認したことで、事実上余市―小樽間のバス転換が決まりました。現実的には沿線人口減少で鉄道での存続が困難なのはその通りですが、函館本線山線区間の長万部―小樽間の廃止が決まった訳で、結果的に新幹線駅ができる倶知安町以外の自治体にはメリットのない結果となりました。
その倶知安町は国際リゾートとして誉れ高いニセコの玄関口ですが、鉄路的ニュースの蛇足で取り上げたように地価上昇と物価上昇で住みにくい街に変貌しており、新幹線のメリットが活かせるとも思えません。寧ろ新千歳空港への鉄路が失われることはマイナスですが、そもそも富裕層は鉄道使わないかも。その面でも新幹線駅が機能するとは思えませんが。
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