ロシアデカップリング進行中
ロシアのウクライナ侵攻が長引いています。米情報当局が公開した48時間キエフ陥落は正直言えばロシアもそこまではしないだろうと思っていましたが、ロシア国営放送の予定稿と思しきテキストが漏洩したことで、少なくともロシア当局は主観的に想定していたと見られ、ある意味正しさが証明されました。同じ情報は中国当局にももたらされましたが、やはり真に受けず寧ろ経済制裁に反対する姿勢を見せておりました。しかしその中国がロシアの暴走に困惑していると見られます。
「ロシア即時撤退を」国連決議141カ国賛成、5カ国反対:日本経済新聞法的拘束力のない総会決議ですが、反対は5カ国だけで、中国を含む50カ国ほどは棄権して様子見姿勢です。中国は安保理決議でも棄権しており、拒否権発動したロシアとは異なった対応を取りました。アメリカとしてはインテリジェンス情報を公開してまで、中国にロシア説得を期待したようですが、中国はロシアが今回のように全面侵攻するとまでは思っていなかったようです。
そして総会決議で国際社会の反応が可視化されており、安易にロシア支援を打ち出すのもはばかられる状況です。そして経済制裁も金融制裁の最終兵器とも言われるSWIFT遮断に踏み込みました。SWIFTから遮断されても他の手段で貿易決済は可能ですが、手間がかかり量をこなせない状況ですから決済の停滞は確実にロシアを追い詰めますし、加えて今回ロシア中銀を制裁対象に加えたことが大きいと言えます。経済制裁でルーブル安になっても外貨準備を用いた為替介入による通貨防衛が困難になりますから、国内のインフレで経済を痛めつけることになります。国民のロシア政府に対する不満が高まれば政権が倒れる可能性もある訳です。
とはいえこれは諸刃の剣でもあり、逆に追い詰められた国民の不満を諸外国の制裁のせいとして結束を高める副作用もあります。そしてロシア国内ではすでに報道管制が敷かれていてSNSの遮断なども行われており、国民には当局発の情報しか届かない状況になっているようです。という訳で長期化は避けられない可能性はあります。しかしそれはロシアを更に経済的に追い詰めることにもなります。
火災の欧州最大級原発、ロシア軍が制圧 すでに鎮火:日本経済新聞9.11を受けてテロを想定した空からのアタックに耐えられる堅牢な構造を求められた原子力発電所ですが、炉型の古いザポロジエ原発が対応しているかどうかはわかりません。そこへの砲撃という蛮行に及び、IAEAに「想定していない事態で最悪チェルノブイリ以上のシビアアクシデントもあり得る」と言わしめたものです。ちなみにテロ対策は既存の原発も改修を求められており、それを柏崎刈羽で誤魔化したとして規制委の処分を受けた東電は原発再稼働を事実上封じられております。
その柏崎刈羽原発ですが、中越沖地震で全停止して東電管内で電力不足が心配されたように、効率的とされた大規模集中電源が災害リスクに弱いことを露呈しました。ロシアが原発を押さえようとしたのはおそらく大規模電源を制圧して電力供給を絞ってウクライナの産業や生活に圧力をかける意図なのでしょう。シビアアクシデントによる放射能漏れに留まらず、原発のリスクはこの大規模集中電源というところにもある訳で、その意味で小規模分散電源となる再生可能エネルギーの方が安全保障面でも優位性があります。話題を戻します。
物流まひ、ロシア痛撃 コンテナ海路の大半が欧州で遮断:日本経済新聞金融に留まらず実体経済に直接かかわる物流でロシア向け船舶の寄港を欧州の港湾が拒否していて事実上封鎖状態になっています。加えてチャイナランドブリッジと並ぶユーラシア横断陸路のシベリア鉄道もヤードのコンテナ貨車が激減している様子が衛星写真で確認されており、ほぼ完全に封じ込められている現状です。ロシアが音をあげるのは時間の問題ですが、戦時中の日本のように悪あがきすれば、それだけ戦争被害が拡大します。あとEUのロシア機の空域規制でロシアも報復規制しANAやJALも追随しています。航空便も影響を受けています。
これが可能なのはロシアの経済規模を知れば納得なんですが、1.4憶認の人口でGDP1.6兆ドルですから5兆ドルの日本より若干多い人口で1/3の経済規模です。ですから逆に言えば人口が日本の10倍GDPが3倍になる中国の封じ込めは困難だけど、ロシアなら可能ということですね。何しろ永世中立国のスイスまで制裁に踏み込んでますし、軍事的中立を重んじてNATO非加盟だったスウェーデンやフィンランドもNATO加盟検討が伝えられます。ロシアは自らの行動で世界から見放されている訳です。プーチンが失脚するしか出口がなさそうです。
米アフガン撤退でタリバンの政権返り咲きにはロシアの後押しがあり、ソビエト時代の因縁を乗り越えて親米傀儡政権を追い出したことで留飲を下げた可能性はありますが、そのアメリカが撤退時にも整然としたロジスティクスを見せたことは撤退は敗北に非ずで指摘しましたが、アメリカも撤退方針はオバマ政権時代に打ち出されたものの、アフガン政府の統治能力が低く、都市部を離れるとタリバンが実効支配していたし、補助金ピンハネで北軍兵士の賃金未払いも常態化しており、タリバンに対して戦わずして投降し米軍支給の兵器も渡す体たらくで、別にタリバンはロシアの力で復権した訳じゃありません。
そしてウクライナではやはり士気の低いロシア軍兵士がウクライナ軍に次々投降しロシア当局の思惑が外れるという逆転現象が起きている訳で、皮肉な話です。寧ろアメリカが関与したベトナム戦争も泥沼化の上敗戦してますし、軍事力の優位で現状を変更することの困難さは歴史が繰り返しています。ロシアはその辺を学んでいないんですね。
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