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Sunday, June 05, 2022

第三次オイルショックで大惨事の老いる先進国

コロぶナ世界では米NY株式の大暴落を予想しましたが、今のところ小刻みな小康状態を続けています。しかし景気減速を示す経済指標が発表される中で、株価は経済のファンダメンタルズと逆の動きになっております。景気悪化すればFRBが優しいハト派に転換するという根拠のない期待からですが、逆にFRBは株価が上がると消費を刺激しかねないと引き締め姿勢を見せますから、投資家の期待とは裏腹なチキンレースになっております。

逆に日経平均株価は徐々に上げていて対照的な動きですが、これは円安の寄与とNY市場のサブ市場として投資家が東京市場に疎開している結果と見ることができます。これ1987年の香港市場から欧州を経て米国に波及したブラックマンデーの時の東京市場の動きと軌を一にします。つまり損失を被った投資家が逃避先として東京市場を選んだ結果ですが、1985年のプラザ合意以来の日本のバブル経済に拍車をかけたものでした。以下略。

いずれにしてもウクライナ紛争で欧州がロシア産原油の禁輸を決定したことで、原油価格の上昇が止まりません。今後も原油やガス石炭その他の資源価格の上昇は続き、インフレが収まる気配はありません。そんな中でOPECプラスの増産枠拡大のニュースが流れましたが、規模は小さく、大勢に影響はなさそうです。

NY原油続伸、3カ月ぶり一時120ドル台 需給逼迫懸念で:日本経済新聞
アメリカの戦略備蓄放出で在庫が減っている状況なので、その補填もあって需要を満たすには至らないということでWTI原油先物が高値を付けております。産油国としてはアメリカにもロシアにも忖度した結果、実効性の伴わない増産でお茶を濁す結果となっている訳です。他方中国やインドがロシア産原油の輸入を増やせばOPEC諸国はその分市場を失う訳で、欧米に積極的に協力する気にもなれない訳ですね。

思い返せば1973年の第一次オイルショックは第四次中東戦争による供給不安、1980年の第二次オイルショックもイランイラク戦争という戦争絡みの供給不安が原因でした。その観点から言えば、現状は第三次オイルショックと言うべき局面ではないかと思います。アメリカで起きている賃金上昇がインフレ率に追いつかず実質賃金が下がっている現象はスタグフレーションの入り口にあると見ることができます。戦線の膠着で長期化が避けられないだけに油断できません。

世界を巻き込むスタグフレーションの波の中で、世界に先駆けて日本が経済を浮揚させたというのは確かのその通りなんですが、第一次では狂乱物価でトイレットペーパー騒動などが起き、当時労組が強かったこともあり、インフレは賃上げで調整されました。第二次では当時の福田内閣が総需要抑制策を打ち出して公共事業の一時凍結で供給ショックを需要の縮小で対応し、結果的にそれがうまくいった訳です。但し賃上げは抑制されたので国民からは不評でしたが。ちなみに公共事業ではありませんが、着工積みの国鉄東北新幹線と上越新幹線の工事も凍結されました。

しかし官需に頼れない中で、NECのパソコンとかソニーのウォークマンのようなユニークな新商品が市場に投入され、これが世界に先駆けて不況脱出を果たす原動力となりました。省エネが叫ばれエネルギー消費を伴わないイノベーションが求められた結果、日本の電機メーカーは半導体生産に注力しますが、当時半導体需要そのものの規模は小さく、あまり売れるものではなかったんですが、それならば自社製品に使って革新的な製品化を目指そうということになった訳です。日本の黄金期の80年代はこうしてスタートした訳です。

福田派の流れを汲む小泉純一郎の構造改革路線は福田政権の踏襲と言えますが、安倍晋三が積極財政を主張するのは明らかな宗旨替えですね。岸田政権はどうかと言えば、基本的にアベノミクスを踏襲してますので、相変わらず財政出動で景気浮揚を目指す路線です。第二次オイルショックの経験から言えば真逆の対応ということになります。今ならむしろ財政出動は絞った上で、脱炭素などの戦略分野への投資を促すことが、第二次オイルショックからの復活を見習うある意味好機です。税制もも法人や富裕層向けの累進課税強化に留まらず、脱炭素の直sつ結びつく炭素税導入が考えられます。

逆に Go To や消費減税といった需要喚起策は供給ショックを助長する結果となりますから慎むべきですが、参院選を控えて誰も言い出しません。短期的な供給ショックならば市場原理が働いて供給側の増産で需給が引き締まりますが、今回のような一方的で長期化必至の供給ショックの出口は需要を抑制することしかありません。ま、それを言えば票が取れないってことですが、第三次オイルショックとも言うべき現状で有権者におもねる政治家しかいない現実には暗澹たる気分です。

てことで再三述べてますが、ガソリン価格維持のための補助金も需要を高止まりさせる愚策です。ガソリンが高くなれば鉄道など公共交通に利用が誘導されるのは2回のオイルショックでも見られた現象ですが、今回はコロナ禍もあって密回避からマイカー利用が選考されやすい状況になっております。加えて地方の過疎化で公共交通空白地帯が増えており、人口減少下ではこの傾向を止める手立てはありません。

