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July 2022

Saturday, July 30, 2022

NationalRail幻想

国を葬る話に続いて国鉄を葬る話をします。JR西日本に続いてJR東日本も赤字ローカル線の線区別収支を公表しました。

JR東日本、地方35路線の赤字693億円 収支初公表:日本経済新聞
国土交通省の有識者会議でも乗車密度1,000人未満の路線の存廃協議基準を示しました。
ローカル線、存廃協議の新ルール 1日平均1000人未満で:日本経済新聞
JR西日本の発表が2,000人未満を基準としていたのに対して、国はその半分の基準を示した形で、JR側から見れば存廃協議のハードルが高くなった形ですが、自治体からは総じて廃止の既成事実化に対する警戒感が強まっているようです。

しかし国鉄時代には乗車密度4,000人未満を地方交通線と定義して、バス転換が望ましいという方針を出しつつ、当面の存廃協議をその半分の乗車密度2,000人未満として特定地方交通線に指定し、地元との協議を始めたものです。その結果多くの路線が対象となってバスや第三セクター鉄道へ転換されました。

1983年北海道の白糠線(白糠―北進間)が白糠町運行の自家用有償バスに転換されたのを皮切りに転換は進み、第三セクター鉄道転換の始まりは岩手県の三陸鉄道ですが、同時に国鉄が引受を拒否していた建設線の三セク引受を認めさせることになります。それが野岩鉄道やあぶくま急行、北越急行、智頭急行など多くの建設線が実現することにもなりましたが、わき道にそれますのでここまでにします。

ただ当時と経済状況も異なり、当時ならば2,000人未満のローカル線でもバスならば存続可能だし、三セク鉄道でも国鉄から切り離して独自の運賃を設定することで存続の可能性もありました。しかし人口減少で地域の人口流出も止まらず、少子化で鉄道利用する通学生も減少する中では存続もままならず、実際三セクや地元交通企業が鉄道で引き受けた大畑線、黒石線などの例もあり、鉄道での存続も厳しくなっております。加えてバス事業も乗客減とドライバー不足で経営環境が厳しくなっており、鉄道からの転換で簡単に利益を出せる状況ではなくなりつつあります。実際鉄道もバスもない公共交通不在地域も増えている現実があります。となると1,000人未満の路線のバス転換は容易ではない現実がある訳です。

有識者会議ではバス転換以外にも上下分離による線路の公的保有や自治体の同意を条件に運賃値上げを認可制から届け出制にするとか、観光列車などの誘客案の実行なども選択肢として示しており、補助金も出すとしておりますが、自治体としては協議に応じること自体が廃止前提の議論として応じない姿勢で対応することになりそうですが、そうなれば見切り廃止の口実にされるだけのことです。元々JRの内部補助頼みの路線存続だったところに、コロナ禍で大都市圏や都市間輸送の落ち込みで支えきれなくなった現実があります。現状を踏まえて地域の交通政策を見直す機会と捉えるべきでしょう.

実際国鉄時代に打ち出されたローカル線廃止論は上述のように基準を緩めてJR各社の内部補助でカバーすることで対応してきた結果、ローカル線問題は民営化後、遠景に退きましたが、旧国鉄債務のJR各社への引受を制限して見えなくしただけとはいえ、JR発足直後のバブル景気もあって沿線自治体には楽観論が広がったのは間違いないでしょう。その意味で同時に行われた鉄道運賃の改革案も観ておく必要があります。

鉄道運賃に変動制、混雑時高く 国が制度設計へ JR東日本など検討
議論の前提としてJR本州3社は消費税転嫁を除いて基本的に国鉄末期の運賃体系を維持している訳で、コロナ禍による利用減で現行運賃の維持が難しくなっている現実があり、見直しが必要な局面ではあります。

元々国鉄民営化後の見通しとして当時の運輸省も単年度黒字が可能なのはJR東海1社と見積もっていて、各社の収支状況を見ながら3年程度の周期で運賃値上げを想定していましたが、民営化当時のバブル景気で収支が上振れし、特に首都圏を受け持つJR東日本の恩恵は大きかったし、アーバンネットワークの輸送サービス強化で並行私鉄から客を奪っていたJR西日本も好調でした。そのため消費税転嫁分を除いた運賃値上げは実施されず、寧ろ好業績による超過利潤の還元策を求められ、並行私鉄に合わせた特定運賃や割引率の高い回数券やフリー切符などの還元策が採られましたが、これらも収支状況を見ながら見直され縮小されています。

