やもめのジョナサン
飛べないジョナサンが走り始めました。
西九州新幹線が開業 地元の期待背に走り出す:日本経済新聞5駅66kmの孤立線で最速23分というスペックは新幹線としての存在意義が問われますが、各駅では開業記念式典が行われ祝われました。宙を自由に舞うジョナサンを「神のカモメだ」と仲間から言われるカモメのジョナサンのラストを連想させる複雑な心境ですが、佐賀県内の新鳥栖―武雄温泉間の事業化のめどは立たない状況です。何故こうなったのでしょうか。
西のスットコドッコイで取り上げましたが、そもそもは九州新幹線鹿児島ルートで県域をかすめるからという理由で事業費負担を求められたことが起点になっています。受益を生まない佐賀県としては飲めない話ですが聞く耳を持たれず、ならばということで駅設置を要望して当初予定のなかった新鳥栖駅が設置されたものです。この時点で整備新幹線事業に対する不信感が生まれます。
その時点では長崎ルートは武雄温泉―諫早間でスーパー特急方式で新幹線の路盤に狭軌の線路を敷いて在来線と直通し新幹線区間だけ160km/h程度で走るということで、別名青函方式の整備計画だった訳で、元々輸送力が逼迫していた博多―鳥栖間の線路容量に余裕が出来て長崎方面の特急列車のダイヤが組みやすくなるなどのメリットがあります。加えてフリーゲージトレインと日本で呼ばれる軌間可変車両(GCT)の開発が進めば新鳥栖から新幹線に直通して博多への速達化が出来るし、更に新大阪までの直通も可能になるという説明を受けることになります。
しかし鹿児島ルートも元々スーパー特急方式からフル規格に変更されましたし、東北新幹線も沼宮内―八戸間のみフル規格で在来線を改軌してミニ新幹線にする計画がなし崩しにフル規格化されたり、やはりスーパー特急方式で予定されていた北陸新幹線のJR西日本エリアもフル規格化されという風にフル規格が進みます。そうすると当然のように長崎ルートもという議論が起きる訳ですが、佐賀県は有明海沿いの軟弱地盤を理由にフル規格化に反対しましたが、GCTならばという条件付きで認めます。その結果長崎ルートもフル規格が決まり諫早―長崎間も事業化されることになりました。
但し別の問題がありまして、一つは並行在来線問題でして長崎新幹線の見果てぬ夢で取り上げたように、武雄温泉―諫早間の並行在来線として肥前山口―諫早間が切り離し対象とされましたが、鹿島市や江北町など3市町が反対表明して揉めます。その結果並行在来線JR線として存続となります。
元々特急が無くなると反対して新幹線反対派市長 まで選出した鹿島市に対して、JR九州は肥前鹿島までの特急を走らせることを約束していましたが納得は得られず、佐賀県は並行在来線区間の線路を保有し、JRにリースするという方法で沿線自治体の反対を回避しました。加えて武雄温泉までの佐世保線の単線区間がボトルネックになるということで、複線化と線路改良も行われた訳で、GCTを前提に佐賀県は事業推進に協力した訳ですがはしごを外されます。
JR九州がGCT導入を断念して佐賀と滋賀で「詐欺だ!」ということになります。長崎は狭軌だけだったや軌間可変電車の「車輪の下」で指摘した通り、元々無理のある技術開発だった訳で、特に最高速270km/hでは山陽新幹線直通はほぼ絶望的ということで、佐賀県としては話が違うということになります。という具合に終始ボタンの掛け違いです。元々福岡都市圏でフル規格新幹線のメリットが薄い佐賀県としては、これ以上付き合えないというのも当然です。
加えてフル規格化といっても財源がありません。とりあえず北海道新幹線札幌開業が予定される2030年までは無理ですし、北陸新幹線の新大阪延伸との財源の取り合いになります。一応東海道新幹線の迂回路と定義される北陸新幹線が優先されると考えられますから、事業化の可能性はかなり低いと言えます。尤も北陸新幹線も佐賀と志賀エントリーのように並行在来線問題で揉めそうですし、そもそも小浜京都ルートは難工事が予想されており、すんなりとは進まない可能性があります。
という訳で全幹法という古い法律の解釈で本質的な議論を避けてきた整備新幹線のスキームにほころびが見えます。新幹線は万能ではないことを改めて指摘しておきます。既存の新幹線網と繋がらない西九州新幹線の現状が暫く続くということですね。男やもめにウジが湧くぞ^_^;。
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