国を葬る?
国葬問題がメディアでも取り上げられておりますが、法律論としての問題以外の論点として、安倍政権の後継政権としての岸田政権という形を作りたいのでしょう。そのことで党内保守派や保守層の有権者へのアピールにはなります。つまりぶっちゃけ保身ですね。
あったらしい資本主義がある意味アベノミクスの継承であるように、岸田政権の足場固めの一環という訳ですね。あんたの頸がつながっても、国民にとってはこれまでの長期低迷と格差拡大が続くことを意味しますから、不幸な話です。そんな時にサイドバーで紹介した資本主義の方程式-経済停滞と格差拡大の謎を解く (中公新書, 2679):小野義康著に出会いました。日米欧の長期停滞という従来の経済学では説明が困難な現象を、脳科学と連動した神経経済学の知見を取り入れたたった1つの方程式から、人々の資産選好によって成長経済と成熟経済の違いを紐解いて政策提言を行っており、文字通り新しい資本主義を目指す意欲的な書と言えます。
成長経済では生産能力が需要を下回っているので、生産力を高めても需要がついてくるので生産能力の向上が経済成長に直結しますが、成熟経済では生産能力が過剰なため消費が追い付かず生産能力を持て余す訳です。この状況で成長の源泉とされる生産性向上を目指せば寧ろ生産能力の過剰を増やすことになるので逆効果ですし、また成長経済では人々の貯蓄はケインズが指摘したように時間差消費として将来の消費会拡大を意味しますから、貯蓄は金融仲介で投資に回りそれがさらに成長を実現することになりますが、人々の資産選考が高まった成熟経済では貯蓄の増加が将来の消費拡大に繋がらないので企業の投資意欲を低下させます。結果的に資産が積み増される一方で成長には寄与しないことになります。
それ故金融緩和でマネー供給を増やしても、資産の増加で投資には繋がらず、また資産価格の上昇による資産効果による消費拡大も働かず、金融政策が無効になります。資産価格の上昇は金融資産の利回りを低下させますから低金利はそれを固定化して成長力を弱めますし、長短金利差の低下で金融仲介機能も弱くなりますから、過剰な貯蓄が投資に回らない貯蓄投資バランスの悪化となります。これはケインズも流動性のわなによる合成の誤謬として指摘してはいました。
しかしその対策として金融政策と共に消費関数として所得から課税を引き給付金を足した可処分所得の増加が消費を増やすとしたため、消費不況対策としての減税や給付金が提言された訳ですが、成熟経済では人々の資産選好の結果消費性向は高まらず政策効果がない訳です。実際2020年のコロナ特別給付金が殆ど貯蓄に回ったことからもそれは証明されています。この観点からは消費税減税も効果が無いということになります。
そして規制緩和による経済活性化ですが、これ言いかえれば市場の調整機能を高めることによる活性化ということですが、企業の設備投資を考えれば、設備投資による派生的な効果はあるものの、設備が稼働して生産能力を高めれば生産能力の余剰が増えてデフレギャップを生むので一時的で、実際日本企業の設備投資は減価償却費の範囲内に留まっており投資拡大には至りません。
同様に労働市場改革で雇用流動化すれば賃金が上がるというのも、実際には主に非正規雇用の増加によるt流動化で不安定な低賃金労働を増やしただけで、寧ろ大企業正社員とそれ以外の雇用の質の格差が拡大していますし、大企業正社員も終身雇用の崩壊で賃金カーブがフラット化しており、希望退職などの雇用調整も経営環境によって容赦なく起こります。加えて生産性向上の掛け声での労働強化によるブラック企業化をもたらしており、国全体の賃金水準を下げる働きをしています。
こうした成熟経済において総需要を拡大するには政府支出がカギになりますが、政府支出には補助金や給付金などの移転支出と公共事業や公共サービスなどの政府需要による民間への波及で効果が異なります。ケインズが乗数効果で説明したのは専ら後者で、政府支出が民間経済を刺激して経済を回すことですが、民間と競合しないことが要件となります。これ債務か税収かという財源に左右されない効果であり、過剰貯蓄が常態化している場合は寧ろ課税して余剰マネーを吸収することが消費性向の改善につながることもあり得ます。その辺を踏まえて取り上げたいのがこのニュースです。
公共事業の未消化4兆円 10年で2.5倍、ゆがむ予算配分 国費解剖 NIKKEI Investigation:日本経済新聞民間では供給が難しい公共インフラへの投資自体は無駄とは言いませんが、予算消化が滞っている現実があります。再開発や規制緩和で民間工事が盛んな中、資材費も人件費も高くなっていて、公開入札の不調が相次ぎ執行が滞っている結果ですが、これつまり民間との競合の結果です。当然それを踏まえた事業費の見積りを高めに設定すべきですが、そうすると費用便益分析によるB/C比が1を割り込んで事業化できない案件が増えることを意味します。
例えば宇都宮ライトレールのように当初計画時点から経費増でB/C比が悪化して1を割り込んだという事例があります。元々の事業費の見積りが甘かったようですが、意図的なものかどうかはわかりません。埼玉高速鉄道の岩月延伸などでも夢見るDXで取り上げたようにB/C比の見極めに慎重を期しているのとは対照的ですし、北陸新幹線や北海道新幹線の公的負担に対するB/C比悪化も指摘されてます。
国や地方がやるべきことは民間と競合しない分野ということで、外交、軍隊、警察、消防、教育、基礎研究、社会保障、公衆衛生などが考えられます。その意味で給付金バラまくよりも保健医療体制の見直しによる疫病対策の備えの充実など政府がやるべきことはたくさんあります。公共事業は厳選して予算を減らすぐらいのことを考えるべきでしょう。
つまりアベノミクスの失敗やコロナ対策の失敗を踏まえた公共サービスの見直しや社会保障制度の充実、その財源措置としての増税こそ新しい資本主義の進むべき道です。アベノミクスの継承は長期停滞を悪化させて国を弱体化させるだけです。
オマケで統一教会についてですが、元々関連団体に国際勝共連合を名乗る反共政治団体があって高齢者世代は鼻撮んで見てましたから統一教会の異常さは共有されていると思いますが、若い世代の人にはピンとこないかもしれません。スタートから民主化前の韓国KCIAが絡んでいて日本の植民地支配を韓国民に対する原罪として償わせるという政治的に偏った教義で日本人相手に高額霊感商法を仕掛けていたような団体でして、岸伸介をはじめとする日本の保守政治家も多数関与していました。安倍元首相もその1人です。
てことで安倍晋三の国葬は国を葬る道でもあります。
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