三位一体で原罪侵攻系
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は一神教という共通点があります。考え方として人知を超えた超越的な存在としての神を定義することで、人間としての在り方を定義するという意味では共通ですが、その原点は原罪にあります。蛇にそそのかされて知恵の実を食べて神の怒りを買いエデンの園を追われたアダムとイブ(エバ)から人類の試練は始まり、神は様々な試練を与えますが、同時に救いの道を用意して人類を導き、導きに応じた者だけが生き残り、神を忘れた不届き者を一掃するということがこれでもかとばかりに繰り返されるのは聖書に記述された通りです。
しかしよく考えたら、困難に直面しても必ず救いの道はあるということになりますから、メンタルがタフになり逆境を跳ね返す力にもなる訳で、そうしたポジティブな評価が可能な一方、神に選ばれし民という選民意識、差別意識にもつながります。ある意味他民族の反感を買ってユダヤ人の迫害の歴史に繋がったという見方も可能です。
キリスト教とイスラム教はそうしたユダヤ教の教えを踏まえた上で、新たな物語を紡いだわけですが、キリスト教が神の子としてのイエス・キリストと精霊が三位一体の神の在り方という独自の見方を示します。故に神の子を処刑したことで原罪が重ねられ、試練は続きますが、精霊が生きている人に降臨して救いの道を示すことで導かれるという風に物語は展開します。歴史に名を遺す聖人はこの類という訳です。
しかし困ったことに精霊の降臨を示す証拠は示しようがない訳で、騙りの余地を生みます。統一教会開祖の文鮮明氏は言うに及ばず、中国の太平天国の洪秀全のように自らをキリストと同列の神の子とさえ名乗っていた事例もあります。余談ですが、太平天国はキリスト教の宣教師たちから異端扱いされて支えを失い清朝に滅ぼされますが、農民蜂起の闘争や移動しながら意表を突く戦いぶりなどが後の孫文の辛亥革命や毛沢東の長征などのロールモデルとなっています。
そうしたキリスト教の曖昧さはユダヤ教やイスラム教からは多神教的で堕落しているという批判もあり、クルアーンにも記述されてます。イスラム教では普通の人であるムハンマドが神託を受けてクルアーンを書き上げたとされており、神はアッラーだけという一神教の原点回帰をしています。故にムハンマドは神託を受けた神の代理人に過ぎず、死後は弟子たちの中から指導者を選びイスラム神学的な正しさを指針に指導するというイスラム帝国の体制が整備されます。スンニ派ではカリフという宗教指導者がスルターン(皇帝)を指名するということも初期には行われました。シーア派でもイマームと称する指導者を置きます。
そうしたキリスト教の多神教的曖昧さは、元々多神教の欧州では受け入れられやすかったということは言えます。ローマはオオカミの子孫を名乗る一族が建国した国で、国の発展と共に周辺の耕作地を拡大し、遊牧民の生息域を圧迫します。イソップの「オオカミが来た」という嘘つき少年の寓話はオオカミをローマの暗喩と読めば別の物語になる訳です。
そしてゲルマン民族大移動の混乱で国を立て直すためにキリスト教を認めた結果、侵略者のゲルマン人までキリスト教化された訳です。そうした融通無碍なところがキリスト教の特徴ですが、日本には大航海時代にスペインとポルトガルの宣教師が到達して布教をします。宗教改革で新教徒が勢力拡大する中、新大陸やアジアに布教先を求めた結果ですが、王を教化すれば国丸ごと布教できるということで抵抗したフィリピンは武力で支配下に置くなど強引なこともしていた訳ですが、幸か不幸か戦国時代に日本に辿り着いて王が誰かもわからないし長い戦乱で洗練された武力を持つ数多の戦国大名に武力で対抗も難しく、南蛮交易に興味を示す織田信長の保護を受けて布教を認められました。
元々寺社領を持ち力を蓄えていた仏教系各宗派に対するけん制の意味もあったと思いますが、そのあまりに強引な布教の姿勢故に秀吉の治世では一転布教を禁じられます。但し大名が帰依した所謂キリシタン大名の領地は例外で黙認されていました。そして以下略で明治維新で禁止が説かれ再度布教が始まる訳ですが、江戸時代に武家の統治思想としての朱子学に対抗して国学が興った流れで、天皇中心の統治へシフトする過程で、国家神道が形成されます。天皇は元々神話で神の子孫とされており、キリスト教の神の子という概念を借りて男系男子の万世一系の神の国の現人神という概念が作られます。これってカルト宗教と変わりませんね^_^;。
余談ですが、アジアの儒教文明という西洋から見たアジア観所謂オリエンタリズムですが、日本は例外で南宋儒教という革新的儒教としての朱子学の導入は徳川幕府による武家の統治思想というもので、長幼の序を重んじる古代の儒教とは異なり、西欧の啓蒙主義哲学思想家たちから「神なき秩序」として注目され参考にされました。しかし科学的知見の進む西欧では、結局変化の遅い儒教は時代遅れの思想として棄却されます。その一方で儒教圏の台湾でおそらくアジア一の民主主義が実現しているように、儒教のモダナイズで民主化の可能性はある訳で、中国の新儒教の思想もこの流れですが、大陸中国の民主化は足踏みしています。