記事中のオフピーク定期券ですが、JR東日本としてはリモートワークの普及とフレックスタイム制の定着でピークの利用をオフピークに誘導する目的を謳っており、これをダイナミックプライシングと説明している点には違和感があります。同時に通学定期券制度の見直しにも言及しており、元々国の機関として民間より高い割引率で定期券を発行していたこともあり、本来JRが負担すべきものではなく、政府や自治体の文教予算で負担すべきとも言っております。

これは現行運賃の上限運賃認可制の制度上の矛盾なんですが、JRなど鉄道事業者は普通運賃や特急などの特別料金の他、定期運賃も含めて総括原価との均衡を求められてますから、割引率の高い通学定期運賃は乗客間の補助となる訳で、ここを見直すことで割安なオフピーク定期券の発売が可能になりますし、運賃制度としては小中高大で異なる割引率が適用される通学定期運賃を排除して運賃体系もシンプルになり運賃改定の認可手続きもやり易くなるということも視野に入れていると考えられます。つまり現行運賃制度の完全見直しとなるダイナミックプライシングとは別物で、航空やバスでは既に実施されてますが、結果的に客単価が上がって多くの乗客にとっては値上げとなっていることから、利用客が多く社会的に影響の大きい鉄道運賃への適用は慎重にすべきです。

蛇足ですが日本の上限運賃制と似て非なるイギリスのプライスキャップ制の違いですが、イギリスではインフレ率に合理化係数を掛けたプライスキャップを設定してその範囲内での事業者の運賃設定に自由を与えております。制度的にインフレ率より低率のプライスキャップを設定することで事業者の合理化努力を引き出すと同時に、合理化努力で得られた超過利潤の還元義務は課されませんから、実態としては毎年運賃は値上げされます。今のように9%超のインフレだと当然運賃値上げ幅も大きくなり国民生活を圧迫します。ジョンソン首相失脚はスキャンダルもありますが、インフレに対する国民の怒りが大きい訳です。

あと国鉄民営化時のくびきから会社を跨った運賃通算制度も見直される可能性があります。そのためにJR運賃は200㎞程度まで殆ど遠距離逓減が働かず、並行私鉄との運賃差が生じていたりします。私鉄並みに境界駅での打ち切り合算にすれば利用実態に即した遠距離逓減を戦略的に採用できるようになりますし、JR間で他社の意向を気にする必要もなくなります。東京基準で言えば熱海から西は別運賃ということですね。

てことでとっくに終わっている筈の国鉄のくびきをJRは背負わされている訳ですが、そうは言っても国民のNationalRail意識は残っており、特に政府や自治体の対応を縛っている面はあります。整備新幹線やリニアへの期待もそうした文脈から見直した方が良いということは以前から申し上げておりますが、人口減少下で初期投資の大きい高速鉄道の経営の難易度は高まります。実際整備新幹線区間ではリース料が固定されているために、コロナで乗客が蒸発してJR東日本の収支を直撃しました。苦肉の策の新幹線カーゴサービスでどこまでカバーできるのか。しかも在来線貨物輸送の代替は不可能なので、青函トンネル貨物併用問題の解決にもなりません。いい加減国鉄の亡霊は退治しなくてはね。

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Sunday, July 24, 2022

国を葬る?

国葬問題がメディアでも取り上げられておりますが、法律論としての問題以外の論点として、安倍政権の後継政権としての岸田政権という形を作りたいのでしょう。そのことで党内保守派や保守層の有権者へのアピールにはなります。つまりぶっちゃけ保身ですね。

あったらしい資本主義がある意味アベノミクスの継承であるように、岸田政権の足場固めの一環という訳ですね。あんたの頸がつながっても、国民にとってはこれまでの長期低迷と格差拡大が続くことを意味しますから、不幸な話です。そんな時にサイドバーで紹介した資本主義の方程式-経済停滞と格差拡大の謎を解く (中公新書, 2679):小野義康著に出会いました。日米欧の長期停滞という従来の経済学では説明が困難な現象を、脳科学と連動した神経経済学の知見を取り入れたたった1つの方程式から、人々の資産選好によって成長経済と成熟経済の違いを紐解いて政策提言を行っており、文字通り新しい資本主義を目指す意欲的な書と言えます。

