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Sunday, May 15, 2022

西武鉄道サステナ車両の徒然

やはりというか大型連休終わったけど コロナ感染はじわじわ増えています。国内死者が3万人越えと、決して終わっていない現実は受け止めるべきでしょう。それでもワクチン接種が進んでいることで、重症化予防で医療崩壊を防げて入るものの、オミクロン株では若年層の感染者が増えた一方、高齢者の死亡が増えていることから、軽症で済む若年層が高齢者へ感染させるルートが考えられます。

欧米ではウィズコロナで規制を緩める動きもありますが、深刻な後遺症の報告も多数あり、まだまだ警戒を怠ることはできません。加えて中国等のゼロコロナ政策の破綻が見えてきており、結局世界のどこかで感染拡大が続く限り、新たな変異株の出現と置き換わりは続くと見るべきです。その意味で気になるニュースです。

北朝鮮、コロナ発熱52万人 金正恩氏「建国以来の大動乱」:日本経済新聞
経済の生命線の筈の中朝国境を度々封鎖までして国内感染を防いできた筈の北朝鮮が、公式に国内感染を認めたというのは大ニュースです。しかも中国製ワクチンすら拒否してきただけに、免疫保持者はほぼ皆無ですから、相当深刻な状況と考えられます。韓国の政権交代を踏まえた核実験の予測もありますが、恐らくそれどころじゃない国内状況だと思います。そして医療の脆弱さもありますし、感染爆発は新たな変異株の出現も心配です。コロナ禍は続きます。

話題は変わって西武鉄道の22年3月期決算の添付資料が話題になっております。

西武鉄道、無塗装・VVVFインバータのサステナ車両導入で“黄色い電車”を置き換え。省電力化で固定費削減へ:トラベルWatch
無塗装VVVF制御車の中古車を「サステナ車両」と呼称して他社から購入するとしており、早速ネットではどの社のどの車両かと詮索が始まっておりますが、現時点では複数社と協議中で、とりあえず22年度中の導入はないというのが公式発表ですので、当分この話題は鉄ちゃん的には楽しめます。

中古車とはいえ無塗装VVVF制御車の活用は、償却済みであれば車両価格自体はタダ同然で、運送費と自社線適合改修費用をかけても格安で車両調達ができる訳ですし、運送費や改修費も取得価格に含まれますから動産として減価償却対象となりますので、費用負担の面を考えれば合理的ですし、また車両としての使用価値の残っている車両の活用は資源配分上も望ましいし、また車両新製時に生じるCO2排出などの環境負荷軽減にもつながりますので、サスティナビリティの観点からも望ましいことになります。総合車両製作所(JTREC)のステンレス車ブランドと紛らわしい命名ではありますが^_^;。

背景は言うまでもなくコロナ禍による運賃収入の減少ですが、多摩湖線や多摩川線の101系や本線系統に多数残る2000系の置き換えに高価な40000系では時間もかかるし、また車両数の見直しも併せて実施するということですが、時期や規模は今のところ明らかではありません。数の上では2000系の置き換えの方が急がれますし、省電力効果も大きいことと、加えて車両自体の経年状況から地方私鉄への譲渡の可能性も高く、コスト圧縮効果が大きいということは押さえておくべきでしょう。

大手私鉄の中古車導入は驚きを以て見られておりますが、元々西武鉄道は戦災国電その他の旧型国電の大量払い下げで戦後の輸送力増強を進めた実績があります。西武鉄道は戦災の影響は軽微で被災車両はゼロであったものの、資材不足と酷使で稼働車両の確保が難しい戦後混乱期には西武にに限らずどこも同じでした。

そこで当時の運輸省は国鉄に戦時設計のモハ63を大量投入し、戦災車、事故車、老朽木造車の私鉄払い下げを行う一方、地方鉄道法準拠の運輸省規格型電車を大手私鉄等に割り当て、代わりに在籍車の一部を地方私鉄に譲渡するという形で、国内の車両製造工場をフル稼働させて車両不足解消を図りました。所謂選択と集中を国ぐるみで行った訳です。

モハ63に関しては一部私鉄にも割り当てられ、東武鉄道、東京急行電鉄、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、山陽電気鉄道の各社に割り当てられました。東急は大東急時代で小田急線と経営受託中の相模鉄道線へ、近鉄は戦時統合中の南海線へ配属し、山陽は唯一の標準軌線だったので広軌63の俗称で呼ばれました。定かではありませんが、運輸省は車両限界の大きい新京阪線改め阪急京都線への配給も打診したものの断られたと言われております。幻の広軌63だった可能性はあります。大柄なモハ63導入に当たって各社は限界拡張や橋梁などの構造物荷重の補強を行ったものの、支障物が多い名鉄の初代モ3700ク2700は使いどころを見出せず、後に東武鉄道へ14両、東急分離後の小田急電鉄へ6両を譲渡しています。

西武鉄道もやはり打診されたものの、在籍車の地方転出の強制など運輸省の規制を嫌ってモハ63も規格型電車も導入せず、専ら戦災車や事故車の復旧車を中心に車両を補強し、また木造国電まで払い下げを受けてなりふり構わない姿勢を見せます。後に木造国電は国鉄モハ50と同型の車体に乗せ換えたり、新車の一部を木造車鋼体化名義として車籍流用されて姿を消しています。モハ63は入れなかったけど、結果的に地方鉄道規格から国鉄規格に車両限界を拡大した結果、高度成長期の輸送力増強を助けることにもなりました。更にカルダン駆動車の時代にも国鉄クモハ11400番台を払い下げを受けてクモハ371としたりしており、国鉄標準の制御器CS5で統一されていたことが好都合だったという面もあります。

戦災国電等の復旧車は東武鉄道、京成電鉄、東京急行電鉄、小田急電鉄、相模鉄道などでも見られましたが、特に東急は西武に次ぐ37両の払い下げを受けております。面白いエピソードとしてはJTRECの前身の東急車両で復旧工事を実施したデハ3600を神武寺経由で菊名の渡り線で東横線へ発送するに際して車体の形式表記の頭に6を書き足して636XXとしてモハ63配給に偽装したところ、車体長が短いし緑色だしということで不審に思った国鉄職員の通報で発覚し大層怒られたとか。当然今なら犯罪行為として立件されるところですが、怒られただけで済んだとは暢気なものでした。

あと大手私鉄の中古車譲受では名鉄のも3880ク2880とモ3790ク2790もあります。前者は東急デハ3700クハ3750で、第一次オイルショックによるガソリン価格上昇でクルマ天国の中京圏でも電車通勤へのシフトが見られ、混雑が激しくなったことから導入されたものです。同型が選ばれたのは上述の運輸省規格型でモ3800とメカやスペックが同等ということで、1975年に3連4本12両、1980年委3連3本9両が成就され、クハ1両の不足分は東急クハ3671が当てられ合計21両が揃いました。

後者は水害で橋梁流出のため休止から廃止に至った東農鉄道駄知線のモハ110クハ210を引き取ってモ3790ク2790として築港線で運用しました。東農モハ110クハ210は元は西武鉄道モハ151クハ1151で1927年から8年にかけて製造された川崎造船所製のオールドタイマーですが、災害で廃止した系列会社の救済の意味もあったのでしょう。同年美濃町線に札幌市電A830改めモ870もも導入しており、美濃町線すら輸送力増強が必要だったようです。過去を遡れば岐阜市内線の北陸鉄道金沢市内線のボギー車を受け入れるなどしております。大手私鉄としては異端の存在だったんですね。

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