こう言うと「じゃあ少子化対策だ」って言われますが、人口動態の変化で大事なのは15-64歳の生産年齢人口の推移であって、単純に人口を増やすことが解決策にはならないことを重ねて述べておきます。日本の場合1995年の8,700万人をピークに減少に転じ、20年後の2015年には7,700万人になり、20年で1,000万人減少しています。1年で50万人減るペースです。しかも少子化傾向は以前から続いていましたから、今後減少ペースは増えていき団塊ジュニア世代の高齢者となる2030年代から40年代にかけては年100万人レベルでの減少となります。つまり高齢化は更に進捗しますから、今少子化対策で子どもを増やすと、労働力としてカウントされない依存人口を増やすことになり、寧ろ経済の足を引っ張ります。

ならば移民政策?となりますが、これは既に欧米で実施され、労働力確保は進んだものの、異文化の他民族の移民で社会的軋轢を増し、イギリスでは東欧圏移民の増加によるまさかのBrexit、アメリカでは白人男性の味方トランプ政権の誕生となりますし、欧州諸国の殆どで似たような問題が起きています。例えばフランス大統領選でのルペン候補の善戦などですね。日本でも技能時宗性や特定技能制度で外国人労働力を導入してますが、その数は年5万人程度で焼け石に水。加えて祝業選択の自由が保障されないなお問題だらけですし、日本の経済的プレゼンスの低下でそもそも日本を目指す外国人は減っています。

生産年齢人口の減少は労働力不足と理解されがちですが、寧ろこの年代は消費意欲が旺盛で国内消費市場を支える存在であるということが見落とされてます。単なる労働力不足ならばIT化その他の資本装備の充実である程度カバーできる訳ですが、買い手の不在は企業活動を委縮させます。実際日本の製造業では海外に生産設備を移転して国内投資を抑制しています。これが設備投資による経済浮揚を抑制することになりますから、経済が停滞する訳です。こうして国内市場が縮小すれば外資にとっても魅力は薄れます。東京を国際金融都市にする構想がいかに現実離れしているかは言うまでもありません。

てことで公共交通に厳しい地合いですが、そんな中で国交省鉄道局の運賃制度に関する中間取りまとめが発表されました。

鉄道運賃を柔軟に、国の認可不要 国交省が素案提示:日本経済新聞
止まらないインフレと鉄道運賃で述べた論点に沿っていきますと、まずは混雑緩和のための輸送力増強投資が進まないことから一定の基準での上乗せ運賃は認められてますが、ロンドン地下鉄のような時間帯別運賃の導入でピーク利用者の誘導を図ること、特にJR東日本などが提唱するオフピーク定期券のようなものが現行制度では実現しにくいという問題ですが、ピーク輸送力を増強してもピーク以外の時間帯では遊休設備となる訳で、投資効率が良くない訳で、それを運賃で差をつけて誘導しようということです。

バリアフリー投資に関しては既に新法で運賃上乗せが認められており、JR東日本、東京メトロ、西武、東武の各社が導入を表明しています。現行制度下の運賃改定手続き簡素化に関しては、東急、京王、京急の各社が表明した運賃値上げ申請の取り扱いが注目されますが、中間とりまとめでは特に言及は無いようです。相次ぐ鉄道値上げ表明 沈黙する東京都、国の議論注視:日本経済新聞その中で都議会に諮って条例を通さなければ値上げできない都営地下鉄が取り残されています。国の基準が緩和されれば追い風になる可能性があり国に議論を注視してますが、東京都にとってはいささか残念な展開になりそうです。

新幹線や特急列車などの料金設定を季節ごと列車毎に柔軟化するダイナミックプライシングについても大枠では認める方向ですが、上述の時間帯別運賃の問題と共に現行の総括原価方式による上限運賃制の大枠を残すかどうかは方向性が示されておりません。ダイナミックプライシングは結局需要に応じた柔軟な料金設定を容認することですが、気をつけなきゃならないのはダイナミックプライシング自体は買い手の消費者余剰の搾取となる訳で、結果多数が利用する列車ほど価格が上がり、結果的に乗客の輸送単価を高める効果があるということです。とすると現行上限運賃の枠組みを維持する場合、収支状況を国が監視し、限度を超えた超過利潤は年度末の割引販売などで乗客に還元するというややこしい仕組みにもなります。、つまり毎年3月に各社年度末バーゲンセールを行うことになるかもってことです^_^:。鉄ちゃんは喜ぶかもね。

それと存続が問題となる地方線区の上乗せ委運賃に関しては、自治体との合意で国の認可なしに届け出だけで可能になるということは明記されました。これは鉄道以上に地方の路線維持問題に直面するバス運賃に関して地方協議会での合意で運賃を決められる制度を鉄道にも導入する仕組みです。但しバスと違って例えばJR北海道の函館本線長万部以南の並行在来線区間のように、貨物輸送インフラとしての重要度がある場合などは別の枠組みが必要になりますし、まして芸備線末端区間のようなそもそも利用客の少ない路線の維持は多少の値上げでは困難なことに変わりはありません。

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