成長経済では生産能力が需要を下回っているので、生産力を高めても需要がついてくるので生産能力の向上が経済成長に直結しますが、成熟経済では生産能力が過剰なため消費が追い付かず生産能力を持て余す訳です。この状況で成長の源泉とされる生産性向上を目指せば寧ろ生産能力の過剰を増やすことになるので逆効果ですし、また成長経済では人々の貯蓄はケインズが指摘したように時間差消費として将来の消費会拡大を意味しますから、貯蓄は金融仲介で投資に回りそれがさらに成長を実現することになりますが、人々の資産選考が高まった成熟経済では貯蓄の増加が将来の消費拡大に繋がらないので企業の投資意欲を低下させます。結果的に資産が積み増される一方で成長には寄与しないことになります。

それ故金融緩和でマネー供給を増やしても、資産の増加で投資には繋がらず、また資産価格の上昇による資産効果による消費拡大も働かず、金融政策が無効になります。資産価格の上昇は金融資産の利回りを低下させますから低金利はそれを固定化して成長力を弱めますし、長短金利差の低下で金融仲介機能も弱くなりますから、過剰な貯蓄が投資に回らない貯蓄投資バランスの悪化となります。これはケインズも流動性のわなによる合成の誤謬として指摘してはいました。

しかしその対策として金融政策と共に消費関数として所得から課税を引き給付金を足した可処分所得の増加が消費を増やすとしたため、消費不況対策としての減税や給付金が提言された訳ですが、成熟経済では人々の資産選好の結果消費性向は高まらず政策効果がない訳です。実際2020年のコロナ特別給付金が殆ど貯蓄に回ったことからもそれは証明されています。この観点からは消費税減税も効果が無いということになります。

そして規制緩和による経済活性化ですが、これ言いかえれば市場の調整機能を高めることによる活性化ということですが、企業の設備投資を考えれば、設備投資による派生的な効果はあるものの、設備が稼働して生産能力を高めれば生産能力の余剰が増えてデフレギャップを生むので一時的で、実際日本企業の設備投資は減価償却費の範囲内に留まっており投資拡大には至りません。

同様に労働市場改革で雇用流動化すれば賃金が上がるというのも、実際には主に非正規雇用の増加によるt流動化で不安定な低賃金労働を増やしただけで、寧ろ大企業正社員とそれ以外の雇用の質の格差が拡大していますし、大企業正社員も終身雇用の崩壊で賃金カーブがフラット化しており、希望退職などの雇用調整も経営環境によって容赦なく起こります。加えて生産性向上の掛け声での労働強化によるブラック企業化をもたらしており、国全体の賃金水準を下げる働きをしています。

こうした成熟経済において総需要を拡大するには政府支出がカギになりますが、政府支出には補助金や給付金などの移転支出と公共事業や公共サービスなどの政府需要による民間への波及で効果が異なります。ケインズが乗数効果で説明したのは専ら後者で、政府支出が民間経済を刺激して経済を回すことですが、民間と競合しないことが要件となります。これ債務か税収かという財源に左右されない効果であり、過剰貯蓄が常態化している場合は寧ろ課税して余剰マネーを吸収することが消費性向の改善につながることもあり得ます。その辺を踏まえて取り上げたいのがこのニュースです。

公共事業の未消化4兆円 10年で2.5倍、ゆがむ予算配分 国費解剖 NIKKEI Investigation:日本経済新聞
民間では供給が難しい公共インフラへの投資自体は無駄とは言いませんが、予算消化が滞っている現実があります。再開発や規制緩和で民間工事が盛んな中、資材費も人件費も高くなっていて、公開入札の不調が相次ぎ執行が滞っている結果ですが、これつまり民間との競合の結果です。当然それを踏まえた事業費の見積りを高めに設定すべきですが、そうすると費用便益分析によるB/C比が1を割り込んで事業化できない案件が増えることを意味します。

例えば宇都宮ライトレールのように当初計画時点から経費増でB/C比が悪化して1を割り込んだという事例があります。元々の事業費の見積りが甘かったようですが、意図的なものかどうかはわかりません。埼玉高速鉄道の岩月延伸などでも夢見るDXで取り上げたようにB/C比の見極めに慎重を期しているのとは対照的ですし、北陸新幹線や北海道新幹線の公的負担に対するB/C比悪化も指摘されてます。