そして原罪の知恵の実を食べたアダムとイブの物語ですが、蛇にそそのかされて先に林檎をかじったのがイブということで、実はミソジニーの思想も隠れている訳です。それは封建的な女性蔑視の風潮が残っていた明治時代ですから、国家神道にも反映されて女性の従属的地位が固定化される訳ですが、キリスト教圏の統一教会の開祖文鮮明も三位一体のキリスト教の教義から作られた宗教指導者ですが、こうした類似性が日本への浸透を助けたでしょう。つまり日本の保守思想に根付くミソジニーと統一教会の教義はシンクロしている訳です。故に支持率ダダ下がりでも統一教会と簡単に縁を切れない自民党がある訳です。
話は変わりますが、バスで重大事故が起きました。
名古屋高速でバス横転・炎上 2人死亡、7人けが:日本経済新聞報道では手前から左右にふらついて不安定走行していたバスが中央分離帯に乗り上げて左に横転した単独事故で、前部オーバーハングの燃料タンクの燃料漏れが原因と思われる出火で炎上したもの。2人死亡7人ケガという事故ですが、明らかにドライバーが運転を継続できない異常事態が起きたと推測されます。
バスは名古屋市内から県営名古屋飛行場へ向かう乗合バスで、運行事業者はあおい交通という規制緩和後の新免事業者です。あおい交通に関しては地元では運転が荒っぽく急ハンドル急ブレーキや無理な割込みなどマナーも悪いと言われておりますが、それでも国交省の監査は通っております。当然ながら中小規模の新免事業者への監査はより念入りに行われると考えられますし。
そして4日後の26日未明には新東名下り線長篠設楽原PAで夜行高速バスがトラックに追突する事故が起きました。こちらもグレース観光という新免事業者ですが、乗り合いバス事業への参入規制緩和は民主党政権時代に実現しました。当時は所謂ツアーバス問題が取り沙汰されており、貸切バスによるツアー募集の形の乗合類似行為が問題視され。ホリデーイールドマネジメントで取り上げられた関越道のツアーバス事故もあって、安全管理を公共交通としての高速乗合バスに寄せる一方、貸切バス事業者への乗合免許付与を緩和した訳で、それ自体は時代の要請によるものでした。
ですから規制緩和が問題だった訳ではなく、実際新免事業者も含めて乗合バス事業者への国交省の監査は度々行われ、安全管理に問題がないか目を光らせてはいた訳です。しかし当時とはバス事業を巡る状況に大きな変化が見られます。元々既存乗合事業者にとっては短時間に距離を稼げる高速バス事業は採算性に優れていて、既に過疎化などの影響で一般路線の収益が悪化していたし、都市部の事業者も2年毎に排ガス規制が強化されるしバリアフリーでノンステップバスへの置き換えにも追われ、採算がとりにくい状況の中で採算部門の高速バス事業への参入は一般路線維持のための内部補助の原資確保の意味もありました。
故に乗合バス事業の参入規制緩和は既存事業者にとっては必ずしも歓迎されることではありませんでしたが、ツアーバスに営業基盤を侵食されるよりはマシな状況ではあります。また同じ土俵に乗れば運行面、営業面も含めて既存事業者には一日の長がある訳で、健全な競争環境の中で競い合うことは歓迎されました。
しかし地方の過疎化は止まらず、また少子化の影響でバスドライバーの確保が難しくなると、地方路線の減便や撤退が相次ぎバスの無い自治体も増える一方、大都市部でもドライバーの確保が難しいために減便を強いられるケースも出てきています。また高速バスも新規参入による競争激化で採算性が低下して撤退を迫られる路線もありますし、またコロナ禍で長距離移動需要が蒸発して多くの路線が休止に追い込まれ、京急など大手事業者の撤退表明もあり、休止路線の復活も微妙です。
そんな状況ですから相対的に小規模事業者が多い新免事業者ほど経営が苦しい状況は容易に想像できますし、ドライバー確保も綱渡りで過重労働を強いられている事例もあり得ます。その意味で新免事業者の事故が続いたことは偶然で片付けられない問題をはらみます。サイドバーで紹介した週刊エコノミスト2022年8月30日号の鉄道特集で面白い記述がありますが、日本一のバス会社^_^;西日本鉄道では鉄道の黒字復帰の一方、バス事業は赤字となっております。加えて西鉄は阪急阪神HDと並んで航空貨物フォワーダー事業で巣篭り需要のコロナ特需で潤った鉄道業界では珍しい存在でもあります。
一方国鉄のローカル線問題では自治体の硬直的な姿勢が目立ちますが、同時に国鉄時代の基準より厳しい乗車密度1,000人未満の路線のバス転換が現状のバス業界の状況を見る限り難しい現実もNationalRail幻想で指摘した通りです。実は鉄道よりバスの方が痛んでいる現実の中で、公共交通をいかに維持発展させていくのか、その見識が問われます。国葬なんかやってる場合かい!
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