国や地方がやるべきことは民間と競合しない分野ということで、外交、軍隊、警察、消防、教育、基礎研究、社会保障、公衆衛生などが考えられます。その意味で給付金バラまくよりも保健医療体制の見直しによる疫病対策の備えの充実など政府がやるべきことはたくさんあります。公共事業は厳選して予算を減らすぐらいのことを考えるべきでしょう。

つまりアベノミクスの失敗やコロナ対策の失敗を踏まえた公共サービスの見直しや社会保障制度の充実、その財源措置としての増税こそ新しい資本主義の進むべき道です。アベノミクスの継承は長期停滞を悪化させて国を弱体化させるだけです。

オマケで統一教会についてですが、元々関連団体に国際勝共連合を名乗る反共政治団体があって高齢者世代は鼻撮んで見てましたから統一教会の異常さは共有されていると思いますが、若い世代の人にはピンとこないかもしれません。スタートから民主化前の韓国KCIAが絡んでいて日本の植民地支配を韓国民に対する原罪として償わせるという政治的に偏った教義で日本人相手に高額霊感商法を仕掛けていたような団体でして、岸伸介をはじめとする日本の保守政治家も多数関与していました。安倍元首相もその1人です。

てことで安倍晋三の国葬は国を葬る道でもあります。

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Monday, July 18, 2022

あったらしい資本主義

帝国憲法時代の皇族や軍神の死を悼む「国葬」は、制度としては戦後の日本国憲法公布で旧憲法の失効の道連れになりました。いや待て、吉田茂の国葬は?実は当時も猛反対に遭いながら実施されて、法的根拠のない国家行事への国費支出の前例が出来てしまいましたが、当時の議論が尾を引いて、歴代総理、例えば沖縄返還でノーベル平和賞受賞の佐藤栄作ですら国葬は実現しませんでした。

当然国葬するなら法律を作ってからの話ですが、岸田首相は記者会見で国葬の実施を表明しています。これ明らかにおかしい訳ですが、内閣権限の拡大解釈でスルーするつもりのようです。法律作るとなると国葬の対象者を定義しなければならないし、それに安倍元首相が該当することを示さなければならない訳ですが、それらをすっ飛ばしている訳で、国会軽視の姿勢は安倍管両政権から引き継いでいます。キッシーの温故知新以来繰り返してますが、自民党総裁選のような茶番を仕掛けても政権の本質は変わっておりません。

所得倍増もそうだしデジタル田園都市構想もそうですが、過去の政権のキャッチフレーズをパクってますが、中身はなく、所得倍増に至っては金融所得倍増と言い換えて個人株主を増やして金融所得を増やすと言い出す始末。個人が株を買えば株価が上がるという短絡思考には眩暈がします。株価はあくまでも企業の将来収益の割引現在価値を反映したもので、稼げる企業は株価が上がるし、また低金利で連動する割引率が下がれば将来収益を押し上げますから、単純に需給で決まる訳ではありません。問題は日本企業の将来収益に明るい材料が見当たらないことなんですがねえ。

デジタル田園都市構想も大平政権の田園都市構想をパクると同時に、安倍政権の地方創生と目先を変えて見せたという意味で、空疎な言葉遊びですし、極めつけは国民に不人気なGo To を使わずに県民割の全国展開など言い換えで対応する姿勢が目立ちます。そんな岸田政権は課題山積なのに大丈夫でしょうか?

「国策」の原発、事故責任は事業者に集中 東電株代訴訟:日本経済新聞
終わらない電力危機で取り上げた福島第一原発の集団訴訟に対する最高裁判決と違って会社法による企業経営者に対する株主代表訴訟なので、原告は株主で会社を代表して経営幹部の責任を問う裁判であり、賠償受取りは企業としての東電ということで裁判の性格は異なりますが、その賠償額の大きさが目立ちます。勿論地裁判断で今後上級審で判断が変わる可能性はありますが、原発事故の損害賠償請求訴訟との整合性はある判断ではあります。

今回は地震や津波の規模が想定を超える可能性を経営陣は認識しながら対策を怠ったとしてますが、あくまでも東電経営陣の話で、規制当局としての国の責任を問うてはいませんし、事業者としての電力会社への責任を重く問うているという意味でも矛盾はありません。但しこれは事業者にとっては原発がリスク資産として重荷になることを意味しますから、原発再稼働が進まないことになります。そんな中でやはり記者会見で電力逼迫に備えて原発9基の再稼働に言及した岸田首相ですが、中身はというと既に規制委の審査を通った10基中9基ってことで、追加工事や定期点検で停止中のものを動かすだけ。言葉だけの誤魔化しでした。流石キッシー-_-:。

という訳で「新しい資本主義」は過去にあったらしい^_^:言葉をつなげて目先を誤魔化しているものと言えます。寧ろ「資本主義」を名乗ることに本音があるのでしょう。人新世の「資本論」 (集英社新書):斎藤幸平著がベストセラーになったように、資本主義や経済成長への疑問からポスト資本主義や脱成長に関心が持たれ、また気候変動などでサスティナビリティが問われている中で、それでも資本主義で経済成長を求めるというメッセージと見れば、姿勢を明らかにしたという意味で新しいとは言えるかもしれません。

現実には気候変動もそうですが、コロナやウクライナ紛争、資源高、インフレと。解決困難な社会的課題に直面する中で、成長よりもこれらの困難な課題の解決にリソースを投入すべきではないかというのは、議論の余地があります。例えば東京メトロのコロナ減便の最後で取り上げた滋賀県の交通税導入のように、社会的課題解決のために敢えて増税するというのもその1つですが、歴史が古く減価償却の終わっているローカル私鉄の存続は銚子電気鉄道の濡れ煎餅販売で可能なレベルです。近江鉄道はそれより規模が大きいですが、税で広く浅く負担することで存続可能ならば現実解になり得ます。鉄道の維持が結果的に公益として地域に還元されれば良いという考え方ですね。

しかし例えば北海道新幹線の並行在来線として存廃が注目される函館本線長万部以南のように、貨物輸送インフラとして資本費保守費の負担が大きい路線の存続は、その社会的意義の大きさに関わらずより困難です。特に貨物輸送インフラという側面から言えば、藤代線、砂原線という戦時輸送の要請から建設された緩勾配迂回線を含めた8の字線としての存続が求められ、引受三セクの運営費負担も膨らみます。国や道が線路を保有する上下分離が現実的でしょうけど、道の鉄道存続意欲の低さから見れば可能性は低いと言わざるを得ません。

しかし貨物輸送動脈を断つことは北海道経済へのマイナスインパクトの大きさは計り知れません。ま、そもそも北海道新幹線を欲しがった結果なんで自己責任とは言えますが、プラス面だけを経済効果に計上しマイナス面に目を瞑った結果でもあり、工事の遅れや資材費人件費の高騰で事業費も膨張気味でB/C比も1以下になる可能性があります。愚かな選択と言われる未来が見えてきます。

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Sunday, July 10, 2022

東京メトロのコロナ減便

安倍元首相が狙撃されて死亡しました。誰であれ人の命を奪う行為は許されないことは当然ですが、釘を刺しておきたいことが幾つかあります。報道によれば犯人は元自衛官で手製の銃器を使った犯行ということで、捜査当局のコメントとして政治的意図ではなく宗教団体と見られる特定団体への恨みということで、現時点では不明ですが噂レベルで統一教会の名前が取り沙汰されております。

オウム真理教事件を起こした日本ですが、それでもカルト宗教への対応はあまり見直されません。宗教が集票マシンとして有効なのと宗教活動にかこつけた政治活動として有効ということで、少なからぬ政治家が関わっている結果ですが、身内がカルト宗教に入信してトラブルを抱える家族は少なからず存在しており、今回もそうした問題からくる怨恨犯罪のようです。とすると政治的意図のテロではないし、民主主義への挑戦というのも当たりません。恨みを拗らせた結果の犯行ということですね。

あとSPを含む警察官の対応に疑問が寄せられております。1発目が外れた時点で警護対象者を押し倒し覆い被さって命を守るのが鉄則ですが、犯人確保に動いた結果、2発目の凶弾で犠牲になった訳で、警護の不備を言われても仕方ない状況です。当然宗教団体と繋がっている政治家にとっては居心地の悪さを感じるでしょう。ある意味警察の不始末が政治と宗教の不透明な関係を可視化する結果となるなら皮肉な話です。私自身は以前から宗教的背景のない候補にしか投票しておらず、今回も同様です。これだけは言っておきます。

さて梅雨明けの徒然大草原wwwの猛暑も落ち着いて寧ろ雲の多い天候ですが、予想通りコロナ感染者は増えています。恐らくこのまま第7波になるのでしょう。但し軽症者が多く自宅療養で対応できているので医療逼迫には至っておりませんが、油断はできません。ウィズコロナは茨の道です。そんなニュースがこれ。

銀座線・丸ノ内線など減便 東京メトロ、平日9時台2割減も:日本経済新聞
春ダイヤ改正で既に減便と終電繰上げによる運行時間帯の縮小は実施積みですが、ラッシュ時の乗客の戻りが予想以上に少なく、平日ラッシュ時を中心とした減便に踏み込みました。痛いのは各線で車両の置換え更新を進めてきたために、特に他線転属が不可能な銀座線と丸ノ内線は痛いところ。東西線は05系初期車を代替なしに廃車すれば済みますし、千代田線も当面保安装置更新の予備車確保が容易になるなどやりくりの余地はありますが、車両更新を精力的に進めた結果の余剰車両です。

まあ仮に乗客が戻れば増発は容易ですし、車両走行キロが減れば保守費用も削減されるし延命で次回の車両更新を先送りできるなどのプラス面もありますが、東京メトロにとっては痛い現実です。こうなったのは1つは90年代末からの人口の都心回帰がリモートワークの普及で郊外志向が強まったことと密防止でラッシュ時利用を避ける傾向の両方の影響があるようです。実際東京都区部の人口は転出超過に転じております。

但しあくまでも郊外移転であって、地方移転でないことは注意が必要です。首都圏の巨大集積は寧ろ維持強化されており、郊外でも全て転入超過になっている訳ではなく、選択的に斑模様になっている訳です。この傾向は首都圏で顕著ですが、近畿圏や中京圏ではあまり見られず、恐らく製造業比率の違いがもたらしていると見られます。つまりリモートワークがやり易い業種が多いってことですね。製造業立地の少ない東急線の乗客減が顕著なのも同様です。

とすると都心の再開発にブレーキがかかる可能性がある訳で、例えば高輪ゲートシティや五輪選手村を改装して売り出される晴海フラッグにも暗雲が漂います。これ銀座―有明管の湾岸地下鉄構想にも影響が出る可能性があります。そしてスポーツ施設建て替えと高層ビル建設が明らかになった神宮外苑の再開発にも影響が出る可能性があります。銀杏並木を含む樹木の伐採で反対の声が盛り上がっておりますが、構想自体は落選中の萩生田光一案が自民都議を通じて都職員から五輪招致委トップの森元首相にプレゼンして絶賛されたことが週刊ダイヤモンドの報道で明らかになっております。

利権のふえる訳ワカメちゃんでも取り上げましたが、五輪招致にかこつけて国立競技場の建て替えを口実に高さ制限を緩和している訳で、五輪をダシに利権を生み出した構図です。元々明治天皇をしのぶメモリアルパークとして構想され、地権者の協力や一般市民の寄進で造成された「神の領域」を再開発の名の下に蹂躙する事業で、且つ神社本庁の関与まで指摘されております。宗教と政治家の不透明な関係の1つとも言えますし、現人神とまで言われた天皇に対するリスペクトはそんなもんなの?とも思います。

銚子電鉄が6年ぶり黒字、純利益21万円 副業の物販好調:日本経済新聞
東京メトロとは真逆の話題です。6年ぶりの黒字ですが、副業の物販、つまり濡れせんべいの販売でカバーして黒字化したという訳です。これ地元の特産である醤油を活かした取り組みであるとともに、巨大な首都圏の人口の支えでもあり、存廃を問われるローカル線全般に当てはまる訳ではありませんが、銚電クラスのローカル私鉄はコロナ禍に対峙するローカル私鉄のキャッシュフロー経営でも指摘した通りです。

最後に鉄路的蛇足。銚子電気鉄道の前史は1914年12月に開業し1917年11月に廃止されたの銚子遊覧鉄道の線路施設一式を居抜きで取得して開業した銚子鉄道が後年電化で銚子電気鉄道となったというのは知る人ぞ知るところですが、元々需要が多い訳じゃない区間で、それでもその結果初期投資を圧縮できたことで存続に有利に働いたということは言えます。但し保守費用捻出に苦労して運休することもあり、東京陸運局の問題児ではあります。

似たような事例は実は結構ありまして、近鉄南大阪線の前身の2代目大阪鉄道の最初の開業区間は初代大阪鉄道(後の関西鉄道へ併合)の柏原―古市間を1898年委開業させた河陽鉄道が翌年営業不振で解散し、河南鉄道に再編され河内長野まで延伸されました。後に道明寺から大阪天王寺(現大阪阿部野橋)へ延伸して電化したもので、甲武鉄道の支線的存在の川越鉄道が高田馬場への電気鉄道延伸で姿を変えた旧西武鉄道と酷似します。

大沼公園―鹿部間の大沼電鉄は戦時中の函館本線の緩和勾配迂回線の砂原線の1945年6月の開業と引き替えに廃業しましたが、砂原線鹿部駅が鹿部市街から遠いということで、1948年に銚子口駅前―鹿部間を復活させております。大沼電鉄の事例では線路のみならず車両も残っていたことから、復活のハードルは低かったとは言えます。それでも道路整備の進捗と共に利用が減り1952年に2度目の廃業をしています。

直近の事例では2001年、半年に2度の衝突事故を起こして休止から廃止を余儀なくされた京福電気鉄道福井支社の越前本線富国粟原線を譲り受けて2003年に開業した三セク鉄道のえちぜん鉄道の事例があります。休廃止期間中はバス代行輸送が行われましたが、漸弱な沿線道路事情から渋滞が深刻化し鉄道復活の機運が高まったこともありますが、それでも東古市―永平寺間の永平寺線は譲渡されず復活しませんでした。えちぜん鉄道といえば再エネ電力託送事業でも注目されます。

という訳で都市鉄道よりも厳しい状況にあるローカル私鉄ですが、地元の取り組み次第で存続の可能性もあるということは言えます。その意味でhは滋賀県が近江鉄道の存続を期して県税として交通税導入を打ち出しておりますが、注目すべき動きです。「改革」と称してとかく減税の議論ばかり目立ちますが、社会的課題解決のための税制という視点は重要です。

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Sunday, July 03, 2022

梅雨明けの徒然大草原www

インフレを終わらせるには日銀の政策変更が必要なんですが、その日銀が炎上黒田節hl でインフレ対策眼中になしの姿勢を見せている訳ですが、第三次オイルショックエントリーで指摘したように、世界はスタグフレーションに向かいつつあります。第一次第二次のオイルショックは何れも戦争が契機となっている点に共通点があり、今回が第三次オイルショックと呼べるほど酷似しておりますが、同時にオイルショックに先立つ1973年のニクソンショックで米ドルと金の交換がストップし、戦後のブレトンウッズ体制が崩壊したことの影響も指摘できます。

結果的に金の裏付けを失った米ドルの信認は低下する一方、当時の米FRBの緩和的金融政策もあって米ドルが大量に発行されました。その結果ドル建てで決済される石油取引に影響し、ドル建ての原油価格急騰となった訳です。加えて対ドルで上昇圧力のかかる他国通貨は為替相場維持が困難になり、特に日本円と西ドイツマルクには厳しい状況となり、当時の日銀とブンデスバンクは米FRB以上の金融緩和を迫られます。その結果世界にマネーは溢れバブル状態になっていた訳です。

今回もリーマン後から続き各国中銀の緩和措置によるコロナバブルの渦中ですから、金融政策面から見ても第三次オイルショックと呼ぶべき類似性があります。これが是正されるのは80年代米FRBボルガ―議長の高金利政策によるインフレ退治と、高金利でドル高ととなり米国経済を圧迫したことから85年のプラザ合意でドル売り協調介入した結果やっと落ち着き、米経済が成長軌道に乗る90年代半ばまで待たなければなりませんでした。

つまり危機を抜けるのに20年ほどかかっている訳ですから、今回もそれぐらいの時間軸で見る必要があります。加えて日本が半導体産業で先行しながら他国に追いぬかれたIT関連産業の興隆という産業構造の世界規模の転換が起きた訳ですから、それを考慮すれば今やるべきことは脱炭素に舵を切り産業構造を大転換することでしか出口は見いだせないという見通しも得られます。

一方日本ではまさかの6月中の梅雨明けでいきなり猛暑で電力逼迫ですが、よく考えたら6月は年間で最も日射量が多いシーズンですから、太陽光発電の出力を活用することで対応は可能なんですね。ですから注意報も太陽光の発電力がピークアウトする午後から夕刻の節電って話でして、実際は朝から太陽光の過剰出力を揚水発電所のポンプを作動させて上流調整池を満水にして備えていた訳ですから、結果的にやや大げさな煽りになった点は否めません。平年だと梅雨という雨季で太陽光の出力を当てにできない一方で、今年は梅雨明けが早まったことが幸いしたということは言えます。

寧ろ日射量の少ない冬期の寒波襲来時の厳しさの方が深刻です。電気が足りない訳じゃない 21年1月の電力危機の再現はあり得ます。よく言われる原発再稼働も、東日本で最も早い東北電力女川原発で24年度見込みですから、どう頑張ってもこの冬には間に合いません。故に老朽火力の高稼働で対応せざるをえなせんが、それは同時に老朽火力のトラブルを増やします。

福島・勿来火力発電所が停止 姉崎5号機は再稼働:日本経済新聞
東北電力では東電への電力融通をしていた中でのトラブルですが、より古い東電姉ヶ崎火力へ火を入れる結果となった訳です。元々原発の13か月ごとの法定点検時のバックアップ電源として温存された老朽火力は燃費も悪いしメンテナンスも手がかかる厄介者なのに、原発再稼働を前提とするからつなぎで稼働率を高めてトラブルを呼び込む悪循環なんですね。そんなところに金掛けるならNAS電池やグリーン水素+燃料電池で蓄電設備を拡充することの方が緊急度は高いと言えます。その分エネルギー輸入を減らせますし、脱炭素にも貢献します。
5月の鉱工業生産7.2%マイナス 自動車など低下:日本経済新聞
サプライチェーンの混乱で鉱工業生産指数が低下しております。これつまり日本の製造業の生産能力が低下し、輸出余力が減ったことを意味します。つまり円安で輸出企業の利益拡大も望めない訳で、円安を活かした製造業の国内回帰も円安で設備投資の直達面の制約が増すことになります。円安メリットは悉く失われます。唯一工場稼働率の低下は電力逼迫を緩和しますから、悪いことばかりではないということは付言します。

という訳で電力問題では早い梅雨明けは言われるほどの影響はないと言えますが、もう一つ終わらないコロナの観点から言えば別の面が見えてきます。元々欧米に比べてアジアの感染者が少なめなのは、雨季の影響があると思われますが、雨季が早く終わるということは、次の感染拡大を警戒すべき状況と言えます。実際こんなニュースが。

東京都、新型コロナ警戒度上げ 感染者が増加傾向:日本経済新聞
実際人が動いていて感染機会は増える傾向に会否めません。ワクチンのブースター接種が進んである程度感染拡大は抑えられるでしょうし、重症化を防ぐ効果から言えば、緊急事態宣言やまん延等防止措置の発動による行動変容の必要性は低いと言えますが、同時に熱中症との取り合いで医療逼迫が起きる可能性は高い訳で、警戒は必要です。マスクに関しては35℃以上でウイルスは活動できなくなりますから、屋外で外すのは問題ないと思いますし、熱中症予防の観点からもマスクは外した方がリスクは減らせますが、逆に空調の効いた屋内や交通機関利用時は引き続きマスクは必要でしょう。てことで乗り鉄はマスク着用で。
ミサイル攻撃の避難先は地下鉄駅 自治体の指定数3.5倍:日本経済新聞
これも繰り返し指摘していますが、キーウ市民が地下鉄駅へ避難したのは元々核シェルター機能を持った社会主義国仕様の地下鉄だからということですね。日本の地下鉄とは設計思想に違いがあります。寧ろ狭い地下空間へ人が殺到スタ時の危険性は顧みられていません。梅雨の後先の男たちに騙され続ける純真なカフェ女給の君江ですが、いい加減政治家や役人に騙されることから卒業しないと不幸なままですね。

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